安倍改造口封じ内閣

2007-08-28 05:17:08 | Weblog

 安倍改造内閣が昨7日(07.8)に発足した。「派閥の推薦は受けません」と言って安倍主導を印象付けようと努力していたが、やはり例の如く口先だけで終わった。いわば外側のハコは「安倍主導」でも、中身は派閥均衡のウチとソトがまるきりの別物となっている。

 例え従来のように名簿等の提出による「派閥の推薦は受け」なくても、以心伝心、阿吽の呼吸で派閥の意向を暗黙裡に感じ取った心理的派閥推薦を受けた均衡配置といったところなのだろう。所詮口先だけ、中身はゼロの表面を取り繕うことしかできないハコモノ政治家に過ぎない安倍晋三クンなのである。

 吹文科相は留任ながら伊吹派会長であり、新たに安倍首相の出身派閥である自民党最大派閥町村派会長の町村信孝が外相。防衛大臣の高村正彦は高村派会長。党人事で総務会長に就任した二階俊博は二階グループの会長といったふうに派閥の領袖がより多く顔を揃えることとなっている。

 派閥単位で数えると津島派が閣僚で3人、町村派、閣僚1人、首相補佐官1人。山崎派閣僚2人。高村派が閣僚で1人。古賀派、閣僚で2人。二階グループ党人事で1人、閣僚で1人。他に無派閥閣僚3人、首相補佐官1人となっている。全体を通してみると、領袖を入閣させた派閥の場合は単数の閣僚起用となっていて、領袖を入閣させない派閥の場合は複数起用となっている。

 閣内に取込まれた派閥領袖や各派閥所属議員は内閣、あるいは首相を批判する立場を失う。取込まれた以上、例え派閥主導の政策となったとしても、表面的には安倍首相に協力する姿勢を示さなければならないからだ。安倍首相の主導の下、各閣僚が一致協力して政策を進めていくという形式を取らなければならなくなる。

 党内の派閥領袖や各派閥所属議員を横断的に閣僚に取込んだのはそのためだろう。批判という雑音を排除項目として、「協力」という名文を必須項目とさせる、いわば口封じ内閣を目論んだ。

 その典型的な閣僚採用をこれまで散々安倍首相を批判してきた桝添参議員の厚労相への起用に見ることができる。安倍内閣を支える閣僚の一員として、今後批判を自ら口封じすることにあんるだろう。

 麻生幹事長は久々の大物幹事長であるが、安倍晋三が麻生を党幹事長に据えたのは、次期総理・総裁を手に入れるために安倍晋三から後継指名がほしいばかりに言いなりべったりの協力・支持を獲得できると踏んだことからの大物起用となったのだろう。

 麻生太郎はかつて「安倍に刃向かってできると思っているのか。だから俺と手を組もう」と同じく総裁選を争った谷垣元財務相に提案したように、「安倍に刃向か」わないことを安倍首相に対する自らの姿勢と硬く決めているのである。「刃向か」わないどころか、元々おべっか使いのところがあるから、総理・総裁の座を手に入れるためになり振り構わずゴマをすってでも安倍首相をヨイショするに違いない。

 今回も谷垣派からは入閣ゼロである。これは麻生の意向が強く働いた人事なのではないだろうか。入閣ゼロによって、谷垣派領袖の谷垣元財務相は安倍内閣、安倍政治を批判できる立場を確保することができるが、批判を口にするほど、安倍首相の谷垣アレルギーは強迫観念化することとなり、その反動が麻生いとしさへと向かう。

 安倍がコケて、親ガメがコケたら子ガメ孫ガメまでコケる流れで麻生までコケたとしても、安倍の愛情をしっかりとつなげ止めていたなら、自民党最大派閥の町村派の支持は入札したも同然で、谷垣の安倍批判を内心期待しつつ、一方で「刃向か」わない媚を安倍首相に振りまく地盤固めに奔走するに違いない。

