民主党参院選敗因、それぞれの派閥・立場に応じた利害が決定する

2010-07-16 05:28:32 | Weblog

 このことはごく当たり前のことだが、派閥、その他の自己が置かれている立場に応じて一定の共通した利害の支配を受け、それとの対応で共通した態度を半ば強制されることから起きる。

 小沢前幹事長は選挙中遊説先で、「無駄を省けば財源はあると私はずっと言い続けてきた」(毎日jp)と発言し、菅首相の消費税発言を一貫して批判し続けた。そして投票の結果、民主党が大敗を喫した。

 当然小沢グループに属する議員や小沢支持の地方の党関係者、あるいは小沢前幹事長に近い立場の議員その他は敗因を菅首相の消費税発言とし、その責任を追及する立場を取る。

 逆に菅首相のグループやそれに近い立場の議員、あるいは菅首相を支持する立場のその他の反小沢グループは敗因を消費税に置いた場合、直接菅首相の責任に直結し、逆に小沢前幹事長に軍配を上げることになるため、それを避けたい利害と反小沢という立場上の利害からも、敗因として編み出したのが、菅首相が直接主導したわけではないゆえに菅首相に責任の及ばない、民主党のこれまでの10ヶ月の政権運営のまずさに置いた。

 これは全体責任と言うことになって、責任を分散する利点がある上に、これまでの10ヶ月の政権運営には小沢は党幹事長として深くかかわってきたことから、より多くの責任があるとすることができる利点もある。

 逆に小沢前幹事長側は受入れ難い責任論となる。

 それぞれの派閥・立場に応じた敗因の決定構図から、逆に敗因を消費税発言に置く議員、その他は小沢グループかそれに近い立場の議員、その他であり、民主党のこれまでの政権運営の質に置く議員、その他は現在の執行部に所属する菅グループやその他の反小沢グループだと炙り出し可能となる。

 民主党の枝野幹事長、安住選挙対策委員長が参議院選挙敗因の総括を目的に7月14日から党の都道府県連代表と相次いで会談している。当然そこでは地方側からどちらかの利害・立場に立った敗因に関わる発言が展開される。

 民主党執行部は地方からの敗因を集約、それを分析して、今月開催予定の両院議員総会で選挙の総括を行うことにしているという。

 《“政権運営への批判が原因”》NHK/10年7月14日 12時33分)

 初日の14日の会談相手は和歌山県連代表の岸本衆議院議員、その他。

 岸本議員「菅総理大臣の消費税をめぐる発言があったから負けたというより、政権交代以降の政権運営に対する批判や、もっとやってくれるのではないかということに対する期待外れが原因で、根が深い問題だ」――

 会談後の記者会見――

 岸本議員「私も含めてすべての民主党の議員が頑張ってだめだったわけだから、全員に責任があり、個別の責任については考えていない」――

 責任は菅首相にはなく、全員に責任があると、責任の分散を図っている。記事には書いてなくても、現執行部で主流派を形成しているグループに所属しているか、それに近い立場の議員だと分かる。決して小沢グループかそれに近い立場の議員であるはずはない。

 枝野幹事長、安住選挙対策委員長と地方県連代表らとの会談時間は、「NHK」記事には書いてなかったが、約20分ずつで、初日の14日の党本部での会談は石川、栃木など10県連代表と個別に行われたと、《<スコープ>県連『責任取らぬのおかしい』 民主執行部に批判噴出》東京新聞/2010年7月15日)には書いてある。

