昨日NHKテレビで参議院予算委員会の中継をたまたま視ていたら、たまたまと言うのは最近熱心に国会中継を視ることは殆んどなくなったからだが、山本一太自民党議員が朝鮮学校に対する高校の無償化問題を取り上げていた。その追及を終えて、金賢姫来日問題に移って暫くして昼の休憩、そこでNHKの昼のニュースを視ながら私も昼食を食べて、それから昼寝の休憩としゃれ込む。
今朝、昨夕HP「参議院インターネット審議中継」/からダウンロードしておいた動画を開いて文字化。山本一太の追及の内容とその対象化反対姿勢にも疲れたし、川端文科省の答弁の仕方にも疲れた。文字化にも疲れた。但し朝鮮高等学校無償化対象除外は私自身は反対であるから、疲れっ放しというわけにはいかなかった。
山本一太は中井拉致担当相に金賢姫来日の件で追及の予定だったようだが、朝刊記事を見て、急遽質問内容を新たに頭に加え、川端達夫文科省に答弁を求めたようにも見える。
議論を進めていく中で朝日新聞の記事だとわかった。「asahi.com」から参考引用し、予め大体の内容を紹介したいと思う。
《朝鮮学校も無償化へ調整 文科省方針、政権内になお異論》(asahi.com/2010年8月4日3時32分)
記事の言葉を殆んど使って説明すると、今年度から開始の「高校無償化」制度をめぐり文科省が教育の専門家による会議を設置して朝鮮学校に対する制度適用の可否を議論してきたが、「日本の高校に類する教育をしており、区別することなく助成すべきだ」との判断を固め、全国の朝鮮学校の除外措置を解除する方向で最終調整に入ったという内容。
除外解除措置となると、具体的には全国に10校ある朝鮮学校の高校段階(高級学校)の生徒約1900人が適用対象、4月に遡って私立高生と同じく年約12万円、低所得層は倍の約24万円を上限に助成を受けることになる。
〈ただし、朝鮮学校への適用は、中井洽・拉致問題担当相の反対論などでいったん見送られた経緯がある。今回も首相官邸には「政府全体でどう判断するかは別問題」と党内情勢を見極めた上で最終判断すべきだとの声が上がっている。〉と、記事題名で示した通りに〈政権内になお異論〉があることを伝えている。
反対論を受けて4月時点での適用は見送っ際、〈政務三役が「無償化は純粋に教育制度として考えるべきで、朝鮮学校の教育内容を検証して改めて判断する」として5月に専門家による会議を設置。〉、〈会議は委員名や日程などすべてが非公開で進められているが、関係者によると、事務局の文科省職員がすべての朝鮮学校を訪ね、カリキュラムや教科書などに関する資料の提供を受けた。授業風景や施設などもビデオで撮影し、検証材料にしたという。
会議では「朝鮮学校は社会に向けてさらに情報をオープンにすべきだ」との意見が出たといい、文科省は制度適用に合わせ、カリキュラムや財務情報、学校法人の役員名など一般の高校並みの情報開示を求める方向で検討している。仮に今回も適用方針に異論が出た場合は、文科省の政務三役は「専門家が検証した結論だ」として反論するとみられる。(青池学) 〉と最後を結んでいる。
では、山本一太の疲れる追及と同じく疲れる川端文科省の答弁。
山本一太、今朝気になるニュースが飛ぶ込んできたとして取り上げる。「タイトルは『朝鮮学校無償化方針』」
山本「今年始まった高校無償化制度。これ、文科省が全国の朝鮮学校の除外措置を解除する方向で最終調整に入ったと。しかもかなり細かく書いてあって、最初ですね、制度の可否を議論してきたが、日本の教育に類する教育をしており、区別することなく助成すべきだとの判断を固めたという報道、ありますけれども、これは文部科学大臣、先ず、お聞きしたいと思いますが、事実でしょうか」
川端文科相「朝鮮学校を高校無償化の対象にするかどうかは、国会を含めて大きな議論になりました。その論議も踏まえる中で、現在、そのことをご議論いただく専門の方々に対して、どういう判断基準が高校に類する課程を有する教育機関であるかというのは、どういう判断基準を持つのか。そしてそれをどう判定するのかということを今ご議論していただいております。
8月中を目途にお願いをしている途中でございます。今日報道をされておりますが、この件に関して文部科学省が調査をいたしましたけれども、取材は一切受けておりません。そして中身に関しても、全く関与するものでもありません。以上です」
山本「もう一回お聞きしますが、この報道は大臣、事実無根だと、そういうことでしょうか」
