空華 ー 日はまた昇る

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ファウストの嘆き

2020-08-04 15:06:18 | ファウストの嘆き
ファウストの嘆き   ダークマターをヒントに 



そろそろ我々は気がつかねばならないのかもしれないと思った。それはつまり、安全神話を信じている内に、信じられないような恐ろしい原発事故が起きた、それと同じように、科学神話にだまされて、過去と今の偉大な不滅の宝を迷信と片づけていたのではあるまいかと。いのちの神秘だ。これは既に過去の偉大な哲人が解決している。哲人は何人もおられると思うが、一人あげろと言われれば、お釈迦様だと言おう。それに日本の偉人を加えなさいと言われれば、最澄、空海、法然、親鸞、道元、日蓮それから、私の好きな良寛をあげたいと思う。西欧にも、こういう方に匹敵する方はおられる。それなのに、それを科学信仰の故に、子供たちに迷信を教えてはならぬとされてきた。中学、高校の教科書にこれらの偉人の優れた文章が殆ど掲載されていないし、そういうことを学校で教わった記憶はないのではありませんか。奇妙な話だと、気づく時が来たのではないか。
こう思った時、以前にも書いたことであるが、ふと思い出したのは私の好きな場面のゲーテの「ファウスト」の言葉だ。グノー作曲歌劇「ファウスト」の最初の場面に出てくる、あの「分からない」というファウストの叫び。ありとあらゆる学問を研究した老学者ファウストが、結局 人間が知りたい本当のこと、は分からないのだと。ゲーテは文学者としてでなく、科学者としても一流というのが最近の評価です。
最近、ダークマターとダークエネルギーのことが科学の世界で話題になっている。我々が知っていた物質の研究、医学、生命科学を含めて、そうした物質といわれるのは宇宙に五パーセントしかなく、あとは皆目分からないもので、それが九十五パーセントを占めるとか。
医学、生命科学と言ったって、DNAが解明され、人間の免疫の偉大な働きが分かり、遺伝子治療が目前と言っても、生命の神秘はいまだ神秘。分かっている分野の五パーセント内だけでも、謎は深まるばかりだという。例えば、音。科学では音波として解析される。そして、この音波が耳に届き、脳の神経回路に届く。しかし、それが何故ベートーベンという音楽となって心に鳴り響くのかは解明されていないのだ。それなのに、全く分からないダークなものがまだ、九十五パーセントあるとは。
人間は利口だと言って、えばってみても、もう一度ファウストの嘆きが現代のものだと気付くはずだ。
(いやはや これまで哲学も
法律学も、医学も
むだとは知りつつ神学まで
営々辛苦、極めつくした。
その結果がどうだといえば、
昔と比べて少しも利口になっておらぬ。
学士だの、おこがましくも博士だのと名乗って
もうかれこれ十年間も弟子どもの鼻づらを縦横無尽に引回してきはしたものの
さて、とっくりとわかったのが、
人間、何も知ることはできぬということだとは)  (ファウスト、高橋義孝 訳より )

一番分かりやすい所から言えば、我々が毎日 感じている風景の色と音。これは今の科学では脳神経細胞でいずれ解決されると。いずれなのだ。しかし、その気配すらないのに、何人かの科学者はいずれ、と言う。心とか魂というのは皆、脳の神経細胞に還元されると素朴に信じる科学者。それは科学を進める立場で言うのは、一向にかまわないが、それが一般の人々の価値観になっては困る。先程、言ったように繰り返しになるが、一部の原子力工学者の言うような安全神話にだまされてはまずい。あの安全神話には、反対していた科学者も多数いたのだのだが、人数的には少数派になり、権力と結びついた御用学者に押されてしまっただけなのだ。これは科学信仰の場合にも言える。科学信仰に反対する有力な科学者は何人もいるのだ。例えば、大物では電子の方程式をつくったシュレンデインガー。
日本でも、素晴らしい本を書く方がおられる。筑波大学名誉教授の村上和雄先生の書かれた「魂と遺伝子の法則」は感動的である。村上先生は生命科学の分野で大きな仕事をされた上で、本では専門の生命科学のことが物凄く分かりやすく書かれていて、DNAは神業であると言われている。
魂はまだ科学の分野では未知の領域であるが、あるのではないかと。

私の感じでは昔の人が素朴に信じていたのに、現代の人は見えない世界はないのではないかと思うようになった。魂も見えないから、ないのではないかと。

ところが、科学者の中から、そうした科学信仰に反対する人が声をあげるようになったことを思うと、ふと、シュタイナーとかいう思想家が人間は体と魂と霊でできていると言った言葉が真実味を帯びてくる。日本では徳川末期に出た大学者、平田篤胤などもあの世のことを言っている。

ただ、ここで注意しなければならないのは キリストも言われていることである。
「偽預言者に注意しなさい」ということだ。
こういう未知の領域には、今の日本のように金銭至上主義の社会では、金儲けのための偽預言者が出る可能性がある。
本物と偽物を見分ける訓練をして、未知の分野の探検をしようではありませんか。

[ 補足    ゲーテは文学者というイメージが強いが、色の科学で、ニュートンと違った考えを持ち、「色彩論」を著した科学者としても、知られる。このゲーテの影響のもとに、シュタイナーの思想が作られたとも聞いている。現代の量子力学が出てきても、世相の価値観はニュートン力学の影響にあることを思えば、ゲーテのニュートンへの挑戦は正しかったとも言える。何故なら、ニュートンの価値観はもはや古臭くなっているのだから。自然は限りなく深いということであろうか 〕