今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

変なお産英語  "push"

2009-08-20 23:36:17 | 家庭医療
分娩中の用語で、とても気になっているものがあります

赤ちゃんを産もうとまさに「ウ~ン」と声を出している状態を表現する用語です

日本語で言うと「息む(いきむ)」です

これを英語では  "push" と表現しています

しばらくは何の違和感も無く、使っていたのですが

ある日、日本人の妊婦さんを担当したとき

アメリカ人のアテンディングに

「日本語でpushは何というの?」と聞かれ

「息んで!」と教えた時にふと表現の違いに気づきました

実際、この"push"をそのまま直訳して

「押して、押して!」と言われた妊婦さんが戸惑ったという逸話も聞きました

「息む」という日本語が

「腹部に力を入れて、valsalva maneuverをすること」と教えると

「う~ん、そっちの方が表現として正しいね」と皆で納得したのでした

Youtube: NHKでの家庭医の紹介

2009-08-18 18:35:07 | 家庭医療
NHKでの家庭医の紹介

様々なメーリングリストで感想が出ていましたが

ようやくYoutubeにアップされ、私もみることができました

NHK 家庭医(リンク)




番組構成には、一言いいたいこともありますが

「日本でも家庭医が必要だ」という論調が広まりつつあること

家庭医療学会での認定試験の様子が、特集されているということで

ポジティブにとらえたいと思います

それでも、「開業医の先生が胃がんを見落とした」というケースはやっぱり的外れですよね

あれをみた開業医の諸先輩が、怒りを感じるのはもっともなところです

私の先生はまだ?

2009-08-16 22:23:47 | 家庭医療
レジデントとして、「普段から家族ごと診ている患者さんをprenatalから産後までお世話する真のcontinuity」をまだ体験できていませんが

