麻生の中川任命責任だけではなく、自民党の麻生総理・総裁任命責任も問わなければならない(1)

2009-02-20 15:50:14 | Weblog


 2月14日の「7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)」後の2月14日夕方(日本時間15日未明)記者会見で泥酔した醜態を世界に動画発信した我が日本の誇る中川昭一財務大臣を麻生が続投を指示、それを受けて本人は辞任否定、それが予算成立後に辞任だと麻生内閣の一員らしく麻生迷走を見習って態度が定まらなかったが、17日の午後6時になって辞表の提出、結局引責辞任となった。

 野党は麻生総理大臣の任命責任を問う。自民党内の一部勢力は執行部の麻生首相を一致結束して今後とも支えていくという申し合わせに反して「麻生首相では選挙が戦えない、新しい総裁を選出すべきだ」といわゆる「麻生降ろし」に公然と動き出した。

 「麻生降ろし」に走り出した勢力は先の総裁選で麻生に一票を投じない議員がいたとしても、自民党全体では麻生を総裁に選出し、総理へと向かわせた責任を負うはずである。しかも「選挙の顔」に重点を置いた期待を麻生にかけながら、2008年9月24日の国会での首相指名から僅か5カ月足らずで、「麻生では選挙が戦えない」と「選挙の顔」であることのお役目御免まで願っている。

 マンガ好きだとかオタクやアキバの若者に人気があるといった見せ掛けの特異さで上辺の人気を装っていた軽薄・単細胞な政治家を総理・総裁に選んだ自分たちの人間を見る目のなさ・愚昧な洞察力をこそ先ず責め、その愚かさを明らかにして、それを参考教材に新たな総裁選びを行うのでなければ、馬脚をすぐにも現すこととなって同じことの繰返しで終わるだろう。

 福田首相が支持率は低迷してはいてもまだ辞任する前から例の如く選挙都合で「福田降ろし」の動揺が始まり、森元首相の「福田康夫首相の無味乾燥な話より、麻生さんのような面白い話が受けるに決まっている。・・・我が党も麻生人気を大いに活用しないといけない。『次は麻生さんに』の気持ちは多いと思う。私も、勿論そう思っている」(毎日jp)といった誘導に一蓮托生を決め込んだ。

 勿論自民党議員に関しては麻生任命の責任だけではない。安倍総理・総裁任命責任、福田総理・総裁任命責任も残っている。1年程度の短命内閣で終わる総理・総裁を選んだ。そして今回は総理大臣の態を成さない麻生太郎を選んだ。国民に対する責任もある。

 昨年の麻生を選出した総裁戦ではただ単に開かれた党を演出・宣伝するために複数候補を許す状況をつくり出した結果、5人もの総裁立候補者が十把一絡げのように雁首を揃えたが、最初から「麻生」の出来レースだったはずである。よくよく見ると、5人ともドングリの背比べ程度にしか見えない。

 選挙用のポスターに誰と一緒に写ったらいいか、「選挙の顔」探しに今から騒いでいるそうだが、「自分の顔」のみで戦えないのは自律していない証拠だとは気づかないらしい。

 中川昭一の泥酔・朦朧記者会見も醜態なら、「麻生では戦えない」自民党内の右往左往も醜態であろう。

 昨2月19日の衆議院予算委員会で民主党の菅直人代表代行が中川に対する任命責任を麻生に追及した。勿論、日本の麻生太郎は任命責任など認めるはずはない。HP「衆議院インターネット審議中継」の動画から菅直人の麻生に対する最初の追及部分を文字に起こしてみた。

 菅直人「(本会議冒頭の麻生の謝罪の言葉に関して)総理がですね、私は本当にですね、どんなふうに中川財務大臣の辞任について言われるのかなあと、耳をそばだてて聞いておりました。

 しかし総理の言葉は中川財務大臣が自分の健康管理が不十分であったことから、総理の判断は一切入っておりません。本人が健康管理が不十分で辞任することとなった、申し訳ないと言われた部分は単に予算審議中に担当大臣が交代に至ったことは誠に申し訳ない。一言も自らが任命した大臣であることに対するお詫びの言葉は入っておりません。しかし私が、少なくとも見たり聞いたりしている限りは、麻生総理は中川財務大臣とかなり親しい関係じゃないんですか?

