もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

トランプ大統領の退院と経団連会長

2020年10月07日 | アメリカ

 トランプ大統領が72時間のコロナ治療を終えて退院したことに関する三題噺。

 大統領のコロナ感染について経団連の中西宏明会長が記者会見で「ある意味で自業自得だと思う」と述べた。
 自分は「自業自得」は”それ見たことか””ざまあみろ”のニュアンスを込めて使用するが、財界のリーダーが利害浅からぬアメリカの指導者に使用したのであれば、自分の知識を超えた含蓄ある言葉であるのだろうと考えてネットで調べた。仏教用語の解説では「すべての結果には必ず原因があるという因果の道理に立脚して説かれ、自分に起きるすべての運命は自分の行いの結果だと教えられています。因果の道理を根幹として、善因善果(ぜんいんぜんか)、悪因悪果(あくいんあっか)、自因自果(じいんじか)とし、善いことが起きたときも自業自得という」とされていたが、各辞書に共通しているのは「一般には悪い報いを受ける場合に用いる」という点であり、類義語として「因果応報」「自分で蒔いた種」「身から出た錆」も挙げられていた。財界トップの発言であれば外国に配信されるだろうが、おそらく、多分にトランプ氏を揶揄する意味合いを持たせた翻訳で配信されたのではないだろうか。コロナ後もサプライチェーンの中心に中国を考えている中西会長としては、語るに落ちた発言であるようにも思える。
 トランプ大統領の入院先がウォルター・リード米軍医療センターとされていることも興味あるところである。
 ケネディ大統領の遺体がワシントンDCに帰還した際に安置されたのはベセスダ海軍病院であり検死も軍医が行っている。レーガン大統領が退任後に皮膚がんの手術を受けたのも海軍病院であったように記憶している。これらの一連の出来事から見ると、セキュリティーの面もあるのであろうが、軍病院が指導者や長老の治療を行い得る医療水準にあることを示しているようである。またCDCの中枢にも多くの軍人が在職しているとされている。果たして日本の指導階層のうち何人が自衛隊病院に生死を委ねるだろうか。
 入院が72時間であったことについて報道では大統領選挙のためとしているが、別の面もあるのではと考える。大統領入院の翌日にはペンス副大統領への権限移譲が取り沙汰されたが、ホワイトハウスがクラスター化したために副大統領も感染していることが懸念される事態となった。もしコロナ感染・隔離が大統領権限移譲の条件となった場合、ペンス副大統領の次はトランプ嫌いの急先鋒である民主党員ナンシー・ペロシ下院議長が大統領権限を代行することになる。トランプ大統領にとってペロシ大統領代行は最悪のケースで、民主党の意に染まぬ大統領令を軒並み無効にすることも可能になるため、トランプ大統領としてはコロナ禍に因る権限移譲連鎖は何としても阻止したかったのではないだろうかと考えている。さらに好意的に考えれば、核のキーを預かる大統領職を遂行するための責任感からの早期退院であったのかも知れない。

 経団連の中西会長の発言は、9.11同時テロで”ザマァみろ”、コロナ禍で”痛快”と発言した野党の嫌米議員に通じる軽率な発言とする以上に、日本にとっての損失は大きいように思う。菅内閣は外交政策の1つとして、安倍政権の掲げた「自由で開かれたインド太平洋」構想を継承して米豪印と連携して中国封じ込めに積極的に貢献するとしているが、政府の後方支援を担う財界トップが中国頼みであるとの印象を内外に示すことは、得策ではないように思う。中西会長は闘病中であるらしいので、気力の衰えによる妄言であったのかも知れないが「自業自得」は無いだろうと思う。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