Attendingからそのようなケアを受けている患者さんのお産に参加する疑似体験はよく出来ます

昨夜の当直も、2件あったお産の両方で「主治医」であるアテンディングが駆けつけていました

特に患者さんがメンタルや社会的問題を抱えていたり

お産が今ひとつ順調に進まず、患者さんの不安が強いと

「私の先生は来てくれるの?」と主治医を待ちわびる妊婦さんが多いです

主治医がきたとたんに、元気百倍

一気にお産がすすむことを何度もみました

実際、不安により血中のコルチゾールやエピネフリンレベルが上昇し、お産が遷延するというエビデンスがあります

そして

主治医が駆けつける→ 患者さんの不安が軽減→ 子宮収縮が順調→経膣分娩が順調に進む

こんな流れが成立していることを何となく感じます

実際、「家庭医の主治医が駆けつける」という条件ではありませんが

Dulaや助産師、医師などによるcontinuity of careによって

お産時間の短縮、痛み止めの使用が減少、新生児の蘇生の必要性が減少することを示すエビデンスがあります


そして勿論、産後の妊婦さんや家族の笑顔も格別です

大学における家庭医療科の存在価値

2009-08-13 12:10:53 | 家庭医療
プライマリ・ケアであることが、アンデンティティのコアである家庭医療にとって

大学、大学病院というのは

居場所として少々、無理があることは否めません

ただしこれは、「臨床の場」という意味に限ります

この「臨床の場」をクリアするために

ミシガン大では大学,アナーバー市を取り囲む近郊に5つのクリニックを展開しています

それでも、レジデントの研修ローテーションの場として

大学病院内のER、小児科病棟、循環器科病棟などが含まれており

患者層としては少々不満があるのは確かです


そして家庭医療科の存在意義として

「臨床」意外に、「リサーチ」、「教育」という点を考えると

大学における家庭医療にも大事なミッションがあると言えます

この点は、ことあるごとにChairのSchwenk先生も強調されています


前振りはこのあたりにして、本題です

昨年のミシガン大の医学生による評価で、家庭医療科の研修が

各専門科を押さえて1位に輝いたそうです

ちなみにこの評価をし始めて、14年間で13回目の1位だそうです

この評価があらわしているのは、大学の家庭医療科による「教育」なのですが

もっと本質的には医学生に対して「将来の選択肢としての家庭医を提示する」という点を強調したいと思います

そういう意味で、日本の医学部に家庭医療科が増えることによって

日本の医学生による「家庭医に対する認知度」があがり

果ては、家庭医の裾野が広がることを願っています


と、ここまでは威勢の良い話ですが

実はミシガン大医学部卒業生の、家庭医選択率はとても低いのです(1学年約160人中5,6人) ・・・

家庭医の評価が低いというより、各専門科が強く

各専門医への道も、中西部の州立大学などより開けているため、結果的に専門医の選択率が高いのです

そういう意味では、超専門医養成学校であるミシガン大で、家庭医が頑張っているのは、

Chairをはじめとする諸先輩方の並々ならぬ奮闘のおかげでもあります


ちなみに私も先週から、外来に医学生がつくようになり

1回目はうまくスケジューリングできず、診療が大幅におしてしまいましたが

今年度の投票に、ポジティブに貢献し

「家庭医になりたい」というミシガン大生が増えるよう貢献したいと思います



アパートのプール


Continuity delivery

2009-08-10 12:33:24 | 家庭医療
ACGMEの家庭医療のプログラム要項には

お産に関して、卒業のために必要なのは
  •  最低30件のお産と
  •  10件以上のContinuity delivery

とされています

Continuity deliveryというのは自分が産前,産後もケアをしたお産という意味で

自分が外来で診ている患者さんということになります

トータル30件のお産というハードルはとても低いのであっという間にクリアできるのですが(もう1年でクリア済み)

このcontinuity deliveryというのがクリニックによっては意外と大変で

ミシガンのレジデントの立場から言えば

イプシランティのクリニック所属のレジデントは比較的楽にクリアできます

ところがチェルシーのクリニック所属のレジデントは大変です

もともとチェルシーがお年寄りが多い町であることに加えて

最近の保険制度の微調整によって、チェルシーから西にある町の患者さんがお産のために私たちにかかれなくなってしまいました

さらに妊婦さん大幅減です

個人的にはDomino's farmの日本人クリニックで外来の枠を持たせてもらって

そこで妊婦さんをたくさん診させて頂く予定でしたので、まあOKなのですが

それにしても、1年が過ぎたというのに、外来でのOBケアの経験値が極度に低いことはちょっと不満を感じています

そんな中、ようやく2人のContinuity deliveryを取り上げることが出来ました

といっても、実は「なんちゃってcontinuity」です

本質的には、continuityというのは産前、産後を通して患者さんを長期的にケアして行くことを定義しているのですが

産前に1回、産後に1回診ればcontinuityとみなされるという緩和条件があります

例えばクリニックで全く患者さんを診なくても、

産前に病院のトリアージで一度遭遇し、産後に退院指導をすれば

理論上はcontinuityとカウントされます

早く、狭義のcontinuityを担当したいのですが

こればかりはスケジュールの都合が付くまでもう少し待つ必要があります


週末にいったミシガン湖


ALSO受講報告

2009-07-23 22:41:49 | 家庭医療
自分的には遅れたネタですが、7月9, 10日の木、金曜日に

ミルウォーキーのAurora St. Luke's Medical Centerが開催したALSOの会に参加してきました

参加者は30人ほどで、8割がAurora St. Luke's Medical Centerの家庭医と産婦人科のレジデント

他は開業の家庭医が1人、シカゴのプログラムのレジデントが4人ほど

初日は午前中が講義

午後は、人形などを使ったワークショップで

テーマは 
  • Assisted Vaginal Delivery~ Forceps, Vacuum delivery
  • Malpresentations, malpositions, multiple Gestations
  • Postpartum Hemorrhage/ Maternal Resuscitation
  • Shoulder Dystocia

翌日は、さらに午前中に講義を3コマと、ワークショップを2つ

ワークショップのテーマは
  • OBケースディスカッション
  • Intrapartum Fetal Surveillance/Diagnositc Ultrasound

実際の妊婦さんでエコーも実践させてもらいました

そのあとは、ペーパーテストと

Megadelivery(シュミレーションの実践試験)

予習をしっかりして行きましたので大変勉強になりました


一番面白かったのはPostpartum Hemorrhage/ Maternal Resuscitationのワークショップでやった出血量予想




写真のように、様々な容器に血液(に似せた液体)が入っており

中にはガーゼも入れてあったり

参加者はめいめい出血量を予測しましたが

平均すると皆は半分ぐらいに過小予測していました



ちなみにこれで正解は400cc


このワークショップのあと、現在OBフロアーで働いていますが

出血量で毎回アテンディングと意見が分かれています

「このまえALSOに出て、皆が過小評価していることが分かって・・・」と力説すると

大抵のアテンディングは

「なるほど、そうかもね・・・」と納得してくれます

出血量予測のわりに、Hbの低下が大きい症例も実際に経験して

「やっぱり、過小評価だ」と改めて実感しています

家庭医療センターの独立採算

2009-07-04 21:56:15 | 家庭医療
7月4日は Independence Day(独立記念日)

それにちなんで、家庭医療センターの独立採算について書いてみます(こじつけですが)

自分の将来のキャリアプランとして10年後は

日本のどこかでグループプラクティスの家庭医療センターの指導医を描いています

その際、センターは他に経営母体があるか、独立したものか

いずれにせよ、理想のプログラムを構築するには単体で黒字を出すことが大前提です(自治体にせよ,医療法人にせよ、良いパトロンに恵まれれば幸運ですが、そうとは限りませんので)

