今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

Core Content Review

2010-02-25 04:19:12 | 家庭医療
BCMのレジデントは第4水曜日のレジデント対象カンファレンスで1時間 "Core Content review"というセッションを担当します

Core content なので正直、何をやってもOKで

Sports medicineに興味がある人は、それに関連したトピックを選び

掘り下げて1時間話したりします

準備をするにあたり自分の中でのキーワードは

preventive medicine, OB, EBM, 生涯教育, 抗うつ剤の選択(現在BCMローテーション中)

どうしても一つのトピックに絞って、深く掘り下げることができなかったので

上記キーワードを満たすようにJeopardyというゲームをすることにしました

ゲームの概要はWikipedia参照 (ジョパディ)

このゲームを作るためのパワーポイントのフォーマットが出回っており

質問を5種類のトピックに応じた質問を5つ探し、final jeopardyのための質問を1つ用意すればOK

ちなみに情報は以下からアップデート

個人的には Uptodateの What's newがお勧め(年に数回更新されるだけで、網羅的なので負担も少ない)ですが

UptodateとDynamed、AFP journalの一部以外はタダですのでそれぞれ試してみて下さい


実際のPPTはSCRIBDにアップデートしました



ちなみにトピックは下記です

USPSTF update
 最近のUSPSTFアップデートのおさらい

抗うつ剤
   SSRIを中心に、抗うつ剤の選択に関連した情報を出題
 
What's new in family medicine
   Uptodateの家庭医療に関連したupdate総説より出題

ID
 とくにH1N1に関連した情報を出題
 
PotPourri
 その他いろいろ

Final JeopardyはCHADS2 scoreのcriteriaを出題

ホスピス研修

2010-02-19 23:47:24 | 家庭医療
BCM研修の金曜午後は、ホスピス研修です

日本で「ホスピス」というと、施設を思い浮かべますが

アメリカで「ホスピス」というのは、末期状態の方に対する緩和ケア全般をさします

そして「ホスピス」は

いわゆるホスピス施設で行われるだけでなく

自宅老人ホーム病院でも行われます

実際、ホスピスケアの95%は在宅で行われます


余命が6ヶ月未満であると二人の医師に認定されると

通常の医療から「ホスピスケア」へシフトすることができます

ホスピスを受けることが決まれば、ホスピスを提供する団体に連絡します

そして患者さんの状況、希望に応じてサービスを提供する場が決定されます

在宅になる場合が多いのですが

在宅を希望しない場合や、在宅でみきれなくなった場合に

ホスピス施設への入所となります

また病院に入院中の患者さんにホスピスケアを導入すると決まれば

入院中からホスピスケアを開始し、ホスピスナースが出張サービスをすることもできます

老人ホームでも同様

ホームが通常のケアを施し、ホスピス提供団体のナースが出張してホスピスケアを施します

ここまで書くと、国策としてホスピスケアが手厚く行われているように感じるかもしれませんが

診療報酬的には、かなり厳しく

小規模経営ではやっていけず、多くのホスピス団体が巨大化しています

ドンキホーテやユニクロといった小売り業のような状況で

「薄利多売」の状況です

そうなると、質は二の次という団体も実際出てきます


今日、研修に行ったのはArbor Hospiceというわずか25床の小さな施設です





廊下


ミシガン大家庭医のアテンディングも、非常勤として勤務しており

この先生を中心に、家庭医のHospice and Palliative care fellowshipも開設されています

今日はそのアテンディングと一緒に回診です


かつてはホスピスで入所と言えばほとんどが「末期がん」でしたが

心不全、COPD、認知症、debilitation(老衰?)なども増えており

現在では末期がんが6割ぐらいで、その他が4割です

ちなみにホスピス施設に入所するようになるのは

「ホスピスケア」が導入されたあと、さらに身体状況が悪化してからの場合が多いですので

入所後、退所(死亡)までの平均日数は18日(全国平均)だそうです


ホスピスでは、よくミニコンサートをするようですが

目玉はこの1840年製のピアノ



ピアノがあるダイニング(逆光ですが、実物はなかなか明るいです)