川端文科相「現在検討いただいている委員会に於いて、色んな各方面から、先程申し上げましたように、高校の課程に類する課程であるということを判断基準に判断方法をご議論いただいている途中でございます。一切その経過等々は体外的に明らかになっておりませんので、その基準からしてコメントする立場にありません」
山本「川端大臣の記者会見のメモがあるのですが、7月20日だったと思いますが、この検討は新学期まで想定しているとおっしゃっております。で、8月中に結論を出す方針を表明をしたということなんで、で、まあ、こういう話がそろそろ出てくるかなと、私は思っておりました。その中で川端大臣がおっしゃったのはですね、この専門家会議ですね、5月に設置した。一番熱心に研究してもらっており、専門家会議が判断することもあり得るとおっしゃっております。
但し、その後で、文部省の文部大臣の告示なので、最終的には私の責任でやると、述べてますが、これは国の責任で是非を判断すると、大臣の責任でやると、いうことでよろしいでしょうか。確認したいと思います」
川端文科相「お答えいたします。先程来申し上げておりますが、判断基準をどうするか、判断方法をどうするかをご議論いただいておりますが、今日突然のことですので、正確な報道文を持っておりませんけれども、最終的には文部科学大臣告示を以って決めることでありますので、手続き上私の責任で行うことになっております」
山本「この問題は恐らく、与党内でも色々議論があるいうことだと思いますね。これ文部大臣告示だから、文部大臣が最終的に判断して決めるということなんですけれども、中井拉致担当大臣、こういうことでよろしいんでしょうか、高校の無償化は」
中井「権限は文部大臣、あるいは文科省におありだろう、考えております。専門化委員会にどうして僕を呼んでくれくれないのか、疑問に思っております」
山本「文科大臣、専門家委員会に中井大臣を呼んでいただけないでしょうか」
川端文科相「この国会での議論も含めまして、高等学校に類すると看做せる教育機関であるかを判断するということのみで判断をしたいということでございますので、教育に関わる、特に教育制度、あるいは事に精通している先生方に、まさに専門家としての知見を求め、議論をいただくという会議でありますので、そういう人選をしております」
山本「今のは中井大臣が教育に精通していないと、呼ぶ価値はないとおっしゃっているようなもんだと思いますね、全く。私はですね、この件についてもう一つ、大臣、気になっていることがあるんですね。最初この朝鮮学校の論議が始まったときには、私が理解しているところでは、先ず、さっきおっしゃった非公開で、この審査基準というものを、今検討している、この専門家会議、この判定を先ず見て、8月くらいにですね、一回公開するんじゃないかと、それを以てまた別の組織が行う段取りだという、お話もあったんですけども、全くこの専門家会議の議論が外に出てきていません。全く出てこないまま、ある日文部科学大臣が今おっしゃったように、最終権限は私にありますから、これは無償化、朝鮮学校の無償化は決定いたしたと、こういう流れになるんでしょうか。そこちょっと教えていただきたいと思います」
川端文科相「お答えいたします。議論を静謐な環境で技術的、専門的にしっかりやって頂くという意味で結論が出れば、その結論は当然、結論は公開をいたします。それは判定基準と判定方法でございます。その判定方法に基づいて、診査をするということをやる段階では、当然、公開し、その審査結果を踏まえて、私の名前で告示をしたいと思っております」
山本「日本の教育に類する教育をしている、それがどうかというのが一つの大きな判断基準になるんだと思いますね。今日ちょっと、資料を、コピーを持ってきたんです。これはある人がですね、今、全国各地、何校の朝鮮学校、朝鮮高等学校で使っているのか分かりませんが、ここで使われている現代朝鮮歴史、歴史の教科書です。朝鮮高校で使われている歴史の教科書をこの方が翻訳をしたと、それを纏めて出版をされている、その一部のコピーを私は今日持ってきました。
訳が100%確かなのか、かなり正確だと思いますが、訳がどこまで確かなのかは兎も角としてですね、ここに書いてあることをちょっと大臣に聞いていただきたいんですね。今日私が質問していただく金賢姫元死刑囚に関する記述があるんです。この本の中にですね、現代朝鮮歴史、高校3、朝鮮高等学校教科書となっていますが、ここにですね、大韓航空機爆破事件のことが書いてあるんですね。
