以前から見ようと思っていた「
Sherlock/シャーロック」のレンタル版DVDをようやく鑑賞。
本編はUK版とNHKの録画で十分だから、日本語版のDVD or ブルーレイは持ってないんだけど
「コメンタリー」が見たかった。
UK版DVDにもモチロン入ってるんだけどね。
メイキングは字幕があるから、ワタシのつたない英語力でも調べれば理解できそうだけど、
「オーディオ・コメンタリー」は英語字幕すら入ってないので、聞き取れたトコロしか意味が分からない…。(^^;
というワケで、コメンタリー目当てでレンタル。
ちなみにレンタルDVDの内容は、
<シリーズ1>
・「A Study in Pink/ピンク色の研究」 … 本編(テロップ:日本語版/英語版)・コメンタリー
・「The Blind Banker/死を呼ぶ暗号」 … 本編(テロップ:日本語版/英語版)
・「The Great Game/大いなるゲーム」 … 本編(テロップ:日本語版/英語版)・コメンタリー
<シリーズ2>
・「A Scandal in Belgravia/ベルグレービアの醜聞」 … 本編(テロップ:日本語版/英語版)・コメンタリー
・「The Hounds of Baskerville/バスカヴィルの犬(ハウンド)」 … 本編(テロップ:日本語版/英語版)・コメンタリー
・「The Reichenbach Fall/ライヘンバッハ・ヒーロー」 … 本編(テロップ:日本語版/英語版)・SHERLOCK UNCOVERED(メイキング)
販売用のDVDと内容が違うのは「シリーズ1」に「A Study in Pink/ピンク色の研究」の
パイロット版と、
メイキングの「Unlocking Sherlock」が入ってないトコロかな。
パイロット版は無理だとしても、「シリーズ2」はメイキングが入ってるのに「シリーズ1」には入ってないのが残念。
<A Study in Pink/ピンク色の研究 ~commentary/コメンタリー~>
<解説者>
SV : Sue Vertue (スー・ヴァーチュ) ・・・ Producer
SM : Steven Moffat (スティーヴン・モファット) ・・・ Co-creator、Writer
MG : Mark Gatiss (マーク・ゲイティス) ・・・ Co-creator、Writer、Actor (Microft Holmes)
■悪夢から目覚めるジョン
SV : 製作のスー・ヴァーチュです。
MG : 製作総指揮のマーク・ゲイティスです。
SM : 製作総指揮と第1話脚本のスティーヴン・モファット。
最初に製作に至る経緯を説明したほうがいいだろう。
シャーロック・ホームズを現代化しようという発想は、僕とマークが電車で話していたことから始まった。
以前から一番好きなシャーロック・ホームズ映画はペイジル・ラスボーンの”現代版ホームズ”だと話してた。
邪道だが原作に忠実だ。”また誰かが現代版を作るな”とぼやいていた。
MG : 君は奥さんにその話をした。
SV : 私よ。
MG : 先に言っておくが、この話をしにモンテカルロに行ったわけではない。
たまたま授業式に出るためにモンテカルロにいたんだ。
週末のモンテカルロでスーが間に入って僕らは話し合った。ステキな場所だったよ。そして僕らがやると決めた。
SM : そんなに古い話じゃない。2007年か2008年のことだ。あっという間だったよ。
あのモンテカルロのランチから始まり、瞬く間に3本の90分ドラマができた。大したもんだ。
SV : ”クライテリオン”でランチ会議したのも覚えてる?
MG : 原作でワトソンとスタンフォード青年はクライテリオン・バーで再会するんだ。
その後、ワトソンはホームズを紹介される。ランチで僕らはBBCに企画を伝えた。すばらしい食事と会議だった。
現代版シャーロック・ホームズは簡単に作れるものだと分かってもらえた。最初の段階からね。
そこで”ピンク色の研究”のパイロット版60分を作ることになった。
■オープニング後、被害者の詳細
SM : 第1話はパイロット版として作られた。
MG : DVDで見られるかな?
