麻生首相が2月22日に青森市のホテル青森で開催された自民党県連・政経セミナーで講演を行い、「民主党に政権を任せることができるのか」と一席ぶったという。
できるかどうかの答は誰が行っても同じ内容になると思う。似た答でも、私自身の答は満足な内容を取るかどうか分からないが、試してみたいと思う。
講演の全文を2月22日の東奥日報電子版(≪麻生太郎首相の講演全文/自民党県連の政経セミナー≫)が伝えている。参考にしたい方はアクセスしてみてください。
東奥日報は同じページで「講演の動画」ページにリンクをつけている。動画は編集してあって省略箇所があり、「講演全文」通りとはなっていない。「講演全文」と動画両方から、「民主党に政権を任せることができるのか」に答える必要箇所のみを参考にしてみた。
我が日本の麻生太郎首相「慌しく仕事をさせていただいておりますけれども、あのー、マスコミに相変わらず非難を受けて、色々ご心配をかけておるところでありますけれども、我々としては、反省をしなければならないところも、私自身にはあると思いますが、誠心誠意やっていかなければ申し訳なければ (ママ)、ならんと思いますが、私共は今国民にとって最大の関心は何か、と言えば、私はたった一言、『景気』だと思っています。
これらの予算というものを早期に成立させ、実行するというのは、今景気にとりましては最大の関心なんだと思っております。
最も景気をよくする、最も手っ取り早い方法は、今お願いをしております予算を成立させて、実行することです(ジェスチャーよろしく強調する)。それに優ること、全くと言っていい程、ないと思っていますが、我々は是非申し上げたいのは、よくアメリカの方で民主党が『チェンジ』と言って、成功したもんだから、こっちも『チェンジ』と言っているような人がいますけれども、果して民主党に任せらせることが(ママ)できますかね。
こういった政党に政権を渡したら、何となく不安にと思えている方も随分といらっしゃるじゃありませんか。日本という国をこの段階に於いて、無責任な混乱の中に放り出すということは、甚だ、それこそ無責任なようなことだと、私はそう思います。
私は少なくともアメリカで大統領が代わった。それによって直ちに予算を組み上げていった。今間違いなく実行に移されております。少なくとも日本では予算が成立したんですよ。成立したにも関わらず、それを実行させないと、言って、関連法案を通そうとしない、いうのが、我が方の民主党です。よーく分からない、そこは。 ――(中略)――」
東奥日報「講演全文」を参考に説明すると、「教育基本法の話でも、また、今のソマリアの話(海賊のこと)1つにしてもちゃんとまとまって答えてくれない。そいういった所は、われわれにとってあのいい加減な教科書をわれわれは教育基本法を変えてあのいいかげんな教科書を変えました。覚えていない人もいるかもしれませんが、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒の写真、こちらは犬と子供と一緒の写真で、両方家族ですと。うまいように書いてあるように見えるでしょう。犬と子供もおじいちゃんとおばあちゃんも一緒の扱い。おばあちゃんは犬と同じか、こんなふざけた話がどこにあるのか、と言って当時やりあったことがあります。相手はご存じ日教組です。私はそういうところとは断固戦っていく。そういった教育というのは根幹でしょうが。」と笑い声がぱらぱらと起きたものの、お追従笑いなのだろう、殆どの聴衆にはきっと何を言っているのかさっぱり意味不明だったと思うのだが、教科書を例に挙げて日教組を批判し、「これに支えられている」と返す刀で民主党を批判。続けて「動画」から。
「私はそういった物事を、私共は断固戦っていく。そういった教育、根幹ですよ、日本という国の。
こういったものをきちんとやりつける政党、これが自由民主党なんだと、私はそう思っている。従って、今回色々と経済政策だけの話をさせていただきましたけども、私は、日本という国を、この段階に於いて、無責任な、混乱の中に放り出すということは、甚だ、それこそ無責任だと、私はそう思います(拍手)。(よく聞き取れなかったが、次のように言ったように聞こえた。)一応ここは自由民主党は、ここはまなじりを決して戦わなければならない。我々が戦う相手は不安をつくり出す、そういう可能性を秘めている政党と戦わなければならない。――」(動画終了)
民主党に政権を任せることができない理由を動画では「関連法案を通そうとしない」点のみを挙げているが、その他は省略されている。「講演全文」から拾ってみると。――
