笹川「沈没」発言は“いのち”へのハートを欠いた人間の戯言(たわごと)

2009-02-27 00:44:16 | Weblog

 だから、日本の政治家をやっていられるとするのか、それとも、政治家の資格はないとすべきなのか、それが問題だ。同類はいくらでもいるのだから――

 2001年に愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」が米原潜の衝突を受けて沈没した事件に絡めた笹川「沈没」発言が批判の騒動を広げている。

 殆どのマスコミが、発言がえひめ丸沈没を森内閣退陣の原因としている、あるいは実習船の沈没を擬えるか、引き合いに出して、森内閣退陣を「沈没」と表現したとの解釈で把えているが、森内閣退陣によって自身の大臣職を失ったことをえひめ丸沈没に擬えて「沈没」と表現したのではないだろうか。

 25日(09年2月)のTBS動画ニュースサイト≪「自民総務会長、配慮欠く「沈没」発言」≫)の動画から発言を釈明箇所を後回しにして見てみる。24日夜の自民党国会議員のパーティー会場の壇上からの挨拶で出た発言だそうだ。

 世界に自慢できる我が日本の著名な政治家・笹川尭「森内閣のときに閣僚に任命されてですね。まあ、嬉しかったんですがぁ、別にゴルフやってクビになったわけじゃあないんですがー、運悪くハワイ沖に潜水艦がですねえ、こともあろうに日本の水産ん――、講習所の生徒を乗せた船に、ドーンと上がってですね、あれで止む無く沈没いたしました。――」(話が受けて笑い声)

女性解説者「えひめ丸事故は2001年、愛媛県立宇和島水産高校の練習線“えひめ丸”がアメリカの原子力船に衝突されて沈没し、9人死亡したものです。当時の森首相は事故の報告を受けながらゴルフを続けたことが批判を受け、およそ2カ月後に退陣しました。
 
 笹川氏の発言は犠牲者を出したえひめ丸の事故と国民からの批判を受けて退陣した森内閣を“沈没”という同じ言葉で表現したもので、配慮に欠けるという批判が出そうです」――

 解説も「森内閣沈没=えひめ丸沈没引き合い説」に立っている。流していたテロップの途中で「(当時の森首相が)」と文字を入れて、「別にゴルフやってクビになったわけじゃあないんですがー」の主語を「森首相」としているが、米原潜との衝突、えひめ丸沈没の報告を受けていながらゴルフを続けていた危機管理上の無神経な不作為、あるいは国民の生命・財産の安全を預かっている総理大臣としての職務上の無責任な対国民意識の希薄さが一因となった森内閣退陣ではあっても、当時科学技術担当大臣として初入閣していた一大臣が例え時間の経過した過去となった出来事でだとしても、森首相の辞任理由をゴルフを続けていたことに引っかけて、「ゴルフやってクビになったわけじゃあないんですがー」とか、練習船の沈没に擬えることとなる「あれで止む無く沈没いたしました」と言える立場にはないはずである。

 あくまでも自分のことだから言える引き合い、あるいは譬えであって、自身の辞職理由について言及していると受け止めるべきではないだろうか。えひめ丸の沈没のせいで森内閣共々沈没したという気持はあったかもしれないが、直接的には森内閣の退陣経緯を話していたわけではない。

 2月25日の「47NEWS」記事(≪笹川氏発言に政府与党から不快感 野党は批判≫)が、この記事だけがそうなのか、全部調べたわけはないから分からないが、批判を受けている発言内容を改めて伝える中で笹川自身のことと受け止めて次のように書いている。

 <笹川氏は24日、都内での会合で、2001年に起きた米原潜と実習船えひめ丸の衝突事故への対応で退陣に追い込まれた森内閣で閣僚を務めた自らの経歴に触れ「ゴルフをやっていて(閣僚を)首になったわけではないが、あれでやむなく沈没した」と発言した。>・・・・・・・・・