この中で囲みでこう書いてあります。(南朝鮮当局はこの事件を北朝鮮工作員金賢姫が引き起こしたとデッチ上げ、大々的な反共和騒動を繰り広げ、その女を第13代大統領選挙の前日に南朝鮮に移送することによって、盧泰愚当選に有利な環境を整えた。)
こういう教科書で歴史を勉強しているんですね。まだあります。これは高校2の方なんですけども、ここではですね、全世界のチェチェ思想の共和国人民の闘争という欄がありまして、そこにこう書いてあります。
『新たな段階に入った朝鮮革命の要求をお見抜きになった敬愛する金正日将軍様に於かれては1974年2月19日に全社会をチェチェ思想化することに関する綱領を御示しになさった』
さらにこう書いてあるんですね。『全社会をチェチェ思想化するということはチェチェ思想を指導する指針として革命を前進させ、チェチェ思想に基づいて社会主義社会を建設して完成させることを言う』
これは大臣、教科書の記述としては、極めて不適切だと思いますが、どうお考えでしょうか」
川端文科相「現在専門家会議に於いて、教科がどういう教科か、授業時間数、そして教科書授業の中身、含めて、先程来申し上げておりますように高校の課程に類する課程であると看做せるかどうかということを専門家にご議論をいただいているところでございますので、ご指摘の中身等々、私が今の立場でコメントする立場にはありません」
山本「あのね、大臣、今の立場で私がコメントすることができるんじゃないじゃないですよ。大臣がコメントしなきゃいけないことじゃないですか。だって、この無償化を決定するかってどうかっていうのは、日本の高校に類する教育をしているかどうかが判定基準なんですね。この朝日新聞に書いてあります。
会議は委員会とか日程はこれは非公開で進められていると。静かにしてください、質問中ですから。関係者によると、事務局の文科省の職員がすべての朝鮮学校を訪ね、カリキュラムや教科書などに関する資料の提供を受けたと。これ、きちっとチェックしているということなんですが。大臣はこの朝鮮高校のカリキュラム、今言った歴史の教科書も含めてですね、きちっとご自分で、これをお読みになっているんでしょうか。チェックしているんでしょうか。伺いたいと思います」
川端文科相「現在専門家の委員会がご議論いただき調査していただいている、そのサポートを文科省の職員がすることは当然でありますが、私の立場では最終的な結論を聞かせていただきたいというふうに思っております」
山本「大臣が最終的に判断されるとおっしゃったじゃないですか、大臣告示なんだから。大臣が判断されるとおっしゃったんじゃないですか。その大臣、こういう政策決めるときにですね、その朝鮮高校のカリキュラムが本当に、本当に、日本の高校の基準になっているかどうか、それをきちっと分からないで、どうやって判断されるんでしょうか」
川端文科相「高校の無償化の対象とするために当然ながら日本の高校、これは対象でございます。それ以外に高校の課程に類する課程と看做されるということで、一つは専修学校の高校課程を認定をいたしました。これは専修学校の高等課程というものの枠にはまるものはすべて適用いたしました。
それ以外に、いわゆる外国人学校が高校の課程に類するのではないかという思し召されるところがございます。それで一つは、その国との外交ルートを通じてその本国が自分の国では高校と日本で言える高校のレベルであるかということを言った、保証した高校は認める学校は認める。
もう一つは、いわゆる本国を持たない、いわゆるインターナショナルスクールというものがあります。インターナショナルスクールはインターナショナルスクールを認定する国際機関がいくつかございます。その機関が認めたものは高校と認めるという基準を決めました。
この二つのこと以外に、現にその学校を出て大学に入学している者がいる機関として朝鮮学校が残りました。この二つは高校学校に類するかどうかを客観的に判断することができないので、今の仕組みでは、そういう意味で、どういう中身、どういう基準で認定し、どういう判断方法を持てばいいかと、専門的にご議論をいただいている。それを踏まえて、それが決められた仕組みで、決めることによって、先程申し上げました前二者と同様な扱いをして、高校と認定するということで、最終的に告示をするという方法を採るということでございますので、ご理解をいただきたいと思います」
