空華 ー 日はまた昇る

小説の創作が好きである。私のブログFC2[永遠平和とアートを夢見る」と「猫のさまよう宝塔の道」もよろしく。

銀河アンドロメダの感想 5 (異星人の文化)

2018-08-21 13:59:46 | 文化

 こんな普通のファンタジーにも言論の弾圧がある。日本は言論の自由な国の筈なのに、どうやって弾圧するのか。証拠をとられないようにしてやるのです。具体的なことは、今はあまり書きたくないので、これ以上は書きません。すみません。読者の推理力におまかせするしか、今はありません。

最近、東京新聞で、オウム事件の林郁夫について、ノンフィクション風に書いてある本が紹介してありましたので、最初の方だけ目を通してみました。

入信してきた若い女が、脱退したいと言ったら、強い薬の入った注射を打ち、狭い部屋に入れて、

監禁したことを親切心でやっている宗教の中でのことだから、国家の法は及ばないというようなことを、取り調べの警部補に言っているのです。

驚きましたね。大秀才の林が、こんな初歩的な宗教観の間違いを信じていたとは、

お釈迦さま、キリスト、日本の偉大な僧は皆、離れる者は離れるにまかせ、来たる者はどんな人でも、歓迎したという事実を知らないのでしょうか。

宗教も哲学も、自由に個人が選び、学び深く入っていく人もいるし、途中で引き返す人もいます。

自由なのです。確かに、昔はどの宗教がすぐれているとか、どの哲学がすぐれているかという論争がありました。人類にとって必要な論争だったと思います。

しかし、今は違います。人類が生き残れるか生き残れないか、という危機の時代なのです。

優劣よりも、互いの共通性を探し、互いの理解を深めることの中から、より深い真実が明らかになる時代に突入しているのです。

山の頂上に上るのに、いくつもの道があって当然。

  

宗教や哲学とは、違いますが、原発の時も、原発派と脱原発は激しい衝突をしました。

私はテレビの中で、両方の側の学者が議論というよりは、ほぼ口喧嘩のような状態になっているのを見たことがあります。その結果、権力のある側がない方を無視するということをやったのです。あの時、もう少し度量を大きくして、反対側の意見もとりいれたら、少なくとも原子力の災害は

小さくてすんだのではないでしょうか。日本は地震国なのですという声を過小評価して、科学を過信しすぎた。

皆、同じ人間です。道元にいわせれば、仏性を持っているのです。

その人達が一生懸命にやっているときは、お互いに尊重するという文化をつくり。理解するということが、今世紀の人類の危機を脱する道ではないでしようか。

 

今、ニュースを見ていると、良いニュースよりも悪いニュースがはるかに多いです。あれを見ていると、立派な人も多い筈の日本全体に、何かのウイルスが取り付いて、カミュの「ペスト」みたいに、病気が広がり、良い価値観の崩壊がおきているのではないのか、と思わざるを得ません。この間の読売新聞にはパワハラが増加しているという大きな記事を見ました。

ボランティアの活躍には 希望を見ますが。

 

 5 異星人の文化

 

  我々は話に夢中になり、「魂の出張所」の中にいることを忘れていたようだ。

それほど、その初老の男の語り口は音楽のようで、表情も魅力に富んでいた。

風景画が天井一杯に描かれていた。並木道、川、そうした風景を取り囲むような低い山、そして真ん中に城壁に囲まれた町の中の御伽の国のような湖と城と樹木。つまり、このあたりの風景そのものが正確に描かれているようだった。

我々は話に夢中になりながらも、その天井をちらりと見ていたのだと思う。

それで、スピノザ主義の詩句が響いてきたのだと、吾輩は解釈した。

我々は男に勧められるままに、テーブルの前の椅子に座り、グラスにそそがれたワインを見た。

ワインがあればと思ったら、目の前にワインが出てきたという不思議な気持ちをハルリラに言った。

「わしはそんな魔法は使っとらんぞ。こちらの方の接待じゃ、飲むがいい。わしは飲まん。アルコールを入れると、魔法の力が落ちるという学説が、最近有力になってきたのでな」

初老の男は微笑して、吾輩と吟遊詩人にワインを勧めた。

赤いワインは上質で、吾輩は少し飲んでみたが、陶然とした気分になった。

 

我々はそのスピノザ主義に傾倒する初老の鹿族の男の弁舌に興味を持ったが、男の後ろから中年のリス族の女が出てきた。(少数だがリス族もいるとは聞いていた。) 男の魅力的な発言とは裏腹に、そのリス族の女は何か陰うつな感じを我々に与えた。初老の男は用事があると言って、隣の部屋に移った。

