少数派シリーズ/学校・公営プール事故19
墨田工業高校プール事故判決、生徒は今も車いす生活でも教師は軽い罰金刑・教員失職せず
未だ絶えない学校プールの事故・甘いプール事故判例に基づく判決・依然教師への制裁も緩く
■今も怠慢な教育現場のプール指導、これほど亡くなったり重大事故を起こしながら続ける飛び込み
まず投稿者の文章/またもや、起こってしまった学校プール事故。投稿者はある書籍を読んで以来、学校や公設・民営プールの事故に関心を持ち、ブログでもこのように1つのカテゴリを設けている。もし関心のある方は、下記からこのカテゴリをご覧頂きたい。特に学校プール事故は半世紀以上に渡って起き続けており、古いデータながら表面的に分かっているだけで50人以上の死亡、1978~1994年でも71人が一生寝た切り・車椅子や介護が必要な後遺症が残る第1級の重度障害になっている。これは飽くまでも氷山の一角で、実数は相当な数の生徒が亡くなり、また半身不随の辛い生活を送っている。典型的な事故の傾向は2つあり、今回のような競泳時の飛び込み事故でプールの底に頭を打ち付ける。もう1つがプールの底にある排水口の格子状の蓋がしっかり締まってなく、頭部や腕・足を吸い込まれて溺死する事故だ。
投稿者が憤るのが、文部省(当時)の無責任、教員・教育委員会の怠慢、生徒への指導性の希薄。何度も悲惨な事故が繰り返されても、体育や部活担当教員には伝わらない。さらに憤るのが、判決の甘さ。明らかに教師側の怠慢にも関わらず死亡した生徒に責任を押し付けた判決など、裁判官も現場を分かっていない判決の数々(当カテゴリ参照)。今回の判決も過去の緩い前例から、一生半身不随の生活が強いられるにも関わらず、そもそも検察側の求刑自体が軽い「罰金刑」。これでは、被害を受けた本人や家族はやりきれない。昨今は悪質さなどから多岐に渡り、過去の判例が覆ることが多くなった。プール事故も、見直して欲しい。なお当事校の名称は墨田工業高校だが江東区・森下にあり、投稿者は江東区在住なので何度も同校の前を通ったことがある。
■内川さんの母親は「判決には納得できず、息子も私も家族も次の一歩が進めません」とのコメント
ここからは毎日新聞の記事を活用しております・11月23日記事/高校の水泳の授業で生徒を危険な体勢で飛び込ませて重度の障害を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた高校教員の松崎浩史被告(49)に対し、東京地裁(鏡味薫裁判官)は11月22日、求刑通り罰金100万円の判決を言い渡した。教育職員免許法は禁錮刑以上の刑が確定すれば教員は失職すると定めており、被害者は求刑を超える禁錮刑以上の判決を求めたが、判決は罰金刑を選んだ。判決によると、体育教師の松崎被告は2016年7月14日、東京都立墨田工業高校の授業で、プールの水面から約70センチ以上の高さにデッキブラシの柄を差し出し、スタート台から柄を飛び越えて飛び込むよう生徒に求めた。指示通り飛び込んだ内川起龍(きりゅう)さん(23)の頭をプールの底に打ち付けさせ、回復の見込みがない頸髄(けいずい)損傷などのけがをさせた。
判決は「専門的知見を踏まえず、不適切な指導。生徒の安全を守るべき教諭としての過失は相当に重い」と批判。内川さんは両手足がまひする障害を負っており「厳しい処罰を求める心情はもっともだ」とした。一方で、被告が停職6カ月の懲戒処分を受けたことなどを罰金刑の理由に挙げた。検察側は20年12月、罰金を求める略式起訴としたが、東京簡裁が「略式不相当」と判断し、公開の法廷で審理された。内川さんの母親は「判決には納得できず、息子も私も家族も次の一歩が進めません」とのコメントを出した。東京都教育委員会は17年度以降、都立高校の水泳の授業で飛び込みの指導はしないよう改めた。文部科学省も18年の高校の学習指導要領の改定で、水中スタートを原則とした。2年生以上は安全が確保できている場合は飛び込みも指導できるとしている。
■「先生、罪に向き合って」、元生徒・難しいと分かりながらも失職求め「求刑超える判決を」
