冬柴の責任は手づかずでいいのか
食品会社の食品内容偽装・産地偽装、米販売会社の新米への古米混入表示偽装、製紙会社の再生紙偽装、建材メーカーの断熱材・防火材の性能偽装、そして約1年半前に遡るが、国の機関である内閣府主催教育タウンミーティングでのカネを掴ませてやらせたヤラセ質問や会場誘導係に4万円、エレベーター運転に1万5千円といった適正この上ない支出で行われた適正この上ない、談合していなければできない運営偽装。社会保険庁のデタラメな年金業務と年金保険料からの健康器具等への私的流用、年金保険料の余りにストレートな、ストレート過ぎる着服等々の当たり前の職務を当たり前に行わない職務偽装。
そして国の機関による新たな偽装が露見し、改めて偽装(=ゴマカシ)が国家機関から企業まで日本全国にまで亘って蔓延していることを知らしめた。これは自民党政治が数々の偽装から成り立っていることから発した国家的偽装図であろう。水の流れと同じで、「上のなすところ、下これに倣う」ことはあっても、「下のなすところ、上これに倣う」ことは立場と責任の関係からしてあってはならないからだ。
新たな偽装とは国土交通省が道路特定財源の一部を道路整備特別会計から支出し職員宿舎の建設費やレクリエーションのための野球用具購入費に当てていたことである。これは道路「特定」という名に恥じない、その名に添った正々堂々たる偽装であろう。但し「正々堂々」も国土交通省そして冬柴国土交通相の価値観に照らし合わせた場合の「正々堂々」であり、国民の目に見えない場所での「正々堂々」の「特定」の偽装なのは説明するまでもない。
国土交通省の峰久幸義次官は当初24日の記者会見で「福利厚生費として各省統一の基準で認められている。他の特別会計も同様の仕組み」(≪道路財源でレク用具「不適切」 国交省、緊急見解で転換≫asahi.com/08.1.26/01:05))だと「道路特定」の「特定」を偽装するものではないし、自分たちにとっても「特定」ではなく、「他の特別会計も同様の仕組み」だから一般的に「認められている」と弁明を展開。
だが、一日明けた25日、「レクリエーション費」に限って「法的には問題ないが、暫定税率の延長をお願いしている中で疑念を抱かれることのないように」(同asahi.com記事)と支出中止を表明している。
「法的には問題ない」とは言っても、国民の監視のない隠れた場所で自分たちに都合のよいようにお手盛りで自作自演した「法」・規則であって、一般的な社会常識から懸け離れた偽装であることに変わりはあるまい。
自作・自演、一般的な社会常識から懸け離れた偽装だからこそ、「福利厚生費として各省統一の基準で認められている。他の特別会計も同様の仕組み」となっていること自体がそもそもおかしいとは気づかない神経でいられる。
また職員宿舎の建設は下記引用読売記事を参考にすると、国道の工事や維持管理にあたる職員向けだということだが、工事・建設に供する施設なのだから、社会常識的には工事費、建設費の類から支出すべき事案でなければならない。職員宿舎の建設に07年度は24億9000万円も計上している(同読売記事)ことから考えると、工事費・建設費に含まないことによって、工事費・建設費を見かけ上少なく抑える役目を持たせている疑いもある。
例えば社会的常識に則って建設費・工事費に職員宿舎の建設費を加えることをルールとしたなら、談合で上乗せすべき金額が窮屈になり、その分、天下り官僚へのボーナスや給与、退職金、あるいは工事・建設を請負ったゼネコンの政治家への政治献金という名の見返りの上納金にも影響して、従来のボロ儲けを窮屈にする。そのことを避ける意味合いからの道路特定財源からの支出ではないかという疑惑である。
もしも職員宿舎が赤坂の議員宿舎の超豪華さ程ではないにしても、一般常識の上をいく豪華な施設となっていたなら、工事費・建設費に含めた場合の上記窮屈さを避ける意図からの配慮であると同時に、窮屈になった場合、それが自分たちの宿舎に於ける居住空間の窮屈さ、そのことから生じる生活の窮屈さに波及することを避ける駆引きからの道路特定財源からの支出だと証明できるのではないか。
大体が上の者が会社や役所のカネにルーズだと、摘発逃れや糾弾逃れに下の者を朱に交われば赤くの同類化してなあなあの関係にするために下の者に対する扱いがカネにルーズとなるし、下の者が上を真似てカネにルーズであっても大目に見るものである。
国土交通省峰久幸義次官の「正当化」から一転「中止」表明は教育タウンミーティングでのカネをつかませてやらせたヤラセ質問者への謝礼に関して、当時の塩崎官房長官が当初「議論の口火を切ってもらった人への謝礼金で、まったく問題視していない」と正当づけながら、文科省が前以て発言案を作成して、その案に添って発言するよう要請していたことが露見すると、「現場の行き過ぎで遺憾だ」と正当づけを引っ込めたものの、世論を操作する不法な偽装であるという認識はなく、単なる「行き過ぎ」で片付けた姿勢と軌を一にする偽装であろう。