 一緒に食事をされたことも、お酒を飲まれたりしたことも、あるんじゃないですか?そして私は中川財務大臣と特に飲んだことはありませんけれども、少なくともこれまでお酒を巡る色んなトラブルが報道されてきたことは私も色んなところで目に致しております。本当に大丈夫かなあという声があったことも聞いております。

 それを承知で任命されたのは麻生総理なんです。しかも今も、公明党の委員の方もありましたように、G7の後の記者会見というのは、ある意味、会議そのものは世界から直接見ることはできませんから、G7の後の記者会見こそ、それこそ各国の財務大臣が自分の国の国民に対してだけではなく、世界に向かって我が国はこういう形で経済対策をやるんだと、最も重要な場面じゃないですか。

 その最も重要な場面で、少なくとも殆どのメディアがあれは酔っ払った状況じゃなかったのかと、言われるような醜態を曝した。そういう大臣を、私は一切徴候がなかったとは、言えないと思うのですよ。何回もそういう話題の出た人ですから。

 麻生さん、国民のみなさんに、私たちじゃなくて(冒頭で出席議員に)「予算審議中に担当大臣の交代という事態に至ったことは誠に申し訳ない」〈「asahi.com」〉と謝罪したことを指すのだろう。)国民のみなさんに自らが任命した中川財務大臣が、こういう醜態を曝して世界の信用を失って、辞めたことに対して、あなた自身の責任を、きちんと語って、お詫びをするならお詫びを、国民のみなさんにしてくださいな」

 麻生「過去、中川大臣が時々体調を崩されるということは報道によっては知っておりました。私はこの方と一緒に何回となくお酒を飲んだりしたことがあるかといえば、メシを食べたことは何回もあります。何十回となくあると思います。私の前で酒を飲まれたことは私の記憶ではありません。ないんです。

 私の場合は、少なくともそれを事実としておりますんで、近くで見ていても、少なくともこの数年間の間、私と、私と中川さんの間で、そのような酒席という席で彼が酒を口にしたという記憶はありません。そのため財務・金融にも明るく、金融に明るい、という意味で、私は適任であると考えを、考えて、任命をさせていただきました。

 最近体調管理というものにも注意しているということを聞いておりましたし、事実私もそう思っておりましたので、問題はないと判断をしておりました。しかしそういうふうになったというのは事実でありまして、閣僚に任命した責任は私にある。そのように考えております」

 菅直人「まあ、あの、何回も食事をしたけれども、あるけれども、お酒を飲んだことがないと言われれば、私は、一度も同席したことがありませんから、そのこと自体は否定する根拠はありません。ただ、総理大臣としていろんな情報が入っていたんじゃないですか?つまり、総理大臣はそういった噂は一切聞いていなかったんですか?

 総理大臣というのはそういうまさに閣僚や国民に対して、いろんな正確な、適確な情報を把握できていなかった、とすれば、その方がもっとひどいじゃないですか。

 ですから、そういう自分の前で酒を飲んでいなかったから、じゃあ、中川さんはお酒を飲まない人なんですか?そんなことはないでしょう。ですから、そういう言い逃れをしてですね、国民にまともにお詫びをされようとしないのは、おかしいんじゃないですか?