11月18日付・判決を前に特集記事/検察側の求刑は罰金刑。だが、被害者の元生徒はその軽さに納得できず、難しいと分かりながらも求刑を超える判決を求めた。「先生を辞めて、事故と向き合ってほしい」という強い思いがある。頸髄(けいずい)を損傷。両手足がまひする障害を負い、車椅子で生活する。事故は異常な状況で起きた。デッキブラシの柄の部分を、プールのスタート台の前に70センチ以上の高さで差し出し、それを越えて飛び込むよう求めた。生徒たちは順番に飛び込んだが、1人の生徒が勢いでプールの底に額をぶつけた。「やっぱりぶつかります」と被告に伝えたが、「指導」は続いた。内川さんの順番が回ってきた。日ごろの生徒に対する姿勢から、被告を「怖くて面倒な存在」と感じていた内川さんは「やらないと何を言われるか分からない」と思い、飛び込んだ。ブラシを飛び越えると、垂直に水に落ち、頭を底にぶつけた。気づくと、他の生徒たちに抱えられてプールサイドに上げられていた。足も首も動かなかった。
病院で頸髄の損傷が判明し、医師から「普通だったら死んでいた」と言われた。病院に駆けつけた母親の美紀さんに、被告は「就職には障害者枠がある。保険には入っているか」と問いかけたという。後に発言を聞いた内川さんは絶句した。内川さんの首には手術の痕が残る。入院と施設でのリハビリ生活は約2年半に及んだ。今も日常生活での介助は欠かせず、吐き気を感じる後遺症も残る。夢見ていた自動車関連の仕事も、諦めざるを得なかった。松崎被告は当初、指導にデッキブラシを用いたことを学校側に明かさなかった。被告から謝罪の申し入れがあったが、内川さんは「事故に向き合っていない」と断った。「教師を辞めさせてほしい」と都教育委員会に求めたが、停職6カ月の懲戒処分となり、松崎被告は現場に復帰した。一方、長引いた捜査は異例の展開をたどった。東京地検は20年12月に書面の審理で終える略式起訴としたが、東京簡裁は6日後にこれを「不相当」とした。被告は在宅起訴され、法廷で裁かれることになった。
■「形だけ反省しているようにしか見えません。罪に向き合い、責任を取ってほしい」
教育職員免許法は、禁錮以上の刑が確定すれば教員は失職すると定める。罰金刑は対象にならない。簡裁は「不相当」の理由を明らかにしていないが、内川さんの代理人弁護士は「略式起訴では罰金刑が前提となる。罰金刑が適切かどうか、公開の法廷での審理が必要と判断したのではないか」と推測する。7月9日の初公判。被害者参加制度で検察側の席に座った内川さんは、事故後初めて被告の顔を見た。被告は「回復の見込みがない傷害を負わせた」とする起訴内容を淡々と認めた。被告人質問で、被告はデッキブラシを使った理由を「目標物を設け、入水イメージをつかんでもらいたかった。やってはいけない方法だった」と釈明した。内川さんが直接質問する機会もあり、病院での「障害者枠」や「保険」の発言を問うと、「軽率だった」とうつむいた。内川さんは公開の法廷で審理されたことで、過失の重大さが明らかになったと感じた。
しかし、10月26日の公判で、検察は罰金100万円を求刑した。担当検事は事前の説明で、過去のプール事故などでは、被害者が死亡していない場合は罰金刑が通例だと話した。禁錮や懲役が求刑されると思っていた内川さんは「前例主義」に首をかしげた。その日の公判で、内川さんは「形だけ反省しているようにしか見えません。罪に向き合い、責任を取ってほしい」と意見を述べた。「被告は教壇に立つ資格はない」と考える内川さんは、罰金刑ではなく、禁錮刑の選択で教師の立場を失わせる必要があるとの思いを込めた。松崎被告は最終意見陳述で「人生を狂わせたことを心からおわびする。教師にこだわっているわけではない。事故が故意ではないことを認識していただければ」と謝罪した。内川さんは「求刑を超える判決はまれだと分かっている。だけど、私の体は一生戻らない。異例の事件に、異例の判決を出してほしい」と願う。
<追記>24.3.27付・毎日新聞記事
「少数派シリーズ/学校・公営プール事故カテゴリ(全記事)」