TBクリニック

2010-02-12 21:34:06 | 家庭医療
水曜午後、精神科外来のあとはTBクリニックです

研修はアナーバーとイプシランティの境にあるSaint Joseph Hopsitalの外来で行われます

感染症の先生と、ひたすら結核の患者さんをみます

HIVが増えた関係でTBも多くみるようになったとはいえ

アメリカではまだ結核は一般には馴染みが薄いらしく

一緒に研修をしていた内科の3年目レジデントは、一症例ごとに感動していました

私自身は陶芸が盛んな地域にある市中病院で初期研修と内科ローテート研修をしており

 呼吸器内科ローテーションも6ヶ月しましたので

結核、塵肺などはかなり数をみており

診療自体も洋の東西の違いを感じませんでしたが

それでも結核にかかった人達の経歴は大変興味深く

中米で結核にかかったオーストラリア人、ソマリアからの移民、インドからの学生など様々です

さらに興味深いのは、結核菌を排出していても

家でおとなしくしていられる環境であれば、自宅療養となること

そういえば日本はかつては結核予防法

そして今は感染症法で強制的な隔離ができるんですよね

ちなみに「結核予防法」、知らないうちに無くなってましたね

そして「感染症法」、正式名称は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

Ypsilanti Clinicの精神科コンサルテーション

2010-02-11 21:09:19 | 家庭医療
水曜午後はイプシランティクリニックで精神科外来ローテーションです

もともと、イプシランティクリニックは家庭医外来と小児科外来があります

この二つのクリニックからのコンサルテーションを受けることを目的として、精神科外来が開かれています

薬物依存の専門科の先生と、小児精神科の専門のアテンディングの2人がまわしています

半分以上がイプシランティクリニックの家庭医の同僚からのコンサルテーションですので、なかなか勉強になります

それにしても驚くのが高いno show率

no showとは予約を入れたのに来なかった率です(無断で)