診療所収入のさらなる縮小が予想される昨今の情勢で

かなり厳しいだろうな、と思っていましたが

何しろ、不勉強でよりどころとなる情報が乏しいのが現状

そんなおり、大変参考になる論文を見つけました

今月の「家庭医療」に載っていた奈義の吉本先生の論文

家庭医療後期プログラム研修医の日常診療における経営的側面の考察


この論文では二つの示唆があります

つまり

1.家庭医療センター自体の経営は(奈義のやり方なら)大丈夫
2.卒業したレジデントが卒後そのままの診療スタイルだと経営は厳しい


2.に関しては、例えばミシガンのレジデントは半日で診る患者数が、

1年目4人から6人
2年目7人から10人
3年目10人から15人

卒業時点で、楽に10人以上をこなせるようになっていると

アテンディングとして働くにせよ、一般クリニックで開業医として働くにせよ充分に採算が取れます

つまり、診療レベル、スタイルをかえること無くスムーズに移行できます

日本ではどうか?

論文の結論にもあるように、後期研修卒後、急に開業となるとやはり厳しそうで

ジュニアファカルティとして、さらに数年修練を積んで開業というのが理想です


では私の本題である1. ですが

例えば自分が家庭医療センターの指導医として常駐し、

現実的なところで他に常勤指導医がもう1人

研修医の数は様々な数が想定されますが、

平均で1人、4人と想定し(これは延べ研修医数ではなく、その瞬間にクリニックにいる数.例えば研修医9人でも,他の場所で研修している人が5人いると想定すれば,4人)

  • 1人の場合は、指導医も診療をしながらプリセプトする形式(奈義と同じ形式)

  • 4人の場合は、指導医1人は患者診療をせずプリセプトに専念する形式(亀田と同じ形式)

論文の数字を乱暴にそのまま当てはめると

4.7人/1時間  つまり、半日の3-3.5時間で15人ほどを研修医が診たとすると

研修医単体で、526万円の収支差額が出ていますので

研修医1人の場合は、経営的に何とかなりそう

問題は、4人の研修医がいたとして

例えば後期研修1年目が1人、2年目が1人、3年目が2人

研修医が診る患者さんの数を、1年目が半日で6人、2年目が12人、3年目が15人とすると

研修医4人で46人

先ほどの収支差額のざっと3倍で526 x 3 = 1578万円

これでは研修医4人分の給料が出るか出ないかぐらいで

指導医の人件費がそのまま赤字です

もう1人の指導医がよほど数を稼いでも無理でしょう

足りない分を在宅で稼ぐとか、透析で稼ぐとか

といっても在宅もいつはしごを下ろされるか分かりませんし

透析もかなり削られてきているようですし

やはり診療所単体の経営を考えると、プリセプター選任方式で、もとをとるのはかなり困難に思えます

奈義だけでなく、北海道家庭医療学センターなど

指導医がプリセプティング選任をする方式はとっていないようです

研修医数を最大まわすには各学年3人のプログラムであれば

1, 2年目は他施設ローテも想定して

診療所にその瞬間いるのが1年目1人、2年目1人、3年目2人

後期研修2, 3年目の3人はあとからチェックする方式

1年目1人は、自分も診療をしながらチェック

これならなんとかなりそう


こういう試算はピッツバーグのFD Fellowのコースで学ばれているそうなので

岡田先生や小嶋先生はさんざん想定されてのことでしょう

一時帰国の際には、亀田と手稲に是非お邪魔して話を聞かねばと思っています


それにしても、やっぱり教育は金がかかります

研修医の給料は国が出すべきだと言ってしまうと、元も子もありませんが

研修の質を向上したいのであれば

初期研修だけでなく、後期研修の分も税金からある程度支出するのが正論でしょう



独立記念日を祝って、クリニックで持ち寄りでケーキを作りました
各自がスポンジの層をめいめい持ち寄り、完成したもの



反対からみると、世にも○○○しい、強烈な地層が・・・
水色を入れるのは、未だに受け入れ難いですが
普通にぺろっと食べてしまう自分の順応性が恐ろしい
滅茶苦茶甘かったです・・・