SM : 収録されるよ。同じストーリーの60分版だ。だが継ぎはぎして90分になるわけじゃないから、結局全てを撮り直した。
見事な撮影をしてくれたのはポール・マクギガン監督。「ギャングスター・ナンバー1」「ラッキナンバー7」の監督だ。
テレビでは見かけないような斬新なショットがあって秀逸だよ。
このドラマの見どころと言えば映像も大きな割合を占めるんだろうけど、やっぱり映画監督だからうまいんでしょうかね?
名前にピンとこなかったけど「ラッキナンバー7」だけ見たことがあるなぁ。
MG : このあとのショットが最高だと思う。愛人の目にあふれる涙が、斜めに降り注ぐ雨のシーンへつながる。
SM : 実にすばらしい表現だよ。普通の人は思いつかないね。
傘を取りに行き死ぬ青年はジェームズ・フィリモアだ。原作では未解決事件として出てくるんだ。
MG : 実話でもある。
SM : そうだ。
MG : 傘を取りに戻ったまま失踪した男。フィラデルフィアで、
SM : 失踪が多い。
MG : パイロット版を製作したのは2009年だったかな。
SM : そう。
MG : もう昔みたいだ。僕らは満足したし、BBCも喜んでくれた。「刑事ヴァランダー」のようなミニシリーズにしたいと言われたんだ。
一瞬、息が止まったあと”オーケー”と返事したよ。90分のテレビ映画を作れることになって僕らは張り切ったよ。
どちらも十分に描く時間が必要だ。
■警察の記者会見
SV : このシーンの途中でポールが体調不良で帰宅したから、残りを私たちが撮って、ものすごく時間がかかったの。
”次に行こう”って言う人が誰もいなかったからよ。
SM : スーが監督を?
SV : 私と撮影監督と記録係と第1助監督の4人で、いつもの8倍時間がかかった。
SM : メールのテロップはポールのアイデアだ。実は全3話は逆の順序で撮影してるんだが
第3話の時に彼がこのアイデアを思いついた。携帯画面のカットを省ける。
エピソードが逆の順番で撮影されたってのは聞いたことがあったけど、
役者さんって演技がややこしくなったりしないのかしら?(^^;
「テロップ」が監督のアイデアだったとは!グッジョブ。
MG : 別人の手だ。
SM : 携帯をつかむ手はたいてい別人だ。
だが我々は普通と違う表現を使ってるんだ。本シリーズの特徴にもなり、気に入ってる。
SV : 携帯画面のカットは最終日に撮るの。誰も乗り気じゃない。
SM : あのカットがあると頭が悪そうに見える。画面をじっくり見て”よし分かった”ってね。
MG : 考え込むんだ。
SM : ルパート・グレイヴスだ。最初はレストレード警部と呼んでいたが。
MG : 「シャーロック・ホームズ」は当然ながら天才作家アーサー・コナン・ドイルによる名作だ。
僕らが子供の時に夢中になった物語さ。
これはあくまでコナン・ドイルの作品だが、すべてを新しくするという試みは現代版の新たな”聖典”を作るということだ。
服装を現代的に変えるだけじゃダメだ。すべてを現代に当てはめる必要がある。
ある日の朝3時頃、横になっていて思い浮かんだ。”インスペクターじゃなくてDIと呼ぶべきだ”。
すでに撮影が進んでいた時だったけどね。
■再会したジョン&スタンフォード
SM : ホームズ・ファン向けのネタだが、マーティンが見えやすいように持ってるカップのロゴに注目して。
”クライテリオン”と書かれてるんだ。原作で2人はクライテリオン・バーで再会する。
だから原作に敬意を表して”クライテリオン…”
MG : ”コーヒー・バー”と。
実はパイロット版で僕らはクライテリオンに行ったんだ。豪華なエドワード調の内装の店だ。本撮影では行けなかった。
SM : はっきり特定できないように撮ったけどね。
■セント・バーソロミュー病院のシャーロック&モリー
MG : 遺体安置所だ。シャーロックの初登場シーン。
SM : 善良な老人の遺体を、ムチで打ちながら登場するドラマの主人公は珍しい。
MG : 獣医ドラマ以来だ。
SM : ミス・マープルとね。
SV : 映像化されたことは?