山本「あの冗長に喋っておりますけど、何をおっしゃっているのか全く分かりません。だって、大臣が最終的責任者としてこれを許可するわけでしょ?これと決めるわけでしょ?その前にきちっと、例えばここは朝鮮高校ですけども、その歴史教科書が高校の授業としてふさわしいがどうかっていう判断をされるわけですよね、大臣。その決定をする前にきちっと、この高校のカリキュラムを、大臣、きちっと読んでいただけますか。そういうことを約束していただきたいと思います」
川端文科相「繰返しみたいになりますけれども、本国、外国人学校で本国を持つ学校は、その本国に確認し、問い合わせをする。インターナショナルスクールは国際的なインターナショナルスクールの評価機関に任せる。そういう意味で今回は、もう一つの、方法として国際機関の、失礼、専門委員会の評価方法に任せるということでございますので、それを手続き上取るということを申す上げてるのでございます」
山本「全く答えになっておりません。全く政治主導働いておりません。よく分かりました。この点についてはあの、大臣ですね、この教科書、他にも、いわゆる金正日将軍様を礼賛している部分が一杯あります。私は別に朝鮮高校で学んでいる高校生の方々、勿論彼らに何の罪もありません。彼らを排除するって言ってるんじゃないんです。
でも、この指針、こんなキム、えー、えー、元工作員のですね、爆破事件をデッチ上げだと言い、拉致を極大化するなんてことを書く、そういう教科書をつくる、こういう歴史教科書で教育している学校なんですよ。で、これは申し上げるまでもないんですけども、北朝鮮は日本の外交安全保障にとって最大の脅威なんです。200あるか300あるか分かりませんけれども、日本全土を射程に収めるノドンミサイルが配備されている。核実験を2回強行している。しかも拉致も彼らがやってるんです。独裁国家なんです。その、あの、独裁者を礼賛する教科書を使っている高校に何で国民の血税を入れなきゃいけないのか。ここに疑義があるってことなんですけども、それについて菅総理、どう思われますか」
菅首相「まあ、今、あの、文科大臣がですね、この問題についてはかなり、丁寧な手続きを持って、判断をするということを言われております。私はその文科大臣の、そういう丁寧な手続きに添った、ある意味の判断をですね、お聞きしたいと、最終的にはですね、そう思っております」
山本「まあ、これ以上やっても文科大臣から同じような官僚答弁みないなものしか返ってこないと思うんで、あの、最後にもう一つだけ文科大臣に申し上げておきます。これ本当に密室で議論が進んでいるんですね。全くどういう議論が行われているかわかりません。これまったくパブリックコメントにも付していません。このままある日、突然、殆んど議論されずに文部科学大臣が、やあ、この朝鮮学校の無償化は決定しましたと、私の責任で決定しましたとおっしゃったら、これは誰が会議で何を発言されて、どうしてそうなったのか、そこは徹底的に国会の議論を通じて追及させていただきますので、そのことをしっかり頭に置いて、私はそのような判断をしていただきたいと思います。もう答弁は結構でございます」
(金賢姫来日問題に移る。)
高校無償化の朝鮮学校排除、日本政府、日本人の度量が試される(2)に続く
川端文科相は自分でも、「8月中を目途にお願いをしている途中でございます」と言っているのだから、新聞には「無償化へ調整」と出ていたとしても、8月末までまだ日数がある、あくまでも結論に至っていない調整段階であって、結論が出次第、議論の全経緯を公開、その判断を尊重して告示に持っていく予定だから、暫くお待ちくださいと言えば片付くものを、専門家会議の判断基準だ何だのとくどいまでに繰返して、誰れをも疲れさせる議論を延々と続ける。
山本太一も朝鮮高等学校の現代歴史教科書を持ち出して、歴史の捏造と金正日将軍様礼賛を根拠に「日本の高校に類する教育」をしていないと非難しているが、朝鮮高等学校の生徒と言えども、その殆んどは日本の社会に巣立ち、日本の社会で生活していくはずである。このことを前提とした教育もなければ、日本の社会では満足に生活できないことになる。
当然日本の高校と同様、日本の社会で生活するに役立つ教育も行われているはずで、すべての授業が金正日礼賛と北朝鮮肯定の歴史の捏造で埋まっているわけではあるまい。
それを山本一太は単細胞だからなのか、朝鮮高等学校のすべての授業が偏った教育ばかりをしているとの前提に立った話となっている。