この精神科外来のno show率は50%を超えているそうです

ちなみにイプシランティの家庭医外来では30%

私が研修しているチェルシーでは10%ちょっと

日本人クリニックは、知りませんが間違いなく10%はきっているでしょう

学校内のクリニック

2010-02-09 20:48:47 | 家庭医療
火曜日の午前中は、イプシランティの中学校内にあるクリニックで研修です

ミシガン大学では地域活動の一環として 家庭医療科、小児科などが共同出資して

地域の4つの中学、高校内のクリニックを運営しています

アメリカでは生後から小学校低学年までは、小児けんしんと予防接種が綿密に入っています

ところがその後、中学校の年齢までプッツリと予防接種も途絶え

かかりつけクリニックに滅多にかからなくなってしまいます

高校になるとsports physical (アメリカでは運動クラブでの活動に医師による許可が必要)がありますので、ある程度カバーされますが

このはざまの期間にある子供達をフォローすることも学校内クリニックに期待されていることです

あとは、喘息、うつ、頭痛、肥満などの慢性の問題をカバーすることと

そして予防接種を受けそこなった子供達をcatch upすることなどが役割です

Corner Clinic

2010-02-05 00:52:39 | 家庭医療
月曜日の午後は、Community Health ローテーションの一環として

Corner Clinicで外来を担当します

Corner Clinicはイプシランティにある若者向けの無料クリニックで

乳児から22歳までがかかることができます

Corner Health Center


アメリカの医師(特にプライマリケア系) は、自分のスケジュールの中にボランティア活動をよく入れています

Corner Clinicにも数人の家庭医、小児科医アテンディングが来ています

ただしCorner Clinicなど、レジデントがローテーションする施設でのボランティアには

「教育のため」という名目で、大学プログラムが予算からアテンディングの給料を出しているそうなので

純粋なボランティアではないそうです

クリニックがあるイプシランティは、低所得者が集まるunderservedエリアで

金銭的に困っている家庭の子供、ティーンの妊娠、シングルマザー、幼少期の虐待とそれに続く精神疾患のオンパレードです

ちなみにCornerにかかっている妊婦さんは、大学病院で家庭医グループの患者さんとして出産をします

チェルシーで妊婦、小児の患者さんに飢えている自分としては、大変刺激になる職場です

さらに言えば、患者さんのための金銭的補助やサポートのプログラムが多数あり

これらもチェルシーにいるとほとんど馴染みのないものです

そういったことから、チェルシーのレジデントの中には、

BCMローテーション以外にも、Cornerクリニックを自分のスケジュールに定期的に組み込んで

子供やお産をたくさんみるようにしている人もいます

ちなみに私は、同様の目的で日本人クリニックにお邪魔することにしていますので

Cornerでの診療を自分の予定にこれ以上入れることは無理ですが

チェルシーとは全く違った雰囲気と学びがある場ですので、本当はもう少し来たいところです

Behavior / Community Medicine (BCM)

2010-02-03 14:33:35 | 家庭医療
今月はBehavior / Community Medicine  (BCM) ローテーション

日本的に言えば、精神科+地域医療のローテーション

他に研修先として考えていたプログラムと比較すると

ミシガンは、Behavior Medicineの研修がちょっと弱いかなと思っているのですが

実際 Behavior Medicineのローテーション自体が、Community Medicineとのコンビネーションで1ヶ月足らずです

外来中心のローテーションですが

スケジュールとしては

     午前             午後         夕方
月   自分のクリニック       Corner Clinic
火   中学校のクリニック      自分のクリニック
水   カンファレンス        精神科クリニック   結核外来
木   ストレスクリニック      ストレスクリニック
             +自分のクリニック
金   地域のメンタルヘルス     ホスピス


これだけでは分からないので、追々ローテーションについて書きたいと思います


ちなみに土日は休みですが、BCMローテーションはJeopardyの第1候補です

Jeopardyとは、病欠や入院サービスなどが忙しくなったりした時の補助要因

同僚が病欠でJeopardyされることは稀で

ほとんどがUFM(大学病院の家庭医病棟)の患者数が一定水域を超えたときのサポートです

最近は平均すると月に3、4回ぐらいJeopardyされるようです

つまり大学の病棟患者数がそのぐらいの頻度で危険水域を超えているということ

今月は毎朝、Jeopardyのポケベルにびくびくしながら過ごすことになりそうです

ある日の家庭医外来

2010-01-24 10:27:22 | 家庭医療
久々の更新です

M&Mのプレゼンを2日後に控え、それどころではないのですが、何となく更新です

最近クリニックで小児があまりまわってこず

妊婦さんもゼロ状態が続いていたので

コーディネーターに要望を言いにいったところ

早速、妊婦さんの予約が入りました

はやりアメリカは言った者勝ち

というか、自分が知らないところで結構みんな

要求を言いまくっているらしいです


さて、今日の外来患者さんリストです
  1. 29歳女性 妊娠13週 妊娠悪阻,点滴をする
  2. 84歳女性 退院直後の心不全、糖尿病、下肢の潰瘍、高カリウム血症のフォローアップ
  3. 18歳女性 不安障害、うつ病。Strep throatの従兄弟の面倒を見たあと調子が悪いと来院。心因性の要因強し
  4. 1歳男児 発熱。両側性の中耳炎を繰り返す。耳垂れが悪化し今回も中耳炎の診断
  5. 46歳男性 突然の肉眼的血尿と排尿痛。結石、尿路感染も念頭に入れるが、atypicalなpresentationのため癌の除外も
  6. 17歳女性 咽頭痛、耳痛。中耳炎。抗生剤は処方箋を渡すも、全身症状無いため服用せずに数日様子をみるように
  7. 2歳女児 左結膜炎
  8. 25歳男性 健診
  9. 6ヶ月男児 全身性の発疹。風疹の診断。
  10. 4歳女児 風邪症状後の耳痛。中耳炎。抗生剤処方。同じく数日様子見を指示
  11. 16歳男児 脳しんとう