墨田工業高校プール事故判決、生徒は今も車いす生活でも教師は軽い罰金刑・教員失職せず
未だ絶えない学校プールの事故・甘いプール事故判例に基づく判決・依然教師への制裁も緩く
■今も怠慢な教育現場のプール指導、これほど亡くなったり重大事故を起こしながら続ける飛び込み
まず投稿者の文章/またもや、起こってしまった学校プール事故。投稿者はある書籍を読んで以来、学校や公設・民営プールの事故に関心を持ち、ブログでもこのように1つのカテゴリを設けている。もし関心のある方は、下記からこのカテゴリをご覧頂きたい。特に学校プール事故は半世紀以上に渡って起き続けており、古いデータながら表面的に分かっているだけで50人以上の死亡、1978~1994年でも71人が一生寝た切り・車椅子や介護が必要な後遺症が残る第1級の重度障害になっている。これは飽くまでも氷山の一角で、実数は相当な数の生徒が亡くなり、また半身不随の辛い生活を送っている。典型的な事故の傾向は2つあり、今回のような競泳時の飛び込み事故でプールの底に頭を打ち付ける。もう1つがプールの底にある排水口の格子状の蓋がしっかり締まってなく、頭部や腕・足を吸い込まれて溺死する事故だ。
投稿者が憤るのが、文部省(当時)の無責任、教員・教育委員会の怠慢、生徒への指導性の希薄。何度も悲惨な事故が繰り返されても、体育や部活担当教員には伝わらない。さらに憤るのが、判決の甘さ。明らかに教師側の怠慢にも関わらず死亡した生徒に責任を押し付けた判決など、裁判官も現場を分かっていない判決の数々(当カテゴリ参照)。今回の判決も過去の緩い前例から、一生半身不随の生活が強いられるにも関わらず、そもそも検察側の求刑自体が軽い「罰金刑」。これでは、被害を受けた本人や家族はやりきれない。昨今は悪質さなどから多岐に渡り、過去の判例が覆ることが多くなった。プール事故も、見直して欲しい。なお当事校の名称は墨田工業高校だが江東区・森下にあり、投稿者は江東区在住なので何度も同校の前を通ったことがある。
■内川さんの母親は「判決には納得できず、息子も私も家族も次の一歩が進めません」とのコメント
ここからは毎日新聞の記事を活用しております・11月23日記事/高校の水泳の授業で生徒を危険な体勢で飛び込ませて重度の障害を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた高校教員の松崎浩史被告(49)に対し、東京地裁(鏡味薫裁判官)は11月22日、求刑通り罰金100万円の判決を言い渡した。教育職員免許法は禁錮刑以上の刑が確定すれば教員は失職すると定めており、被害者は求刑を超える禁錮刑以上の判決を求めたが、判決は罰金刑を選んだ。判決によると、体育教師の松崎被告は2016年7月14日、東京都立墨田工業高校の授業で、プールの水面から約70センチ以上の高さにデッキブラシの柄を差し出し、スタート台から柄を飛び越えて飛び込むよう生徒に求めた。指示通り飛び込んだ内川起龍(きりゅう)さん(23)の頭をプールの底に打ち付けさせ、回復の見込みがない頸髄(けいずい)損傷などのけがをさせた。
判決は「専門的知見を踏まえず、不適切な指導。生徒の安全を守るべき教諭としての過失は相当に重い」と批判。内川さんは両手足がまひする障害を負っており「厳しい処罰を求める心情はもっともだ」とした。一方で、被告が停職6カ月の懲戒処分を受けたことなどを罰金刑の理由に挙げた。検察側は20年12月、罰金を求める略式起訴としたが、東京簡裁が「略式不相当」と判断し、公開の法廷で審理された。内川さんの母親は「判決には納得できず、息子も私も家族も次の一歩が進めません」とのコメントを出した。東京都教育委員会は17年度以降、都立高校の水泳の授業で飛び込みの指導はしないよう改めた。文部科学省も18年の高校の学習指導要領の改定で、水中スタートを原則とした。2年生以上は安全が確保できている場合は飛び込みも指導できるとしている。
■「先生、罪に向き合って」、元生徒・難しいと分かりながらも失職求め「求刑超える判決を」
