有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

JACS ASAP

2006-01-25 11:08:08 | 新着論文
Highly Active Chiral Ruthenium Catalysts for Asymmetric Ring-Closing Olefin Metathesis

NHCのバックボーンと窒素上の置換基の立体障害で不斉環境を設計したasymmetric ring-closing metathesis(ARCM)。

Grubbsのグループ。置換基の位置で活性が向上とのこと。反応機構に関して考察あり。

立体の設計は以前の報告と大差なし。窒素上の芳香環の置換基をいじるのが結構難しい様子。2,3-アルキルのブロモベンゼンをどうしたら簡単に調整できるのかが検討の鍵になるんでしょうか。オルトはNHCの立体を決めて、メタが立体的に効果を高めているという理解でテーブルを眺めていたのですが、そうでもなさそうな基質が多いのがわからない。


Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 200.

2006-01-25 08:03:02 | 新着論文
Gold-Catalyzed Cyclization of Enynes

金触媒を用いたエンイン異性化、プロパギルの転移反応ののまとめ

この反応の反応機構かけず、気になったまま年を越していたので、よい勉強になりました。まだすっきりと反応性を理解できていないので、金の電荷がプラスやマイナスをとることの説明ができませんが。Tosteの反応もまとまって理解できました。


メタセシスとか嘘をつくバカがいるから、研究室のミーティングが嫌になる

JACS ASAP

2006-01-23 17:28:24 | 新着論文
Total Synthesis of (±)-Welwitindolinone A Isonitrile

標題化合物の全合成。鍵反応は(1)三級アリルアルコールへのChlorine付加によるセミピナコールを用いた立体選択的な四級炭素に隣接した塩素原子の導入。(2)isocyanateへのSmI2を用いた還元的、あるいはisocyanateへのアリルアニオン付加を用いたスピロオキシインドール骨格の合成。


Woodのグループ。ラセミではありますがスピロオキシインドール骨格をマイルドな条件で作っています。6員環の塩素も立体的に固定されていると結構もつものだなぁと感心。不斉を出すにはどこに補助基を入れたらいいのだろうと考えたり。

比べるとBaranの環縮小でシクロブタンを作るってのは本当にすごいなぁと思いました。

実感する化学 上・下

2006-01-22 17:03:16 | 書籍
実感する化学 上巻 地球感動編 
       下巻 生活感動編 訳・廣瀬千秋 NTS出版

ACSの Chemistry in Context: Applying Chemistry to Society, 5th Ed.
の翻訳とのこと。 斜め読みしましたが良書。

各章は
空気、オゾン層、地球温暖化、エネルギー、水、酸性雨、核、次世代エネルギー、プラスチック、薬、栄養、遺伝子工学
と多岐にわたりつつも、化学が関連する様々かつ今後重要となっていくであろうテーマを盛り込んでトピックが構成されております。
教科書ではあるのですが、読み物として非常に面白い。
例えば
第一章空気では、呼吸の話からどのようなものを吸っているのか、空気の組成から元素の説明、大気汚染物質から分子式、化学式、データの取り扱い方を判りやすく導入。
第5章水では、飲料水、水道水の話から、溶媒、溶液、イオンの考え方を導入。
国の政策、データ、工業上の解説など多岐にわたる視点から作られています。

問題も、
環境庁のホームページでトピックを検索して、意見を述べよ や
検量線が測定範囲を超えているときに、どのようにしたらよいか など
レポート形式の出題が多く、調べる道具としてウェブもあるのが面白いです。

高校生のとき、このようにものの見方や、調べる道具など自分のコンテクストを増やせるこういう教科書があったらなぁと切実に思いました。

高校生のとき、図書館にあった化学読み物で、インテグラル記号などの意味が理解できず、先生に聞きに言ったのですが、「まずは数学など今授業でやっていることをしっかりやりなさい」と言われました。進学率や成績という面で見る、しょぼくれたジジイ先生の言葉を聞いていなければよかったと、今は思いますが、自力で読めるようになるためや、どのように応用されているのかが理解するための道具を探す手段を知ろうとしていればと思います。

それはともかく、自分で必要な道具をどのように探すか、世界が政策や、資源でどのようになっていて、そのために化学の考え方がどのように働いているか。非常に楽しめる良書です。

欲を言えばアメリカ化学会の翻訳という、他人のフンドシで相撲をとる形ですが、同様な考え方で日本の教科書を作って欲しいですね。
この日本版、日本のXX企業がこのような技術でどのように貢献しているか、日本の政策はどうなのか、日本の自然は・・・などなど。



JACS ASAP

2006-01-22 10:50:29 | 新着論文
Umpolung of Michael Acceptors Catalyzed by N-Heterocyclic Carbenes

αβ不飽和エステルに安定カルベンNHCが1,4付加、β位カルベンに異性化し、分子内で環化。4~6のシクロアルカンを形成。

Fuのグループ。sp3炭素での分子内Heckを検討中、ブランクテストでPdをなくしたら収率が向上することを発見。NHCを使うことでMichael受容体の極性反転を達成。

分子間はいかないのでしょうか?Baylis-Hillman型の反応全てに応用してみたくなる反応です。