MG : 初めてだと思う。
SM : 原作の「緋色の研究」でスタンフォードが言うんだ。”遺体安置書で死体を打つ異様な人だ”とね。
MG : ”解剖室”だ。会話に出てくるだけなんだ。このシーンを撮れてうれしかったよ。違和感を覚えるファンもいるかもしれない。
今までに映像作品では触れられたことのない一面だからね。
でも僕は7歳の頃「緋色の研究」を読んで、死後どんなアザができるのか検証するために
死体をムチで打ってるホームズの姿を想像できた。笑える小ネタが満載なんだ。
SM : 初めて呼んだホームズものが「緋色の研究」だった。
面白いことにワトソンがアフガニスタンにいたことをホームズはすぐに言い当てるが
その理由が明かされるのは2章先だ。感心したよ。
MG : コナン・ドイルは聡明な作家であり、自身の傑作シリーズにはうんざりしていた。
だがそれも作品の魅力の1つだと思う。違う作品を書くことも…、
SM : うんざりしてたと思う。20歳代から60歳代まで同じシリーズを書いた。
若い時も中年になっても年老いても同じ話を書いてると思うと嫌になるはずだ。
長年1つの作品に縛られたら飽き飽きするのが普通だろう。
SV : 書き方はずっと同じ調子?
SM : 晩年の作品ほど、ややストーリーの質が落ちるが長い間、見事に変化がない。
MG : ”傑作ではないが最善を尽くした作品だ”と彼は後期の秀作について語ってる。
いくつかの晩年期の作品はすばらしいと思う。見事な推理が光ってる。
SM : 「ソア橋」は晩年の秀作だ。作品を並べた時、見分けがつかない。
どれを28歳で書いて、どれを60歳で書いたかね。ほとんどキャラクターに変化を加えなかった。
天才的だと思うのは60作品中たった一度だけ、ある瞬間を描いていることだ。ホームズとワトソンの純粋な愛情を表す場面さ。
「三人ガリデブ」でホームズが”ケガはないな?”と言うんだ。間違いなくその一度だけだ。
表面上は探偵物語だけど、実は友情を描いた物語なんだ。男の友情は語られることが少ない。
”僕たち友達同士”なんて男は言わない。
MG : 言う必要ない。
SM : その友情を描くのを僕は楽しんでるよ。
表立ったテーマじゃないが、慕いあう2人の男の友情は重要な裏のテーマだ。
SM : これもポールによる見事なショットだ。(被害者ジェニファーが、震える手で瓶を取るシーン)
”ベーカー街”って言葉だけでなぜか興奮するよ。
■221B Baker Street を訪れるシャーロック&ジョン
MG : いい感じの建物だ。白のしっくい壁が雰囲気に合ってる。僕らは無理に現代的なものを入れてるわけじゃない。
例えばベネディクトにホームズの面影がなかったら魅力がないのと同じだ。
イギリスには今もビクトリア調の家が多い。インテリアに関しても同じだ。自然な現代性を見いだすのがむずかしかったよ。
SM : ここは不自然だと思うけど”221B”と付けずにいられなかった。建物のドアに番地の表示があるのは妙だ。
でも”221B”は外せない。いろいろ言い訳を考えてあるよ。
初めてドアの「221B」を見た時は、キタ━(゜∀゜)━! って思ったけど、よく考えたらオカシイよね。
だって「221B」はシャーロック&ジョンの部屋の番号であって、ハドソンさんの部屋や、
「大いなるゲーム」で出てきた、カール・パワーズのスニーカーが置かれてあった地下室「221C」の入口にもあたるのに。
でも、つじつまが合わなくても、これは必須だ!(笑)
MG : もし表示を変えたら画期的だね。”221B”と。
SM : 味気なさすぎる。ベーカー街の部屋のセットだ。
SV : くつろげる部屋だった。
MG : パイロット版とは少し違う。居心地はいいけど学生風の汚い部屋とは違う。豆をよく食べる若い独身男2人の部屋だ。
皆が過ごしたくなるような部屋でないといけない。
ポールは壁紙にこだわりがあって、パイロット版より赤みのないビクトリア調にした。
SM : ポールは自他ともに認める”壁紙フェチ”なんだ。だが実は僕も別の映画を見て、壁紙にケチをつけたりしている。
MG : 壁紙のない映画?