飛び込みお産

2009-06-13 11:39:25 | 家庭医療
「家庭医の先生、ERに電話をして下さい」と院内放送が流れました

つい1分前に、ERからポケベルがなって、シニアレジデントが電話をしに行ったばかりです

「何か緊急が起きているに違いない」と思いERに向かって歩き出すと

「STAT, Delivery in ER」とポケベルが鳴りました

STATとはラテン語でSTATIM

英語ではImmediately、日本語では「緊急」

昨年もチェルシーのERでお産がありましたが、そもそもチェルシー病院にはお産病棟がありません

当然、産科医もいません

一応ERの先生もお産に対応できますが、不慣れなため家庭医が呼ばれます

といっても、呼ばれた時間は午後3時で回診終了後、

前回同様、アテンディングは院内におらず

2年目のシニアと、1年目の自分しかいません

ドキドキしながら行ってみると、お腹の大きな黒人の妊婦さんがベッドでうなっています

周りを母親、姉妹とおぼしき女性が5人取り囲んでいます

話を聞くと、既に4人産んでいる経産婦さん

「予定日は?」と聞くと

「先月まで生理があったので、妊娠に気づいたのはつい最近」とのことで

「今陣痛を起こしているんだから、今日が予定日でしょ」とお母さんが笑っています

周産期ケアはもちろん受けておらず

これまでの出産も、周産期ケア無しで、ランダムに病院を選んで飛び込み出産を繰り返していたようです

しかも、話を総合すると

  • 前回の出産前に心臓の穴を手術した
  • 前回の出産時はpreeclampsiaをおこしていた
  • 前回の出産後に、脳梗塞を起こしていた

さらに、現在の血圧は 175/85

・・・

ヤバいじゃん・・・


内診所見、陣痛の具合などから

「まだ間に合う」と判断し

ミシガン大へ救急車で搬送としました

ちなみにエコーで赤ちゃんは推定38週でした


それにしても・・・ちゃんと周産期ケア受けましょうよ、みんな~




チェルシーの街並

ALSO受けます

2009-05-14 23:58:28 | 家庭医療
大抵の家庭医療のプログラムや施設では

分娩を取り扱う医師にALSO受講を義務づけているところが多いのですが

ミシガンの家庭医療プログラムではALSOを受けません

そのわけはALSOをやらない理由で書いたのですが

ふと、「ALSOを受けておこう」と思い立って、申し込んでしまいました

衝動買いならぬ、衝動申し込みです

きっかけは、今年から北海道で家庭医療を指導し始めたHaj先生のブログのエントリー ALSO JapanによるALSO@手稲 開催告知!!   

日本に帰って、「家庭医のお産」に携わる(つもりな)以上

指導者、リソースの少ない現状では、帰国後はALSOに携わる可能性大だな、と考えたわけです

ちょうど7月からの来年度の研修ローテーションが確定したのですが

7月前半は、Electiveを利用して「OB強化コース」を組んでもらっていたので

その期間にALSOを受けてしまおうと思い、あわててAAFPのサイトで近場のALSO開催の予定を調べました

すると
July 9,10 ミルウォーキー、ウィスコンシン州
July 15,16 Maruquett, ミシガン州
July 17,18 Rockford, イリノイ州

それぞれ車で6時間ぐらいですが、日程があうのはミルウォーキーのみ

ということで急遽、参加決定です

参加費325ドルなり

薄給で自腹(プログラムからもらえるCME費を使います)はきついですが

参加の目的(メリット)を改めて整理してみました

1.勉強のモチベーション
2.どうせ受けるから今のうち
3.外部交流
4.OBおちこぼれなので、頑張ってることのアピール
5.受講後の観光(途中シカゴによってうまい和食でも・・・)


日本にいる人にはたいしたこと無いでしょうが、シカゴにラーメン屋の「山頭火」があるらしいので

実はそれが一番たのしみ

チェーン店でもいいんですよ

あれば別に「天下一品」でもいいわけ

無加調じゃなくてもいいんですよ

多少、業務用スープが混じっていてもいい

とにかくまともなラーメンが食べたい

箸で持ち上げて、途中でプチッと切れない

チリソースじゃない、ダシのしっかりきいたラーメンが食べたい

あれ・・・何の話でしたっけ?

Retreat

2009-05-12 00:15:38 | 家庭医療
4月の末に、Retreatという集まりがありました

年に1回、週末に泊まりがけで、全てのレジデント(30人ほど)が集まる会です

アテンディングは立ち入り禁止です

この間、当直も含めて、全てのサービスはアテンディングがカバーしてくれます

今年は、車で3時間離れた、湖畔にあるYMCAのキャンプ地のログハウス行われました




Retreatの目的は大きく二つあります

1.レジデントの親睦を深める
2.プログラム(ローテーション、研修内容、アテンディング)の評価

昼間は、皆で集まって各ローテーションの評価と、各アテンディングの評価をして、報告書を作成します

この報告書に基づいて、研修内容もかなり改善されますし

アテンディングの昇格、昇給にもかなり反映されます

かなり歯に衣を着せぬ、コメントも多々あり

自分の個人的体験では知り得なかった、アテンディングの姿を知ったりと

有意義な2泊3日でした

合間には、乗馬、カヌー、サッカー、バスケット、アーチェリーなどを楽しみ




夜はキャンプファイヤーを囲みながら、プログラムのゴシップ話に花が咲きました

「どうしてFMBの当直室がアテンディングと、研修医で全く離れたところにあるか知ってる?」

「昔は同室だったんだけど、指導医のA先生が当時の女性レジデント2人とつきあって・・・

「キャー、分かる、分かる! あの先生の髪型、遊び人だった片鱗を感じるわ」

そうですか・・・

GME Internal Review

2009-05-10 11:38:06 | 家庭医療
今日は午前中カンファレンスのあと、クリニックの予定でしたが

GME Internal Reviewなるものにランダムに選ばれたため、クリニックは免除でした

おかげで、たまっていたディクテーションの修正をする小暇もありました

ところで、このGME Internal Reviewとは何か?


