<米国版人民日報は米ニューヨーク・タイムズか>
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2020.7.2(木)福島 香織
福島 香織のプロフィール
(ふくしま・かおり)
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』(ワニブックス、2020)、『習近平の敗北 紅い帝国・中国の危機』(ワニブックス、2020)、
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』(ワニブックス、2020)、『習近平の敗北 紅い帝国・中国の危機』(ワニブックス、2020)、
『中国絶望工場の若者たち』(PHP研究所、2013)、
『潜入ルポ 中国の女』(文藝春秋、2011)
などがある。メルマガ「中国趣聞(チャイナ・ゴシップス)」はこちら。
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人民日報などは、香港国安法の導入によりデモがなくなり香港が平和で安定すると喜ぶ市民や財界人の声を取り上げている。
米ニューヨーク・タイムズも「一部の財界人、銀行家が、国安法施行によってビジネスハブとしての香港の地位を高めるという北京の見方を支持している」と報じている。
実際、中国企業の香港回帰の動きが目立っている。例えば中国のEコマース大手の京東は6月18日に香港取引所に上場し、およそ300億香港ドル(約4200億円)を調達した。また、すでに米ナスダックに上場しているゲーム大手の網易(ネットイース)は6月10日、香港取引所で210億香港ドル(2900億円)の株式を公開した。他にも昨年11月ごろから、香港のテナントに中国企業が続々と入ったり、中国企業による香港経済テコ入れの動きが顕著だ。米中新冷戦構造の中で欧米市場に居づらくなった中国企業が香港に集中しそうな動きは確かにある。
だが実態は、中国版スターバックスと呼ばれ、一時飛ぶ鳥を落とす勢いのラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)の不正会計が暴かれ、ナスダック上場廃止となった事件などもあり、欧米市場で中国企業への信用が著しく低下し始めるなか、在外中国企業が中国(香港)に回帰しようとしていると捉える方が適切だろう。経済のブロック化の動きが加速している、ということでもある。
これが香港の地位を高めることになる、と考えるのは中国だけだろう。
香港の地位は、異なる価値観で動く経済をつなぐ役割を担えていたから輝いていたのだ。
米国はすでに香港に対する優遇政策を撤廃し、香港への防衛装備品輸出の終了などを表明している。また香港の自治破壊に加担した中国高官、香港高官に対する制裁も打ち出している。さらには、国際的な決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)から中国と香港の金融機関を排除するといった金融制裁措置に踏み切るのではないか、という見方も出てきた。
世界情勢の流れとしては、おそらく金融、経済、貿易の枠組みが米中を中心に引き裂かれていく動きは止められそうにもない。香港国安法は、中国にありながら法治と自由を謳歌していた香港を扼殺(やくさつ)したその力のままに、世界の亀裂をめりめりと広げていくことになるのではないだろうか。
7月1日、私は1日中、香港の死を思って、世界の分断を思って、沈鬱だった。だが、日本はまだ言論の自由も政治活動の自由も維持している。この自由をどのように行使していくか、その自由な言論や行動で日本や国際社会を少しでも良い方に導くことができるか、これを機会によく考えてみたい。