採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

2007イタリア:静寂のヴェネツィア

2007-08-08 | +海外


2007/7/2 「嘆きの橋」から見た大混雑の橋


ヴェネツィアは単位面積当たりの観光客数だと世界でトップクラスなのではないでしょうか?どこに行っても人・人・人。お正月の明治神宮とまでは行かないけれど、アメ横程度には混雑しています。7月初旬というヴァカンスシーズンだったせいでしょうか。閑散とした時期ってあるのかしらん?

よく観光ガイドブックに、危険なので街中で地図を広げたりなど観光客然とした行動をとらないように、なんて書いてありますが、この町では行き交う人の90%以上が観光客ではないかと思えるほど。露出度の高い軽装で(欧米人は日焼けする方を好みますからね)、小さめのバッグとガイドブックを持って、きょろきょろしながらゆっくり歩いています。
この環境でもしスリにあったら悔しいぜ、と思うほど。見渡す限りの群集のなかで私が一番マヌケに見える、ということですものね。

このような大混雑かつハイテンションな環境の中、文化財や美術品を鑑賞するのは少々困難です。
ある本にまさに私が感じたのようなことが書いてありました。
・・・問題点は、この街では競争者があまりにも多すぎるということだ。私は孤独でありたいのであり、独創的でありたいのであり、少なくとも自分自身に対して、毎日さまざまな発見をなしつつあるのだという、そういう思いがしたいのだ。今日のヴェニスは巨大な博物館であり、そこでは小さな回転ドアが絶えず回転を続け、きいきい音を立てていて、われわれはその施設の中を、一群の観光客とともに行進する。そこには発見や描写のための余地は皆無であり、独創的な態度を持することも、ほとんど絶望的であると言っていい。・・・
   『郷愁のイタリア』(ヘンリー・ジェイムズ著、図書出版社)

これは「アメリカ文学界の巨人」(訳者あとがきによると)ヘンリー・ジェイムズが1869-1908年のイタリア(ヴェネツィア)訪問をつづった旅行記にある文章です。そうそう、そうなのよ、と共感したけれどこれが100年も前に書かれたことにびっくり。100年前からヴェネツィアは大変な観光地だったのですね。
「観光下男(観光ガイドのことだと思います)がわめいている」とか「サン・マルコ大聖堂はもはや巨大な屋台店になりつつある」など、現代と変わらぬ状況が書かれています。

でも、静かなヴェネツィアの街路を楽しむ方法が!


2007/7/2 サンマルコ小広場


2007/7/2 リアルト橋のたもと



2007/7/2 時計塔
(みてみて!人間が写ってないのですよ)


秘訣は早起き! 

早朝の散歩はお勧めです。
「(人気の少ない町を走るとき)世界で最初の人間だと感じるときは最高だが、世界で最後の人間のような気がするときはどうにもやりきれない」というようなくだりが『長距離走者の孤独』(アラン・シリトー)にありましたが、まちの始動するようすを見るのは心地いいものです。早起きできるから時差があるのもよいものですね。

朝まず気づくのは、建設資材とヘルメットをかぶった人を乗せたモーターボート。車社会でいうトラックに相当するのですね。早朝、道路(運河)が混む前にお仕事開始です。
そして次に目に入ってくるのはお掃除する人々。広大なサン・マルコ広場をはじめ細かな街路隅々まで、大きな竹箒で掃き清めています(ごみのほとんどはタバコの吸殻。みんな携帯灰皿持てばいいのにな)。
この町を維持するのは大変なのですね。ヴァポレットが1回券6ユーロ(1000円以上に相当するのですよ!)もする理由も分かるような気もしました。でも、ちょっと前までは人間が約3ユーロでスーツケースは別料金だったのを、人間+スーツケース1個まで(あってもなくても)でこの値段に統一したのはちょっとひどいと思いますが・・・。
そしてカフェで机や椅子を並べる店員さん、お店にペットボトルの水など商品を運び込むひと。1回だけ、レストラン用なのか生のポルチーニ茸を運んでいるところも見ました。