 上記記事は「共同通信」配信の記事だが、えひめ丸の沈没を森内閣退陣の原因としていると把えているわけでもなく、退陣を沈没に擬えていると把えているわけでもない。笹川自身の大臣辞職をえひめ丸沈没に擬えているとする文脈で把えている。

 別のTBSの動画ニュースサイト≪「鳩山幹事長、笹川総務会長の発言批判」≫)でも、鳩山幹事長の批判は「沈没」引き合い説となっている。

 民主党鳩山幹事長「沈没したから、政権も沈没したなどという発想を取ること自体、大変な認識の誤りだと、申し上げなければなりませんね」

 同動画は世界に自慢できる我が日本の著名な政治家・笹川尭の釈明を次のように伝えている。

 「別に遺族のことなんか、触れているわけじゃない。船が沈んだから、内閣だって沈んじゃったんだよ。俺たちの責任じゃないもん、まったく――」

 男性アナウンサーが「また笹川氏は『沈没以外に何という言葉を使うのか、内閣が沈没したという意味で船が沈没したなんて言っていない』と釈明しました」と笹川の引き続いての釈明を伝えている。

 世界に自慢できる我が日本の著名な政治家・笹川尭はここでは「船が沈んだから、内閣だって沈んじゃったんだよ」と自分を外して、船の沈没と内閣の沈没を明確に因果づけている。

 笹川にしても森元首相が沈没を他処にゴルフを続けていた無神経、無責任が引き金を引くことともなった森内閣退陣であることは理解していないはずはないのだから、それを省いた因果づけとなっているのはマスコミが最初の発言を「森内閣沈没=えひめ丸沈没引き合い説」で把えたことから、勘違いに乗ってその正当化を図ったに過ぎないのではないだろうか。

 内閣退陣によって大臣全員が辞職したのだから、政治全体から見たらさして大事(おおごと)とは言えない自身の大臣辞職という個人事をえひめ丸沈没を引き合いに出して“沈没”とするよりは、森内閣自体を“沈没”とすることの方がもっともらしい正当性を見せることができ、自らの譬えの不謹慎さ、無神経さを薄めることができるとする無意識の防衛本能が働いたといったところではないのか。

 8年を時間経過してなお大臣職を去らなければならなかったことをえひめ丸沈没を引き合いに出して「あれで止む無く沈没いたしました」と譬えたことがパーティー会場の中だけのことで済むなら、聞く方も聞く方だから、軽口で通るだろうが(笑った連中の中には気の利いたユーモアと受け止めた者もいたかもしれない。)、譬えたままにマスコミに取り上げられて世間に流布したなら、譬えの不謹慎さもさることながら、未練がましい、いつまで言っているんだとそのしつこさを嘲笑されかねない。

 さらに「俺たちの責任じゃないもん、まったく――」と責任のないところに自分を置くことで、譬えが自分事であったことから引き離そうとしている。

 いわば口を突いて出てしまった以上、森内閣沈没とした方が笹川にはほんのちょっぴりは好都合なのだ。

 「別に遺族のことなんか、触れているわけじゃない」――確かに直接の言葉では触れていない。世界に自慢できる我が日本の著名な政治家・笹川尭にしたら、森元首相の無能から大臣職を棒に振って以来大臣の椅子にありつけず、同じ選挙区から経験も年も上の笹川を差し置いて年も経験(=任期)も少ない小渕優子が少子化担当大臣に就任すると、妬みから「小渕優子大臣は少子化担当大臣になぜなれたのか。子供を産んだからなれた」とイチャモンをつけてなお大臣の椅子に執心を燃やしてはいるものの、ある意味「あれで止む無く沈没いたしました」で幕は一つの区切りを示して一応降りていると言えるのだが、遺族や関係者にしたら、「講習所の生徒を乗せた船に、ドーンと上がって」からが幕が開き、そこにはいない出演者を相手に「なぜあんなことになったのか」の終りのない問いを問い続ける、決して当然でない、不当過ぎる、不条理に満ちた幕の降りることがない生命(いのち)のドラマを演じているのである。

