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モラモラ会社員がムラムラしながらお届けするヌルヌルアーカイブ。

新宿ゴールデン街の奇跡でXserve

2004-06-13 | ぷらぷらアーカイブ
その日、新宿ゴールデン街に奇跡が起こった。期せずして、俺はその証人になったんだ――。

元同僚のばななんと、ゴールデン街に行くことになったのは、本当にひょんなことからだった。

ある日、インスタントメッセンジャーのステータスに「ゴールデン街探訪本日決行」と出していると、「行ってみたい店があるんです」というメッセージが。聞けば、20年ごしに再会したい人がやっている店があるとのこと。

ゴールデン街でもかなりの古株にあたると思われる店、「唯尼庵」。ここの主が、ばななん意中のその人・キヨコさんであるらしい。

実際に訪れてみると、狭くて雑多で酒が旨くて懐メロが流れる、これぞゴールデン街! という感じの店だった。ちなみに、俺が座った椅子のカバーは、ガキにカッターでいたずらされた自転車のサドルみたいになっていた。

そして、↑の写真。キヨコさんが76年に記念で撮ったヌード写真とのこと。キレイだなぁ。っていうか、ず~っと髪形変えてないんだなぁ。あ、76年といえば、俺やばななんが生まれた年じゃん(ラムネもあるじゃん)――なんてなことを思っていると、ばななんとキヨコさんはまったりと20年ごしの再会を果たしていた。入店5分にして、すでになじみの常連みたい。なんか、俺なんぞいなくても、全然大丈夫じゃん……?

でも、来て良かった。本当に良かったんだ。

ばななんと、キヨコさんと、三人の同音異字のキヨシが折り成す、血の繋がりよりも強い絆で結ばれた愛の物語。俺の眼前で、それはまるでリアルな叙事詩のように語られた。

隣の席では赤軍くずれのダンディーなオヤジが、

「郵便局に資金調達に行ったがばかりに懲役15年くらって15年逃げたけど、実は8年余分だった」
「妹が韓国のKCIAに俺と間違えられて拉致された」
「仲間内5人集まりゃ、100年越すね。懲役が」

なんてな話をフツーにしている。そして、コテツという店のオヤジが、

「コイツがムショから出てきた仲間と20数年ぶりに再会したときは、なぜか服役してた方が『俺も辛かったけど、シャバにいたお前の方が辛かったかもなぁあ』と2人で号泣しながら抱き合ってたんだよ。バカだね~っ」

みたいな濃ゆいツッコミをここぞとばかりに入れる。

(回想シーン:45分)

トイレから戻ってふと見ると、ばななんの目に大粒の涙が浮かんでいた。その涙は、まるでブリリアントカットのダイアモンドのように、まるで幻の銀水晶のように、透き通った輝きを放っていた。

あらゆる偶然が、星々の運行やゲマトリア数秘術でも解き明かせないセオリーをもって積み重なっていく、絶対運命黙示録。プラスα、20年というもう戻ってはこない歳月が、一つの情動としてばななんの涙腺を緩ます――

そんな、奇跡の涙だった。

思わず「ゼルダの伝説」のリンクばりに、小ビンに採取して掲げたくなった。

♪チャ・ラ・ラ・ラ~ン

ああ。今夜も、最高のギグだったさ。

ありがとう、ばななん。
ありがとう、唯尼庵。
ありがとう、新宿ゴールデン街の、街の灯。