 つまりはそういう問題がある人であったけれども、まあ、それは大丈夫と思って、任命したけれども、結果としてこういうことになったのは私自身としてもちゃんとした注意をしなかった、あるまでは何もできなかった、ことの責任があるんだということをはっきりと言われるべきじゃないですか。

 私の前では酒を飲んだことがないから、それで大丈夫だと思ったんだとしたら、情報を把握できない総理という、意味で、私は総理の資格はないと思いますが、如何ですか?」

 麻生「あの人の噂というものを基にして、やるのも如何なものかと、言う点も我々としても考えておかなければならないところであります。人の噂、週刊誌の噂だけで、その人の判断やるというのも、極めて間違った情報をするということもあります。

 従って、お酒を飲まれた上での話というのは色々な方とは噂を聞きましたが、閣僚になられて、そういったことをきちんと自分の身を律するか、律しないかということは、かかって本人の問題だと存じます。従って、閣僚になったときに、色々お互いに話をさせていただく機会もありましたし、そのときにメシを食ったこともあります。にでも(?)、召し上がりませんでしたので、最初から、最初のうちなんだと思います。この種の話は最初のうちに申し上げておくべきだと思いましたんで、きちんと最初の段階で、酒の話というのは、これ酒は飲まないからいいけれども、注意しなければだめよと言ったら、本人も十分に自覚をしておられましたので、私共としては先ほど申し上げましたような経緯で、任命させていただいた、というのが私の背景であります。

 情報収集と言うんであれば、知らなかったと言えば、少なくとも色々な噂は知っておりました。それが情報というんであれば、その種の情報としては、噂同様に把握しておったというのは事実です」

 菅直人「今総理は早い段階で、つまりですね、閣僚になられた早い段階ですね。その中川さんの、お酒について注意したと言われましたね。言われましたね。どうぞ、今、言われましたでしょ?」

 麻生「その通りに先程答弁申し上げたとおりです」

 菅直人「ということは、まあ、噂であったか何であったかは別として、そして心配して注意された。それでよかったと思いますよ。結果としてその注意にきちんとした対応ができなかった。総理の注意できちんと対応できなかった。そういうことじゃないですか。

 だから、総理として自分がそういう注意をして大丈夫だと思ったけども、こういう事態になったことはやはり任命責任権者として、そういう選択をしたことについて、自らの責任があるんだろうと、ちゃんと言ってくださいよ。他人事(ひとごと)のようなことを言わないで、自分の口で国民のみなさんに言ってください」

 麻生「先程申し上げたとおりだと思いますが、少なくとも、今回の場合、勿論、疲労もあったでしょう。風邪を引いておられたのに、この前の一連の本会議の答弁を見られても、もう、鼻水状態でしたので、よく分かっているところだと思っております。

 加えて、抗ヒスタミン剤を飲めば、いわゆる少量のアルコールであっても、非常に大きく反応が出るということも、これは言われている通りで、そういった意味に於きましては、本人のクスリに拠ります部分というのは非常に大きかったんで、酒がすべてだと言われれば、私はそれは少し違っているんであって、クスリというものと酒、が少量であっても、反応するというところがご本人の判断というものが大きく違っていたところだと思っています。

 ただ先程、任命責任というんであれば、早めに注意したというのは、事実でありますから、その意味に於いて、その注意が会が終わった後のことでもあり、気が緩んだこともあったんだと思いますが、結果として色んな意味で、みんなの前で、ああいうような状態になったということに関しては、彼は非常に責任を重く感じ、結果として、その後の体調が芳しくないと判断をされましたんで、私は名誉挽回の機会というものもきちんと与えたらよろしいんじゃないかと、思ったことも事実です。

 しかし、本人の気力、そういった体調に合わせて気力というものも関係しますんで、そういった意味ではご本人が最終的に、とてもという判断をされたのに合わせて、辞任を受理したというのが経緯であります」

 菅直人「中川財務大臣が帰国をして、2月16日に先ず総理に会って、陳謝したと報道にあります。それに対して総理は、じゃあ、職務に専念して頑張れ、と、激励されたと報道に出ています。16日の夕方です。