リス族の女はやや小太りで、美しい顔立ちをしているようにも思えたが、一方で納豆のような目をしていて、暗いねばばした気を身体全体から発酵させていた。さらに奥の方の椅子に座って事務をしている若い女がいる。

 

「案内してくれないか」とハルリラが少しどもった。ハルリラがどもるということは滅多になさそうに思えるので、心の中に何か嵐のようなものが吹いたのかもしれない。それが何であるのか、考える間もなく、リス族の女は質問した。

「旅館ですか、ホテルですか」

ハルリラは「士官したいのだが」と答えた。

「士官って、お城にですか。」

「当たり前でしょ」とハルリラは答えた。

 

ハルリラは相変わらず、いつの間に百合の花を持っていた。

「花を見詰める。わしの心を無心にするためさ。わしの魔法は無心の時に、一番よく働く。同時に、この花はわしの魔法で長持ちする。今・ここの百合の美しさを見ることに没頭する。わしの神経は無心の時に一番働く。魔法の感受性もよく働く。そうすると、この『魂の出張所』の雰囲気も隅から隅までよく分かる」

吾輩の耳元でハルリラはそうささやいたので、吾輩は微笑した。

 

 

 「そちらの方もですか」と女が聞いてきた。

吾輩と吟遊詩人は顔を見合わせた。

「いや、そちらの方はアンドロメダ鉄道で来た旅人ですよ」とハルリラが答えた。

「アンドロメダ鉄道」と女は驚いたような顔をして目を大きくした。

 

 

 「それで、あなたは剣道何段くらいの腕前をお持ちなのですか」

「三段だけど、それはそういう資格を取ったということだけで、実際の実力は相当のものよ」

「でも、あんまり、強そうに見えませんけど」

「俺が猫族だから、そんなことを言うのだな。猫族はたいてい優しい顔をしている。あんたはオラウータン族のようだな。

人を顔で判断するものではない。拙者を侮辱するとただではすみませんよ。本当を言うと、俺は剣の達人なのじゃ」とハルリラは言って、腰の刀に手をかけた。

「乱暴は駄目ですよ。それに、あたしリス族ですから」と女はにらむようにハルリラを見ると、「今、電話機で聞いてあげますから、待って下さい」と言った。

 

地球から見ると、かなり古い感じがして大正時代の頃のような電話だった。受話器を手に持って耳にあて、送話器に向かって話しかけていた。

長い事、連絡しあっていた女は電話を終えてから、地図を見せて、赤い丸印がついた所を指さして、「この旅館に行って、待機して下さい」と言った。

「何日ぐらい待機するのだ」とハルリラが聞いた。

「さあ、それは分かりません」

 

我々が『魂の出張所』を出ようとする時、もう一人の鹿族の女がこちらを向いてにっこり笑い「気をつけていってらっしゃい」と言った。

目が宝石のように輝き、美しい笑顔で、まるで観音菩薩のようだった。

 

 「同じ『魂の出張所』に、魂の色合いが違う女性が二人いた」とハルリラは言った。

「魂の色合いの差。そんなものを僕も感じた。ハルリラさんに少し感化されたのかな。」と吾輩は言った。

ハルリラは笑った。

「わし等、魔法次元のものは、空海の考えを発展させて、ヒトには魂のレベルがあるということは前にも言ったことだが。

それはともかく、同じ『魂の出張所』に魂の色合いの美しいものと、曇っているものがいる。」

「確かに、同じ『魂の出張所』に納豆のような目をしたリス族の女と、観音菩薩のような女が勤めていた」と、吾輩は言った。

「おそらく、わしの直観では、あの納豆のような女は異星人の可能性がある。異星人はもうあちこちにスパイを放っている。彼らは変身の術を持っている。この惑星では鹿族やウサギ族あるいはリス族にまぎれこむ。

オラウータン族と、わしは少し茶化したが本当はサイ族の可能性がある。彼女は銅山の本局に情報を提供しているのかもしれない。これで、我々のような旅人がこの向日葵惑星にいることが本局に知られる。我々が彼らにとって利益になる人物か害になる人物か徹底的に調べられるだろう」

「僕と吟遊詩人はただの旅人ですよ。ハルリラさんは士官という目的があるから、異星人に目をつけられるかな」と吾輩は言った。

「わしはこのテラヤサ国がいい国になることを願っているだけさ。異星人はよその惑星をコントロールしようというのだから、そして、金とダイヤを儲けようというのだから、吾輩はもしかしたらにらまれるかもしれないな」とハルリラは笑った。

