山本太郎が天皇に手紙を渡した行為は天皇の政治利用の確信犯であった方が正々堂々とした態度となる

2013-11-01 05:17:54 | 政治



 10月31日、東京の赤坂御苑で秋の園遊会が開かれた。中には混じっている大勢の有象無象たち約1800人が招待されたという。テレビでよく流す、1800人もが勢揃いした中から、その前列に位置している参加者に天皇が左から順番に参加者に関わるありきたりの短い質問をし、声をかけられた参加者は畏(かしこ)まって、要するに畏れ多い様子で同じくありきたりの答を口にする、例の尤もらしげな一大セレモニーが行われていた最中の出来事ということらしい。

 そこで原発絶対反対者、元俳優なのか、現在も俳優なのか知らないが、山本太郎参議院議員が天皇に手紙を渡した。園遊会史上始まって以来の一大事件ではないだろうか。

 行為の良し悪しは別にすると、そうするぐらいの人間が一人ぐらい存在してもいいはずだ。天皇とは有り難るだけの存在であってはならないからだ。

 手紙を渡された天皇はそれを傍にいた侍従長に手渡したという。要するに何事もなかった様子で次の参加者の前に立ったということなのだろう。

 その後山本太郎が記者たちに話した内容。

 山本太郎「原発事故によって、このままだと子どもたちの被ばくが進み、健康被害が出てしまう。さらに現場で対応に当たっている作業員は劣悪な環境で搾取され、命を削りながらやっている。こうした実情をお伝えしようと、手紙にしたためた。自分の政治活動に役立てようという気持ちはなく、失礼に当たるかもしれないという思いもあったが、伝えたい気持ちが先立った」

 菅官房長官(記者会見)「天皇陛下に園遊会のような場で手紙を渡すことがその場にふさわしいかどうかは、参加された方自身が常識的に判断することだ。常識的な線引きはあると思う」

 記者「手紙の内容は把握しているのか」
 
 菅官房長官「何も聞いてない。そういう行為があったということだけは承知している」(以上NHK NEWS WEBから)

 記事は11月1日に参議院議院運営委員会を開いて、山本太郎の行為に関わる対応を協議することになったと伝えている。

 山本太郎が天皇に原発事故に関する何らかの言及を求めたい意志のもと手紙を認(したた)めたとしたら、天皇の政治利用に当たる。天皇は自身の意志での政治的発言は憲法で禁じられているからだ。政治家側の国事行為を装った政治利用の形でしか、いわば国事行為として政治家側が用意した文章を読み上げることでしか政治家側の意志を代弁する形での政治的発言しかできない。

 当然天皇は、手渡されたのがラブレターなら、内々に答える場合もあるかもしれないが、原発事故に関しては政治に関係してくるために自らの意志による言及は一切行うことはないはずだ。

 当然、山本太郎が天皇自身による何らかの言及を求めたいがために手紙を渡したのだとしたら、勘違いも甚だしいということになる。

 但し、何ら言及を求めずに反原発の立場と子どもたちが置かれている状況、さらに東電の原発事故処理の杜撰な対応、その矛盾――いわば現在の「実情」を訴える立場から天皇に手紙を渡す行為を通してその「実情」をクローズアップさせるための衝撃を狙った確信犯であったなら、勘違いでも何でもなく、必ずしも政治利用とは言えなくなる。

 政治利用ではないことを確実にするためには手紙は白紙か、「いつまでもお元気で長生きしてください」といった原発の「実情」とは一切関係しない簡単な文言を記す程度であったなら、最善と言うことができる。

 だが、上記発言のように手紙で実際に原発事故の現在の「実情」を訴えていたのだとしたら、天皇の何らかの言及を求めたことになり、政治利用という違反行為の烙印を押される可能性は避けることはできない。

 もう一つ、昨日のインターネット上に昭和22年3月13日公布、昭和22年5月3日憲法の日施行の請願法第3条に違反するとする指摘がなされていた。

 請願法第3条「請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない」――

 政治利用と請願法違反の二つの懲罰が待ち構えている可能性は否定できない。

 例え二つの重大な違反があったとしても、自分たち政治家側が散々に天皇を政治利用してきた歴史を抱えていながら、その狡猾な非常識を棚に上げて、天皇に手紙を渡したことを以って議員個人に対して例の如くに杓子定規な常識に照らした批判を行っている。

 そういった連中の発言を見てみる。

 脇雅史自民党参院幹事長「国会議員としてあるまじき行為で、相当の処分が必要だ」

 自民党国対幹部「絶対にやってはいけないことだ」

 石井啓一公明党政調会長「皇室の政治利用になりかねない問題だ」(以上The Wall Street Journal)――

 石井啓一公明党政調会長「国会議員として、そもそも戒めなければいけない行為だ」

 大畠民主党幹事長「マナーというものがある。国会議員だから何をしてもいいということではない」

 自民党幹部1「陛下にとっても迷惑な話だ」

 自民党幹部2「山本氏のパフォーマンスだ」(以上サンスポ)――

 権力を握る側に立っていて、必要となったなら、いくらでも天皇を政治利用するくせに、偉そうな言葉を並べ立てている。

 山本太郎は「天皇の政治利用に当たるのではないか」との指摘に「そういう思いは全くない」(47NEWS)と否定したということだが、天皇に手渡した手紙に自らの発言通りの内容を実際に記していたなら、二つの懲罰を下される可能性が避けがたいことを考慮して、却って確信犯とした方がいいのではないだろうか。

 「原発事故の実情を知って貰うために敢えて天皇の政治利用と請願法違反を犯した」と。そして潔く下された懲罰を受ける。

 「そういう思いは全くない」とするよりも、正々堂々とした態度となる。自らの挑戦的な姿勢を失わずにも済む。

 例え議員の身分を失うことになったとしても、次の選挙で大勢の国民が支持し、投票することになるはずだ。

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