 そして17日の朝、色々ありますけれども、衆議院、参議院それぞれ委員会が立って、財務大臣の出席が少なくとも求められていたのに、ええー、まあ、お医者さんに行かれたのだから、そのいい悪いは言いません。少なくともその出席をしないで、医者に行かれて、そして昼、この予算委員会の集中審議が始まる、僅か30分前に、記者会見をされて、衆議院での予算が通過したら、身をお出しします。

 私、そのときにですね、あー・安倍総理のことを思い出しました。会議のわずか10分前にですね、やーめたと、代表質問をする受け答えをやーめたと。集中審議を今から始めますという僅か30分前に、一方的に記者会見をして、やあ、予算が通過したら、関連法案が通過したら、辞表を出します。そんな人を相手にどうやって議論できるんですか?

 と言って、私たちはそんなことおかしんじゃないの、即座に辞めるべきだと、言って問責が参議院から出たら、夕方に今度は、即座に辞めます。その間に総理は前の日は夕方に慰留し、そして本日昼、昼前の少なくとも報道によれば、官邸に予算が通過したら、辞表を出しますということを言ったと。言ったということは、それでいいということを言われたんでしょ、総理?

 しかし夕方になったらまたですね、やっぱりダメだから、辞めます。そういうことに対して総理は、二転三転する本人の、その態度の変更に結局何も主導性を発揮しない。判断がぶれまくっているんじゃないですか。

 少なくとも前の日は大丈夫だと、あの画像見ても映像見ても大丈夫だと。まさに挽回のチャンスを与えようと。

 それが翌日の昼間になったら、また変って、暫くしたら辞めるのも仕方がない、言うのを即座に辞めるのも仕方がない。そのように判断がぶれまくるから、国民の信頼を得られないんですよ、如何ですか?」

麻生「中川大臣から三度に亘って、これは報道、説明を受けたと存じます。先ず16日の夜、面接をしております。官邸、官房長官も同席していたと記憶しております。ええと、G7の成果を、報道と併せて、記者会見の状況、等々の報道を受けております。

 そのとき中川大臣から、体調、万全にしてこそ二次補正関連予算案と21年度予算の成立に全力を尽くしたいという決意が述べられております。

 そこで私から、健康管理というものは、これはしっかりしなきゃあだめだと、身は注意をすると同時に体調万全にして、着実に仕事の成果を出して貰いたいと話をしました。17日の朝ですよ、これは。

 昼前、昼間にて、これも官房長官も同席したと思いますが、病院の検査の結果、風邪や疲労などで体調が思わしくなく、予算や関連法案の通過だけは全力を尽くして、その後に辞任するという報告がありました。私は本人の厳しい決断でもあり、辞めるという意味はそれなりに尊重すべきもんだと、そのとき思いました。

 夜、面談。これは官邸で。これも官房長官が同席しております。極めて体調が思わしくなく、その後も具合が悪いので、国会審議への影響も考慮し、本日辞任させていただきたい、との報告がありました。熟慮した上での判断だと思いましたので、大変厳しい判断を政治家としてされたんだと、思いますんで、その意志を尊重させていただいたということであります」

 菅直人「まさに総理がそういうことを、総理が、前以て、もうここまで来たなら、無理じゃないのと、言うんじゃなくて、まだ大丈夫でしょう、じゃあ、次は予算の通貨まで、じゃあそれもいいでしょう。最後は、じゃあ、即座に辞める。判断がぶれまくってるんじゃないですか。少なくとも人間検査ですよ、

 つまりは本人が言ったら、それでいいといったら、人間検査ということの責任はないということじゃないですか。本人が例えどう言おうと、ここはもう無理は無理、大丈夫なら、それでも応える。そういうものはたった24時間の間に、今お聞きしたらですね、16日の夜から17日の夜までの間に、最初は頑張れ。次は予算が通過したら、辞めるのも仕方がない。次は即座に辞める。こういうのが判断がぶれていると言うのです」

