安倍晋三の拉致問題、打つ手もなく北朝鮮の出方任せとこの場での制裁強化ができないのは責任回避から

2015-07-24 11:36:14 | 政治

 


      「生活の党と山本太郎となかまたち」

          《7月24日(金)小沢一郎代表のメディア出演のご案内》

     ◆番組名:ニコニコニュース「『立憲主義の危機』はなぜ起きるのか」
     ◆日 時:平成27年7月24日(金)午後4時~6時
     ◆内 容:「自由と平等とデモクラシーを考える市民の会」主催の鼎談を生中継いたします。

      憲法学者ありで日本近代史にも造詣が深い樋口陽一氏、歴史学者であり独自の近代史観を持たれている小路
      田泰直氏、そして生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎代表の3人で『「立憲主義の危機」はなぜ起
      きるのか』をテーマに議論します。

      《7月21日 小沢一郎代表記者会見要旨党HP掲載ご案内》    

     7月21日に行われた小沢一郎代表の定例記者会見要旨を前編と後編に分けて党ホームページに掲載
     しました。ぜひご一読ください。

     【質疑要旨】(前編)
     ○SEALDsの抗議行動への参加について
     ○盗聴法改正案の違憲性の指摘について
     ○民法改正案の審議滞りについて

      《7月21日 小沢一郎代表記者会見要旨党HP掲載ご案内》

     【質疑要旨】(後編)
     ○安保法案は米国に頼まれて作ったのではないかとの指摘について
     ○安保法案が可決成立した場合の現実政治への影響について

 2014年5月26日から5月28日までスウェーデン・ストックホルムで開催の日朝政府間協議で北朝鮮が「特別調査委員会」を立ち上げて、拉致被害者を始めとするすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を約束してから、1年余が経つ。

 日本側代表団の報告を受けて、5月29日午後、安倍晋三が首相官邸で記者会見した。

 安倍晋三「ストックホルムで行われた日朝協議の結果、北朝鮮側は拉致被害者および拉致の疑いが排除されない行方不明の方々を 含め、全ての日本人の包括的全面調査を行うことを日本側に約束をしました。

 その約束に従って、特別調査委員会が設置をされ、日本人拉致被害者の調査がスタートすることになります。

 安倍政権にとりまして、拉致問題の全面解決、最重要課題の一つであります。

 全ての拉致被害者のご家族がご自身の手でお子さんたちを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない。 この決意を持って取り組んできたところでありますが、全面解決へ向けて第一歩となることを期待しています。

 詳しくはこの後、官房長官からお話をさせていただきます」(MS産経

 「安倍政権にとりまして、拉致問題の全面解決、最重要課題の一つであります」と前々から言っていたことを改めて強調したについては相当に解決の可能性を見ていたからだろう。

 安倍晋三は記者会見後、周囲に「北朝鮮が拉致被害者らが見つかったら帰すと約束したのは初めてだ」と評価したと別の「MS産経」記事が伝えているが、解決の可能性を見ていたことからの評価であるはずである。

 引き続いて官房長官の菅義偉は北朝鮮側が「特別調査委員会」を立ち上げ、調査を開始する時点で人的往来の規制措置や人道目的の北朝鮮籍の船舶の日本への入港禁止措置など、日本が独自に行っている制裁措置の一部を解除する日本政府の方針を示した。

 この一部制裁解除の方針も安倍晋三の解決の可能性の反映であったはずだ。

 5月29日の菅義偉の記者会見の一問一答を「時事ドットコム」記事が伝えている。一部を紹介する。

 記者「実効的な調査をどう担保するか」

 菅義偉「北朝鮮代表の宋日昊・日朝国交正常化交渉担当大使から、調査開始時点までに特別調査委員会の具体的な組織、構成、責任者等について日本側に通報する との明確な発言があった。調査委は、全機関を対象とした調査を行える権限を付与される。日本は、調査の進捗過程について随時通報を受けて協議し、調査結果を直接確認できる仕組みを確保している」

 記者「調査委の設置時期と調査期限は」

 菅義偉「(設置時期は)3週間前後。終了時期は現時点では決めていないが、何年も(かかる)ということはあり得ないと思う」

 「調査開始時点までに特別調査委員会の具体的な組織、構成、責任者等について日本側に通報する との明確な発言があった」と言うことは、5月26日から5月28日までのスウェーデン・ストックホルムで開催の日朝政府間協議ではそこまで詰めていなかったことになる。

