都合の悪いことは情報隠蔽し、ゴマカシの情報公開となった前原誠司の見当違いな訪露成果誇示

2012-05-03 11:15:44 | Weblog

 日本のホープ、有言不実行の口先番長、前原誠司民主党政策会長がロシアを訪問、日本時間5月2日(2012年)夜、ラブロフ外相と会談。北方領土問題を解決した上で、日本とロシアが経済やエネルギー分野などで関係を強化していく必要があるという考えを伝えという。

 《“北方領土問題解決し関係強化を”》NHK NEWS WEB/2012年5月3日 1時6分)

 会談で実際にどのような言葉が交わされたのか、会話情報の事実は出席当事者しか知らない。会談後の記者会見か、その後の何かの機会で双方の代表者やその他の発言でしか窺い知ることはできない。

 その一つとして、前原誠司は“北方領土問題を解決した上で”の条件をつけて、日露の経済的関係の強化の必要性を訴えたと自らの話として明かした。

 前原誠司が明かした具体的な発言内容を記事は次のように伝えている。

 前原誠司「日本とロシアは、戦略的・地政学的に、重要な関係にある。今後、懸案となっている北方領土問題を解決したうえで、平和条約を締結し、さらに日ロ両国の関係を発展させなければならない」

 日ロ両国関係の発展はあくまでも北方領土問題解決を前提とすると宣言している。

 前原誠司のこの発言に対するラブロフ外相発言だが、ラブロフ外相自身が記者団の前で口にしたものなのか、前原誠司が紹介したラブロフ外相の発言なのか記事からでは把握できない。

 ラブロフ外相「両国の戦略的発展の重要性には同意する。特に経済面やエネルギー分野、そして、海上の国境警備や密輸対策といった東アジア地域での協力などが重要だ。

 両国の首脳、外相同士が話し合うことは大変重要だ。野田総理大臣と玄葉外務大臣には、ロシアを訪問してほしい」

 記事は以上の発言を紹介した上で、〈会談のあと、前原氏は記者団に対し〉と注釈をつけているが、前の発言も記者団の前で口にした発言でなければ、公開形式の会談でなければならなくなる。あくまでも記者団の前で前原誠司が紹介した自身とラブロフ外相の発言であったか、前原誠司とラブロフ外相がそれぞれに個別に紹介した発言でなければならないはずだ。

 前原誠司「プーチン新政権が改めて誕生するタイミングで、野田総理大臣を含め、日本の政府与党が、日ロ関係の強化に強い意欲を持っていることを伝えることができたのは成果だ」

 記事はこの発言を、〈今回のロシア訪問の意義を強調し〉たものだとしている。

 平和条約締結と日ロ両国関係の発展はあくまでも北方領土問題解決を前提とすると宣言している以上、いわば平和条約締結と日ロ両国関係の発展は北方領土問題解決の次だと言っている以上、その解決の糸口を何らか見い出したことを以って「成果」とすべきだが、平和条約締結はさておいて、日ロ両国関係の発展を先に持ってきて、「野田総理大臣を含め、日本の政府与党が、日ロ関係の強化に強い意欲を持っていることを伝えることができたのは成果だ」と誇るのは、北方領土問題解決を次にする後先の誤魔化以外の何ものでもないはずだ。

 これを北朝鮮の日本人拉致問題に譬えると、日本政府の公式的立場は“拉致解決なくして日朝国交正常化なし”であるが、いわば日朝国交正常化は拉致解決の次だとしていながら、拉致解決を次にして日朝国交正常化を先にするようなものだろう。

 「懸案となっている北方領土問題を解決したうえで」と言いながら、その解決を差し置いて日ロ両国関係発展に重点を置くのはまさしく口先番長そのものの態度となる。

 ラブロフ外相との会談で果たして実際に北方領土問題解決を前提とした発言を最後まで通したのか、極めて疑わしくなる。記者団の前でのみ表明した北方領土問題解決ではないのかの疑いである。

 この疑いは別の記事を見ると、間違っていないことを証明してくれる。《「領土問題に柔軟に対応」 ロシア訪問の前原政調会長》MSN産経/2012.5.2 22:13)

 記事題名からして上記「NHK NEWS WEB」記事が伝える“前提”から外れて、北方領土問題解決を条件としない両国関係の構築を指しているはずだ。

 会談後の記者会見での前原誠司の発言として、ラブロフ〈外相から「両国の法的な立場を害さない立場で協力を行うことは大変重要。実を結ぶことを期待している」との表明があったと語った。〉となっているから、ラブロフ外相出席なしの前原単独記者会見だったことが分かる。

 「両国の法的な立場を害さない立場」とは、日本側の「北方四島は日本固有の領土である」、ロシア側の「北方四島は第2時大戦の結果ロシア領となった」という双方それぞれの主張を崩さない、いわば双方並立の現状維持を言っているはずで、ラブロフ外相からそういう主張があったということは、前原誠司が実際に発言したかどうか分からないが、実際に発言したと仮定したとしても、「北方四島は日本固有の領土である」の日本側の主張が無視されたことを示しているし、実際には発言しなかったとしても、「北方四島は日本固有の領土である」の日本側の主張を最初から最後まで無視する姿勢でラブロフ外相は会談に臨んでいたことを示すことになる。

 このことはロシア側の北方四島に対する実際的な行動が証明している。「両国の法的な立場を害さない立場で」といった主張で以って日本側の抗議や干渉からロシアの立場を守りつつ、着々と北方四島の開発を推し進めて実効支配を強化していく戦略推進に表れている日本側主張の無視である。

