少し飲み過ぎたようだ。3年越しのA社との争いに決着が付き、和解に持ち込める目途が立ったので、前祝さと、ひとり通いなれたホテルのバーで祝杯を上げた。そしたら思いのほか早く酔いが回りチョッとトイレで一息つくかと長い廊下を歩きだす。県内でも名だたる老舗ホテルであり、若干古びた内装ではあるが、貫禄のある建材がふんだんに使用されていて、それに見合った真っ赤な絨毯がさらに格調高い。等間隔で灯る古いスタイルのダウンライト照明が誘導灯のように連なり、薄い白乳色な光はレトロに輝き、俺を別世界へ誘い込むようだ。あ、そういえば、このホテル、外資系の資本が投資されたと聞いたが、今のところスタッフは従前どおり日本人が中心でバーのマネージャー、スタッフ、何ら変化を感じさせない。居心地が良いから、つい飲み過ぎたかもね。
トイレは古いスタイルのモザイク柄タイルで仕上げられ、中近東を連想させる。6か所ある鏡の上には丸形白熱灯で金色の傘が誇らしげに設置されていて上品な黄色い光を放つ。手を洗いながら酔いの為、血走った様な目の自分の姿と鏡越しに向かい合えば自然と薄ら笑いになる。ついでに酔い覚ましの為、顔も洗い、さあ店に戻ろう。もう少し飲んで帰る方が利口かもね。
長い廊下を戻りつつ、ふと見慣れぬドア、まあ。これはスタッフ専用のドアだろうから普段は別に気にならないし、気が付かないはずさ、と思いながら、ドアがほんの少しだけ開いているのに気が付き、ふざけ心で中を覗いてみる。ドアに近づいた瞬間、乳児のようなミルクと、あの子供独特な香りがしたが、長いこと会えない孫たちをふと思い出したのさと理由もなく納得する自分がいた。
厨房だろうか?調理器具、雑多にしてホテルの厨房とは思えないくらい雑然とし、不思議な事に室内の照明、真っ赤であり禍々しく不吉な感情に捕らわれるが、同時に部屋の奥のドアから漏れる薄明かりの向こう側の部屋の存在に気が付く。あ、これ以上先に進んではいけないと本能的に危機を察するが、赤い部屋は無人であり、自分の葛藤とは逆に次の部屋へ恐る恐る向かう。ドアに隠れるように中を覗き込む。
何の変哲もない内装すら施されていない倉庫のような部屋。会議用テーブルに中年男女9名ぐらいか向かい合わせに着席し、何やら料理を無言でむさぼり食っている。料理は肉料理か?
猿?猿の子猿?小さな指、手首、肩の部分で切断された何か。子猿にしては色白だし、サルでないとすれば・・・自分の恐ろしい空想、白昼夢のような世界。ここで俺は空白になり、思考停止し、見ている世界を見る、理解する事など絶対に無理。すると背中を優しく叩かれた。驚愕しつつ振り返るとKマネージャー。紳士的に優しく微笑むが目には悲しみの色。
「H様、誠に残念です。折角、ご常連様になられ、私共とも良いご関係でしたが。申し訳ありませんがご帰宅は叶いません。私とご同行下さい」言葉は優しいが絶対に逆らえない口調。俺は覚悟を決める。
以下 T国語の日本語訳です。
我が国ではカンバリズムまあ公然の秘密であります。わはは、年に一度のお楽しみ、これは普段なら生後6か月未満の食材を提供するのが慣習ですが、今回、想定外の食材が入手出来ました。推定年齢60歳越えで、皆様の中には、そんな年寄りが食えるかとお怒りのお客様もいらっしゃるはずですが、当ホテル料理長が自信をもって調理させて頂きます。それと内緒ですが食材原価、わはは、タダです。ホテルからのお礼の宴とさせて頂きます。
お品書き
脳みその刺身か、またはバターソテー・頬肉のソテー・お頭焼き(残念ですが眼球は人口レンズの為省く)
リブステーキハニーソース・もつ煮込み沖縄中身汁風(レバーを除く)
レバー刺身(ファグラです絶品)胡麻油
腿ハム(熟成中です。後ほどのご提供しばしお待ちください)
手首、足首の醤油煮込み
絶品、金玉刺身(脂は少量ですが貴重なので抽選でご提供)
その他、全ての部材を利用し捨てる部分はありません。
これぐらいで止めるアルネ。あ~朝から妄想で気分悪いし~でも、現実、かの国ではまだあるみたいです。怖いね。
気分を変えて
近海魚香草焼き
旨いもの食えばさらに空腹なので席替え
無しじゃりさん、ミニパトお仕事中でした。わはは
ルーロー飯350円。これ食わないと損でっすよ~
魚、浅利、キノコ中華煮700円。
SNSニュースで見て、え?本当?と思ったら妄想始まる爺でした。
読まれてご気分を害された方には深く陳謝いたします。ぺこり
よんでくれてありがとうございます