 笹川一人だけが在るのではなく、多くの他者が様々に在る。

 ところがそのことへの思い遣りもなく、世界に自慢できる我が日本の著名な政治家・笹川尭は自分一人だけをそこに在らしめて、えひめ丸の沈没を例に出した。自身の大臣職を棒に振った譬えにえひめ丸の沈没を持ち出した。

 その意味に於いて、いわば他人の生命(いのち)を考えることができないという意味で、確かに笹川は「別に遺族のことなんか、触れているわけじゃない」ことになる。気持の上で「触れ」ることにならなければならなかったにも関わらず。

 それとも「沈没」発言と同じ24日に甘利行革担当相の「大幅内閣改造発言」を、「それはあまり(甘利)ある言葉だな。まあ、いろいろツバメだかスズメがチュンチュン言いだしたよな」と批判していたと「FNNニュース」が伝えていたが、その実大臣病止み難く、自分が大臣を辞めたいきさつを話すことで大臣候補であることをアピールして改造内閣での大臣の椅子に執心を示したということなのだろうか。

 裏が一つや二つだけではなく、裏の裏の裏の裏の裏の・・と、裏をいくつも続けることができる日本の政治家だから、ついつい勘繰りたくなる。

 下段引用の鳩山邦夫総務大臣もどこの会合での挨拶か分からないが、「昨年は法務大臣をいたしまして、13人ばかり死刑を執行いたしましたので、朝日新聞から『死神』という称号を与えていただきましたが、現在はかんぽの宿の守り神として仕事をしておる鳩山邦夫でございます」と笑い話のつもりで話したのだろうが、死刑がいくら凶悪犯罪を犯した結末だったとしても、「13人ばかり死刑を執行いたしました」は死刑執行関連のみで生命(いのち)を扱っているような酷薄さしか窺うことができない。
 
 だから、日本の政治家をやっていられるとするのか、それとも、政治家の資格はないとすべきなのか、それが問題だ。同類はいくらでもいるのだから――

 参考引用 


 ≪「沈没」「死刑執行」、相次ぐ不用意発言≫(TBS/09年2月25日20:49)

 日米首脳会談を終えた麻生総理は、25日夜に羽田空港に到着。その後、公邸で公明党の太田代表や自民党の細田幹事長らと会談しました。重要日程を無事終えた麻生総理ですが、帰国後に待ち受けるのは周辺の不用意な発言です。

 「私は森内閣のときに閣僚に任命されて、うれしかったんですが・・・」(自民党 笹川 堯 総務会長、24日)

 森内閣で科学技術担当大臣を務めた自民党の笹川総務会長。24日夜、国会議員のパーティーで、低い支持率の中で退陣した森内閣を、練習船「えひめ丸」の沈没事故を引き合いに出し、こう表現しました。

 「運悪く、ハワイ沖で潜水艦が、こともあろうに日本の水産講習所の生徒を乗せた船の上にドーンと上がって、あれでやむなく沈没いたしました」(自民党 笹川 堯 総務会長、24日)

 この発言に・・・

 「被害者、ご遺族の方々の心情を思えば、少し不適切な発言ではないかと」(宇和島水産高校、今岡慎三 校長)

 「えひめ丸が沈没したから政権も沈没したなんて発想をとること自体が、大変な認識の誤りだ」(民主党、鳩山由紀夫 幹事長)

 笹川氏は25日、改めて取材に応じましたが・・・

 「別に遺族のことなんか触れてるわけじゃない。辞めたってだけの話、何がおかしいの」(自民党、笹川 堯 総務会長)

 さらに、25日夜、この人が・・・

 「昨年は法務大臣をいたしまして、13人ばかり死刑を執行いたしましたので、朝日新聞から『死神』という称号を与えていただきましたが、現在はかんぽの宿の守り神として仕事をしておる鳩山邦夫でございます」(鳩山邦夫 総務相)

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