下村博文の教育政策の、国立青少年教育振興機構の日本の高校生自己肯定感調査から見た成果

2015-08-30 10:36:37 | 政治


 8月28日配信の《日本の高校生 「自分はダメ」の割合高い》という「NHK NEWS WEB」記事を読んだ。

 国立青少年教育振興機構による日米中韓の高校生(合計7761人)対象の意識調査で、日本は7割を超えて最も高く、自己肯定感が低い傾向があると書いている。

 「自分はダメな人間だと思うことがある」

 「とてもそう思う」+「まあそう思う」 日本72.5% 中国56.4%、米国45.1%、韓国35.2%

 「人並みの能力がある」 日本55.7% 中国約9割 米国約9割 韓国約7割

 記事は、〈「友だちがたくさんいる」、「勉強が得意なほうだ」、「体力に自信がある」といった項目で「そう思う」と答えた割合が日本はいずれも4か国の中で最も低く〉、全般的に〈自己肯定感が低い傾向が見られ〉たと解説している。

 この調査は2014年のもので、2015年8月28日に発表、以下のサイトに載っている。《高校生の生活と意識に関する調査報告書〔概要〕—日本・米国・中国・韓国の比較—》(国立青少年教育振興機構) 

 ここでの日本の高校生に関する調査結果はNHK記事と少し趣を異にする。

 「自分はダメな人間だと思うことがある」 

 2011年 「とてもそう思う」36.0% 「まあそう思う」47.7%
 2014年 「とてもそう思う」25.5% 「まあそう思う」47.0%

 「とてもそう思う」に関しては2011年調査と比較して10.5%減少している。

 ここでかなり前に下村博文が同じように高校生の自己肯定感不足(=自己否定感肥大)を指摘、嘆いていたことをブログにしたのを思い出した。

 ブログに書いた2013年4月10日衆院予算委員会での答弁である。

 下村博文「先程総理もお話されておりましたが、日本青少年研究所というところで毎年4カ国の意識調査をしております。この中で高校生の意識調査で、自分をダメな人間だと思うと答えている中国の高校生は12%。韓国の高校生が45%。アメリカは23%。日本は自分はダメな人間だと思う、イエスと答える高校生が66%もおります。

 他の国に比べてもですね、圧倒的に、なおかつ中学生のとき以上に高校生になると、さらに自分はダメな人間だと思う子どもたちの数は増えている。

 それがそのまま大人になったとしたら、日本社会でも7割以上がですね、自分がダメな人間だと思う国にですね、活力が生まれるはずがないわけでございまして、そういう意味で、学校教育の本質的な意味としてですね、やっぱり一人一人の子どもたちが、あの、自分に対して自信を持ってですね、自分は素晴らしい人間であると、そして自分という存在がさらに能力を引き出して、教育によって引き出して、そして社会に貢献できる、自分という人間がいることによって、周りの(ママ)喜んで貰う、そういう一人一人を養成するということが教育の役割であるというふうに思います」――

 NHK記事は「国立青少年教育振興機構」の調査で、下村博文が上げたのは「日本青少年研究所」の調査である。ネットで調べたところ、国立青少年教育振興機構は文部科学省所管の独立行政法人で、日本青少年研究所は主務官庁(公益事業を所掌する官庁)が内閣府本府と文部科学省の一般財団法人となっている。

 官庁に所属する異なる組織が同じ調査をする。仕事をダブらせていることになり、ムダがそこにあることにならないだろうか。

 しかし調査主体が異なっても、調査結果はほぼ同じでなければ、調査の正確さが疑われることになるから、比較に耐え得ると見なければならない。

 同じくブログに書いたことだが、下村博文は自身の公式サイト《日本再生 教育創世」》でも、『4ヶ国の中高校生意識調査』の題名、2012年7月30日の記事として同じ話題を取り上げている。

 〈日・米・中・韓の4ヶ国中高校生の意識調査によると、「自分はダメな人間と思う」中学生は、日本56.0%、米国14.2%、中国11.1%、韓国41.7%。高校生になると、日本65.8%、米国21.6%、中国12.7%、韓国45.3%と、財団法人日本青少年研究所の調査で分かった。
 どうして日本の中高校生は、こんなに多くの割合で「自分はダメな人間だ」と思っているのだろう。彼らの心情を思うと、切なく暗くなる。

 子供がダメなのではない。そのように多くの中高校生が「自分はダメだ」と思わせる日本社会が問題であり、子供達はその社会の鏡に過ぎない。

 また、「よく疲れていると感じる」中学生は、日本76.0%、米国55.1%、中国47.9%。高校生は日本83.3%、米国69.3%、中国63.9%で、日本の中高校生は、ほとんど疲れている。

 ところが、日本の中高校生の1日の勉強時間は、学校、自宅、塾を含め1日平均8時間で、中国は同様に1日約14時間。日本の中高校生は中国の中高校生のほぼ半分しか勉強していないのだ。

 それでも日本の子供の方が疲れているのは何故だろう。就寝時間が短いのも影響しているようだ。他国の子供に比べ、ダラダラ生活を送っているようだ。

 同研究所は「中韓と比べて、勉強もしていないのに弱音を吐いている現在の子供たちの姿がはっきりみえた。甘えの気持ちが強いのではないか」と分析している。

 子供は社会の鏡だ。日本の社会そのものからシャキッとする必要がある。日本を建て直そう!〉・・・・・・ 

 まだアクセスできるかと思って試してみたが、ページは消えていた。記事日付2012年7月30日はまだ自民党は野党の時代で、5カ月後の2012年12月26日に第2次安倍内閣が発足、下村博文は文科相になっている。