今日は感染症、中耳炎が多かったようですが

そこそこバラエティーに富んで、家庭医っぽい外来でした

アメリカの在宅診療

2010-01-15 09:02:52 | 家庭医療
仕事中にポケベルが鳴りました

指定された電話番号に電話すると、アテンディングのS先生

「Tさんが亡くなりました。安らかな最期だったそうです。御家族がチームのケアにすごく感謝していて、よろしくと言っていました。」

6日前、外来主治医のS先生、入院チームのレジデントである私とインターンの3人でTさんの家にお邪魔しました

退院2日後の、在宅診療です

患者さんは感染症で入院していたのですが、ベースに末期の心不全、認知症がある高齢女性

入院3日で感染症もメドがつき、退院となったのですが

退院にあたり、在宅ホスピスを選択されました

同じく高齢の夫と自宅で2人暮らし

何とか支えあって生きてきたので、どうしても家に帰りたい

近くに住む娘が、仕事の長期休暇をとって泊まり込み

在宅ホスピスサービスのサポートを受けるという形で退院となりました

リビングに病院用ベッドを持ち込み、横になっているTさんは

病院でみたよりも、和やかな顔をしていました

ベッドサイドに腰掛けたアテンディングのS先生はTさんに

「いつもはどのソファに座っているの?」などと話しかけながら、御本人の様子をアセスメント

同席した夫、娘、息子、ホスピスナースと現状の把握、困っていることなどを確認

処方箋を一つ一つチェックしながら、薬局からもらってきた薬を実際に一つ一つ手にとり

必要最低限に薬を削ります

結局、訪問は45分ほどに及びました

「How can I help you?」と最後は各自に問いかけて

「困ったことがあれば、いつでも連絡して下さい」とお別れをしました


S先生は基本、在宅をされません

必要に応じて年に数回だそうです

今回は、在宅ホスピス導入を円滑にすすめるための臨時訪問で

2回目以降の訪問は、基本的に予定せず

以降は、在宅ホスピスの看護婦さんが中心です

在宅ホスピスの看護婦さんとは、綿密に連絡を取りますが

「その看護婦さんと自分が綿密に連絡を取っており、いつでもサポートできますよ」ということを

患者さん、御家族にメッセージとして伝えることも今回の訪問の大きな目的です

以前書いたことがあるかもしれませんが

アメリカで医師が在宅をやることは稀で、殆どは訪問ナースが中心です

理由は単純明快、「診療報酬が安いのでペイしない(しにくい)」からです

それでも在宅専門クリニックはあるようで

日本の三つ葉クリニックのように、グループ診療を行い

今日はこちらの地域、明日はこちらの地域とかためて患者さん宅を回るそうです

アメリカは広すぎて、そうしないとかなりきついのです

ちなみにミシガン大の家庭医でも、老年科の専門医を持ったM先生がアクティブに在宅診療をされており

レジデントの研修要件として2件以上の在宅診療を課されている私たちレジデントは

M先生と在宅診療をすることがカリキュラムに組み込まれています

今回のS先生とのTさん宅訪問は

たまたま、退院後の訪問が計画されたので運良く同席させてもらったものです


やはり家に行くと、病院では全く見えなかったものがたくさん見えてきます

例えばTさん宅にはトイレが2階にしか無く、1階のリビングはポータブルトイレがおいてありました

トイレが無いということは、シャワーも2階で、Tさんはなかなか気軽にシャワーを浴びることも難しいでしょう

そういったことだけでなく、患者さんの表情がやはり違います

人間味あふれるというのでしょうか

例えばお孫さんと同居しているとか、御家族の様子も大事です

家庭医レジデンシーのアプリケーションに際し「田舎の町医者である祖父の訪問診療について行った幼少期の体験が、私の医師としての原点だ」と書いていたのですが

多少の受け狙いはあるとしても、それは本当の話で

自分は在宅が大好きなんだということを改めて再認識しました

Away Electiveはどこへ?