「次に経済対策というのをやっておりますが、財源というものの裏打ちがないと何となく心配になりませんか。当たり前だと思います。お父さんそんなにばんばん使って、誰からお金が出てくるのと。奥さんもみんな心配になるのは当たり前です。いろいろ耳障りのよいことをいうが、高速道路は自民党は1000円だが、こちら(民主党)はタダ、全部タダだと。そうすると、高速道路の収入はだいたい2兆円ぐらいあるのですが、2兆円の収入が入ってこなくなる。そうすると補修するのは、だれが補修するのですか。また、今借金がありますが、その借金の返済は誰がするのですか、と言ったら、高速道路に乗っていないほかの方がそれを払うことになる。それは、おかしくないですか、というのがわれわれの正直なところです。」――
「民主党に政権を任せることができるのか」の答は既に世論が出していることを多くが根拠とすると思うが、いくつかの世論調査をここに挙げてみる。
朝日新聞社が2月19日夕から20日夜にかけて実施した緊急の全国世論調査。
「どちらが首相にふさわしいか」
麻生首相――19%(前回20%)
小沢代表――45%(前回39%)
毎日新聞が2月21、22両日に行った世論調査。
「どちらが首相にふさわしいか」
麻生首相――8%(前回16%)
小沢代表――25%(前回と横ばい)
NHKが2月月6日から3日間行った世論調査。
「望ましい政権の枠組み」
民主党が中心となる連立政権――25%
自民党と民主党による大連立政権――23%、
自民党が中心となる連立政権――19%
共同通信社が2月17、18両日に実施した全国緊急電話世論調査。
「望ましい政権の枠組み」
民主党中心――53・4%、
自民党中心――28・1%
どの世論調査でも、有権者は麻生の「民主党に政権を任せることができるのか」の問いに「任せることができる」と答えている。これ程雄弁な答はないと思うのだが、この雄弁な答に逆らって、麻生は「民主党に政権を任せることができるのか」と虚しくもなお叫び声を上げている。
麻生は「日本では予算が成立したんですよ。成立したにも関わらず、それを実行させない」と民主党の政局対応を批判しているが、これは分かりきっていたことで、安部、福田の前例が示していたにも関わらず、そこから何も学ぶことができなかった麻生自身の責任であろう。学ぶだけの知恵も勇気もなかった。
いわば民主党が予算を「実行させない」は自分から招いた災厄でしかない。
民主党の参院選勝利、与野党逆転状況は野党民主党にとっては政権獲得のまたとないチャンスなのである。そのまたとないチャンスを生かすために、いや失わないために有効利用できる方策、それが政局であろうと最大限に活用し、政権獲得を何が何でも実現させるべく画策する。
それが政権交代に近づいた野党のあるべき姿でもある。そのあるべき姿を安倍内閣・福田内閣と見てきて、両内閣とも扱いに難渋して、その果てに両内閣とも1年そこそこで政権を投げださざるを得なかった。
このことはブログで何回か書いていることだが、その姿を見てきていながら、麻生内閣は両内閣と同じ轍を踏み、「実行させない」と批判している。
同じ轍を踏んでいるのだから、批判の形を取っているが、泣き言でしかない。
麻生だけではなく、安倍にしても福田にしても、参議院与野党逆転状況を受けたからには、総選挙して、主たる衆議院では民意は我にありとするか、選挙に敗れたなら、民意に従って野党に政権を任せるかの選択肢しかなかったにも関わらず、敗北を恐れて、ニッチモサッチもいかない自縄自縛状態を自ら招き込んでしまった。
安倍、福田の採った道を麻生も選んだのである。首相の座に着く前から、総選挙に打って出て、自民党か民主党かの決着をつけると勇ましいことを言っていながら、内閣成立後の世論調査による支持率の低さに驚いて、口先だけだったからだろう、最初の勢いをたちまち投げ出してしまった。
その結果、参院選敗北後安部が演じ、福田が演じた右往左往を反面教師とすることもできず、その二の舞を演じることとなった。
いや、福田から数えたなら、福田の二の舞、安倍から数えたなら、福田が安倍の二の舞で麻生は安倍の三の舞を演じているに過ぎない。過去から何も学ばぶことができなかったために過去(=安倍・福田)から一歩も出ることができなかった。三人とも雁首を揃えて潔い態度を取ることができなかったに過ぎない。
意を決して総選挙に打って出て、自民党か民主党か民意の帰趨を明らかにすることができなかった過ちを犯した上に自身の言動も影響している国民からの見放されであり、その結果としての野党への支持率の傾斜であることに目を向けることもできないまま、いわば冷静に状況を判断し、冷静に行動に出ることができないままの自らの判断の暗さ、決断力のなさを棚に上げた野党批判だから、支持率回復に一向に力を持たない口先だけの言葉となる。