 

 

 「異星人はみんな、あんな魂の色合いをなしているのですか」、

「魔法次元の秘密の教科書には、同じ人間でも、一日の内に極端な例では五十から百五十まで、経験するという。普通のアンドロメダのヒトの例では、百ぐらいの所をうろうろしているのだろう。異星人はよからぬ目的を持って、よその惑星に来てやっていることを考えると、魂の色合いが美しくなるのは無理だろう。

あの納豆のようなリス族の女は八十か七十ということだろう。」

「血圧なら、貧血で、倒れてしまいますね。しかし魔界のささやきがあったのかもしれない。中々こういう問題はむずかしい」

「そうよ。そうなれば、魂の色合いの曇った連中は自分の魂が曇ったことに気がつく。曇ったまま、気がつかないというのは不幸なことさ。

 

百七十の高貴な魂のなかにも、三十の地獄のものが混じるとかいう話は聞いたことがある。二十の地獄の魂のなかにも、高貴な百七十のものがまじるとかいうのも聞いたことがある。」

「それは魔法で分かるのですか」

「魔法でわかる場合もあるし、言葉で分かる場合もある」

「言葉で」

「言葉をぞんざいに扱ってはならぬ。言葉で魂の色合いが分かる場合があるのだ」

「言葉は神なりきともいいますからね。それに、魂は進化するものではありませんか。魂はみがき、学習することにより、進化するのだと思います」と吟遊詩人が言った。

「なるほど、それは面白い。魂は生きものだから、流動的なのでしょう。」

 

 

 再び、並木道をしばらく歩き、豪華な喫茶店のような所に来た。

 我々はのどが渇いていたし、疲れていたという気持ちで、中に入った。入り口にいた女中は刀をあずかりますと言った。

武士の魂を預けるのは伯爵【殿様】に会う時ぐらいだと思っていたハルリラは「これはわしの魂じや。持って入るぞ」と言った。

「いえ、それはなりませぬ。それではお城からのお達しに違反します。ここは星印のついた喫茶なのです」

確かに天界から響くような音楽がなり、美しいステンドグラスに金色の陽光が差し込み、壁には素晴らしい風景画がいくつもかかって、椅子もテーブルも豪華だった。

「それでは仕方ない」とハルリラはあずけた。

コーヒーとパンを注文した。

食べて、窓から往来の様子を眺めていた。ハルリラのような武士はあまりみかけない。和服姿の商人風の男とネクタイに背広のサラリーマン風の男が目立つ。

 

  突然、彼の前に半袖の黄色いTシャツを着た大男が現れた。白熊族なのだろうか、肌が物凄く白い。大きな顔、大きな丸い目、腕も太い。しかし、顔の表情は柔和でひどく優しい雰囲気が漂っている男だ。

大男はずっとレストランの中を一通り、眺めると、我々の方に視線を向けた。空いている席が他にもあるのに、「ここに座ってよござんすか」と言った。

なんだか、毛むくじゃらの大男の癖に、言葉は女っぽい。

「いいぞ」とハルリラは言った。

「お宅も士官を志しているのですか。実を言って、わしもそうじゃ。わしは水車をつくることを得意としている。ここの殿様は町づくりに水車の電気エネルギーを使うと言っているそうだ」と大男は言った。

水車の技術を持っているのか。それなら、採用されるかもしれんぞ」

  

「旅は道ずれ、世はなさけ。一緒に城に行きませんか」

彼は座り、ハルリラと同じものを注文した。

「腕が太いなあ」とハルリラは言った。

「そうでしょ。腕相撲なら、誰にもまけません。それに相撲も強いですよ」

しかし、この男はひどく気が弱いのが表情で分かる、これは猫の秘伝で分かると吾輩は思っていた。それともハルリラの魔法が伝染してきたのか判断に迷う。

「しかし、おぬしは腕相撲の力で、城には雇ってもらうのではなく、水車の技術でしょ。全国版の新聞広告によると、腕に自信のあるものは高給によって雇う」と書かれているのだぞ」

「その通りです。わしは水車をつくりたいので、ここに流れる川に鉱毒がまじっているのを危惧しているのです。」

「鉱毒」

「そう、銅山があるのですよ。車と大砲と戦車をつくるために必要なんでしょうけど」

「そんなら、理解のある伯爵【殿様】に頼めばなんとかなるのでは」

「いや、それが鉱山と工場は殿様の管轄の地域を少し離れていましてね。異星人が占拠しているのですよ」

 