2010-01-11 23:55:20 | 家庭医療
ACGME(Accredition Counsil for Graduate Medical Eduation)の規定によって

Family Medicineのレジデントは、Elective(選択)ローテーションを3ヶ月から6ヶ月行うこととされています

ミシガンのプログラムではEleciveが4ヶ月あります

そのうち1ヶ月は、Away Electiveといって、外部で研修することができます

どこに行くかは自由ですが、Away Elective中も給料が出ますので

きっちりとした研修計画書を提出する義務があります

来年度のAway Electiveの計画書を秘書さんに提出する期限が迫っています

ミシガンは海外でのプロジェクトが多く、既に確立された選択肢が以下のようにあります

  • キューバ
  • ニカラグア
  • エクアドル
  • 日本(静岡)
  • ジャマイカ
  • ケニア
  • ウガンダ
  • ガーナ
  • Alpena, MI
  • state and national advocacy experiences

もちろん自分で新しい伝手を探して行くのもOKです

お産やSport Medicineも含めて、日本での現状を知るために

一度日本へ行きたいのですが

Electiveは、ウガンダかガーナに行って

日本へは休暇を使って行脚しようと目論んでいました

が、諸事情によりアフリカは諦めて

日本行きを決めました

まだ計画の段階ですので、何ともいえませんが

静岡に新しくできる家庭医プログラムに主にお世話になって

他,いくつかのプログラムを回らせて頂こうかと考えています

よろしくお願いします

アメリカ人みたい

2009-09-17 18:35:04 | 家庭医療
久々の更新は、お産病棟での近況です

以前は知識不足もあったのですが

それよりも文化の違いや、日本人的立ち居振る舞いにより

散々な評価を受けていました

そこでSpeak out

のエントリーで書いたことを意識的に実践していた結果

最近は周囲(アテンディング)から認めてもらえる発言が増えました

とにかく、「喋る」

「自分はこうしたい」「自分はこう思う」

これを続けた結果

あるアテンディングからは

「半年前は日本人だと思ったけど、久しぶりに働いたら別人ね。まるでアメリカ人みたい」

細かい意味は分かりませんが、褒め言葉と受け止めさせてもらいました

でもまだ課題はあります

看護師さんです

まだ看護師&助産師さん全体から認められている実感がありません

頑張って一人一人の名前を憶えることから毎日やっていますが

まだまだです

お産病棟におけるエスニック事情 その4 日本人

2009-08-30 03:39:58 | 家庭医療
エスニック事情、第4弾は日本人です

ミシガン大では家庭医療グループが担当するお産の5分の1が日本人です

といっても、最近は車産業を主としたミシガン州の経済事情から

日本人が大量帰国しているようですので

日本人のお産が減っているのではないかと、感じています

「そんなに減っていないよ」とある日本人のアテンディングはおっしゃっていましたが

8月は全体の1割ぐらいに減っています

今まで何度か、日本の妊婦さんのこちらでの評判などを書いていますので特徴を書くと言っても今更ですが

独断で羅列してみると

1. 患者さんとして評判が良い (礼儀正しい、要求が少ない)
2. 旦那さんがおとなしい
3. marriedの率がほぼ100%
4. 分娩は妊婦さんと旦那さんだけの2人が多い
5. 妊婦さんの妊娠時体重増加が少ない
6. 赤ちゃんが相対的に小さい
7. 分娩後出血(会陰裂傷)が多い
8. 誘発にオキシトシンが効きやすい


1. 患者さんとして評判が良い(礼儀正しい、要求が少ない)