 最も次回衆議院選挙でも与野党逆転となったなら、安倍晋三と町村派の支援を受けて自民党総裁に就任できたとしても、河野洋平についで総理になれなかった自民党総裁という名誉ある勲章を手に入れることになる可能性も否定できない。

 だが、麻生太郎は安倍首相の次の総理大臣になるべきだろう。安倍晋三に優るとも劣らない日本の偉大な政治家の一人なのだから。

 麻生太郎は2001年4月に東京の外国人特派員協会で<理想の国家像を論ずるなかで、「金持ちのユダヤ人が住みたくなるような国が一番いい国だと思う」と発言。日本もそんな国を目指すべきだ。>(2001.4.21『朝日』夕刊≪「金持ちのユダヤ人」麻生氏発言 海外で批判≫)と講演したそうだが、理想の国家像を説くにその国に住む国民のありように言及しないで金持ちの外国人を例に出すとは、稀有な優れた政治センスの持主と言わざるを得ない。この発言だけで、次の総理・総裁は決まりではないだろうか。

 安倍晋三同様に歴史認識もしっかりしている。2003年5月31日に日本の知性の最高峰東京大学での講演で、「創氏改名は朝鮮の人たちが名字をくれと言ったのがそもそもの始まりだ」と安倍晋三といった日本の国家主義者以外は真似のできない特異な卓見を述べ、知性溢れる東大生に素晴らしい知的刺激を与えている。米下院の従軍慰安婦決議に関しても、「事実に基づかない」と「安倍に刃向か」わないべったり振りである。

 とにかく発想が奇抜である。北方領土返還の策としてタウンミーティングで<「島に住んでいる人たちにとって、日本に行った方が生活水準がいいぞ、と(思わせると良い)」と述べ、北方四島で日本のテレビを視聴できるようにしてはどうかと発言していた。>(06.2.23『朝日』夕刊≪麻生外相発言 ロシアが批判≫)というから、外交の王道の中の王道をいく素晴らしい発想と言える。

 ああ、これで日本の敗戦以来の悲願であった北方四島の日本返還は間近になったなと感じた国民は多かったのではないだろか。外務大臣を麻生太郎に任せて正解だったと、改めて麻生太郎に尊敬の念を抱いた日本国民は多くいたのではないだろうか。

 お陰さまで北方四島は依然としてロシア領のままである。

 政調会長に任命された石原伸晃は無派閥であるが、昨27日(07.8)の朝日夕刊記事≪自民新三役の顔≫によると、<安倍首相らと「NAIS」グループをつくった「お友達」の代表格>だそうで、無派閥と言っても安倍シンパだから、純然たる無派閥と言うわけではなく、また「お友達」の代表格(=安倍シンパ)である立場上、これも「安倍には刃向か」わない口で、これまでも「刃向か」わないこと、牽強付会、こじつけ何のそので安倍正当化に努めていた。

 赤坂の高級議員宿舎批判に対して、危機管理上、首相官邸に近いことが大切だと、カネのかけすぎとは関係のないこじ付けで正当化していたし、上記朝日記事が<政策調整では整合性を重視し、党内への配慮を欠かさない反面、「腰が引けている」と評価されることも。改正政治資金規正法に党改革実行本部長として取り組んだが、「ざる法」と批判を浴びた。道路特定財源見直しでも、抜本的見直しまで踏み込まなかった。>と伝えてもいるが、事務所費問題では民主党の1万以上の領収書の添付義務化には事務処理が煩雑になり過ぎて政治活動の自由を奪うとバカの一つ覚えのように唱えて反対を繰返し、自民党提出の1件5万円以上の領収書添付を政治資金管理団体に限って義務化し、その他の政治団体はその限りではないとした案を正当化していたが、そういった功績が功を奏して参院選大敗の一因となったのだが、口封じ内閣形成の有力な協力者に据えておくために「お友達」の代表格(=安倍シンパ)から外すわけにはいかず、今回の人事で政調会長となったのだろう。

 かくして安倍改造口封じ内閣は磐石の備えを持つに至った。

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