 つまり北朝鮮の出方任せだったことになる。 

 にも関わらず、「日本は、調査の進捗過程について随時通報を受けて協議し、調査結果を直接確認できる仕組みを確保している」と、監視体制(=「調査結果を直接確認できる仕組み」)の構築済みを言い、実効性確保に自信を見せた。

 ここで朝鮮総連機関紙・朝鮮新報が安倍晋三と菅義偉の5月29日の記者会見翌日の5月30日付で気になる発言を載せている。

 「再調査の結果を確認し、拉致問題決着の道筋を日本国民に提示するのは日本の政権担当者の役割だ」(時事ドットコム

 言っていることは、拉致調査の北朝鮮側の回答となる報告書を受けて、例え日本国民が不満を示しても、その不満を宥めて納得させるのは日本政府の役割だということであろう。

 程々のところで手を打てと言っているようなもので、裏を返すと、程々のところで手を打つ回答しか出せないということになる。 

 北朝鮮側の調査開始時点での制裁一部解除の政府のこの動きに日本人拉致被害者家族連絡会は拉致問題の進展に強い期待を見せたが、解決しないうちの一部制裁解除に不安も見せた。

 この不安が朝鮮新報の記事発言から受けた心証かどうか分からないが、実効性を不安視していることからの全面解決前の一部制裁解除に対する不安ということであるはずだ。

 6月1日のNHK「日曜討論」

 菅義偉「(スウェーデンでの日朝政府間協議で)日本側の調査団の滞在も合意文書に入れられた。北朝鮮に滞在して関係者に会ったり、関係するところまで出かけていく。私どもから強く要請して受け入れられており、しっかりスタート台に立ちたい」(NHK NEWS WEB

 日本側の調査団の派遣・滞在とは5月29日の記者会見で述べた「調査結果を直接確認できる仕組み」(=監視体制)のことを指すはずで、この点に実効性確保を置いていて、自信の根拠となっていることになる。

 6月1日日曜日のフジテレビ「新報道2001」

 山本有二元金融担当相「(北朝鮮側は)『全ての日本人』と(調査)対象を広げた。当てがある日本人、帰すつもりがある日本人がいるという前提でないと、こう いうことは言わない」(MSN産経

 日本政府の意気込みと拉致解決に向けた自信を窺うことのできる発言となっている。今回の北朝鮮の行動を信用できると踏んだからこその意気込みと自信であろう。

 ところが5月末のストックホルムでの日朝政府間協議から1カ月経つというのに調査が開始されない。日本政府は北朝鮮が5月末にストックホルムで立ち上げを約束した「特別調査委員会」の組織、構成、権限、責任者等について説明を受けることを主たる目的として、日本側の働きかけで7月1日、中国・北京で日朝政府間協議を開くことの了承を北朝鮮から取り付けた。

 要するに5月末のスウェーデン・ストックホルムで開催の日朝政府間協議で「特別調査委員会」の組織、構成、権限、責任者等について詰めていなかったばかりか、1カ月も調査が開始されず、調査開始時点までに日本側に通報するとしたこれらの約束が未だ果たされていないことから、その辺のお伺いを立てるために日本側が呼びかけて7月1日に北京で確認の日朝政府間協議を開くことになったということになる。

 何となく意気込みと自信に反する、ご機嫌を損ねてはならないといった腫れ物に触るような日本政府の北朝鮮の出方任せの対応に見える。

 ところが北朝鮮は7月1日2日前の6月29日午前5時頃、6月26日に引き続いて短距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。

 6月29日の記者会見。

 小野寺防衛相「国際社会の懸念を無視してミサイルの発射を繰り返すのは、周辺国を含めて、非常に大きな問題となる。せっかく日朝政府間協議で、北朝鮮に対してさまざまな交渉ができつつある中での今回の発射というのは、決して北朝鮮のためにもならない」(NHK NEWS WEB

 拉致問題、その他について交渉の最中のミサイル発射に日本政府は北朝鮮の真意を測りかね、疑心暗鬼に陥ったが、拉致問題等とミサイル発射を別問題とし、制裁解除方針は維持、政府間協議をそのまま開催することにした。

 つまり北朝鮮のミサイル発射よりも何よりも拉致解決を優先させた。

 7月1日の北京での政府間協議は一応ミサイル発射問題を取り上げたが、目的とした話し合いで予定通りに終わり、安倍晋三に内容を報告することになった。

 日本政府にとってこの重大な時期に北朝鮮は翌日の7月2日、再び短距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。