さらに言うなら、上記両者の似たり寄ったりの偽装と同一線上にある五十派百歩の偽装として挙げることができる出来事は、「沖縄集団自決」問題で軍の直接的関与はなかったとして教科書の記述の修正を指示した文科省の検定意見に対してその撤回を求めた沖縄住民に文科省側は軍関与に関わる検定意見の撤回はできないが、沖縄住民の感情に配慮して教科書の記述の修正には応じるとした、軍関与否定の基本線は譲らない自己正当づけの偽装がある。我々は自民党政治がつくり出す国家の偽装を忘れてはならない。
冬柴国土交通相にしても「社会保険庁は保険料をぜいたくなものに使ったことが批判されたわけで、全然違う。法律に従ってやっている」と一旦は自分の口から道路特定財源からの支出を流用には当たらないと正当づけていた。そのような冬柴の姿勢と峰久幸義次官が基本線は譲らないにしても、表面上は「中止」を表明したこととの整合性は何らかの方法で決着づけなければならない問題ではないだろうか。何しろ国土交通省を統括する最高責任者なのである。
それとも自分は表に立たずに偽装に身を任せようという狡い手を使うのだろうか。そういった手を使いそうな公明党の面々である。いずれにしても自民党偽装政治から発した偽装国家・にっぽんなのである。連立を組むくらいだから、同じ穴のムジナであることに何ら後ろめたさも感じないのだろう。
「自民党偽装政治から発した偽装国家・にっぽん」ということなのだから、自民党政治を断つことから始めなければこの国の偽装を断つことはできないに違いない。
参考までに読売インターネット記事とasahi.com記事を引用。
≪国交省、道路特定財源で職員の野球用品購入≫(08.1.26/読売インターネット記事)
<揮発油税(ガソリン税)など道路特定財源の一部が、国土交通省職員のレクリエーションのための野球用具購入費や、同省職員宿舎の建設費などに充てられていたことが25日、分かった。
国土交通省は当初、「法律に基づいた適正な支出だ」としていたが、与野党などからの批判を受け、峰久幸義次官が25日夜に記者会見し、「不適切だった」として見直しを公表した。民主党は「年金保険料の流用が問題になった社会保険庁と全く同じ体質だ」と追及の姿勢を強めており、国会の新たな火種になりそうだ。
国交省によると、野球のグラブやバットの購入費やグラウンド使用料などは、道路特定財源に基づく道路整備特別会計から支出しており、2007年度は約425万円が予算計上されている。同省は、職員の福利厚生を定めた国家公務員法に基づき、支出は可能だと判断していた。
公務員宿舎は、国道の工事や維持管理にあたる職員向けで、建設・補修費が同特別会計から支出されている。国家公務員宿舎法などが根拠で、07年度の計上額は約24億9000万円。
公務員の福利厚生費を巡っては、社会保険庁が年金保険料の一部を職員用のマッサージ機購入などに使い、批判された例がある。
冬柴国土交通相は25日午前の記者会見で「社会保険庁は保険料をぜいたくなものに使ったことが批判されたわけで、全然違う。法律に従ってやっている」として、問題はないとの認識を強調した。
これに対し、民主党の山岡賢次国会対策委員長は記者会見で「常識から見て考えられない。国民の税金を遊び道具に使っても合法だと居直っている。泥棒が当たり前と言っているような役所の感覚こそ最大の問題だ」と批判した。
政府・与党内からも「グラブ、ミット代などの10万円くらい、自分で出せ、と言いたい気もする」(町村官房長官)、「あまり感心したことではない。無駄なものには使わないという公務員の規範をしっかり持つことが大切だ」(伊吹・自民党幹事長)と疑問や苦言を呈する声が相次いだ。
こうした批判を踏まえ、峰久次官は記者会見で、〈1〉野球用具購入などレクリエーションのための費用は道路特定財源から支出しない〈2〉道路特定財源を使った職員宿舎の新規建設は厳に抑制するなど、適正な運用を行う――などとした上で、「暫定税率の延長をお願いしている時期でもあり、疑念を抱かれないようにすることが必要だ」と語った。>・・・・
≪路財源でレク用具「不適切」 国交省、緊急見解で転換≫
(asahi.com/08.1.26/01:05)
<道路特定財源の暫定税率延長問題に揺れる国土交通省の峰久幸義・事務次官が25日夜、「緊急会見」を開き、同財源を主な原資とする道路整備特別会計から支出していた、道路関係職員のレクリエーション費について「今後支出をやめる」と表明した。前日の会見や25日午前の冬柴国交相の会見で「問題ない」としていた見解からの突然の転換には、暫定税率延長に向けたなりふり構わない姿勢が透けて見える。
特別会計からスポーツ用具などのレクリエーション費を支出していることの是非について峰久次官は、24日の会見で「福利厚生費として各省統一の基準で認められている。他の特別会計も同様の仕組み」などと述べた。ところが25日の会見では「法的には問題ないが、暫定税率の延長をお願いしている中で疑念を抱かれることのないよう……」と支出取りやめの理由を釈明。町村官房長官が同日午前の会見で疑問視する発言をしたことなど「いろいろなところで不適切ではないかとご意見をいただいている」と述べた。
対象となる支出は06年度で卓球のラケットやゲートボールのスティックなどスポーツ用具13万4000円を含む約770万円。前日は「問題なし」と胸を張って説明していた担当職員らは夕方以降、次官に呼ばれ方針転換を告げられたといい、「(転換の理由は)察してください……」と言葉少なだった。>・・・・・