――首相の代表選に向けた実行力演出の「視察」ラッシュと「指示」ラッシュの予感――
《毎日新聞世論調査:「首相にふさわしい」 菅氏が78%》(毎日jp/2010年8月29日 21時53分)
8月28、29日実施の電話世論調査。前回調査は7月24、25日。代表選関連の質問と回答に限って参考引用――
◆菅内閣を支持しますか。
支持する 48(前回41)
支持しない 35(前回40)
関心がない 16(前回19)
◇支持する理由
民主党の首相だから 24(前回19)
指導力に期待できる 9(前回9)
政策に期待できる 8(前回12)
政治のあり方が変わりそうだから 55(前回59)
◇支持しない理由
民主党の首相だから 6(前回8)
指導力に期待できない 29(前回19)
政策に期待できない 32(前回41)
政治のあり方が変わりそうにない 31(前回32)
◆菅首相が民主党代表に再選され、首相を続けた方がいいと思いますか。
続けた方がいい 72
交代した方がいい 25
◇続投支持理由
菅首相の政権運営に期待しているから 10
菅首相の人柄がいい 5
首相をたびたび交代すべきではないから 83
◇交代させたい理由
菅首相の政権運営に期待できないから 56
菅首相では民主党内がまとまらないから 31
参院選敗北の責任を取るべきだから 9
◆菅氏と小沢氏のどちらが首相にふさわしいと思いますか。
菅直人 78
小沢一郎 17
◆政府や民主党内で小沢氏の影響力が再び強くなることについて、好ましいと思いますか、思いませんか。
好ましい 14
好ましくない 83
◆自民党中心の政権から民主党中心の政権に交代し、9月16日で1年を迎えます。政権交代をして良かったと思いますか、思いませんか。
良かった 62
悪かった 32 (以上参考引用)
一応、このまま民主党政権が持続することは望んでいて、菅内閣に対する支持率も不支持の35%に対して前回調査より7ポイント上昇して48%まで回復している。
だが、「支持する理由」は、最も求められるべき政治能力であるべきはずの「指導力に期待できる」が前回と同じ9ポイント、「政策に期待できる」がさらに悪いことに前回から3ポイント辛い採点となって、8ポイントの最低評価。「政治のあり方が変わりそうだから」とは、端的に言うと金権政治からの脱却ということだと思うが、55ポイント。相変わらず積極的支持とはなっていない。
不支持理由は「指導力に期待できない」が前回調査よりも10ポイント上昇の29ポイント。「政策にできない」が前回調査よりも9ポイント減ではあるものの、32ポイントもある。不支持理由に於ける「政治のあり方が変わりそうにない」の31ポイントは民主党政治そのものに対する拒絶反応だろうか。
「続投支持理由」が、「首相をたびたび交代すべきではないから」が83ポイントの圧倒的多数を占めている。要するに首相は菅直人と言う政治家でなくても、小沢でなければ誰でもいいということである。たまたま代わったばかりの首相が菅直人と言う政治家だったから、指導力に期待できなかろうが、政策に期待が持てなかろうが、もっと続けさせるべきだと、ただそれだけの理由で続投を望んでいる。
能力・資質を買った続投支持ではなく、「たびたび交代すべきではない」点を考慮した続投支持というわけである。
能力・資質を買った続投支持の78ポイントであるなら、内閣支持率はほぼ同等の数値を占めていいはずだが、それが48ポイントにとどまって78ポイントに遥か届いていないところにも、支持理由の実態を見ることができる。
読売新聞社が8月28~29日に行った電話緊急全国世論調査も似た傾向を示している。
民主党代表選(9月1日告示、14日投開票)で、菅首相と小沢一郎前幹事長が対決する見通しとなったことを受け、読売新聞社は28~29日、電話による緊急全国世論調査を実施した。前回調査は8月6~8日実施。
《世論の菅氏支持、小沢氏への根強い批判が追い風》(YOMIURI ONLINE/2010年8月29日23時00分)
記事は冒頭、〈民主党代表選に関する読売新聞社の緊急全国世論調査では、菅首相への支持が、積極的な評価ではなく、首相が短期間で交代することへの懸念や、小沢一郎前幹事長に対する根強い批判に支えられていることがわかった。〉と書いている。
◇菅内閣支持率 54%(前回調査44%)
不支持率 35%(前回調査46%)
◇次の代表に誰がふさわしいか
菅直人 67%
小沢一郎 14%
◇菅直人が民主党代表にふさわしいと思う理由
首相が短期間に代わるのは良くない 65%
小沢氏と距離を置いている 27%
政策に期待できる 4%
指導力がある 1%
◇小沢一郎が民主党代表にふさわしいと思う理由
指導力がある 40%
政治経験が豊かだ 29%
政策に期待できる 15%
政権が安定しそうだ 12%(以上)
「次の代表に誰がふさわしいか」の菅直人「67%」対小沢一郎「14%」の中身は、菅「消極的支持」対小沢「積極的支持」が正体であることを世論調査は示している。
菅首相本人も「指導力がない」、「政策に期待が持てない」の国民評価を気にしているのだろう、ここのところ工場や施設を次々と視察し、関係大臣に政策の指示を矢継ぎ早に出すパターンを取り入れ、マスコミを通じて国民の目に届ける露出形態で指導力・実行力あるところを、あるいは政策が期待持てることを演出すべく動き始めた。
小沢前幹事長が代表選立候補表明したのは8月6日。
8月28日の土曜日、北九州市のLED照明製造工場とリチウムイオン電池素材工場を視察、企業の国内立地を促し地方の雇用確保を図る「日本国内投資促進プログラム」を10~11月をめどに策定するよう直嶋正行経済産業相らに指示。(毎日jp)
昨8月29日昼、兵庫県姫路市の姫路更生保護活動サポートセンターを視察、千葉法相に対して保護司制度の充実などを指示。(MSN産経)
今後ともこの土日休日の実行力演出は投票日に向けて「視察」ラッシュ、「指示」ラッシュとなって現れるのではないだろか。
だが、菅首相が実行力、指導力あることを演出するのは結構毛だらけ猫灰だらけだが、菅首相が指示する政策に関して指示を受ける関係閣僚は指示を受けるまでその政策に関してノータッチであることを逆に示すことになる。悪く言うと、指示が出たその政策に関して関係閣僚ばかりか、関係省庁まで無為無策の状態にあったことになる。
そんなことはないだろうから、菅首相を中心に閣僚たちが顔を揃えて、前以て準備してある政策の一つを下敷きのネタにして次の視察先を決め、マスコミ記者とカメラが待ち構える前で誰それに指示を出すシナリオを描いて、主人公の菅首相がシナリオが視察先とした舞台に立ち、シナリオに書いてあるとおりに指示を出す実行力、指導力演出の一連のドラマを演じているといったところだろう。
菅首相自身が指導力、実行力がないばっかりにさもあるように見せかけなければならない閣僚たちの苦心惨憺する姿だけが浮かぶ。