現在の政治停滞が総選挙に打って出て決着をつけなかったことが障害なのは誰の目にも明らかなことなのだから、景気対策を口実に踏み切れなかった麻生の愚昧さは計り知れない。
景気対策優先を言って総選挙を先延ばしにしたものの、肝心の景気対策が進まない滑稽な倒錯状況に自ら足をすくわれている。
野党の役目は第一に与党を政権の座から引きずり降ろして、自らが政権の座に就くことにある。例え参議院の議席が優っても、衆議院で議席が劣る状況にあるからと、議席の数に素直に従っていたのでは野党の得点とはならず、与党の得点にしかならない。
誰がそのような自分から自分の首を絞めることをするだろうか。政局は野党の政権を取らんがための切り札であり、野党に与えられた特権と看做すべきなのである。
自民党が野党の立場に立ったとしても、議席数に素直に従うだろうか。シャンシャンシャンで進んでいったなら、野党はあってもなきが如きで、存在感は薄れてしまう。現在の民主党やその他の野党同様に政局対応を専らとすることになるだろう。いくら追い詰められたからと言って、野党に対して政局非難はやめた方がいい。自分たちが野党に転じた場合、政局対応ができなくなるからだ。
政局にする、政局にすると批判しておいて、自分たちが政局で動くことになったら、格好がつかなくなる。大島だ、伊吹だ、細田は真っ先に政局で動きそうな顔と態度をしている。野党を政局批判する議員程、きっと真っ先に政局に走るに違いない。
麻生が民主党に政権を任せることができない例として民主党の高速道路無料化案を次のように批判している。
「次に経済対策というのをやっておりますが、財源というものの裏打ちがないと何となく心配になりませんか。当たり前だと思います。お父さんそんなにばんばん使って、誰からお金が出てくるのと。奥さんもみんな心配になるのは当たり前です。いろいろ耳障りのよいことをいうが、高速道路は自民党は1000円だが、こちらは(民主党)タダ、全部タダだと。そうすると、高速道路の収入はだいたい2兆円ぐらいあるのですが、2兆円の収入が入ってこなくなる。そうすると補修するのは、だれが補修するのですか。また、今借金がありますが、その借金の返済は誰がするのですか、と言ったら、高速道路に乗っていないほかの方がそれを払うことになる。それは、おかしくないですか、というのがわれわれの正直なところです。」――
財源はどうするんだという批判だが、先ずはメリット・デメリットを考えるべきだろう。多くの場合メリットだけ、あるいはデメリットだけと言うことはなく、何事もプラスマイナスがある。
定額給付金にしても手にする個人個人にしたら金額なりのカネを手にするメリットはあるが、全体的な経済効果・消費押し上げ効果という点では、多くが貯蓄に回す、何かの場合に備えるとしているためにさしたる期待が持てないと考えるから、それがマイナスに働き支持を得ることができないことになる。
政府が成立させた平成20年度補正予算に盛り込んだ高速道路料金の大幅割引は地域によって限定される場合もあるらしいが、今後2年間に亘って乗用車に限って休日どこまで走っても1000円、トラックは平日の高速料金が3割引というもので、それを執行する関連法の成立を民主党が阻んでいるのだが、このことによって<高速道路の利用が増える分、ほかの交通機関の利用が減るので、そこまで効果はないという意見もある>と注釈付きだが、<国交省では、観光客増による経済効果が7000億~8000億円見込まれる。>としていると「msn産経」記事≪「高速道路1000円」の賢い利用法Q&A≫ (2009.1.31 23:43 )が報道している。
他の交通機関とはJR各社が力を入れていたコンテナ輸送や各地域のフェリー会社のことだと思うが、実際に打撃を受けるということなら、その打撃を負の面として日本の物価が国際比較で元々高過ぎることを考えて、高速道路無料化が物価ダウンに役立つなら、それを国民生活のメリットと把えて、他の輸送機関への打撃を止むを得ない自然淘汰と看做し、政府が補助金等を活用して自然淘汰に向けた軟着陸を指導すべきではないだろうか。
自民党の大幅割引が経済効果7000億~8000億円と言うことなら、民主党の無料なら、もっと大掛かりな経済効果を引き出すはずである。高速道路無料化によって、流通コストが軽減されれば、最終商品のコストダウンにつながり、そのことによって見込むことができる需要増が経済の活性化に役立つ。