その前に、ACGMEによる各プログラムの認定更新について知っておく必要があります

各プログラムは、2から5年ごとに訪問審査を受け、プログラム認定を更新することを義務づけられています

2から5年と幅があるのは、プログラムの「強さ」に応じてのことです

つまり、しっかり運営されており、歴史もあり、予算もあり、研修医も毎年そろっていて・・・となると5年ごとの認定になりますし

「不備」があれば、短い年数ごとの認定となります

ミシガン大はもちろん、5年ごとの認定です

この認定更新作業は、かなり厳しく

歴史があり、アメリカでもトップクラスの某内科プログラムが認定を取り消されたことなどもあり

プログラムにとっては死活問題なのです

そこで、早めにプログラムの不備を改善する目的で

認定更新の合間の中間当たりで、GME Internal Reviewという内輪での内部調査をしているのです

内輪の演習のようなものです

家庭医プログラムのReviewは、外科のレジデントで、リサーチを2年間やっている先生が中心となってやってくれています

家庭医プログラムのレジデントのうち、各学年2人ぐらい呼ばれて

この計6人に対して、外科レジデントが事前に集めた資料を見ながら事情聴取をして

報告書をまとめあげます

  • どんな研修をしているか
  • カンファレンスにしっかり出席させてもらえるよう配慮されているか
  • 研修プログラムの不満は
  • 研修プログラムのウリは

などなど、改善点だけでなく長所もとりあげるところがおもしろいところです

本気で改善をしようと思っているプログラムにとっては

「そんなことは承知している」というフィードバックだらけであり

Retreatのときにまとめあげた、プログラムに対するレジデントからのフィードバックに殆ど網羅されているのですが

「そういえば,これ言ってなかった」

とか、

自分たちが認識していなかった、レジデント、学習者としての保証も指摘されたりと

なかなか興味深いミーティングでした

これを日本でやろうと思うと、これまた資源、労力の問題を考えてしまいますが

ここまで認定作業を厳しくすることで、質を向上する努力を強いられているのを目の当たりにすると

日本でも、ある程度締め付けをしないと,最終的に良いものは出来ないのではないかと思います

逆に、日本人の気質を考えると、ここまで厳しくしなくても

この半分ぐらいの締め付けで、そこそこのものをつくりあげるのではという楽観的な想いもあります




家族でゴルフデビュー
ラウンドフィー は13ドルですが、気持ちのよいコースでした

祝 ミシガン大家庭医療科 全米3位

2009-04-24 14:56:25 | 家庭医療
自分の日々の研修とは、直接関係ないことですが

U.S. News & World ReportのBest Medical Schools Specialty Rankings: Family Medicine部門

ミシガン大が見事3位!

純粋にレジデンシープログラムの質を検証したものでもなく、Community Hospitalは対象になっていませんので

レジデントが受ける教育の質と、直接の関係があるとは思えませんが

自分が一緒に働いている人達が、それなりに評価されているのはうれしいものです

日本の大学総合診療部で働いていた時に、私も思っていたことですし

現ボス(Chair)も言っていることですが

名だたる専門家がひしめき合う大学、大学病院に所属する

家庭医、家庭医療科にはそれなりの役割があり

自分たちの患者さんのために医療を行うのは勿論第一ですが

専門としての家庭医をアカデミックな面でもアピールし、

将来家庭医を目指すべき医学生を引きつけるということも大事なのです

例えそれが、商業誌のランキングだったとしても・・・


大学総合診療部の統廃合がすすんでいる」という記事を、悲しい思いで昨日読んだので

何となく、うれしいニュースでした

Resident Activity Profile 私のクリニック患者層

2009-04-17 22:16:19 | 家庭医療
自分の外来患者層のデータをもらいました

毎年、集計して配ってくれるらしいです

データの内訳は、外来件数、外来のコマ数、

さらにそれらのうちの以下の比率

 継続外来、HME(けんしん)、WCE(小児けんしん)、新規患者、複雑なプロブレムを持つ患者

さらに患者さんの年齢層、性別で分けた比率

以上に関する自分が担当した患者さんのデータと、同級生の平均値をが並べてあります

コピーを掲載しても文句は言われないと思うのですが、何となく気が引けたので

年齢別の患者層を、自分でエクセルに入力してグラフにしたものを載せます

縦は%

一番左が0-2歳、以降右へ行くほど年齢が上昇

青が男性、赤が女性です

左が私の患者さん   右が同級生の平均値



はっきりしているのが、私のグラフは青ばっかり

同級生の平均は、真ん中の赤が多い(突出した3本がそれぞれ20,30,40歳代女性)