 いくらミサイルを発射しても日本側から日朝政府間協議を打ち切る心配はないと高を括ったのか、最初から拉致問題を解決する気がなかったからなのかは分からないが、少なくとも解決に向けた真摯な姿勢を窺うことはできないはずだ。

 この一連のミサイル発射で北朝鮮側の姿勢をどう占ったのか分からないが、安倍晋三は日本側代表団の報告を受けて7月3日午前、首相官邸で関係閣僚会議と国家安全保障会議(NSC)を開催、独自制裁の一部解除方針を決めた。

 国家安全保障会議(NSC)まで開いて協議したのだから、見通しに自信があったはずだ。見通しに反する結果なら、何のために国家安全保障会議まで開いたのかということになるし、国家安全保障会議という名に恥じることになる。

 安倍晋三(関係閣僚会議とNSC後、官邸で記者団に)「国家的な決断、意思決定ができる組織が前面に出るという、かつてない態勢ができたと判断した。行動対行動の原則に従い、日本が取ってきた一部の措置を解除したい」(MS産経

 ミサイル発射に対する疑心暗鬼は吹っ飛び、再び解決への意気込みと自身を取り戻したようだ。

 それが約束だったのだろう、日本政府は7月4日、「特別調査委員会」を設置したことが確認されたことから制裁の一部解除を決定、これを受けて北朝鮮は同7月4日に調査を開始した。

 7月1日の北京での協議では初回報告は「夏の終わりから秋の初め」で合意していたが、一向に報告がない。その報告遅延の理由と日本側は拉致解決を最優先としていることを伝えるために10月28日、29日の両日、北朝鮮・平壌で日朝政府間協議を再び開くことになった。

 8月21日記者会見。

 山谷えり子「夏の終わりから秋の初めごろにかけて第1回目の報告があるとのことで、もうそろそろというふうに思うが、具体的な日時や形態などは示されていない。

 圧力に重点を置いた対話と圧力という基本的な姿勢の下、すべての被害者の一日も早い帰国の実現、そして、帰国した被害者らが安心して日本で暮らせるように環境整備をしていきたい。仮に北朝鮮が不誠実な対応をした場合には、すぐに全員を返すようにということを求めていきたい」

 「具体的な日時と形態」は取り決めていなかった。取り決めるだけの交渉能力を日本側代表団は持たなかった。

 日本側代表団がその程度なら、山谷えり子も程度の低い矛盾したことを言っている。「仮に北朝鮮が不誠実な対応をした場合には、すぐに全員を返すようにということを求めていきたい」

 誠実な対応あってこその解決可能性であって、誠実な対応を唯一前提としなければならないはずだが、「不誠実な対応をした場合」を前提にして全員帰国を求めて、それが可能であるかのような矛盾したことを平気で言う。

 可能であるなら、北朝鮮側の不誠実な対応を問題とせずに既に全員帰国を果たしていたはずだ。

 9月3日、次世代の党参議院議員アントニオ猪木が北朝鮮・平壌でのプロレス大会を終えて帰国した羽田空港で記者会見している。

 アントニオ猪木「私の勘ではありますけど、向こう(北朝鮮)は落としどころをほとんど準備できている。あとは日本の受け入れ態勢がどうなっているか」(スポーツ報知

 「落としどころ」とはこの辺でいいだろうと双方が納得できる妥協点を言う。だが、拉致問題はこの辺でいいだろうと双方が納得して解決する問題ではない。アントニオ猪木が言っていることは朝鮮総連機関紙・朝鮮新報が「再調査の結果を確認し、拉致問題決着の道筋を日本国民に提示するのは日本の政権担当者の役割だ」と書いて、程々のところで手を打つべきだと促していたことと相互対応している。

 そのお陰でアントニオ猪木の発言と朝鮮新報の記述から北朝鮮側の拉致解決に向けた姿勢を窺うことができる。誠実な対応は期待できないという姿勢である。

 日本政府は中国・北京の大使館ルートを通じて北朝鮮側に履行状況や最初の通報時期などを照会した結果、9月18日に北朝鮮側から回答があった。9月19日、閣議後記者会見。

 菅義偉「(9月18日に)『特別調査委員会はすべての日本人に関する調査を誠実に進めている。調査は全体で1年程度を目標としており、現在はまだ初期段階にある。現時点でこの段階を超えた説明を行うことはできない』という連絡があった。

