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小泉進次郎農相が16日、コメの単位面積当たりの収穫量が多いか少ないかの見通しなどを示す農林水産省の「作況指数」を廃止する方針を示した。
近年は気候変動などの影響で実態と合わなくなっているためだとの説明に同調する意見がある一方、疑問視する見方もある。
今回の作況指数の廃止をどう考えるか。
コメの作況指数は、流通価格を決定する入札や、翌年度の生産目標数量の決定など、各種の判断に当たっての重要な指標となっているとされている。
本コラムで、筆者は簡単な経済学の応用であるとして、
農水省が公表しているコメの需給に関する統計から超過需要率と価格上昇率との間にきれいな関係があることを指摘した。
作況指数は、もし正しく推計できれば供給に関する重要な情報になる。
しかし、コメの需要は誰にも分からず、
価格も分からないので、
作況指数が入札価格の参考になるといっても限界的だろう。
さらに、
翌年度の生産目標数量なんて、
需給を政府が管理しようとしている段階で、
無理な政策である。
需給調整を行うために作況指数が必要というなら、
筆者は、作況指数そのものを農水省が行うべき統計であるかを疑問視する。
実は農業関係者の間では、
農水省が発表していた作況指数はあまり信用されていなかったようだ。
農水省の作況調査は8000の圃場(ほじょう)を道府県別の無作為抽出で実施されている。
しかし、
統計の観点からは、
コメ自体が多品種であるために注意深いサンプル抽出が必要であったが、
これまでの長年慣行により、
あまり科学的な抽出方法でなかったようだ。
その結果、2023、24年とも101(平年並み)とされた。
これは、この両年が不作であったという実感を持つ農家からすれば過大評価であり、農家・コメ業界を混乱させた。
農水省はコメの需給に関する統計を公表しており、
供給は減反政策を反映して毎年確実に低下しているが、
23、24年はその傾向線からみてもさらに低い水準で、
とても平年並みとはいえない状況だ。
農水省は、
作況指数に代わり、
気象や人工衛星のデータを活用して精度を向上させ、
より実態に近い数値を発表する予定だ。供給予想について、
農水省が何らかの情報提起をすることは否定しないが、
それを減反政策に結び付けてコメの需給調整をするというのであらば、
そもそも政府にはできない話だ。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)