これらの女性は妊婦さんを含めたwomen's healthがらみがメイン

こうなった理由は以下の二つ

1.私がチェルシー所属

2.私が男

逆にイプシランティのクリニック所属の女医さんは、真っ赤です

2年目になったら日本人クリニックで妊婦さんを主にみさせていただく希望を出していますので

個人的には是正されますが、ちょっと偏り過ぎです

Occupational Health

2009-04-10 23:37:52 | 家庭医療

EDローテーションの間、毎週金曜日はOccupational Healthクリニックです


Occupational Healthは日本的には産業医です

 

このOccupational Health Clinic、先月まではEDの隣にあり


医者とRN(Registered Nurse)、PA(Physician Assistant)あわせて10人以上の大所帯だったのですが

 

この不景気の中での経費削減の槍玉に挙げられ


ほとんどが解雇され、場所も移動して現在はメインで働いている医者は1人


これまでは、ミシガン大の職員以外に、外部の企業(フォードなど)の職員も診ていたのですが


現在はミシガン大の学生や職員のみを対象とする部門に、縮小されてしまいました


患者さんはほとんどが、仕事中のけがによる労災で


自前の理学療法師さんと協力して、スムーズに診療の流れが作られています

チェルシーのクリニックで自分が診ている患者さんと比較すると、勤労意欲も圧倒的に高い人たちなので


痛みが軽くなってくると、皆すぐに仕事に戻りたがります


いつまでもだらだらと「麻薬をくれ」という患者さんには遭遇していません


診療自体は、大変problemにフォーカスしたシンプルな展開が多いです

 

医学的な問題から外れたことですが、今日知って興味深かったことが三つ


1.大学が警察署を持っている


警官の患者さんが受診していたので気づいたことです


アメリカの多くの大学では自前の警察署を所有しています


日本人の感覚では理解しにくいですが


公的な警官の資格を持った警察官が、大学の職員なのです


ミシガン大では40人ほどが働いているそうです


といっても、アナーバー市全体で殺人事件が数年に1件あるかどうかぐらいなので


彼らの仕事は主に、「盗難対策」らしく


コンピューター犯罪専門の職員も何人かいるそうです

 

2.ミシガン大学が運営している路線バスの運転手の半分が学生


これも、「バスの運転手をしている学生さん」が受診して気づいたこと

 

ミシガン大学は、アナーバ市内全域に施設が点在しており


それらの施設を結ぶ形で、関係者が無料で乗れる路線バスがあります

 

バイトの学生が運転していると言っても、幼稚園のマイクロバス程度のものではなく


ちゃんとした大型バスです


3.大学が運営しているゴルフ場もお得


これは患者さんに関係なく、指導医との雑談での話題


そもそもミシガン州はアメリカでも、最もゴルフ場が多いらしく(フロリダなどより多い!)


アナーバー市内にも大学所有のゴルフ場二つと、市営のゴルフ場二つ、あと私営がいくつか


自宅から車で3分の、大学のゴルフ場は結構いいコースなのですが


トワイライト(今は午後4時以降)なら20ドルでまわり放題


既に午後8時頃まで明るいですから、そこそこまわれます


他には市営のビギナー用のゴルフ場は、普通の時間にまわって、9ホールなら8ドル、18ホールでも14ドルです


さっそく10年ぶりに、ゴルフをやってみようとガレージセールで格安のクラブを手に入れました


プライマリ・ケアって何?

2009-04-07 00:12:22 | 家庭医療
卒後臨床研修で語られる「プライマリ・ケア能力の習得」

家庭医療などが掲げる「プライマリ・ケア」

実は、別のものをさしているのですが混同されているのが困ったところです

定義としては、以下に詳しいのですが


定義の違いを認識するにはIOMによる定義をみると、分かりやすいです

以下引用
<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<
  • The care provided by certain clinicians―Some proposed legislation, for example, lists the medical specialties of primary care as family medicine, general internal medicine, general pediatrics, and obstetrics and gynecology. Some experts and groups have included nurse practitioners and physician assistants (OTA, 1986; Pew Health Professions Commission, 1994);
  • A set of activities whose functions define the boundaries of primary care―such as curing or alleviating common illnesses and disabilities;
  • A level of care or setting―an entry point to a system that includes secondary care (by community hospitals) and tertiary care (by medical centers and teaching hospitals) (Fry, 1980); ambulatory versus inpatient care;
  • A set of attributes, as in the 1978 IOM definition―care that is accessible, comprehensive, coordinated, continuous, and accountable―or as defined by Starfield (1992)―care that is characterized by first contact, accessibility, longitudinality, and comprehensiveness;
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

つまり初期臨床研修における「プライマリ・ケア」とは3番目の、病院などにおける「初期対応」のことをさしています

一方で、家庭医療などで掲げるプライマリ・ケアとは1、2、4番目のことであり、地域において主にcommon diseaseを対象として、ACCCCACCCAを掲げた包括的な診療のことです