SM : ”つまらない壁だ”ってね。
SV : 最初はフロアに段差があった。
MG : でも皆が転ぶからやめた。
主役2人のことを話す前にハドソン夫人役のウーナ・スタッブズの話をしよう。彼女は人間国宝ものの重要な役を演じてくれた。
ハドソン夫人はよく世話を焼いてくれて、抱きしめたくなる存在だ。
ウーナのハドソン夫人は、通常ホームズとワトソンはもう少し年上で、ハドソン夫人はかなり年配だ。
この作品の彼女は息子を世話する母親に近い。
SM : 脚本にあったか忘れたが、気に入ってる場面がある。
シャーロックは冷徹で高慢だが、ハドソン夫人が大好きなんだ。進んで抱きしめたりキスしたりしてる。
面白い描写だ。彼は常に冷たいってわけじゃない。好きな人にはやさしい。
MG : このあとの2人のやり取りはある意味、息子と母親みたいだ。彼女が正しいと分かってるからイラつく。
SV : ウーナ自身もステキな人よ。
SM : 誰にも代えられない貴重な存在だ。記者会見後に行われた試写会でも、ウーナのセリフで毎回笑いが起こってたと思う。
MG : 別のドラマでは意地悪なサリーおばさんを演じてた。意地悪なハドソン夫人はどう?
SM : サリーおばさん並みに恐ろしいキャラクターになる。人の邪悪さを完璧に描いてね。
ここは書きたくて書いた大好きな場面だ。気に入ってるし、完璧にでき上がった。(「もっと見たいか?」のシーン)
MG : 大きな満足感が得られるシーンだ。
投げやりになっていた男が突然、息を吹き返し悠然と歩き出す姿は見ごたえがあるからね。
■221Bから事件現場へ向かうシャーロック&ジョン
SV : 2人が移動するシーンのカメラワークを見て欲しいの。
SM : ワイプで画面を切り替えて場面転換をしてる。だがカメラの動きに注目だ。ありえない撮り方をしていることに気づくはずだ。
ここで彼は外へ。この後のカメラワークを見て。カメラが外へ飛んでいく。
SV : 長身のカメラマンかも。
SM : ありえない高さだ。
MG : 第3話のゴーレムだ。最初は屈んで次に起き上がった。
SM : 種明かしをしよう。実はマーティンが手前を横切ったのがワイプになってる。
SV : まったく同じ位置で撮るの。タクシーのショットも工夫が利いてる。
MG : これはベネディクトとマーティン。紹介は以上だ。自分達で話すだろ?
SM : その通り。ベネディクトは現代版シャーロック・ホームズ役のオーディションをした最初で唯一の人物だ。
MG : ジェームズ・ボンド役の候補なら5~6人はいるだろう。だが1人しか思いつかない時もある。
「つぐない」を見た君とスーがベネディクトを挙げた時、彼と知り合いだった僕は”なるほど”と思った。
オーディションを見て完璧だと思ったよ。
SM : 君は彼を見て即決したね。その決め手は?