これはあえて説明するまでもありませんが、文化的な背景と、言葉の問題が両方あるようです

通訳さんは無料でついてくれるのですが

入院中24時間ずっとというわけにはいきませんので

細かい要望があっても伝えられず、「まあいいや」となることもあるようです


2. 旦那さんがおとなしい

これも文化的な背景かと思います

こちらでは病室自体が分娩室になっており

病室に付き添い=お産に立ち会い となり

それだけでも面食らうのに

「臍の緒をきる」役割は旦那さんと相場がきまっており

日本の旦那さんが「やりたくないです」と答えると

こちらの人はびっくりするようです

また白人に多いと思うのですが、旦那さんが

「産まれる途中で頭を触らせてほしい」

だけでなく「お産の介助を自分にさせてほしい」という要求も多く

それと比べると、日本の旦那さんは「いや、いいです」と控えめに部屋の隅にいらっしゃる印象が強いです


3. marriedの率がほぼ100%

赴任家族が多いので自然と、「結婚している」という前提が多いのですが

私生児の率が平均50%

黒人に至っては90%と言われているアメリカの標準から考えると

患者背景で「既婚」率が100%というのは驚きです


4. 分娩は妊婦さんと旦那さんだけの2人が多い

これも赴任家族が多いので当たり前ですが

奥さんの母親が渡米して数ヶ月手伝うパターンが非常に多く

その場合も分娩中は遠慮して部屋に入らないか

上の子供を家で面倒を見てくれているパターンが多いようです


5. 妊婦さんの妊娠時体重増加が少ない
6. 赤ちゃんが相対的に小さい

これは肥満率や食べ物、人種による生理的な差と思うのですが

日本人の中でも比較的小さめな赤ちゃんになると

こちらの平均でIUGR(子宮内胎児発育遅延)とすぐに判断されてしまい

人種さんを分かっていないと、よけいな検査をさせられてしまうようです

ただ日本人クリニックではその差を理解して「日本基準」を意識して診療していますのでご安心を


7. 分娩後出血(会陰裂傷)が多い

複数のコホート研究、症例対象研究でアジア人、ヒスパニックは分娩ご出血のリスクファクターと示されています

複数のアテンディングから聞いた個人的印象でも

日本人と言えば「会陰裂傷と分娩後出血」に要注意だそうです


8. 誘発にオキシトシンが効きやすい

先日初めて聞いてびっくりした話ですが

分娩誘発でアメリカではオキシトシン以外にミソプロストール(サイトテック)やプロスタグランジンE2(Cervidil)を使い分けていますのが

日本ではオキシトシンしか使っていないとのこと

データのある話ではありませんが、「日本人はオキシトシンが効きやすい」という印象をあるアテンディングがおっしゃっていました

アメリカで誘発にオキシトシンしかオプションが無ければ、帝王切開率が相当跳ね上がると思うのですが

日本の帝王切開率の低さを考えると「オキシトシンが効きやすい民族である」という印象は正しいのかもしれません


直明けの夕方、近所でブルーベリーピッキング


1時間の成果


お産病棟におけるエスニック事情 その3 白人(非ヒスパニック)

2009-08-25 00:18:08 | 家庭医療
独断と偏見のエスニック事情

今回は白人(非ヒスパニック)です

様々な人が多いので、ステレオタイプにコメントするのは難しいですが

1. 旦那が奥さんの手を握ったり、キスをしている率が一番高い
2. こだわり (birth plan)のある人が多い


1はコメントするまでもなく、おそらく皆さんが持っている

アメリカ人に対するイメージをそのまま見ている感じです

2のこだわりですが

何種類ものハーブを飲んでいたり

入院するや否や A4で2、3ページに及ぶ

Birth plan (お産計画書)を手渡されることが多いです

  • 胎児心音のモニターは連続でなく間欠的に
  • IUPC(intra-uterin pressure catheter)はお断り
  • FSE(fetal scalp electrode)はお断り
  • 赤ちゃんが産まれたあとのビタミンK注射はお断り など

びっしり書かれており、当初は正直げんなりしました

ネット上に Birth Planのひな形なるものが転がっているらしく

それをmodifyして、birth planを作られる方が多いようです

「帝王切開は絶対お断り」とか非現実的な要求も散見されますが

慣れてくると、全体的にはごく当たり前の要求が書いてあることに気づきます

まあ、基本は自然分娩(最低限の介入で)という考えが主流です

ただマーフィーの法則ではありませんが

そういうプランを持っている人に限って、

合併症が起きたり、緊急帝王切開に至り

医療による介入を余儀なくされる人が多いというのは、私の気のせいでしょうか?