11月18日付・判決を前に特集記事/検察側の求刑は罰金刑。だが、被害者の元生徒はその軽さに納得できず、難しいと分かりながらも求刑を超える判決を求めた。「先生を辞めて、事故と向き合ってほしい」という強い思いがある。頸髄(けいずい)を損傷。両手足がまひする障害を負い、車椅子で生活する。事故は異常な状況で起きた。デッキブラシの柄の部分を、プールのスタート台の前に70センチ以上の高さで差し出し、それを越えて飛び込むよう求めた。生徒たちは順番に飛び込んだが、1人の生徒が勢いでプールの底に額をぶつけた。「やっぱりぶつかります」と被告に伝えたが、「指導」は続いた。内川さんの順番が回ってきた。日ごろの生徒に対する姿勢から、被告を「怖くて面倒な存在」と感じていた内川さんは「やらないと何を言われるか分からない」と思い、飛び込んだ。ブラシを飛び越えると、垂直に水に落ち、頭を底にぶつけた。気づくと、他の生徒たちに抱えられてプールサイドに上げられていた。足も首も動かなかった。
病院で頸髄の損傷が判明し、医師から「普通だったら死んでいた」と言われた。病院に駆けつけた母親の美紀さんに、被告は「就職には障害者枠がある。保険には入っているか」と問いかけたという。後に発言を聞いた内川さんは絶句した。内川さんの首には手術の痕が残る。入院と施設でのリハビリ生活は約2年半に及んだ。今も日常生活での介助は欠かせず、吐き気を感じる後遺症も残る。夢見ていた自動車関連の仕事も、諦めざるを得なかった。松崎被告は当初、指導にデッキブラシを用いたことを学校側に明かさなかった。被告から謝罪の申し入れがあったが、内川さんは「事故に向き合っていない」と断った。「教師を辞めさせてほしい」と都教育委員会に求めたが、停職6カ月の懲戒処分となり、松崎被告は現場に復帰した。一方、長引いた捜査は異例の展開をたどった。東京地検は20年12月に書面の審理で終える略式起訴としたが、東京簡裁は6日後にこれを「不相当」とした。被告は在宅起訴され、法廷で裁かれることになった。
■「形だけ反省しているようにしか見えません。罪に向き合い、責任を取ってほしい」
教育職員免許法は、禁錮以上の刑が確定すれば教員は失職すると定める。罰金刑は対象にならない。簡裁は「不相当」の理由を明らかにしていないが、内川さんの代理人弁護士は「略式起訴では罰金刑が前提となる。罰金刑が適切かどうか、公開の法廷での審理が必要と判断したのではないか」と推測する。7月9日の初公判。被害者参加制度で検察側の席に座った内川さんは、事故後初めて被告の顔を見た。被告は「回復の見込みがない傷害を負わせた」とする起訴内容を淡々と認めた。被告人質問で、被告はデッキブラシを使った理由を「目標物を設け、入水イメージをつかんでもらいたかった。やってはいけない方法だった」と釈明した。内川さんが直接質問する機会もあり、病院での「障害者枠」や「保険」の発言を問うと、「軽率だった」とうつむいた。内川さんは公開の法廷で審理されたことで、過失の重大さが明らかになったと感じた。
しかし、10月26日の公判で、検察は罰金100万円を求刑した。担当検事は事前の説明で、過去のプール事故などでは、被害者が死亡していない場合は罰金刑が通例だと話した。禁錮や懲役が求刑されると思っていた内川さんは「前例主義」に首をかしげた。その日の公判で、内川さんは「形だけ反省しているようにしか見えません。罪に向き合い、責任を取ってほしい」と意見を述べた。「被告は教壇に立つ資格はない」と考える内川さんは、罰金刑ではなく、禁錮刑の選択で教師の立場を失わせる必要があるとの思いを込めた。松崎被告は最終意見陳述で「人生を狂わせたことを心からおわびする。教師にこだわっているわけではない。事故が故意ではないことを認識していただければ」と謝罪した。内川さんは「求刑を超える判決はまれだと分かっている。だけど、私の体は一生戻らない。異例の事件に、異例の判決を出してほしい」と願う。
<追記>24.3.27付・毎日新聞記事
「少数派シリーズ/学校・公営プール事故カテゴリ(全記事)」