 武内則男参院議員(高知県連代表)「消費税について多くの説明を割かざるを得ず、非常に苦しい戦いだった」――

 間接的な菅首相批判となっていることから、少なくとも現執行部に距離を置く立場を取っていることが分かる。

 答えた安住選対委員長の発言は逆の立場を取っている。

 安住「新体制が発足したばかりで、統一的な事前準備がない中で選挙戦に突入したという反省がある」

 党の側から執行部に所属しているからだろう、消費税について触れないまま、そこに責任を置かない言葉となっている。
 
 だが、選挙を戦うのは初めてではない。政権獲得後の国政選挙は初めてだとしても、野党時代、多くの選挙を戦っている。共通点はあるはずだ。

 その上、今回の参議院選挙は民主党単独の過半数を獲得して政権基盤を強固にし、政権運営を円滑に進めることが最大の目的の大事な選挙だったはずである。当然、「統一的な事前準備がない中で選挙戦に突入した」という言い訳は成り立たない。

 逆に「統一的な事前準備がない中で選挙戦に突入した」責任を現執行部に問わなければならなくなる。

 どれだけ高い代償についたか、深刻に受け止めることができていたなら、「統一的な事前準備がない中で選挙戦に突入した」などと言ってはいられないことに気づくだろう。

 大体が、では、なぜ通常国会を早々に切り上げて、参議院選を急いだのかということになる。言い訳にならないことが言い訳として罷り通る。

 これも利害・立場がなせる言い訳であろう。
 
 記事は、「小沢氏に近い」とか、「小沢氏側近の」とか、所属・立場を明らかにして議員を登場させてもいる。

 石川県連代表で小沢氏に近い一川保夫参院議員の会談後の記者会見。マスコミ各社の記者が会談を終えて出てくる県連代表の議員を待ち構えているわけである。ご苦労様。

 一川保夫「(執行部が)責任を感じないのが本来おかしい。別の機会に当然けじめがつくだろう」

 小沢氏側近の松木謙公衆院議員の14日のテレビ番組でくちにした、9月の代表選後に党役員人事を行う首相の方針についての発言――

 松木謙公「9月に代えればいいという話はナンセンス。責任を取るなら取った方がいい」

 菅代表は参院選敗北の責任を取って直ちに辞任すべしの立場を取っている。当然、どの利害・どの立場からの発言か一目瞭然である。

 代表選について。

 松木謙公「しっかり戦いたい。小沢氏にぜひ出てもらいたい」

 両者共、党内に於ける自身の立場を反映させた共通した利害からの発言であろう。

 記事はこの会談を、〈聴取は15日以降も続け、数日間で47都道府県連すべての意見を聞く予定。参院選を総括するため月末にも開く両院議員総会で、執行部批判が噴出しないよう、あらかじめ地方の声に謙虚に耳を傾ける姿勢を示して「ガス抜き」する狙いがある。〉と解説しているが、「ガス抜き」で終わるかどうか、紛糾しない保証はない。最近の言葉を使って言うと、“マスコミ的には”、紛糾した方が商売はやりやすいはずだ。それがマスコミの利害というものであろう。

 松木議員が小沢前幹事長の代表選出馬期待論を口にしているが、《「決戦9月代表選」 沢氏擁立論も 院議員総会30日開催へ》asahi.com/2010.7.15 06:40)はより詳しくその発言を伝えている。

 松木謙公「小沢氏に出てもらいたい。政策を重んじる人なので、それを武器に首相になり、(政策を)実現してほしい」

 そしてこの発言に対する記事解説。

 〈小沢氏に近い松木謙公国対筆頭副委員長は14日の民放BS番組収録で、露骨な小沢待望論をぶち上げた。〉――

 自分たちの利害を前面に押し出したというわけである。

 前のブログで、〈消費税引き上げといったことに対する国民の意識を問う世論調査の場合、生活に直接影響することだから、年収区分まで問うべきではないだろうか。〉と書いたが、国民が年収区分に応じた一定の共通した利害に支配された態度を税に対して取るように、政治家にしても政治的立場・政策的立場に応じてそれぞれ利害を異にし、その支配を受けて態度・姿勢も異にする。

 そしてそれぞれが自らを正しいとする。いわば、利害が正しいか正しくないかの決定要素となる。だから、人間世界は利害の戦いとなる。

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