人通りが少ないので町をゆっくり鑑賞することができるのもよいところです。写真を撮るために人の流れをせき止めてしまうこともないです。
ほとんどのショーウィンドウにはシャッターがかかっており、誘惑に負けやすい私でもほぼまっすぐスタスタ歩くことができます(ショーウィンドウが開いているとジグザグにゆっくりとしか進めません)。たとえショーウィンドウに誘惑されなく
ても、人が多くて昼間はさっさとは歩けないのです。

朝のうちに町の概要を把握しておくと主要な建物間の距離感もつかめるし、その日の行動に目星をつけることができます。

ただしお店がドレスアップしていない分、一部の観光施設以外の建物の古さが目につきます。かなり痛々しいものも多く、毎朝資材を運んで工事をしていても、結局崩壊のスピードの方が勝っているのではないかと悲観的になりそうです。いずれヴェネツィアは沈んでしまうという話もありますよね。


意外とパン屋さんが少ないのがちょっと残念でした。
そういえばイタリア人は買い置きのケーキやタルトなど甘いものを朝食にするのでしたっけ。朝ごはん前にちょっとパンを買いに、という文化ではないのかな。


ちなみに混んでいるときはこんな様子。


2007/7/2 昼間のサンマルコ小広場
天の川のような人混み部分はサンマルコ寺院に入ろうという人々の行列



2007/7/2 サンマルコ大広場


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10 コメント

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それは行かなくては・・ (●リンリリンさま~Fujika)
2007-08-30 14:04:56
その展覧会のこと知りませんでした!教えて下さいましてありがとうございます。
どこだかでやっていたパルマ派展とか、ペルジーノ展とか、ああいいなーと思っているうちに終わってしまうのですよね。
涼しくなったことですし、おしゃれしてお出かけしようかな。
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行ってみたい国 (リンリリン)
2007-08-30 08:41:20
はじめまして、TBさせていただきました。すばらしい写真ですね。今度渋谷で開催の「ヴェネツィア絵画のきらめき」展をとても楽しみにしています。
でも、やっぱり本物には敵いません。ぜひ、一度行ってみたいです!
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寒さは (●patakoさま~Fujika)
2007-08-10 23:49:39
100年前でも混んでいるのだから(どの程度のものを言っているのでしょうね)20年前でもハイシーズンは今と同じくらいのはずですよね。行くなら2月はねらい目かしら。
でもヴェネツィアの冬はものすごく寒い、と聞いたことがあります。大丈夫でしたか。
そう、運河バスのことです。数年前のガイドブックで3.5ユーロなので値上げはごく最近なのでしょうね。1日券の間違いかと思いましたよ。1回でその値段とはびっくりでした。
イタリアのおじさんにナンパされちゃったとは!かわゆい日本人の女の子が一人旅で心細そうに見えたのかな。無事で何よりでしたね~。
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Unknown (patako)
2007-08-10 21:57:52
かれこれ20年くらい前に私が行ったのは、2月だったからかもしれませんが、そんなに観光客でごった返している感じはあんまりなかったですね。ていうかわりと観光地ばかり回ってたからそう感じたのかな? きれいな街だな~と感動し、ぶらぶら歩いてまわるのが楽しかったです。ちなみに卒業旅行の一人旅でありました。
ヴォポレットって、バスみたいに運河を走っている船のことですよね? 昔はそんなに高くなかったと思います。ビンボー学生でも普通に乗れましたよ。それで近くの島まで足を伸ばしたりしました。そこで地元のおじさんにナンパされて、ちょっとあやうい目に?あったりしました。いやはや、イタリア人を知る良い機会でした(笑)。
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シャンパン (●ポメマルさま~Fujika)
2007-08-10 20:12:17
ゴンドラに乗ってシャンパングラスを傾けている人をみて、ああいいなーと思いました。でも夏だったので日差しが強く、日よけのないゴンドラはいかにも暑そうでした。もう一度行けるかどうか分からないですし乗っておけばよかったかな~。
秋でも人がいっぱいなのですね!風情を楽しむというより「観光エクササイズ」みたいなノリでテンション上げていかないといけない場所ですよね。