さらに言えば、後者は初期臨床研修の中では、地域医療の枠として学ぶものです

そして、前者の初期対応は、初期研修である程度習得するものですが

後者は初期研修の2年間で習得できるものでは到底無く、これ自体を「専門性」として考え、

家庭医療学会では「後期研修」としてさらに3年間の研修が必要だとしているわけです

そういった定義をふまえて、m3.comから引用です

山下先生が定義されている「ファースト・エイド」はまさに本来、初期研修が習得目標とするべき「プライマリケア」であり、

このあたりの定義の混同による、現場の混乱がみてとれますが

山下先生がおっしゃっている内容は、私も大筋賛成です

<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<(以下引用)

今の臨床研修目標はレベルが低すぎる-山形大学医学部付属病院長・山下英俊氏に聞く◆Vol.1

学ぶべきは「プライマリ・ケア」ではなく「ファースト・エイド」

2009年4月6日 聞き手・橋本佳子(m3.com編集長)


 2010年度から卒後臨床研修制度の改正が予定されている。(1)必修科目を7科から、内科、救急医療、地域医療に削減、(2)都道府県別に研修医の募 集定員の上限を設定――が見直しのポイント。この見直しを研修の担い手である大学病院や臨床研修病院のトップはどう見ているのだろうか。  厚生労働省の医道審議会医道分科会医師臨床研修部会の委員を務める、山形大学医学部付属病院長の山下英俊氏に聞いた(2009年3月26日にインタ ビュー)。

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「総花的なプログラムのため研修目的がはっきりせず、悩んでいる研修医は多い」と指摘する山下英俊氏。

 ――まずは現行制度の評価すべき点、あるいは問題点をお教えください。

 2004年度の臨床研修の必修化以前は、各病院が独自に研修をしており、研修目的がはっきりしていなかったのですが、今の制度になり、「これを教えよう」と研修目標が明確になった点は評価できると思います。

 もう一つ、評価すべきは身分が安定したこと。2年間は給与が出るため、アルバイトをしなくても生活ができ、研修に専念できるようになりました。

 ――その研修目標自体は、適切であるとお考えでしょうか。

 そこが重要で、研修目標が明確になったことはいい点でもあり、一方で問題点でもあるのです。つまり、研修目標を低く設定しすぎたと思っています。

 社会が必要としているのは、幅広く基礎的な知識や技量を持ち、その上で高度な医療ができる医師ではないでしょうか。研修の必修化以前は、この高度、あるいは専門特化した医療しかできない医師、“専門バカ”しか育ててこなかったという反省があります。ただし、この点に異論を唱える人もいますが。

 やはり各専門分野のスペシャリスト、名医は必要です。しかし、このような医師にも、ある程度の広がりを持った医療をしてもらいましょう、というのが研修の本来の目的であるとすれば、まず「自分がどういう医師になるか」が明確になっていなければなりません。

 コモンディジーズが多い一方で、高度な医療、難しい病気も世の中には数多くあります。両者を一番頭が柔らかく、一番鍛えなければならない時期に経験する必要があります。しかし、「難しい病気はいいです。簡単な病気だけを診ていればいいです」というのが今の研修目標であり、なぜわれわれは社会のために苦労してがんばっているか、その部分が飛んでしまっています。高度な医療はチームで取り組む必要があり、多くのスタッフが手間をかけ、時には悩みながら実践しています。その姿を若い人に見せなければならない。それが次の世代を育てることにつながるのです。

 ――「ある程度の広がり」は、今の研修目標では獲得できないのでしょうか。

 今の研修目標は、「挿管ができる」「注射ができる」といった程度で済ませています。それでは、レベルが低いのです。

 当大学の嘉山孝正医学部長も言っていますが、研修理念に「プライマリ・ケアの基本的な診療能力を身に付ける」という表現を使ったからよくない。初期研修の2年間で学ぶべきは、「ファースト・エイド」(first aid)です。つまり目の前の患者さんが今、どんな状況にあり、何の治療をすべきか、脳外科医あるいは心臓内科医を呼べばいいのか、こうしたことを判断して、例えば、スペシャリストが来るまでの15分の間、初期治療を行うのがファースト・エイドです。

 ファースト・エイドを的確に行うには、コモンディジーズだけではなく、難しい病気も、自らは治療ができなくても、すべて知っておくことが必要です。コモンディジーズの患者さんだけが目の前に来るわけではありませんから。

 ――様々な疾患についての知識を持ち、鑑別診断をするのは非常に難しいことではないでしょうか。

 その通りです。高度な医療まで全部含めて教育しないと、鑑別診断ができるようにはなりません。

 もう一つ、今の制度で問題なのは、総花的に様々な研修を取り入れたプログラムになっている点。皆に、「2年間、必ず幕の内弁当を毎日食べなさい」と言っているようなものです。毎日、総花的なことをやらされていたら、「自分は何のために今、この科で研修をしているのか」、研修の目的がはっきりしません。研修医たちが今、一番、悩んでいるのはこの点です。

