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安倍憲法改正案は、自民党の党是も自衛隊も愚弄するのか?

2018-10-09 09:06:12 | 日記

安倍総理主導の憲法改正に黄色信号です。またまた結果的に足を引っ張ることになった明友 加計理事長の言い訳(かいけん)❝愛媛県の文書について「見ていない」と回答し報道陣から「文書も読まずになぜ会見に臨んだのか。説明責任が果たされていない」などと不満の声が上がり、再度、記者会見の開催が検討されることになった。❞に続き、与党公明党、おひざ元の自民党からも自主憲法とはほど遠い安倍(かいけん)に疑問の声が上がっています。憲法改正議論も世界経済混乱の予兆の中、埋没するかもしれません。

以下抜粋コピー

ついに総裁選3選を決めた安倍晋三総理。党本部で開かれた陣営の選挙結果報告会では早くも改憲への意思を明確にした。だが、これは国家国民のための憲法改正ではない。安倍の、安倍による、安倍のためだけの憲法改正である。そもそも自民党の悲願は、自主憲法を制定して日本の独立を達成することだった。あろうことか国民の権利を制限するだけでなく、日本の独立にすらつながらない憲法改正に、安倍総理の自己満足以外のなんの意味があるのか。

作家・作詞家の適菜収氏と哲学者の山崎行太郎氏による対談を紹介したい。

 なお、この対談は総裁選に先立つ9月6日に行われた。

山崎行太郎(以下、山崎):今回の対談は安倍政権の憲法改正問題から始めたいと思います。
 安倍首相は8月に山口県で講演した際、次の国会に憲法改正案を提出すると述べました。この改正案は、戦争放棄を掲げる9条1項と、戦力不保持を定めた2項を維持したまま、3項で自衛隊を明記するという、いわゆる3項加憲です。また、「憲法改正は立党以来の党是であり、全ての党員の悲願でもある」とも語っています。
 適菜さんは安倍の3項加憲についてどのように見ていますか。

適菜収(以下、適菜):これほど改憲派を馬鹿にした議論はありません。これまで改憲派が積み重ねてきた議論をすべてドブに捨てるようなものです。
 自衛隊はどう言い繕おうが軍隊なのだから、9条2項を削除し、きちんとした法的地位を与えなければならない。これが本来の改憲派の立場です。ところが、安倍は2項を維持したまま3項を付け加えると言っているわけでしょう。欺瞞に欺瞞を重ねているだけですよ。これは自衛隊も馬鹿にした議論です。
 そもそも自民党の党是は憲法改正ではなく、自主憲法制定です。安倍は自党の歴史さえ理解していない。安倍に憲法を触らせると、二度と憲法改正すらできなくなるような、とんでもないものができあがる可能性が高い。安倍は憲法改正で一院制の導入を目指すとも発言していました。まっとうな改憲派こそ、安倍の改憲を批判しなければなりません。

山崎:安倍は自民党の党是なんて興味ないんでしょうね。もともと自民党が自主憲法を掲げていたのは、アメリカから独立するためです。日本はアメリカに戦争で負け、占領されました。いまでもその残滓が至るところに存在する。その最たるものが戦後憲法です。だから、憲法改正はアメリカからの自立を目指すものでなければおかしいはずです。

ところが、安倍はアメリカが喜んでくれるような憲法改正をやろうとしている。憲法を改正することで、さらにアメリカに迎合しようとしている。安倍は本音では、日本がこれまで以上にアメリカの戦争に加担できるようにしたいんですよ。そのための憲法改正にしか見えません。

適菜:集団的自衛権の容認も、結局、アメリカの戦争に参加するためにやったわけです。
 これは三島由紀夫が一番危惧していたことです。三島は日本の自主独立のために憲法改正を主張していたけども、憲法改正の中身次第では、余計にアメリカの影響下に置かれてしまう恐れがあると考えていました。いまの安倍の議論を見ていると、三島の警告が、そのまま的中したと言わざるを得ません。安倍の暴走を放置すれば、完全に国は滅びます。

山崎:沖縄の米軍基地問題も同じです。安倍は何とか辺野古に基地を作ろうとしていますが、沖縄の米軍基地を永久化することは、アメリカの支配を永久化することと同義です。
 しかし、これは世界的な潮流に逆行する動きですよ。現在のアメリカは経済的にも文化的にも衰退過程に入っており、その一方で中国やロシアの力が強くなっています。日本は激動する国際情勢の中を生き抜くためにも、アメリカとの関係を見直さなければならないはずです。
 だけど、安倍はアメリカに従属し続けてきたから、日米関係強化という選択肢しか思いつかないんですよ。今後もアメリカに従属し続けることが現実的な政策だと思い込んでいる。「戦後レジームからの脱却」を主張していた人が、戦後レジームの強化を目指しているわけだから、自己矛盾と言わざるを得ない。

適菜:安倍は自分の周囲3メートルくらいしか見えていないから、アメリカ追従になってしまうのでしょう。安倍はリアリズムが大切だなどと言っていますが、リアリズムとは何かということが全くわかっていません。当たり前の話ですが、現状を追認することがリアリズムではなく、現状に応じて臨機応変な対応をするのがリアリズムです。

山崎:完全に思考停止して現実が見えなくなっていますね。

適菜:昔からある話ですが、ゾウに鎖をつけて杭につないでおくと、鎖を外した後も、逃げなくなると。いまの日本はそれと同じです。完

山崎:僕が気になっているのは、安倍政権と安倍政権支持者たちの歪な関係です。たとえば、安倍政権は拉致問題解決を掲げてきたけども、実際には何もやっていなかった。安倍支持者たちは見事に裏切られたわけです。それなのに、彼らはいまだに安倍政権を支持し続けている。ちょっと理解に苦しみます。