 

 「異星人については、ペンギン族の老人もそう言っていたな。」

「ああ、あの方」

「知っていますよ。あちこちに、神出鬼没で顔を出します。私の話も、彼から、得たもので。惑星の温暖化のことを言っていました。アンドロメダのこの向日葵惑星の近くの惑星で、温暖化で文明が滅びたという情報が入ったと、あの例のペンギン族の老人が言っていました」

「何者だい」

「仙人でしょう」

「仙人か。話には聞いていたが」とハルリラは言った。

「それはともかく、この国は 鹿族が多く、惑星全体としても鹿族とうさぎ族と温厚な気質の祖先を持っているのが多い。少数にオラウータン族とか熊族などいるが、この異星人というは一説によると、サイ族ということらしいが、いつの間に住み着いて占拠して、国のあちこちを買い占めている」

「異星人というからには、どこかの惑星から来たのですか」

「いや、それが皆目分からん。なにしろ、向日葵惑星は文明段階がまだ低い。

そこを狙われた アシアン巨大島に秘密の国があって、そいつらがこちらをねらってきたという説もあるが、あそこは寒冷地、国家なぞ昔からないというのが説。今のところ、あの科学技術のレベルから見ても、よその惑星から来たというのがもっぱらの噂。なにしろ、秘密のヴェールを閉じて我々に見せないように、隠密裏に行動するのが得意ですし、今の所、もめごとを起こす気はないらしく、経済活動を狙っているらしいのです」

「この国の価値観も変えたいらしい」

「価値観」

「競争と金銭がかれらの価値観。我らの惑星にはアニミズムの素朴な信仰がありますから。近代化を進めようとしてはいますが、神々はまだ死滅していない。ですから、違和感を感じます。

それに、一説によると彼らはミサイルと特殊爆弾を持つとも言われている。人数は少数でもあなどれないのはここですよ。彼らはそういう怖ろしい武器を持っていることで、よその惑星に来て、あんな勝手なことをしていられる。これをどうすべきかですよ」

 

 

 ハルリラはカント九条の説明をして、白熊族の大男が感心してポカーンとしているのに、さらに続けて言った。

「カント九条を作っても、警察力は必要だ。警察の特殊部隊が迎撃用の大砲を持ってはどうかな。大砲で、異星人の銅山の本局を攻撃できる」とハルリラは言った。

「それでは異星人と同じことを言っていることにならないかな。異星人は新政府に銅を売り込み、それで大砲をつくれと勧めているのですよ。儲かりますからね。つまり、異星人にとっては、大砲なんか怖くないんですよ。大砲は隣のユーカリ国相手の武器競争を駆り立て、自分たち異星人は儲けようという死の商人の魂胆がありありと分かるではありませんか」

「それなら、気球で銅山の本局に乗り込み、我ら剣の達人が襲い、彼らを縛り上げる」

「不意打ち作戦ですか。面白いけど、うまくいきますかね。向こうだって、そのくらいのことを考えて、強力な武器で反撃してくるかもしれませんよ。それに、今、説明してくれたカント九条の理念に反するではありませんか。カント九条は素晴らしいが、防衛のための力は必要だとおっしゃるのでしょう。もちろん、必要ですよ。それと並行して、お互いの文化の交流をすることの方が平和への近道という気がするのですがね」と大男は言った。

「貴公はみてくれと違って、意外に理想主義者だな。面白い意見だ。で、異星人の文化は」

「彼らは踊りが好きなのですよ。その踊りの衣装には、莫大な金をかけるらしく、踊りも様々なものがあるらしいのです」

「ほお、それでは接点があるではないか。踊りの中には、神々がいらっしゃるものだからな」

吟遊詩人がヴァイオリンを奏でた。レストランにちらほらいる客の目が輝き、うっとりするような顔をした。

そして、詩人は歌った。

「おどれよ。踊れ。

自分を忘れてしまうまで踊ろうよ。

さすれば、もろもろの自然の事物は宇宙の真実が表現されたものとなる

花も 

昆虫も

空の川も

小川も

我を忘れて 夢中で踊れば、全ては友達になる

全ては一個のいのち 全ては友達、一個の明珠

それが分かれば、異星人の価値観も変えられる

そして、鉱毒も消え、清流がよみがえる」

 

                                                                    [つづく ]


                                                            久里山不識

      

 

 

 

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