経済が活性化されたなら、当然政府の歳入増につながることになる。専門家ではないから具体的な歳入額は計算できないが、相当な額になるはずである。
またトラックの場合、商品輸送を高速道料金を避けるために頼っていた一般道路使用と比べて、高速道路使用の場合は燃料消費量(=燃費)が軽減され、その分、温暖化ガスの排出量が減るメリットが生じる。年間を通したなら、膨大な温暖化ガスの排出減となって現れることになるのではないだろうか。
ガソリン暫定税率の廃止か否か与野党が攻防を繰り広げたとき、当時の福田首相が08年3月31日の記者会見で、「まず世界では、ガソリンに対する税金を引き上げる傾向に今あります。これは、世界が地球温暖化問題に立ち向かうため、ガソリン価格の引き上げが、CO2を排出するガソリンの消費を抑えることに役立つと考えているからであります。この結果、ガソリン価格は今、イギリスでは1リットル250円です。フランスやドイツでも1リットル220円であります。もしここで日本がガソリンの税金を25円安くすれば、ガソリン価格は125円となり、イギリスの半分になってしまいます。地球温暖化対策に取り組んでいる世界に対して、日本はガソリンの消費を増やそうとしているんではないか、という誤ったメッセージを発することになりかねません。時代逆行の動きであります」と廃止反対を訴えたが、高速道路無料化となった場合、運輸・流通を担う輸送トラックは無料・有料に関係なく走らせなければならないが、一般客が無料化で浮いた分を観光にまわすべく車を走らせる状況が生じて二酸化炭素ガス排出が増加することも考えられるが、そのような状況は景気回復に必要な需要であり、乗用車の排出ガス削減に絶対的に有効な方法として車のハイブリッド化、あるいは電気自動車化を国の政策として推し進めることがより大きな問題として横たわっていることから比べたら、過渡的な問題と化す。
高速道無料化が観光振興につながって観光業が利益を得れば、その税金によって増える政府歳入が乗用車のハイブリッド化、あるいは電気自動車化への政府の助成・援助の一部へと容易に転換されることにもなる。
9月9日の日経ネット記事≪排出量価格、世界で急落 半年で3分の1 景気後退の影≫が世界的景気悪化で企業生産が鈍ったことに伴って温暖化ガス排出量が減少、見かけの「余剰分」を売りに出す動きが強まったため温暖化ガス排出量取引の市場価格が世界で急落していると伝えているが、高速道路無料化による乗用車走行の増加を受けた二酸化炭素ガス排出量の増加が不景気による温暖化ガス排出削減のプラスを埋めるマイナスとはなっても、「私共は今国民にとって最大の関心は何か、と言えば、私はたった一言、『景気』だと思っています」を最優先事項とするなら、プラスマイナスを相殺してマイナスを小さく計算すべきであろう。
民主党の高速道路無料化案では道路の補修の財源はどうするのか、これまでの借金はどうするのか、高速道路に乗っていない他の方がそれを払うことになるが、それはおかしくないですか等々言っているが、財源云々は先ずはムダな道路、ムダな橋、ムダなハコモノの建設を一切排除することによって捻出することができる。
工事箇所を絞りに絞るということである。現在の高速道路の年間維持費を最初に算出して、赤字予算を組まない範囲内で収めることができる公共工事のみを行うこととすれば、当たり前のことだが、ムダに予算を使うこともないし、どこが必要な道路か、必要最小限の規模、建設費等々考えることとなり、そういった頭の働かせ方がムダな道路を造らないための知恵をつける糧となるに違いない。
大体が現在ある高速道路をすべて無料化すれば、通行にかかるその時間短縮によって、新たな道路はさして必要なくなると思うのだが、そうではないのだろうか。少なくとも日本列島を縦に貫く大動脈としての高速道路のすべては無料化すべきだろう。
以上のような考えに立てば、高速道路利用者・非利用者関係なしにその負担は最小限度に抑えることができる。もし無料化によって流通コストが下がり、それが物価に反映されて国民全体の生活利益へと還元されることになったなら、負担は相対的にさらに低くなる。
麻生は常々「世界不況という異例の事態には異例の対応をしなければならない」と勇ましいことを言っている。では、景気対策の目玉と位置づけている定額給付金は「異例の対応」だとでも言うのだろうか。
そうだと言うことなら、「異例の対応」の程度が知れる。スケールの小さな麻生にふさわしいスケールの小さな「異例の対応」ということなのだろう。
高速道路の無条件な無料化を以ってして「異例の対応」だと言うなら、少しは話は分かる。