 菅直人はここで麻生に対する追及を一旦中断して、中川昭一辞任の後を受けて財務・金融担当相を兼任することとなった与謝野馨経済財政担当相に質問を移す。


 麻生の答弁は全編、これ軽薄な欺瞞に満ちた言葉の羅列となっている。

 その証明とする麻生の悪口は次ページで

 麻生の中川任命責任だけではなく、自民党の麻生総理・総裁任命責任も問わなければならない(2)に続く
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麻生の中川任命責任だけではなく、自民党の麻生総理・総裁任命責任も問わなければならない(2)

2009-02-20 15:17:15 | Weblog

 先ず最初に断言するが、中川昭一は記者会見の場でクスリによる朦朧状態ではなく、アルコールが原因した朦朧状態にあった。例えクスリとアルコールを同時に飲んだとしても、それが中川が言う「嗜む」程度の少量のアルコールなら、ああまで朦朧とした状態にはならないからだ。

 もしクスリが主原因でああなったとしたら、相当に大量に服用したことになる。いくら身体の調子が悪くても、クスリを飲む量の程度は弁えるだろうし、出席しないわけには行かない大事な記者会見だということなら、いくら外国の地と言えども、近くの医院か病院で点滴を打って貰った方が効き目は確実であろう。

 しかし出席の態を成さなかった。

 麻生は「加えて、抗ヒスタミン剤を飲めば、いわゆる少量のアルコールであっても、非常に大きく反応が出るということも、これは言われている通りで、そういった意味に於きましては、本人のクスリに拠ります部分というのは非常に大きかったんで、酒がすべてだと言われれば、私はそれは少し違っているんであって、クスリというものと酒、が少量であっても、反応するというところがご本人の判断というものが大きく違っていたところだと思っています」と庇っているが、世界中に発信されたあの画面上の中川からは眠気や欠伸、あるいは朦朧とする意識に対して苦労して抵抗しようとする気配は感じられなかった。

 世界に発信される大事な席である。閉じてくる瞼を開けようとする努力、眠気を追い払おうとする努力、朦朧としてくる意識を覚醒させようとする努力――そういった必死の努力の跡を何ら窺うことはできなかった。責任ある経済大国の財務大臣という資格であの場に臨んでいたのではなく、ただの木偶の坊として坐っていたに過ぎなかった。

 例えクスリであろうとアルコールであろうと、飲み過ぎたな、失敗したなという自身の取り扱いを後悔し、その思いが大事な席である程、尾を引いて顔に貼り付くものだが、それすらなかった。

 後悔の念が少しでも働いていたなら、クスリであろうとアルコールであろうとその影響を少しは覚ますものだが、そんな様子もなかった。

 逆に緊張感も何もなく、受け答えも顔の表情も何かも弛緩した状態にあった。その原因がクスリであろうとアルコールであろうと、大量に服用しなければ出てこない症状のはずだが、アルコールの量を弁えないのは考えやすいが、ああまでしどろもどろとなるくらいのクスリの服用というのは考えられない。そこに多少のアルコールが影響したとしてもである。

 毎晩のようにホテルのバーで飲酒すると言う麻生が、「私はこの方と一緒に何回となくお酒を飲んだりしたことがあるかといえば、メシを食べたことは何回もあります。何十回となくあると思います。私の前で酒を飲まれたことは私の記憶ではありません。ないんです。」と断言しているが、その「何十回」とも麻生自身はアルコールを摂らずに食事だけをしたのだろうか。

 麻生もアルコールを摂らない、中川もアルコールを飲まないということなら理解できるが、両方ともアルコールに親しむ習慣のある人間なら、一方だけが飲んで食事を摂っているのに、片方は飲まないまま食事をするというのは不自然で考え難い。一杯ぐらいはいいじゃないかとなる。

 菅直人代表代行はその点を突くべきだった。

 菅直人が暗に中川昭一の飲酒に関わる、と言うよりも酒癖に関わると言った方が正確だろう、情報を把握していたはずだ、面と向かって口では飲まないと言ったからといって、それを信用したのでは「情報を把握できない総理という、意味で、私は総理の資格はないと思いますが、如何ですか?」との追及に対して、「人の噂、週刊誌の噂だけで、その人の判断やるというのも、極めて間違った情報をするということもあります」と逃げているが、誰も「人の噂、週刊誌の噂だけで、その人の判断や」れとは言っていない。