 国会で過去の発言を捉えられて追及されることを恐れ、過去の記事は消したと疑うこともできる。どこを探しても、過去の記事を探すことができない。大体が検索窓がない。

 下村博文は自身が教育者でありながら、〈多くの中高校生が「自分はダメだ」と思わせる日本社会が問題であり、子供達はその社会の鏡に過ぎない。〉と言っているが、日本社会の何が問題なのか、その何を明らかにする姿勢も努力も見せていない。

 いずれにしても下村博文が文科相就任約5カ月前2012年7月30日の時点で、「自分はダメな人間だ」と思っている高校生は日本65.8%、米国21.6%、中国12.7%、韓国45.3%と把握していた。

 そして衆院予算委員会で答弁した2013年4月10日の時点で、「自分はダメな人間だ」と思っている高校生は日本66%、アメリカ23%、中国12%、韓国45%と把握していた。

 数字がほぼ同じだから、2012年7月30日の時点で把握していた確率をそのまま使ったのかもしれない。だが、下村博文自身は2013年4月10日の時点で、上記の確率で把握していた。

 下村博文が文科相に就任して約2年8カ月。だが、それ以前は1996年の初当選後、自民党文部科学部会副部会長、第2次小泉内閣での文部科学大臣政務官、自由民主党シャドウ・キャビネット文科相、自民党教育再生実行本部長等を歴任、教育行政に関わってきた。

 当然、教育行政に関しての見識・知見は現在の文科相2年8カ月の任期のみの経験からの習得では済まない。

 2012年7月30日の日付で自身の公式サイトに「自分はダメな人間と思う」日本人の中高生の米中韓の中高生に比較した多さに、「どうして日本の中高校生は、こんなに多くの割合で『自分はダメな人間だ』と思っているのだろう。彼らの心情を思うと、切なく暗くなる」と強い関心を示し、その後国会答弁でも関心を示していた以上、自己肯定感を持つことのできない高生徒の数を減らし、逆に自己肯定感を持つことのできる生徒の数を増やすことのできる教育のあり方を学校教育に反映させるべく、有識者を集めるなりして構築する責任を負っていたことになる。

 今回の国立青少年教育振興機構の「自分はダメな人間だと思うことがある」自己否定感調査で「とてもそう思う」に関しては2011年調査と比較して2014年10.5%減少は下村教育行政の成果なのだろうか。

 自己肯定感不足、あるいは自己否定感肥大は不登校や引きこもり、勉強放棄、自信喪失からの中途退学、問題行動、非行等と相互関連し合うはずだ。相互関連し合った現象間の悪循環がこれらの悪質化、あるいは長期化ということであろう。

 8月29日のNHK総合テレビの『週刊深読み』が小中学生の不登校12万人を超え、2年連続の増加だと言っていたが、《高校生の不登校・中途退学の現状等》文科省/2010年)によると、2010年の高校生の不登校は 55,707人(60人に1人)となっている。 

 高校生の場合は2004年時からの調査であり、図を見ると、2004年時は6万人を超えていたが、2009年よりも増加している。

 中途退学は2009年56,947人、2010年は55,415人となっていて、1532人減少しているが、不登校生徒の中に中途退学予備軍が存在すると考えると、それ程の差はないと見るべきだろう。
 
 さらに上記「国立青少年教育振興機構」調査での「自分はダメな人間だと思うことがある」以外の自己肯定感に関する調査結果を見ても、高校生全体であまり芳しい状況にあるとは言えない。

 「とてもそう思う」+「まあそう思う」の調査値を挙げる。 

 「私は人並みの能力がある」 日本55.7% 米国88.5% 中国90.6% 韓国67.8%

 「私は、体力には自信がある」 日本43.5% 米国76.9% 中国76.1% 韓国52.6%

 「私は、勉強が得意な方だ」 日本23.4% 米国65.5% 中国65.1% 韓国31.6%

 「自分の希望はいつか叶うと思う」 日本67.3% 米国83.9% 中国80.7% 韓国82.6%

 「私は将来に対し、はっきりした目標をもっている」 日本57.3% 米国80.9% 中国75.6% 韓国58.9%

 「私は将来に不安を感じている」 日本71.0% 米国63.0% 中国48.3% 韓国78.0%

 「周りの人の意見に影響されるほうだ」 日本63.7% 米国47.0% 中国58.3% 韓国73.4%(以上)

 最後の「周りの人の意見に影響されるほうだ」という社会で生きていく上で最も大切な自律性が欠如しているという点では韓国の高校生程の欠如は示してはいないが、米国と中国の高校生よりも欠如の度合いは強い。

 この自律性の欠如が「自分はダメな人間だと思うことがある」の精神性に反映することにもなっているはずである。

 日本の高校生だけを切り取った場合は調査年に応じて増減があるとしても、米中韓と比較して自己肯定感欠如の度合いが大きいことに変わりはない。

 こうして見てくると、全体的には下村博文が文科相に就任以前から関心を持っていなければならなかったし、自己肯定感欠如を嘆いた割には、高校生に限らず小中学生に対しても、彼ら自身の様々な生き方に自己肯定感を持つことのできる教育政策を構築、学校教育に反映させる成果を見せることができなかったとしなければならないだろう。

 参考までに――

 《下村博文の、これでよく文科相を務めていられるなと思う検証精神なき認識能力 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》  


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