 日本側としては、北朝鮮側が拉致被害者を始めとするすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を迅速に行い、その結果を速やかに通報すべきと考えており、このような問題意識を北朝鮮側にしっかりと伝えている。

 調査の現状について、さらに詳細な説明を早期に受ける必要があると考えており、具体的なやり方を今後、北京の大使館ルートを通じて調整を行っていきたい。

 7月の時点で、北朝鮮からの最初の通報は『夏の終わりから秋の初めごろ』ということで双方の認識が一致していたが、現時点で最初の通報時期は未定だ。通報が遅れる理由の説明も現時点ではない。

 交渉ルートが長年にわたり閉ざされてきたわけだが、今回初めて交渉の道が開かれた。そこで約1年という期限を、私から申し上げたのに対して、今回初めて北朝鮮側も期限を切ってきた」(NHK NEWS WEB

 北朝鮮側から「調査は全体で1年程度を目標としており、現在はまだ初期段階にある」と問い合わせに回答があったと言いながら、「約1年という期限を、私から申し上げた」と矛盾した言い方をしている。

 それとも目標通りに1年で報告をお願いしたいと申し出たと言うことなのだろうか。

 北朝鮮が調査を開始したのは7月4日。それから1年程度と言うことなら、2015年7月上旬ということになる。「夏の終わりから秋の初め」どころではない。

 この北朝鮮側の報告遅れにしても、日本側の報告待ちにしても、北朝鮮側の出方任せだけが目立つ。制裁解除というカードを持ちながら、何ら主導権を握ることができない。

 この報告の遅れで安倍晋三以下、日本側は相当疑心暗鬼に駆られたに違いない。当初の拉致解決に向けた意気込みと自信は相当に薄れたはずだ。

 北朝鮮が調査を開始した2014年7月4日から1年経過した2015年7月3日、調査結果の報告の延期を政府に連絡してきていたことが日朝関係筋の話で分かったと「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 記事は〈調査結果の報告をいつまでも先送りにすることは容認できず、北朝鮮側の対応は遺憾だとしながらも、制裁を強化したり、協議を打ち切ったりすれば、拉致被害者の帰国の実現は、より難しくなりかねないとして、北朝鮮側の連絡を受け入れることを決め〉たと解説している。

 制裁を強化することもできず、協議の打ち切りもできず、すべて北朝鮮側の出方任せであることのみが続くことになった。

 安倍晋三(7月3日の衆議院特別委員会)「我が国は去年5月のストックホルムでの日朝間の合意を誠実に履行してきている。日朝間に合意された具体的な期間があるわけではないが、調査開始から1年が経過する今もなお、拉致被害者の帰国が実現していないことは、誠に遺憾だ。

 北京の大使館ルートで働きかけを行ってきたが、今般、先方より、『すべての日本人に関する包括的調査を誠実に行ってきているが、今しばらく時間がかかる』旨の連絡があった。政府としては、遺憾ではあるが、北朝鮮からの具体的な動きを早急に引き出すべく、働きかけを強化するため、外務大臣と拉致問題担当大臣に指示した。

 その結果も見極めつつ、日本政府としての今後の対応を判断していく。政府としては、引き続き、『対話と圧力』、『行動対行動』の原則を貫き、すべての拉致被害者の帰国を実現するため、全力を尽くしていく」(NHK NEWS WEB

 言っている趣旨はいつもの発言と同じである。「働きかけを強化」しても北朝鮮側の出方任せであるという交渉の構造は変わらない。「『対話と圧力』、『行動対行動』の原則」をいくら言い立てようと、北朝鮮側の出方任せを一度も突き崩すことができなかったのだから、今後とも突き崩すことができると期待できるわけではない。

 特に「行動対行動」を掲げて一部制裁解除したものの、1年間効果を見ることができなかった。
 
 拉致被害者家族連絡会と支援団体「拉致被害者を救う会」は政府の態度とは反対に7月22日、制裁の強化を訴える緊急集会を開いた。

 だが、安倍晋三は北朝鮮側の出方任せから抜け出ることはできないだろうし、もし制裁を強化したなら、国家安全保障会議(NSC)まで開いて、「国家的な決断、意思決定ができる組織が前面に出るという、かつてない態勢ができたと判断した。行動対行動の原則に従い、日本が取ってきた一部の措置を解除したい」と決断した自身の責任に跳ね返ることになって、その責任を問われることは間違いない。

 責任追及を回避するためにもこの場面での制裁強化はできないはずだ。

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