これ以上深追いは得策ではないと考えた僕らは、適に風を避け、テントが一張り立てる場所を探し、設営に取り掛かった。
強風の下、テントを組み立てるや、吹き飛ばされないよう一人が素早く中に潜り込むが、この事自体いかにも冬山らしく嬉しくなってくるから可笑しい(苦笑。
今回のテントは二人用。 一説には外国人だと一人用に使うというくらいで、着膨れした冬山ではチョット狭いかなというもの。
それでも、中に入ってしまえば、使い勝手の知れた馴染みのテント。 風も遮断し暖かく、僕には最高の棲家だ(笑。
そう、僕にとって狭くて冷たくて硬いテントやツェルトはどんなに素晴らしいベッドや布団よりも癒されるのだから常人には理解し難いところだろう(苦笑。
テントに入り、先ずは水代わりに持ち歩いているポカリスウェットの残りをガスに掛け、ホットポカリで身体を温めた。
次に雪を融かし水を作る作業に掛かる。 雪山にあっては、水の元は幾らでもある。 よって夏場のように余計に持って歩かなくてもいいのだ。
出来た水で最初の晩はジフィーズのシソワカメご飯を作る。 僕らには馴染みの精米機メーカのサタケ製品。 お湯を入れて15分で出来る優れもので、 これが普及するようになって、以前のように不味いアルファ米を炊くこともなくなった。
元日の朝なんかは、それらしく、うどんに我が家の杵つき餅を焼いて入れ、雑煮よろしく戴く(笑。
そんな浮かれたテントの中とは裏腹に空は日が沈み、回復する兆しさへみせず、むしろ予報通り風雪は増した。
比較的安全な場所と決めたものだが、それでも降る雪にテントが埋まるものだ。
放っておけば入り口を塞いでしまう。 時おりの小止みを待って除雪を施す。
一向に降り止まぬ雪に、僕らはラジオの気象情報から当初の計画を変更、ここより下山することで一致した。
久しぶりの冬山を味わえた僕に不満はなく、素直に妥当だと思えたのだ。
以前であれば、やり遂げることを良しとして、拘っていたこともないではなかったが、今は遊べれは充分だ。深追いすることもない。
自分に力の衰えが見えてきたからそうなのか、最近は自身の力で登ったとか、まだ此処までやれるとか、攻めの気持ちが湧かなくなってきてる。
そのことがチョッピリ不満でもあるのだが・・、なんと言ったらいいのか、上手く山に雪に遊んでもらっている。 そんな風にも思えてくるのだ。
下山の朝、いつも以上に時間を掛けて食事をとり、最後にカフェオレも沸かして飲んだ。
相変わらず吹雪いて、ラジオは大雪強風警報を伝えてはいたが、慌てて帰る理由は何処にもなかった。
テントを畳んだ後も、名残り惜しむように写真を撮り、ゆっくりと後にした。
温泉街を走る電車の音が聞こえてくる頃、尾根を捨て杉の植林地帯に入る。 まるで此処だけがカーテンで遮られたように、風がピタリと止み別世界の様子だ。
ここから残りあと僅か、遊ぶように新雪にダイブし鼻歌で下った。
本来リスクを背負っての遊びが登山やモータースポーツ等だと思っています。
そこが理解されて行動に及んでいるかが問題なんではと僕なんかは考えているのですが。
報道側には言いたいことは沢山あるんですが・・我慢しています(苦笑。
岳遊さんは、きちんと状況を判断されて途中で引き返す選択をされました。
元気な姿を見せるのが、送り出した家族には何よりのお土産だと思います。
久しく、新雪と戯れるという感覚を忘れていますが、画像を見ていてなつかしく思っています。