MG : 僕らが30代前半の若い俳優を探してたっていうのもある。
その年で風格があり尊大で、ラスボーンっぽさも出せる俳優はめったにいない。
SM : だから彼のほかに候補がいなかった。
MG : あとは彼が優秀な俳優で将来性があるからだ。
SM : スター性を持ってる。
MG : 彼は確かにホームズっぽいが、大事なのは外見じゃない。
身長や身体的特徴だけでホームズを決めるわけじゃない。役になじみ自由に演じていることが重要だ。
だが俳優としてベネディクトだ偉大だと思うのは、実際の彼がすごくドジで陽気な男だってことだ。
ドラマのシャーロックとはまるで違う。
SV : ゆうべ劇場で見たけど、役とは別人だったわ。
SM : 似ても似つかない、まるで正反対だよ。
ドラマばかり見てると彼の人柄を忘れがちだけど、ドジで人懐こくてやさしい男なんだ。
唯一、共通点があるとすればベネディクトは優しくて、シャーロックは横柄だけど2人とも人使いが荒いことだ。
ベネディクトには”優しい支配者”って言葉が合う。
MG : 事件解決のために彼を呼んだけどムダだった。
SM : まるでダメ。次回はがんばって欲しい。
MG : シャーロックには大満足だ。皆も喜んでくれたらいいね。
SM : マーティン・フリーンマンはベネディクトと正反対だ。才能があることを除けばね。
ベネディクトは俳優の”珍種”のような存在だと思う。平凡な人には見えないし、いつも変わった役を演じている。
だがマーティンは平凡な男をよく知ってる。彼のリアルな気難しさが大好きなんだ。何テイク撮っても新鮮な演技を見せてくれるよ。
第3話で指の臭いをかぎ、消毒剤に気づく場面がある。どのテイクも”初めて知った”って顔をしていて感心した。
確かに、変人を演じるより何の特徴もない普通の人を演じる方が難しいのかもね。
マーティン・フリーマンは普通の人の演技がリアルすぎる~。
何度もドラマを見てると「細かい!」と感心する演技や表情がたくさん出てくるし。
■事件現場に到着したシャーロック&ジョン
SV : パイロット版でも使った道路よ。その時は大雨だった。私たちの使った家は売られて、ずいぶん内装が変わってる。
MG : ステキな家だ。
ジョン役の俳優を探すのはもう少し複雑だった。ベネディクトは決まってたから彼に合う相手が必要になる。
これがキャスティングの不思議なところだ。いい俳優がたくさんオーディションに来てくれた。
でも問題は相性だ。”支配者”って話が出たね。ジョン役の候補にすばらしい俳優もいたけど、
場合によっては”艦長2人”とか”艦長と兵士”みたいな状況になる。それじゃ成り立たない。
SM : 艦長に物を言える船医が要るんだ。
MG : カーク船長とボーンズ。
SM : ある程度、対等ではあるが艦長は1人だ。最初のジョン役の候補はマット・スミスだった。その後「ドクター・フー」へ。
MG : 彼が去ったあと、”シャーロックぽかったね”と皆で言ってた。
SM : マーティンとベネディクトが初めて読み合わせをしたのを覚えてる。
マーティンが加わるとベネディクトはよりシャーロックっぽくなった。
■事件現場の階段を上る
SV : ステキなショットよ。
SM : 階段の真ん中に見事な仕掛けがあるんだ。スーが説明してくれ。
SV : 何だっけ?
MG : 回転するポールのようなものを使った。
SM : カメラが上へ昇るんだ。ほかのショットでも使った。
SV : 真ん中にあるポールで
MG : ミドル・ボール?
SV : 調べておくわ。
SM : ミドルライズ・ポール?
MG : 上下する装置と魔法の箱。それが撮影のすべて。これはニューポートの住宅で撮影した。
この家を買いたかった。エドワード調の立派な建物だが壁に穴まで開けさせてくれた。
SM : 直したけどね。
SV : 実際に壁を切り裂いて穴を開けたの。
SM : ホームズ・ファンへの情報だが、このネタは原作と逆にした。
「緋色の研究」では”RACHE”の文字を見つけて警察が”レイチェル”だと思うんだ。
僕らは”レイチェル”が正しくて警察が”復讐”と思う設定にした。どうなろうとシャーロックの言うことが正しいんだ。
SV : ドイツ人のバイヤーに見せた時、ドイツ話が出てくるから喜んでたわ。
SM : コナン・ドイルはリサーチが怠慢だったから”RACHE”の意味も確認しといた。
MG : 日本の格闘技”バリツ”はデタラメだしね。
SM : 知らなきゃ信じるね。気をつけないと。”シングルスティック”って?