 医学生の時代には、「将来、こんな医師になろう」といろいろな本を読んだり、先輩たちに話を聞いたりしています。しかし、今の研修制度では、医学生時代に描いた目標が直線的に実現の方向に向かわない。「将来、これは役に立つ」という意味づけがはっきりしていれば、つらくても一生懸命研修します。自分でイノベートさせていくものです。

 しかし、今の研修制度は“横並び”でプライマリ・ケアをやらされているわけです。確かに将来の自分の専門とは関係ない分野を学ぶことは必要ですが、医学 部時代に、CBT・OSCE(共用試験)で総合的な知識を問う試験をやっています。臨床実習でも各科を回ります。さらに今の国家試験には問題はあります が、あらゆる分野を浅く広く勉強するという担保はなされています。

 それなのになぜもう一度、臨床研修で総花的な研修をやらなければならないのでしょうか。人によって食べ物に好みがあるように「私はこれをやりたい」と言ったら、それに合わせたプログラムを提供すべきでしょう。よく言われることですが、「私は昔、臨床研修で1カ月産婦人科を勉強しました」という医師に、お産を任せることができますか。

 医師になって最初の2年間は非常に大事な、クリティカルな時期。感 受性、吸収力、そして向学心に優れる。しかも元気。その時期に、知識や技術だけではなく、医師としての倫理感、人生観もたたき込まなければいけない。こん な大切な時期に、目的もなく「グルグル」、短期間でいろんな科を回る。結局、将来の目標がぼやけてしまい、落ち着いて勉強している実感がなく、だんだん無 気力になってしまうのが現実です。

 教える側も目的がはっきりしていないから、何を教えていいのか、分からない。お互いに目的が分からないのに、「研修プログラムがこうなっていますから、一緒に研修しましょう」というのでは、モチベーションは下がるばかりです。

 ――「プライマリ・ケア」という言葉は曖昧です。先生が言う、プライマリ・ケア、あるいはスペシャリストの定義は何でしょう。

 本当の意味でのプライマリ・ケアは、目の前の患者に何が必要かの見極めができること。そのためには、きちんとした研修を積む必要があります。つまり、プライマリ・ケアあるいは総合医の「専門医」ももちろんいます。この専門医は、非常に博識で、どんな病気でも診断はできる。しかも自分では治療はできない場合は、的確に別の専門医を呼ぶ。「コモンディジーズだけ診るのが、総合医」というのは大きな間違いです。

 しかし、今の2年間の研修が目指しているのは、「専門医としての総合医」とは全く違います。研修終了後も、「専門医としての総合医」のレベルまではいかなくても、ファースト・エイドができるようにもなっていない。

 ――では、ファースト・エイドの知識・技術を身に付けるためには、どんな研修をすればいいのでしょうか。

 ファースト・エイドの一番のコンセプト、つまり一番重要なのは「命を助けること」です。眼が痛いとか、腰が痛いといった訴えへの対応も重要ですが、一番大切なのは命。命を助けるための知識・技術を考えれば、必要な研修は、外科、救急、麻酔といった辺りではないでしょうか。

 今、議論されている研修の見直しでは、内科と救急医療、地域医療が必修ですが、内科ではなく、必須とすべきなのは外科。外科といっても、消化器外科、循環器外科、脳神経外科などのメジャーな外科。手術の場合は必ず、全身管理を行うからです。内科は全身管理をしているようで、意外とやっていない。「目の前で患者が倒れた」といった場合にどうするか、やはり対応できるのは外科です。内科ではダメと言っているのではなく、外科の方がよりファースト・エイドを学ぶにはふさわしいということ。厚労省の会議でも「外科ではなく、内科を必修にするのは納得できない」と何度も言ったのですが、全く相手にされなかったですね。

 命を助けるために、様々な知識や技術のインテグレートのさせ方、考え方を勉強するのが、ファースト・エイドの眼目です。そのために必要なものは何かをアレンジすればいいのです。さらに言えば、「ファースト・エイドを学ぶという目的がはっきりしていれば、必修科目を定める必要がない、どの科で学ぶかは本来関係ない」という議論もあります。

 ファースト・エイドをきちんと学んだ上で、残る研修期間は自分が将来専門とする診療科での研修やその関連分野の研修をやる。例えば、将来、糖尿病専門医を目指すとしても、糖尿病性網膜症を診るために眼科でも研修するというイメージです。

 つまり、初期研修で一番優先すべきなのは、ファースト・エイドの研修。それ以外に自分の専門分野やその関連をアレンジしていけば、おのずから研修プログラムはでき上がります。