だがしかし、事件は現場ですでに起こっていたのだった。
その1.謎の荷物男。
空港で市内行きのバスを待っている時に、なんだかおっさんが近づいてきて話しかける。
わからなかったので多分チェコ語。(わからなくても英語、という可能性も多々あるが)
なんか自分が持ってきたスポーツバッグを指しながら熱心に話してるんだけど、
こっちはさっぱりわからない。わからないから顔をしかめて「は?」と言ってみる。
そうすると、「いいからいいから」という雰囲気で、
持っていたバッグを地面に置いてとっとと歩き去ってしまう。
……なんだよ。一体。
表情としぐさは、「このカバン、ちょっとここに置いといて」という感じだったのだが。
しかしそういうことなら、どこからどー見ても旅行者であり、話も通じてなさそうな
わたしに言わなくても良さそうなもんだ。だいたい場所的に、こっちがバスを待っているのは
わかるだろうし、バスが来たら行ってしまう人にそんなこと頼んだって仕方なかろう。
置いて行ったカバンを横目で見てみる。
かなりくたびれたスポーツバック。ジッパーは開いていて、小さい段ボール箱が突っ込まれている。
新品の何かが入っている感じではなくて、箱自体は開封済みだったように思う。
やだなあ。アヤシイ人だったらどうしよう。
まあ、この状況で麻薬の運び屋にされることは考えにくいが……
有り得るとしたら、さっきの男とグルのニセ警官が現れて「この荷物はどうしたんだ!!」とか
まくし立て、こちらにプレッシャーを与えてから金品を強奪するとか。
爆発物が入っているとか。
好奇心に駆られて荷物を覗いたところで、びっくり箱が作動して、――どっきりカメラとか。
いろんな可能性(?)を考えてみたが、すでに男が去ってから15分くらい経っている。
ニセ警官と爆発物の可能性は消えたな。ニセ警官なら、15分も待たせずに現れるだろうし、
爆発物も同じ。残る可能性はどっきりカメラ?
結局バスが来たからわたしはそれに乗り、カバンはそこに放りっぱなしですけどね。
このシチュエーションで善管注意義務を求められるとは思えないし。
しかしあのカバンはどうなったんだろうなあ。一体あの男は何がしたかったんだろう。
その2.1500円事件。
地下鉄を下りて、夜ごはんを買おうと思った。
オナカも空いていないし、機内食のパンをキープしていたので、
これにマクドナルドあたりのチキンナゲットがあればちょうどいい。
地下鉄フローラ駅には小さなショッピングモールが繋がっている。
お、マクドナルド、あるじゃん。3階まで行くの面倒だけど、ここで買わなきゃ。
が、マクドナルドの手前のデリカテッセンが気になる。海産物メインのデリで、
少し高そうだが美味しそう。こっちでいいか。プラハまで来てマクドナルドに固執する必要はない。
ムール貝のマリネを選ぶ。量り売り。プラスチックカップに軽く一杯という量で、194コルナ。
わたしは500コルナ札を出した。だが、返ってきたお釣りは6コルナ。
札であと300コルナ返ってくるはずなのに、何もない。
「500コルナ渡したでしょう」と言っても、お店のおばさんは、最初わからないという
ジェスチャーをし、何度か言っても全く受け付けない。
結局お釣りは返ってきませんでした。1500円の損失。
これはね。正直気分的に後々まで響いた。
何しろ着いて早々だからねえ。「しょっぱながこれか……」とがっかりする。
釣銭詐欺はありがちなことだと言われるけど、わたしは今まであまり遭遇したことがない。
さっきの荷物男の件も合わせて、相当微妙な気分になる。
ちなみに最終日空港の免税店でも50コルナ誤魔化された。最初と最後が釣銭詐欺かい!

The mussels.One of shop assistants shortchanged for this. What a shame!
問題のムール貝。
2つ3つ食べたあとなので、もう少し量は多かった。味は美味しかったんだけどね……。
ただその後、安く計算を間違えた人も2人いたので、もしかしたらうっかり者が
とても多い国民性である可能性もゼロではない。
(上記に関しては、安く間違ったのではなく、オマケしてくれた可能性もゼロではない。)
その3.真夜中の饗宴。
初日はすでに十分ケチがついた気がするし、翌日は朝早く起きて行動する予定だし、もう寝ちゃおう。
22時頃にベッドに入る。その後わりあいスムーズに寝入ったのだが……
……すごく大きな笑い声に目が覚める。時計を見ると23時。
って、何よ、この声?