MG : そんなのもあった。
■アンダーソンの前でドアを閉めるシャーロック
SM : 可哀想なアンダーソン。
MG : 舞台が現代だからと根拠もなく”シャーロック・ホームズならコンピューターを持ってる”と思ったわけじゃない。
実は原作でもホームズは現代的だ。19世紀の”現代人”だ。
頻繁に電報を打ったり受け取ったり、給仕のビリーに手紙を持たせて届けてもらう。
後期の作品では部屋に電話も引いてるんだ。だから彼をどんな情報にも通じた現代的な人間にしたかった。
もはや紙の資料など使わない。機械を駆使する男なんだ。
SM : インターネットはホームズ向きだ。原作では新聞の人生相談や個人広告をよく読んでる。
きっとネットを徘徊してモリアーティの情報を得ようとするだろうね。この時代に合ってる。
MG : ”ホームズの限界リスト”を見ると分かる。彼の知識にはギャップがある。
僕が気に入ってる部分は、”政治の知識 ゼロ”、”天文学の知識 ゼロ”、”通俗文学 膨大”。
犯罪の知識に限らず大衆記事を読んでるから人々の暮らしに詳しい。
つまらない不倫や下品な情事などの知識が彼の身に染みついてるんだ。
SV : 原作のレストレードは?この作品ではドジな役だけど…。
SM : 特定の描写を参考にしたんだ。あまり登場しないし、書かれ方がバラバラだからね。
「六つのナポレオン」の彼が僕らは好きだった。ストーリーの最後にレストレードがホームズに言う。
”君を誇りに思う。警察の皆が君と握手したがる”。
MG : ホームズは感激する。
SM : ホームズもワトソンも気づいてなかったが、実はレストレードはホームズを尊敬してる。だから称賛したんだ。
MG : だがホームズはレストレードのことを”最も優秀な刑事”とも言ってる。ワトソンのことは”バカ”と言うのにね。
つまり”最も優秀”だけど自分とは違う。ホームズがいなければレストレードが謎を解くかもね。
SM : だからルパートを起用した。オーディションでほかの俳優は少しコミカルに演じてた。
”ルパートならレストレードを主役にできそうだ”と言ったね。シャーロックが現れない時はレストレードのドラマを作ろう。
MG : ベネディクトが休暇の間。
SM : 彼にとって退屈な事件を、レストレードが解決するとかね。
レストレードのドラマって、イイじゃないっ!ヽ(*´∀`)ノ
もし「シャーロック」が「シリーズ3」で終わるなら、ぜひスピンオフを作って欲しい♪
MG : ルパートは洗練されているけど泥臭くて男っぽい部分を持ってるのが好きだ。
若い頃、歴史劇で評価された俳優の割にね。本物の刑事っぽい泥臭さがあるんだ。
SM : すごくハンサムなのに、誰にもそういってもらえない男って感じだ。父親っぽさもあるね。子供が4人いるせいか…。
SV : これも例のポールよ。
SM : ”アップダウン・ポール”。下りてきた。
MG : 商標だったらマズい。もう言うな。”上下する棒”が下りてきた。
SM : マークが買いたいといったこの家はドラマでは不気味な外観だが、実際はステキな家だ。美術部門が…、
MG : 見事に奇怪な家に変えた。
SV : その後、元に戻した。
MG : 実際はこんな家じゃない。僕らは現代の印象を強調しようとしてたのに、この家はゴシック様式だ。
パイロット版のシーンが地味に見えたからだ。印象的な雰囲気になったよ。
踊り場に警察の照明器具が置かれているが、ロウソクの灯でもないのにビクトリア時代風に見える。
SM : ジョンがシャーロックに会った途端、不思議な世界へ引き込まれる感じを出したかった。
パイロット版ではただの犯行現場なんだ。意図していたような奇妙さがなかった。
SV : それにパイロット版よりいいカメラを使えたことも大きいわ。
②へ続く…。
【
BBC SHERLOCK INDEX】