 いわば「両国の法的な立場を害さない立場」はロシア側にとっては最好都合の主張であって、当然、日本側にとっては最不都合の主張となる。

 前原誠司はラブロフ外相のその主張を容認したことになる。

 但し前原誠司が口では言っていながら、本音のところでそうは思っていない北方領土問題解決前提であるなら、いわば記事が伝える領土問題に柔軟対応であるなら、ロシア側の「両国の法的な立場を害さない立場で」という主張は最不都合でも何でもなくなり、容認可能となる。

 記事の結び解説と前原誠司の発言を纏めて、前原誠司の発言を創作してみる。

 前原誠司「協力の具体的な方策については、日露の実務者間で交渉が進んでいる。ラブロフ外相とは依然として低いレベルにある日露関係を発展させることの重要性を共有しあった。

 但し北方四島が日本固有の領土であることは紛れもない事実であり、一般論として(領土問題に)柔軟に対応することが求められている時期にある」

 実際の記事結び解説。〈協力の具体的な方策については、日露の実務者間で交渉が進んでいるという。双方は、依然として「低いレベル」にある日露関係を発展させることの重要性を共有しあったといい、前原会長は四島が日本固有の領土であることは「紛れもない事実」という認識を示した上で、「一般論として(領土問題に)柔軟に対応することが求められている時期にある」と語った。(モスクワ 佐々木正明)〉・・・・・

 「低いレベルにある日露関係を発展させることの重要性を共有しあった」という発言は北方領土問題解決を抜きにして成り立つ、あるいは解決を前提としないことによって成り立つ議論ということになる。

 実際の会議の場ではそのような姿勢で議論した。あくまでも領土問題解決の前提に拘っていたなら、関係強化の話へと前へは進まないことになるからだ。

 進まないとなれば、「ラブロフ外相とは依然として低いレベルにある日露関係を発展させることの重要性を共有しあった」という話はなかったことになる。

 だが、これだけの紹介では日本国民に対して格好がつかないし、批判も浴びることになるから、記者団の前では「北方四島が日本固有の領土であることは紛れもない事実」だと、あくまでも北方四島返還要求の姿勢を崩していないことを表明した。

 但し記者団向けの発言はロシア側にも知れることになるし、日本国民に対しても北方領土問題解決を次にして日ロ両国関係発展を先にする都合上、矛盾を排して全体の発言に整合性を持たせるために、「一般論として(領土問題に)柔軟に対応することが求められている時期にある」と巧妙な言い回しで、自分一人の考えではない、一般論だとして、北方領土問題解決を前提としないことを暗に示した。

 「柔軟に対応」とはそういうことでなければならないはずだ。

 前原誠司がラブロフ外相との会談に先立って地元テレビ局の取材を受けたときの発言が既に触れたことと同じ趣旨となっている。

 《前原氏、ロシア外相と会談 領土問題「懸案解決を」》asahi.com/2012年5月2日23時11分)

 前原誠司「4島は日本固有の領土という立場は揺るがない。互いの立場は56年間議論を尽くした。同じように繰り返すことが建設的とは思わない」

 「4島は日本固有の領土という立場は揺るがない」と言いながら、日本側の「北方四島は日本固有の領土である」、ロシア側の「北方四島は第2時大戦の結果ロシア領となった」とするお互いの立場を「同じように繰り返すことが建設的とは思わない」と言って、ある意味、日本側の「北方四島は日本固有の領土である」としていた立場の放棄を示唆している。

 記事はこの発言を、〈新たな解決策が必要との認識を示した。〉ものだとし、〈ただ、日本国内では2島先行返還論などへの批判が根強いため、この場では具体的な案に言及しなかった。〉と解説している。

 ロシアは2島も返還しないだろう。単に経済協力・技術協力を引き出すためのエサとして利用しているに過ぎないはずだ。ロシア側が前々から主張している「南クリル諸島(北方四島)は第2次大戦の結果としてソ連に移り、その後ロシアに法的に引き継がれたのは明らかなことだ」(ロシア外務省)、「第2次世界大戦の結果を認めるという他の国がしていることを、日本がする以外に(平和交渉進展の)方法はない」(ラブロフ外相)の「第2次世界大戦の結果」論を打ち破る創造的理論を日本側が構築できない以上、いくら日本が「北方四島は日本固有の領土である」と言ったとしてもロシアには無効であることは誰の目にも明らかで、明らかである以上、他に返還の方策は見い出せないことも誰の目にも明らかなことであって、二重に明らかであるにも関わらず構築できないままにロシアに乗り込んでいるのである。

 当然、実際の会議の場で、「北方四島が日本固有の領土であることは紛れもない事実」だといった発言は明確にはしなかっただろうということである。
 
 だが、会見の場で発言しなかった不都合を記者団の前では情報隠蔽し、さも明確に発言したような情報公開を行うことで自身の立場に整合性を持たせる情報操作を演じた。

 そして事実そのことしか成果がなかったのだろうし、実際にも目指した成果なのだろう、「野田総理大臣を含め、日本の政府与党が、日ロ関係の強化に強い意欲を持っていることを伝えることができたのは成果だ」と誇示したのはいいが、国民の前では北方領土問題解決が先だとそのことを前提としている以上、そのことに反する見当違いでしかない成果を誇示することになった。

 参考までに。

 2010年11月9日当ブログ記事――《菅民主党政権は北方四島のロシア領土化にサジを投げている? - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》

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