例え朝鮮高校の授業の殆んどが金正日思想注入一辺倒の偏った教育であったとしても、学生の受ける情報は学校で受け取る情報ばかりではなく、テレビや漫画、映画(北朝鮮の映画は殆んど上映されていないようだが、韓国映画は映画館は勿論、CDとかで簡単に見ることができる。)雑誌、その他のメディア、いたなら日本人の友人からの情報等々を合わせた総量の方が量的には圧倒的であるはずで、一方的に歴史授業からの情報にのみ毒されていると取るのは合理的判断に欠けるのではないのか。
問題はそういった教育を施す側ではなく、受ける側の生徒の問題であるはずだ。だが、山本一太は一方的に教育を施す側を問題としている。
生徒はサッカーのテレビも見るだろうし、プロ野球、大相撲のテレビを見る朝鮮高校の生徒もいるはずである。このような圧倒的な情報量と比較した場合、戦前の日本のように国体思想に囲まれ、生活の細部にまで軍国主義に干渉されていたわけではないから、学校で授業として受ける金正日礼賛の情報、あるいはチェチェ思想に基づいた世界革命とかの情報は僅かな情報であろうし、学校を離れれば、その情報から解放されると受け止める生徒もいるだろうから、両者の情報の相対化作用が働かないことはないはずである。
また相対化作用を働かせなければ、日本の社会では極端に生きにくくなるはずである。
例え情報の相対化作用、文化の相対化作用を働かすだけの能力がなく、金正日に忠実一辺倒の頭がコチコチに固くなった原理主義的・狂信的な人間として社会に出ていくとするなら、既に何らかの問題が発生しているはずである。想定し得ることは北朝鮮を標的として経済制裁を発する日本の政治家に対するテロが容易に考えることができるが、未だに一度も起こっていない。
テロとまでいかなくても、金正日が正しいことを証明する何らかの事件を起こしてよさそうなものだが、それも起きた様子はない。
山本一太は一部の授業内容を取り上げて過剰反応しているだけのことではないのか。
単細胞山本一太は言っている。「私は別に朝鮮高校で学んでいる高校生の方々、勿論彼らに何の罪もありません。彼らを排除するって言ってるんじゃないんです」――
だが、「北朝鮮は日本の外交安全保障にとって最大の脅威なんです。200あるか300あるか分かりませんけれども、日本全土を射程に収めるノドンミサイルが配備されている。核実験を2回強行している。しかも拉致も彼らがやってるんです。独裁国家なんです。その、あの、独裁者を礼賛する教科書を使っている高校に何で国民の血税を入れなきゃいけないのか」と言って、北朝鮮国家の非道に対する懲罰を「何の罪もない」北朝鮮高校生に着せようとしている。
そして結果として、高校無償化の対象から「彼らを排除」しようとキーキー声で躍起となっている。
この矛盾に山本一太は単細胞だからだろう、一切気づかない。
このことに関して中井拉致担当相の発言を取り上げて、2010年2月28日付当ブログ記事――《高校無償化の朝鮮学校排除で終わらない日本社会への影響》に次のように書いた。
〈中井「拉致問題に絡んで制裁措置をしている国の国民だからこれは(無償化は)どうなんだろうと、昨年12月に川端達夫文部科学相に強く申し上げた」
要するに拉致問題で北朝鮮に制裁措置を行っている最中だから、その国の国民が通う朝鮮学校に対しても高校無償化の対象から排除する制裁を施すべきだと主張したと言うことである。
親が殺人犯だからと言って、大人たちが自分の子どもに殺人犯の子どもとは付き合うなと殺人犯に対する制裁をその子どもへの制裁にまで広げる、あるいは殺人犯に対する制裁をその子どもへの制裁で代償させることと似ている。国家公安委員長を務めるだけのことはある。〉――
山本一太が意図している朝鮮高等学校生徒に対する「国民の血税を入れなきゃいけないのか」は、まさしく殺人犯の「何の罪」もない子どもに対する仕打ちと同列の考えであろう。
また次のようにも書いた。
朝鮮高校で北朝鮮独裁思想絶対肯定の思想を受けていたとしても、〈朝鮮学校卒業生を日本社会は順次受け入れていく。中にいるかもしれないが、すべてが卒業後北朝鮮に渡るわけではない。生活の基盤が日本にあるだろうから。彼らが朝鮮学校で植えつけられた反日意識が日本社会の中で凝り固まらせたまま推移するのか、あるいは善悪いずれかの方向へ変化を見せるのかは日本社会の受け入れようにかかっているはずである。
彼らに生き方を教える教師が朝鮮学校の金正日の意を体していたかもしれないた教師から日本社会の構成員たる日本人に変わるからだ。〉