適菜:移民政策もそうですね。安倍は移民政策はとらないと言ってきましたが、実際にはどんどん移民を入れています。
 OECDが発表した最新(2015年)の外国人移住者統計を見ると、日本への流入者は前年比で約5万5千人増の約39万人で、OECD加盟国の中で第4位です。このままいけば数十年後には日本人と移民の人口が逆転する恐れもあります。
 いまコンビニでは至るところでアジア人が働いています。これは安倍政権の政策の結果です。ところが、「中国人や韓国人は日本から出ていけ」と騒いでいる連中が、安倍政権を支持していたりするのが間抜けですね。

山崎:中国や韓国を誹謗中傷している連中は、本音では中国や韓国が羨ましくて仕方がないのだと思います。中国はアメリカとも対等に交渉しているし、韓国もアメリカの圧力を押しのけて北朝鮮外交を進めてきました。まさに「戦後レジームからの脱却」を実践している。そうした姿を見て、「あいつらは国際社会を混乱させている」と批判しながらも、内心では嫉妬、羨望しているのだと思います。

適菜:『Hanada』とか『WiLL』といった自称保守系雑誌に掲載されている議論もルサンチマンの裏返しのものが多い。自分たちが担いできた安倍晋三がポンコツであることや、日本が傾いてきたことを認めたくないから、朝日新聞や近隣諸国を叩いて温かい世界に閉じこもっているだけ。
 一昔前に韓国で反日ブームがありましたが、日本で発生した反韓・反中ブームも、レベルは同じです。結局、自信を失ってしまったのでしょう。

山崎:それと、自称保守論客たちが安倍政権を擁護するのは、商売のためという側面も大きいと思います。かつて保守派と言われた人たちは、文学や文芸批評、哲学など自分の専門分野を持っていました。だから時の政権を批判して政治雑誌から干されても、別に困ることはなかった。それに対して、いまの自称保守派たちは専門分野がないから、政治の世界で受け入れられなくなると生活ができなくなるんですよ。
 それから、彼らには政治雑誌に寄稿して社会的に目立ちたいという思いもあると思う。人間はどうしても弱いから、有名人を気取りたいというか、自己承認欲求にとらわれてしまうのでしょう。

適菜:言論人の場合は、一度「安倍万歳」と言ってしまった以上、いまさら方針転換するのは格好悪いので、欺瞞に欺瞞を重ねていくしかないのでしょうね。
 
山崎:いま保守派に分類される人たちの中で安倍を批判しているのは、西尾幹二くらいですか?

適菜:西尾が「チャンネル桜」の番組に出て、「安倍総理は膿を出し切ると言ったが、自分が膿の中心じゃないか」と言ったら、司会の太った人が困った顔をしていました。コントとしては面白かったです。

山崎:もう一つ僕が気になっているのが、自民党議員たちが安倍政権を批判しないことです。かつての自民党は派閥抗争を繰り返していたから、外から見ていてもすごく面白かった。政治家たちはみな迫力があって、様々な権謀術数を張り巡らしていた。もし安倍のような無能な人間が総理になれば、すぐに引きずり降ろされていたと思います。
 だけど、いまの自民党議員たちは学歴や見栄えで選ばれたような連中ばかりで、根性もないでしょう。安倍を引きずり下ろして代わりに自分が総理になってやろうという気迫を持った人がいないんですよ。

適菜:自民党議員たちは党に公認権も財布も握られているし、国会採決の際には党議拘束がかけられるから、全然動けなくなっていますね。

山崎:これは小泉政権時代から顕著になったことだと思いますが、自民党は党内民主主義が完全になくなってしまいました。よく日本共産党は全体主義政党だと批判されるけども、自民党だって同じくらい全体主義的になっています。
 今回の自民党総裁選がまさにそうでしょう。安倍はとにかく他の議員たちが出馬できないように様々な形で圧力をかけていた。その結果、岸田文雄も野田聖子も出馬を断念し、安倍の応援に回ってしまった。出馬に踏み切ったのは石破茂だけです。
 岸田に至っては、派閥内からの突き上げによって板挟み状態になってしまったから、「自分はどうすればいいですか」と安倍に泣きついたと報じられています。対立候補に自分の出馬の是非を委ねるなんて考えられません。そのくせ、3年後の総裁選には出馬すると言っているわけですからね。呆れて物も言えません。

適菜:城山三郎の小説じゃないけども、岸田には「もう、きみには頼まない」と言いたいですね。

山崎:これはやはり小選挙区制の弊害です。小選挙区制を導入した結果、党内で派閥同士が競い合うことがなくなり、政治家が小粒になってしまった。そういう意味では、小選挙区制を作った小沢一郎の責任は大きいと思います。

適菜:しかし、小沢は全然反省していない。当時小選挙区制を推進したのは、小沢が担いだ細川護煕と、自民党総裁だった河野洋平、学者の世界では東大の佐々木毅などです。細川も河野も佐々木も小選挙区制の導入に反省の弁を述べているが、小沢だけはしらばくれています。

山崎:もちろん小選挙区制によって政権交代の可能性が出てきたという面はあると思いますが、安倍政権はそれを逆手にとって長期政権を築いているわけですからね。小沢の大失敗の一つだと思います。

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