 もしやったとしたら、情報の鵜呑みを犯すことになる。どのような情報であろうと、自分なりの客観的認識能力に応じて解読し、そこから自分なりの意味を抽出して、初めて自分の情報となる。

 いわばこのプロセスを持たないままに麻生は情報と相対していることになる。このことだけを以てしても一国の政治を行う総理大臣の資格はない。

 例え人を疑うことが少ない素朴な人間であっても、人を使う立場に立てば、噂の真偽を周囲に聞くのが自然な態度であろう。海千山千の麻生が中川の飲酒癖、酒に纏わる悪い噂を確認していなかったということはないだろう。

 さらに麻生は上記言葉に続けて、「閣僚になられて、そういったことをきちんと自分の身を律するか、律しないかということは、かかって本人の問題だと存じます」と言っているが、確かに「本人の問題」だとしても、その前提として、律する能力を保持しているかどうかの判断は任命権者の重要であると同時に第一歩の責任事項であろう。

 その判断を働かせないままに採用して、律することができませんでした、「かかって本人の問題だと存じます」では無責任というだけではなく、無用心に過ぎる。人を使う資格はない総理大臣と言うことになる。だから、リーダシップを発揮できないのだろう。
 
 麻生は既に触れたように「私の前で酒を飲まれたことは私の記憶ではありません。ないんです。」と言っておきながら、酒の点で中川に閣僚任命後の早い段階で注意したと平気で矛盾したことを言っている。

 「この種の話は最初のうちに申し上げておくべきだと思いましたんで、きちんと最初の段階で、酒の話というのは、これ酒は飲まないからいいけれども、注意しなければだめよと言ったら、本人も十分に自覚をしておられましたので、私共としては先ほど申し上げましたような経緯で、任命させていただいた、というのが私の背景であります」

 矛盾をカモフラージュするためにだろう、「これ酒は飲まないからいいけれども」と言っているが、屋上屋ならぬ矛盾の上に矛盾を重ねる弄舌(ろうぜつ)の類であろう。酒は飲まなければ、酒の注意は無用でしかない。麻生はウソつきの名人らしい。

 麻生は記者会見での中川昭一の醜態を酒がすべてではない、クスリに酒が多少反応した程度のことだといったことを言っている。その程度の朦朧状態ではないことは誰の目にも明らかだが、いわばクスリとほんの少しのアルコールに災いされたに過ぎないことだし、「7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)」終了後の気の緩みもあったろうからと、醜態は情状酌量に処し、「私は名誉挽回の機会というものもきちんと与えたらよろしいんじゃないかと、思ったことも事実です」と責任を問わずに続投を命じた。

 ここで麻生はクスリとアルコール以外に「気の緩み」という要素を醜態原因に潜りこませたが、2月16日の「ロイター」記事≪G7で日本の立場を主張、会議の目的を達した=中川財務・金融相≫が、<[東京16日ロイター] 中川昭一財務相兼金融担当相は16日午後の衆院財務金融委員会で、14日に行われた7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)終了後の記者会見において記者とのやりとりがちぐはぐだった原因を問われ、「風邪薬を普段よりも多めに飲んだ」と説明。その上で、G7会合では「日本の立場をきちんと主張し、各国と意見交換をした。会議の目的は十分に達した」と語った。中川正春委員(民主)の質問に答えた。>と伝えているように、確かに「日本の立場をきちんと主張」して「会議の目的を達した」なら、ほっと気の緩むこともあったろう。

