有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

Angew. Chem. Int. Ed. ASAP

2006-01-02 13:42:19 | 新着論文
Unusual Structure and Reactivity of a Homoleptic Super-Ate Complex of Iron: Implications for Grignard Additions, Cross-Coupling Reactions, and the Kharasch Deconjugation

[(Me4Fe)(MeLi)][Li(OEt)2]2錯体の結晶構造解析と反応性。

Furstnerのグループ。鉄を用いたカップリングの研究で機構で説明がつかないメチル基の反応を調べるために行ったとのこと。
鉄アート錯体とMeLiのクラスター。室温以上で分解するとのこと。安定化する配位子をいれずに鉄アート錯体が単離されたのは初めてとのこと。後半、この錯体の反応をビニルブロマイド、ビニルトリフレート、SET型の反応、Kharasch型の反応へ適用。

鉄アート錯体の化学がわからず、子引きしないとフォローできず。イントロで還元的脱離,還元的カップリングが反応で必要とのことでフェニルGrignardでも同じような錯体ができるのかな?

たぁへるあなとみあ

2006-01-02 10:44:18 | 記事
安永3年(1774)刊、日本最初の本格的西洋解剖学書の訳本「解体新書」。
杉田玄白・前野良沢・中川順庵・桂川甫周・・・翻訳した彼らの中にオランダ語が読み書きできる者はいなかったという。
そもそもの始まりは、江戸千住骨が原で行われた刑死人の解剖を見た玄白・良沢らが、 オランダ語訳医書 『ターヘル・アナトミア』 の解剖図の正確さに驚いたことにある。良沢は豊前中津藩に仕えた医師であり、玄白は若狭の小浜藩主の侍医。
当時の身分階級では藩医が刑死人の腑分けを見に行くなどありえないことだったそうだ。

彼らはこの医書の翻訳により、日本の医術を発展させ、多くの人を助けられると直感した。
図版、蘭蘭辞典の知っているわずかな単語からの類推・・・
翻訳は3年半の言語に絶する辛苦ののち完成した。
苦心談を書き綴った蘭学事始。
有名なエピソードであるフルヘッヘンドなる単語

或る日、鼻のところにて、フルヘッヘンドせしものなりとあるに至りしに、こ
の語わからず。これは如何なることにてあるべきと考へ合ひしに、如何ともせんや
うなし。その頃ウヲールデンブック(釈辞書)といふものなし。漸く長崎より良沢
求め帰りし簡略なる一小冊子ありしを見合せたるに、フルヘッヘンドの釈註に、木
の枝を断ち去れば、その跡フルヘッヘンドをなし、また庭を掃除すれば、その塵土
聚まりフルヘッヘンドすといふやうに読み出だせり。これは如何なる意味なるべし
と、また例の如くこじつけ考へ合ふに、弁へかねたり。時に、翁思ふに、木の枝を
断りたる跡癒ゆれば堆くなり、また掃除して塵土聚まればこれも堆くなるなり。鼻
は面中に在りて堆起せるものなれば、フルヘッヘンドは堆(ウズタカシ)といふこ
となるべし。然ればこの語は堆と訳しては如何といひければ、各々これを聞きて、
甚だ尤もなり、堆と訳さば正当すべしと決定せり。その時の嬉しさは、何にたとへ
んかたもなく、連城の玉をも得し心地せり

まぁ、原本にフルヘッヘンドという単語は出てこないらしいが、辞書もなく、全く未知の専門書を訳す執念。
彼らを突き動かしていたものは、医学の発展か、よい仲間に恵まれたからか・・・

「志あるところに道あり」
この言葉を強く実感。
南国から帰ってきてすぐに正月気分と、自分に甘くなっているので自戒をこめて