お産病棟におけるエスニック事情 その2 ムスリム

2009-08-22 20:23:23 | 家庭医療
独断と偏見のエスニック事情、第2弾はムスリムです

「男性の医療者はお断り」

毎度のことながら、繰り返される問題です

ゆるいムスリムの妊婦さんは良いのですが

厳格なムスリム女性の場合、男性の医師が会話をするために部屋に同席することすら断られます

ミシガン大の家庭医療科では「性、文化、心情などによる差別は一切認めない」という基本方針をとっており

お産を提供しているアテンディング、レジデントのそれぞれ半分程度が男性である現状をふまえて

「男性医師は一切お断り、という信条を譲れない妊婦さんのお産のお世話をするのは現実不可能」ということを明言しています

もちろん最大限患者さんの要望をかなえるというフレキシビリティはありますので

女性医師がたまたまいればその人が担当する、男性医師はなるべく患者さんにふれない(緊急時を除く)などの対応は出来ます

このトピックは産前の外来通院時に、毎回のように妊婦さん、家族とディスカッションがなされ

どうしても男性医師は受け入れられない場合は、助産師サービスや、他施設への紹介の便宜も図っています

さらに、当科でお産をされる場合は事前に同意書にサインもして頂いています

こうした産前の綿密な準備、根回しにも関わらず

いざお産で入院してくるや

男性医師を見つけた妊婦さんの旦那が

大声で「お前は男だろ、出て行け」と怒鳴りつけます

私も以前怒鳴られました

さんざん相談して、同意もして、理屈を通しても

いざとなると覆されるという事態が、周期的に繰り返されます

この背景を、或る先生はこう説明していました

「理屈で分かっていても、旦那さんが声を荒げて断ってくるのは、『自分が家族を守っている良い夫だ』というポーズの行為である」というものです」

それの解釈が正しいのかは分かりませんが、「メンツ、体面、示威行為」という解釈はつじつまが合うと妙に納得させられます

確かに理不尽なことを言いつつも、いざとなると交渉に応じて

最低限の妥協をしてくるところも見ていますので

毎回繰り返される「ポーズ」だと割り切れば、対処もできます

ただ毎回、長々と交渉するのは正直しんどいです

お産病棟におけるエスニック事情 その1 アフリカ系アメリカ人

2009-08-21 10:00:58 | 家庭医療
現在は、週に1コマのクリニックでの外来と、半日のカンファレンスを除けば、お産病棟に張り付き状態です

ホームであるチェルシークリニックでは白人の患者さんが多く、割と均一な感じなのですが

お産病棟では、白人、ヒスパニック、黒人、日本人、ムスリム、中国人など様々な妊婦さんと関わっており

ストレスフルながらも、人生色々、お産も色々で、興味深く、貴重な体験をしていると思います

そこで、独断と偏見ですが、各エスニックごとに観察した模様を書いていきたいと思います。


第1回はアフリカ系アメリカ人(黒人)です

私が勝手に描いている彼らのお産の特徴として

1. 父親不在が多い
2. 分娩に立ち会う親戚の女性が多い
3. 母乳はダサイ
4. 若くて肥満の妊婦さんが多い
5. 多産が多い


1と2ですがアメリカの黒人の子供の半分以上が片親です

結婚にこだわらないので片親ということもあるのですが

同じ未婚でも、パートナーが部屋にいることが多い白人と比べると

お産自体に男性が一切関わってこないケースが多いのも特徴です

それとは対象的に、母親を始め、姉妹、叔母、親戚の女性が勢揃いして

部屋中が女性で埋め尽くされ

お産の最中も楽しいヤジがとんで、賑やかなことが多いです


もう一つ面白いのは3の「母乳をあげるのがダサい」という風潮

私たち医療サイドとしては母乳を強く推奨しているのですが

母乳か人工乳にするかをニュートラルに聞くと、

とりあえず「母乳」と答えておきながら

全く母乳をあげる努力のそぶりを見せずに

「母乳をあげてもうまくいかないから」と言いながら

せっせと人工乳をあげる若いお母さんを良くみかけます

個人的経験ですが、このパターンは全て黒人のお母さんでみかけました

聞くところによると、黒人の若い女性の間で

「母乳をあげるのはCoolでない(ダサい)」という風潮が浸透しているらしいのです

経済的なバックグラウンド、つまり人工乳にすると補助金がもらえるなどのインセンティブもあるらしいのですが

逆に母乳は経済的なばかりでなく、お母さんの体重減少にも一役買ったり、赤ちゃんに対する医学的メリットも含め

頑張って推奨しているのですが、なかなかその声は届きにくいようです

ちなみに男の赤ちゃんに対する割礼率はほぼ100%です