 だが、日本の財務大臣という地位にある大物政治家である。私自身は少しも大物とは思ってはいないが、気が緩んだとしても、緩みっぱなしということはなく、逆に「日本の立場をきちんと主張」して「会議の目的を達した」満足感・達成感が気の緩みに代わって時間の経過と共に満ちてきて、記者会見に臨み、テレビカメラを通して自分の姿言葉が世界に発信される誇らしさに昂然とした気持さえ湧いてくるものではないだろうか。

 一国の財務大臣として世界中が注目する「7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)」という晴れ舞台に臨んだだけでも一つの大きな成果なのだから。そう中川財務大臣にしたら、晴れ舞台であったはずである。

 当然、記者会見場では誇らかな自尊心と共にその満足感・達成感に満ちた質問に対する返答、態度があって然るべきだろう。例え前祝にゴックンしない程度に一杯飲んでいたとしても。

 勿論、したたかに飲んだことの満足感・達成感ではない。しかし酔っ払いの満足感・達成感以外に見ることはできなかった。自分に与えられている役割と責任の片鱗すら窺い知ることができなかった。

 日本の財務大臣という地位に付属する期待されている役割と責任に添って懸命に心掛けた行動を行った上での至らぬ点というなら、「名誉挽回の機会をきちんと与え」る温情も必要かもしれない。だが、公の場にありながら、常に身に纏っているべき役割と責任を脱ぎ捨ててしまっていた醜態であって、そのことだけでも無責任というだけではなく、資格喪失の謗りを免れることはできないのだから、「名誉挽回の機会」を与えられる条件さえ失っていたのである。資格喪失者に「名誉挽回の機会」とは倒錯的に過ぎる。

 それとも麻生にはあの記者会見の場で中川が自らの役割と責任を少しでも果たそうとしていた努力を窺うことができるとでも言うのだろうか。

 ここになるとクスリだ、アルコールだといった問題は小さくなる。原因が問題ではなく、役割を最後の最後まで果たしたか、責任を最後まで果たしたかが問題となる。

 しかも「先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)」という世界的会議に出席し、議論を重ねた後の記者会見であるのだから、その役割と責任は日本という一国のみに範囲が及ぶものではなく、日本を代表しながら、世界と広く関わっていたのである。麻生には中川が世界とコミットしていたように見えたというのだろうか。中川は飲酒という自分の世界とのみ関わっていたのである。

 麻生は「機会」を与えられたとしても「名誉挽回」の効かない人間に愚かにも「名誉挽回の機会」を「きちんと与え」ようとしたに過ぎない。あの醜態が何よりもそのことを証明している。「名誉挽回」が効くかどうかも判断できなかった。判断するだけの情報分析も満足にできなかった。

 だから、事態収拾に後手後手に回ることになったのだが、危機管理能力という点からも一国の総理大臣の資格はない。危機管理無能力によって日本の政治家の恥を世界に曝すこととなった。

 森元首相が<16日、TBSの情報番組に出演し、麻生太郎首相の下での衆院解散・総選挙について「やむを得ない。自分たちで(総裁に麻生氏を)選んだのだから、飛び降りたり、逃げたりするのはひきょうだ」と述べた。>(≪元首相:麻生首相で解散、「やむを得ない」≫「毎日jp」(2009年2月17日)が伝えているが、党として麻生任命の責任を取るということではなく、自分が率先して麻生を担ぎ、麻生支持に走った手前、自分から「飛び降りたり、逃げたりする」ができないから、破れかぶれの一蓮托生を狙っただけの麻生への心中立てなのだろう。

 麻生や森が乗った沈みかかった泥舟から早いとこ逃げるのが懸命である。

 自民党の大島理森国対委員長「明確に麻生内閣で選挙をする決意なので、うろうろ考えないでいただきたい」(同「毎日jp」/16日公明党衆院議員パーティー)

 大島は森、麻生と同じ穴のムジナだから、当然の反応。

 笹川尭総務会長「エースを出したので控えはいない。支えている我々が悪い」(同「毎日jp」

 三流投手(党首?)をエースに仕立てたに過ぎないが、何、似た者同士だから、心配は要らない。

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