朝鮮高等学校の生徒が授業によって日本及び日本人に対して不信、もしくは敵意を持つに至ったとしても、無償化対象から外すことは不信と敵意を間違っていない、正しいとことだと確信させる根拠となる。逆に無償化対象とすることによって、不信と敵意を和らげる材料の一つとなる可能性を持たせるに至る。不信と敵意を氷解させない者もいるだろうが、無償化対象化が不信と敵意を和らげる材料の一つとなる可能性を考えた場合、彼らを受入れる日本社会にとって何ら役に立たないことがあるだろうか。
また上記ブログには「留美的親美、留日的反日」(アメリカに留学した者は親米派になり、日本に留学した者は反日派になる)という一種の格言となっている事例を例に挙げて、次のようにも書いた。
〈国交がないことを理由としようと、授業内容が反日教育となっていることを理由としようと、高校無償化の朝鮮学校排除は朝鮮学校生や彼らの親や近親者をして、なお一層反日化させ、そういった反日化した者を日本社会は受入れ、抱えることになる。そういった状況に立たされたとき、日本社会が反日化した者たちの反日感情を「留美的親美」の構図を取って和らげるに力となるか、あるいは「留日的反日」の構造のままに悪化の一途を辿らせるか、そこに住む日本人が総体的な教師となって立ち向かう姿勢が決定要因となるが、いわば彼らをどう受け入れるかに影響を受けることになるが、鳩山政府の高校無償化朝鮮学校排除自体が日本社会全体とそこに住む日本人全体に支配的な影響を与えることになるだろうから、在日朝鮮人の高校無償化排除を機会になお悪化させた場合の対日観を良い方向に持っていくことは困難なものにならないだろうか。
勿論、同じ社会に住んで、彼らの反日感情は日本人にも何らかの形で撥ね返ってくることになる。
いわば高校無償化の対象から排除した、ハイ、それで終わりですだけでは済まない日本社会への影響が生じるだろうということである。〉
高校無償化排除はそこまで考えなければならないということを書いた。
日本人の朝鮮高等学校無償化除外か、無償化対象化かの精神と似た出来事がアメリカのニューヨークでも起きている。《モスクの建設 議論巻き起こる》(NHK/10年8月4日 7時59分)
イスラム教徒の市民団体が同時多発テロ事件で崩壊した世界貿易センタービルの跡地からおよそ150メートルの場所に古い建物を取り壊して、「モスク」を建設しようと計画。テロ事件の犠牲者の遺族などが強く反発。
3日、建設予定地にある古い建物の取り壊しを認めるかどうかを審議するニューヨーク市の委員会が開かれ、多数の市民が傍聴に訪れた。
この委員会は朝鮮高等学校の無償化の是非を審査する専門家委員会に当たるだろう。
反対派住民「アメリカ人およそ3000人がテロで命を落とした。モスクの建設は、こうした犠牲者に対する冒とくだ」
結論は取り壊しが認められ、建設が可能となる。
市内に住むイスラム教徒「テロではイスラム教徒も犠牲になっている。今回の決定は信仰の自由を認めるアメリカの精神に沿う判断でよかった」
記事は次のように結んでいる。〈今回の問題は、同時多発テロ事件から9年ちかくがたっても癒えることのないニューヨーク市民の心の傷と、信仰の自由が絡む微妙な問題だけに、アメリカの有力メディアがこぞって伝えるなど、大きな議論が巻き起こっています。〉――
イスラム教及びイスラム教徒に対する不信と反撥と信仰の自由がぶつかり、イスラム教徒に対する不信と反撥に信仰の自由の度量が優った。
《同時テロ跡地のモスク建設にゴーサイン 計画始動へ》( CNN/2010.08.04 13:11)は、〈2008年大統領選で共和党副大統領候補だったペイリン前アラスカ州知事はミニブログのツイッターで、ここにモスクを建てることは「不必要な挑発」であり、癒しの妨げになると呼び掛けた。一方、ブルームバーグ市長らは支持を表明していた。 〉と書いている。
このことを朝鮮高校の無償化対象除外になぞらえるなら、ペイリン前アラスカ州知事はさしずめ日本の山本一太自民党議員といったところだろう。
朝鮮高校生をいずれかは日本社会が受入れる。いや、既に雛の状態で日本社会は既に受け入れている。それを異質な存在として雛の段階で排除することで、恨みや軽蔑を誘導する精神的な打撃とし、日本社会に社会人として巣立ってからも精神的後遺症とさせるか、高校の授業とは別に一個の個人、日本社会で生活を共にする将来的な生活者と考えて受入れるか、日本政府、日本人の度量が試されているのではないだろうか。