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Unknown (ポメマル)
2007-08-10 01:26:02
運河の匂いなくて良かったですね。
私が行った時は秋だったのですが夏は匂いがひどいと聞いたのです。
ゴンドラ一応は乗りましたよ。あそこでしかないものなんですもの。高いんですか?ツァーだったので全部添乗員さんがやってくれたのでさっぱりわからないです。
観光客がひしめいてるっていう感じでしたね。もう少し風情が欲しかったです。
Fujikaさんのように連泊して自分の足でいろんなところにいけるのは羨ましいです。
そういえばゴンドラはディズニーシーでも乗りました。
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到着後数日だけ・・・ (●ポメマルさま~Fujika)
2007-08-09 23:41:29
早起きが出来るのは時差がある最初の数日くらいなのですよ、実は。どうしても夜が遅くなっていって、段々朝起きられなくなります。
運河の匂い、蚊、まずい水道水を予想して行ったのですが驚いたことにどれもほとんど気になりませんでした。海水に囲まれているので本来なら蚊は少ないはずなのだそうです。数匹被害にはあいましたが、むしろフィレンツェの方が蚊が多かったです。
上下水も昔より整備されているのでしょうね。思ったよりずっと運河がきれいでした。ポメマルさんはゴンドラ乗りましたか~?我々はもう新婚じゃないし、高いし、別にいいよねー、という感じでした。
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普通の生活 (●okimuffさま~Fujika)
2007-08-09 23:31:31
ひとりで早朝散歩はちょっと怖いというの、分かります。道が細くて曲がりくねっていて地図があっても迷いそうです。そしてどんな細い路地でも掃除人と出会いますよね。
早朝に観光客の集団と出会ったときは別の意味でびっくりしました。夜行バスかしらん?
木工房私もちらりと見かけました。家具だったか、建具だったか。(観光以外の)仕事をしている人をみて、ああ、普通の生活も存在するんだなとほっとした記憶があります。
初めてイタリアに行った数年前以降ガイドブックの旅のトラブル欄、熟読しています(イタリアは怖いということをどこかで読んだので)。
プラハで、「写真を撮ってくれという人物+贋警官」という組み合わせの手口に出会って、あっ予習したとおりだわっ、と気づいたときは一抹の嬉しさがありました(テストでヤマがあたった気分かな)。3人づれだったし怖さも少なめで、ダッシュで逃げて被害はありませんでした。
プロバンス、また行きたいです・・・。
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Unknown (ポメマル)
2007-08-09 15:48:05
誰もいない!こんなことあるの?と思ったら早朝なんですね。
サンマルコ広場は人でいっぱいですものね。
夫が昔1人で行った時(仕事で移動中)町を見るなら早朝しかなくて早起きして行ったそうです。
でも寺院などには入れなくて後に2人で行った時は中をしっかり見てました。
余裕があると早朝下見してから行くのはいいですね。でもなかなか行動に移せません。

夏場は運河が臭いともききましたが大丈夫でしたか?
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Unknown (okimuff)
2007-08-09 15:37:05
mmemiyaさんのところの、『農文協』と言う文字に共感を覚え飛んできたのです。色々読ませていただきましたが、数年前に滞在したプロバンスの記事などもあり、興味深く拝読。ヴェネッチェアも、初めての一人ヨーロッパの旅の時3泊し(でもその時は事情があり、コミュニケーション手段のほぼないスイス人のご夫人と2人で)ました。早朝の町を初めは気分よく、路地に入り込んでは面白がり、でもそのうち人っ子一人いないことに怖くなり、たまに出会う掃除人にギョッとし、走って宿舎まで戻ってきたこと、思い出しました。ショルダーバッグをいつの間にか肩掛け(斜にでなく)にしたまま、T-シャツを見ていたら、なんだか腰の辺りがゴソゴソ。少年達が群がって私のバッグのファスナーに挑戦していたのです。それにも気がつかないでいたなんて、ホントに自分は間抜けだったとゾッとしました。そして、バッグのファスナーが複雑だったことに感謝しました。路地裏でゴンドラの櫂を削っている職人の家に出会い、切れ端で作ったまな板買わないか、と言われたこともありました。懐かしく色々思い出しました。有難う。
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