日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

鹿煎餅が無くても奈良公園の鹿は大丈夫⁉

2020年02月21日 07時33分36秒 | 政治
 「保護活動をしている奈良公園のシカについて、新型ウイルス流行以降、インターネット交流サイト(SNS)に『おなか減らしてかわいそう』『シカも死活問題だ』などと心配する投稿が殺到。同会には『シカが腹を減らしているなら何とかしてあげて』などと電話やメールが数多く寄せられている」(2020/02/10時事通信)。
 世界にはやさしい人々がたくさんいるものだ。旅行中に見た奈良公園の鹿が、コロナウィルス騒ぎで観光客が激減したためにシカ煎餅にあずかれなくてきっと空腹に陥っているのではないか、と心配になった人々の投稿が盛んという。
 奈良市の鹿愛護会によれば、奈良公園の鹿といえども、かれらの主食は草。落ち葉やドングリなどであって、鹿せんべいはあくまでも「おやつ」に過ぎない。かりにシカ煎餅が全く配られなくても鹿たちが飢えることは無いから大丈夫だ、という。
 「大仏に 鹿の巻き筆 あられ酒 春日灯篭 町の早起」奈良を読んだ一首。落語の「鹿政談(演者:桂米朝)」によれば、江戸幕府は興福寺と春日大社合わせて禄高を1万3000石としていたという。そのうちの3,000石はシカの餌代と見積もられていたとか。しかるに、両社寺はしばしばシカの餌代をご本尊様か人間様か知らないがこの禄をネコババしていて、シカが空腹に陥り、ために彼らは早朝に街に繰り出し、人家に被害を与えたという。その中にはくやし紛れに、あるいはあけぼのの暗さに見紛って鹿を殺してしまうような事件もあって厳罰に処されたという。
 また、シカが自家の前で死んででもいると罰が科せられることもあって、暗いうちに家の前をみてシカの死体の無い事を確かめるために奈良の町の朝は早く、その早朝の朝食の寒さのために熱い熱湯をかけた朝茶漬けを食べる習慣が、胃がんの因になって一時奈良市の胃がんは他を圧倒したという「話」がまことしやかに語られたものであった。
 上記米朝さんの高座「鹿政談」では時の奈良奉行が幕府方能吏であった川路聖謨(かわじとしあき)ということになっている。公金横領の暴露をちらつかせながら鹿殺しの嫌疑のかけられた被告豆腐屋一家を無罪判決に導く人情噺である。
 しかし、ここで語られているのは、餌が欠乏すると奈良の鹿は飢餓に陥ることが噺の前提になっているようで、SNS投稿者が心配になる鹿煎餅の欠乏は鹿の食餌不足を招かないかと心配にならないでもないのだが・・・?
 それはそうと、奈良の神鹿(しんろく)は、稲荷社のキツネ同様に神の使いであってみれば尊いには違いないが、今や日本国中山野には鹿が満ち溢れて年間農産物被害は60億円の巨額に達し、農民の営農意欲をそいでいる。環境省統計によれば2016年度末、ニホンジカの推定個体数は中央値で約272万頭が全国の山野を跋扈しているという。これを適正数にまで減少させるのも小泉環境大臣の役目である。
 居る場所によって同情されたり嫌われたり毀誉褒貶落差の大きな鹿の存在もまたその因を訊ねれば、地球温暖化と中山間地域崩壊という現代の政治に帰着するのである。
 
 

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