到着するまで知らなかったんだけど、このホテルは外廊下になっている。
アパートみたいな構造。だがアパートと違って中庭を囲むコの字型になっており、
外とは塀で隔てられているし、防犯上は問題ないようだ。
部屋のメインドアがガラスなのも気になったが、曇りガラスだし、視線はカーテンで遮られている。
別に実害はなさそう。
しかしこんな落とし穴があるとは思わなかった。こういう構造だと、中庭での笑い声が
部屋までダイレクトに伝わってくるのだ。ドアがガラスなので余計。

Small courtyard in the hotel.
I couldn't sleep till midnight because drunken people made big noise there.Horrible.
翌日撮った写真。手すりの外の白いのが、中庭を覆っている四角いパラソル。
その下に椅子とテーブルがあり、宿泊客が歓談する場所になっている。
わたしの部屋は2階。
頼むよ。勘弁してくれよー。
何人くらいだろうか。笑い声は男女双方のものが聞こえるが、人数としては
それほど大勢ではないようだ。3人とか5人とかがお酒を飲んで喋っている雰囲気。
楽しそうで、そりゃ結構なんだけど、なにしろ外人さんは横幅がある分、声がでかい……。
「ウァハッハッハ!」という傍若無人な笑い声が間歇的に響いて来る。
いや、ほら。
小さい頃、家に親戚が集まって大人たちが飲むような時って。
襖の向こうで酔っぱらって騒がれたって、結局眠れたじゃない。
そういう感じだと思えば、大丈夫、いつかは眠れるはず。
少なくとも楽しそうなんだから、雰囲気的な不快感はないのだし。
そう思って我慢して寝ようとした。
でもやっぱりダメ。ウトウトっとすると「ウァッハッハ!」。
特に女性の声が、トーンが高い分ツライ。しかも音量は男性に劣らない。
腹式発声がちゃんと出来てるような笑い声。鳴り響く。オペラ歌手に向いてるかも……
うー。西欧人って一応伝統的に公共心が高い人々ではなかったのか?
グループのうちには少なくとも自分たちの声を気にする人々もいるらしく、
何度か静かにはなるのだが、またそのうち声が大きくなる。それを5、6回繰り返す。
時間が時間だから、彼らもそろそろ寝てくれるんじゃないかなー、という淡い期待を抱いて30分。
ダメだ。もう我慢出来ない。朦朧とした頭でフロントに電話する。
「はい?」
「……すごいウルサイ。」
「うるさい?ああ……」
「お願い」
「んー……OK」
フロントの人の対応はすぐだった。中庭から人がいなくなる気配がして、あとは静か。
ああ、これで眠れる。不穏な1日目も終りだ。
今度こそ、おやすみなさい。
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その1.謎の荷物男。
空港で市内行きのバスを待っている時に、なんだかおっさんが近づいてきて話しかける。
わからなかったので多分チェコ語。(わからなくても英語、という可能性も多々あるが)
なんか自分が持ってきたスポーツバッグを指しながら熱心に話してるんだけど、
こっちはさっぱりわからない。わからないから顔をしかめて「は?」と言ってみる。
そうすると、「いいからいいから」という雰囲気で、
持っていたバッグを地面に置いてとっとと歩き去ってしまう。
……なんだよ。一体。
表情としぐさは、「このカバン、ちょっとここに置いといて」という感じだったのだが。
しかしそういうことなら、どこからどー見ても旅行者であり、話も通じてなさそうな
わたしに言わなくても良さそうなもんだ。だいたい場所的に、こっちがバスを待っているのは
わかるだろうし、バスが来たら行ってしまう人にそんなこと頼んだって仕方なかろう。
置いて行ったカバンを横目で見てみる。
かなりくたびれたスポーツバック。ジッパーは開いていて、小さい段ボール箱が突っ込まれている。
新品の何かが入っている感じではなくて、箱自体は開封済みだったように思う。
やだなあ。アヤシイ人だったらどうしよう。
まあ、この状況で麻薬の運び屋にされることは考えにくいが……
有り得るとしたら、さっきの男とグルのニセ警官が現れて「この荷物はどうしたんだ!!」とか
まくし立て、こちらにプレッシャーを与えてから金品を強奪するとか。
爆発物が入っているとか。
好奇心に駆られて荷物を覗いたところで、びっくり箱が作動して、――どっきりカメラとか。
いろんな可能性(?)を考えてみたが、すでに男が去ってから15分くらい経っている。
ニセ警官と爆発物の可能性は消えたな。ニセ警官なら、15分も待たせずに現れるだろうし、
爆発物も同じ。残る可能性はどっきりカメラ?
