覚え書きのようなもの・・・分室

私の好きな音楽のこと(主にクラシック)や日々の出来事、思ったことなどをつたない言葉で記してみます

シューリヒトとベルリン・フィルのラスト・コンサート

2006年03月01日 | 音楽
・今夜はシューリヒトとベルリン・フィルの最後の共演になった演奏会(1964年10月8日)のライヴ録音を聴きました。最後の共演というのはこのディスクにそう記してあるだけなので実際のところはわかりませんが、年代的にその可能性はあると思います。収録されているのは  

シューマン:「マンフレッド」序曲 
モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」 
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

の3曲。どの曲もシューリヒトの十八番といっていい曲で、この録音以外にもそれぞれ複数の録音が残されています。この録音を含めると私の持っているだけで「マンフレッド」序曲と「プラハ」が4種類、「英雄」は6種類があります。今回私が聴いたのはCD-R盤ですが、モーツァルトやベートーヴェンは以前にもほかのレーベルから発売されてタワーレコードあたりでも販売されていたのでお聴きになられた方もいらっしゃるかもしれません。

・この時シューリヒトは84歳。しかしここで流れてくる音楽はとてもその年齢を感じさせません。生き生きとして、内面で熱いものがふつふつとたぎっている様な音楽です。熱い、と言っても響きが乱暴になったり、汗臭さのようなものは感じません。とにかく「凛」としているのです。

・「マンフレッド」序曲も「プラハ」(両端楽章の歯切れの良さ!)も、ベルリン・フィルの素晴らしさもあって聴き応え十分なのですが、やはり圧巻は「英雄」だと思います。第1、第2楽章はそれまでのシューリヒトに比べると少し遅めのテンポですが、その分、響きの格調の高さ、スケールの大きさは増しているかもしれません。特に葬送行進曲の高揚は感動的です。終楽章はいつものシューリヒトらしく速いテンポで颯爽と進んで行き、聴いていて胸がすくようです。そしてベルリン・フィルの充実した響き。力をこめて演奏している様子がひしひしと伝わってきます。最後の音が鳴った後、「ああ、素晴らしい演奏を聴いた!」という満ち足りた気分になりました。

・シューリヒトの「英雄」は一番古いSPのものは音質的に少々苦しいですが、それ以外の録音はどれも素晴らしい演奏が揃っています。そしてそのどれもが当たり前ながら違うんです。シューリヒトが常に新しい解釈を試みていた証だと思います。今、手に入りやすいものではパリ音楽院管との全集とOrfeoから出ているウィーン・フィルとのライヴが挙げられますが、どちらもモノーラル録音ながら音質良好。シューリヒトをお聴きになったことのない方にも、「『英雄』は聴き飽きた」という方にも、自信を持っておすすめできる素晴らしい演奏だと思います。

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