結局バスが来たからわたしはそれに乗り、カバンはそこに放りっぱなしですけどね。
このシチュエーションで善管注意義務を求められるとは思えないし。
しかしあのカバンはどうなったんだろうなあ。一体あの男は何がしたかったんだろう。
その2.1500円事件。
地下鉄を下りて、夜ごはんを買おうと思った。
オナカも空いていないし、機内食のパンをキープしていたので、
これにマクドナルドあたりのチキンナゲットがあればちょうどいい。
地下鉄フローラ駅には小さなショッピングモールが繋がっている。
お、マクドナルド、あるじゃん。3階まで行くの面倒だけど、ここで買わなきゃ。
が、マクドナルドの手前のデリカテッセンが気になる。海産物メインのデリで、
少し高そうだが美味しそう。こっちでいいか。プラハまで来てマクドナルドに固執する必要はない。
ムール貝のマリネを選ぶ。量り売り。プラスチックカップに軽く一杯という量で、194コルナ。
わたしは500コルナ札を出した。だが、返ってきたお釣りは6コルナ。
札であと300コルナ返ってくるはずなのに、何もない。
「500コルナ渡したでしょう」と言っても、お店のおばさんは、最初わからないという
ジェスチャーをし、何度か言っても全く受け付けない。
結局お釣りは返ってきませんでした。1500円の損失。
これはね。正直気分的に後々まで響いた。
何しろ着いて早々だからねえ。「しょっぱながこれか……」とがっかりする。
釣銭詐欺はありがちなことだと言われるけど、わたしは今まであまり遭遇したことがない。
さっきの荷物男の件も合わせて、相当微妙な気分になる。
ちなみに最終日空港の免税店でも50コルナ誤魔化された。最初と最後が釣銭詐欺かい!

The mussels.One of shop assistants shortchanged for this. What a shame!
問題のムール貝。
2つ3つ食べたあとなので、もう少し量は多かった。味は美味しかったんだけどね……。
ただその後、安く計算を間違えた人も2人いたので、もしかしたらうっかり者が
とても多い国民性である可能性もゼロではない。
(上記に関しては、安く間違ったのではなく、オマケしてくれた可能性もゼロではない。)
その3.真夜中の饗宴。
初日はすでに十分ケチがついた気がするし、翌日は朝早く起きて行動する予定だし、もう寝ちゃおう。
22時頃にベッドに入る。その後わりあいスムーズに寝入ったのだが……
……すごく大きな笑い声に目が覚める。時計を見ると23時。
って、何よ、この声?
到着するまで知らなかったんだけど、このホテルは外廊下になっている。
アパートみたいな構造。だがアパートと違って中庭を囲むコの字型になっており、
外とは塀で隔てられているし、防犯上は問題ないようだ。
部屋のメインドアがガラスなのも気になったが、曇りガラスだし、視線はカーテンで遮られている。
別に実害はなさそう。
しかしこんな落とし穴があるとは思わなかった。こういう構造だと、中庭での笑い声が
部屋までダイレクトに伝わってくるのだ。ドアがガラスなので余計。

Small courtyard in the hotel.
I couldn't sleep till midnight because drunken people made big noise there.Horrible.
翌日撮った写真。手すりの外の白いのが、中庭を覆っている四角いパラソル。
その下に椅子とテーブルがあり、宿泊客が歓談する場所になっている。
わたしの部屋は2階。
頼むよ。勘弁してくれよー。
何人くらいだろうか。笑い声は男女双方のものが聞こえるが、人数としては
それほど大勢ではないようだ。3人とか5人とかがお酒を飲んで喋っている雰囲気。
楽しそうで、そりゃ結構なんだけど、なにしろ外人さんは横幅がある分、声がでかい……。
「ウァハッハッハ!」という傍若無人な笑い声が間歇的に響いて来る。
いや、ほら。
小さい頃、家に親戚が集まって大人たちが飲むような時って。
襖の向こうで酔っぱらって騒がれたって、結局眠れたじゃない。
そういう感じだと思えば、大丈夫、いつかは眠れるはず。
少なくとも楽しそうなんだから、雰囲気的な不快感はないのだし。
そう思って我慢して寝ようとした。
でもやっぱりダメ。ウトウトっとすると「ウァッハッハ!」。
特に女性の声が、トーンが高い分ツライ。しかも音量は男性に劣らない。
腹式発声がちゃんと出来てるような笑い声。鳴り響く。オペラ歌手に向いてるかも……
うー。西欧人って一応伝統的に公共心が高い人々ではなかったのか?
グループのうちには少なくとも自分たちの声を気にする人々もいるらしく、
何度か静かにはなるのだが、またそのうち声が大きくなる。それを5、6回繰り返す。
時間が時間だから、彼らもそろそろ寝てくれるんじゃないかなー、という淡い期待を抱いて30分。
ダメだ。もう我慢出来ない。朦朧とした頭でフロントに電話する。
「はい?」
「……すごいウルサイ。」
「うるさい?ああ……」
「お願い」
「んー……OK」
フロントの人の対応はすぐだった。中庭から人がいなくなる気配がして、あとは静か。
ああ、これで眠れる。不穏な1日目も終りだ。
今度こそ、おやすみなさい。
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