夜ごはん。
言い忘れてましたが、チェコはビールで有名な国です。
日本ではビールと言えばドイツ、というイメージが一般的ですが、おそらくチェコ人は、
「ドイツビールなんか目じゃないぜ!」と言うでしょう。多分。
このホテルの名前、「マリー・ピヴォヴァル」Maly Pivovarのピヴォヴァルというのは、
チェコ語でビアホールという意味らしい。ビアホールとして創業したんでしょうね。
今でもホテル直営のビアホールがある。ここで食事をするのを楽しみにしていたのだが、
満席と言われ断られる。
えー、ほんとか~?はじっこのテーブルは空いてるじゃないか。
でも、とても忙しそうではあったから、きっと外国人がめんどくさかったんだろうな。
予定では早めにホテルに入って、混む前に来ようと思ってたんだけどねー。
何しろ色々あったので、一番混む時間になってしまった。残念。
ホテルは町の中心部に極近なので、ちょっと出ただけでこんな写真が撮れる。
The square of Premysl Otakar Ⅱ in Ceske Budejovice.
ここがこの町のメインであるプジェミスル・オタカル2世広場。
イロイロあって傷ついたココロが、この美しい夜景に多少なりとも癒される。
さて。そうすると、晩御飯どうしようかなー。
外国の小さな町にありがちなことだが、中心部に安直なコンビニなどは見当たらない。
さっきのショッピングモールには中華とチェコ料理のファストフードはあったけど、
この時間まであそこがやっているかどうか。
1キロ夜道を歩いて、閉まっていたら目も当てられない。
もう散々歩いたし、てきとーにちゃっちゃと食べて寝たいよ。
ふと横を見ると中華レストランの看板。(撮ったのは翌日。)
The sign of Chinese restaurant I had supper.
ここにしようかなー。ホテルからすぐだし。
だが、4階だということが気にかかる。4階だと、何かあった時に第三者に
助けを求めることも容易ではなかろうしなあ……
まあでも、様子を見てから決めますか。
だが、予想の範囲内ではあったけれど、エレベーターの扉が開いた所は既に店内。
うわー、しかもお客さんが誰もいなくない?土曜日のこの時間に客が皆無って……
ものすごく引き返したい。が、店の人と目が合ってしまった。
覚悟を決めて、というより祈るような思いでエレベーターから出る。
無事にこの店から出られますように。
そこに立っていたのは、いわゆる中国マダムというような化粧をしたおばさま。
チャイナドレス。アイシャドー濃い。
その迫力に負けそうになりながら、食事出来ますか?と訊こうとして、
近づいていきつつ、エクスキューズミー、と言いかけた途端、
「NO!」……裂帛の気合で叫ばれる。
……は???
NOって、何がNOなんだぁぁぁぁっ!
「鳩が豆鉄砲をくらったような」という表現があるが、その時のわたしはまさにその状態。
相手のあまりの気合に一瞬反応が出来ずに金縛り。マダムと見つめあう。
するとマダムが、はっ!と気づいた顔をし、「何か食べたいの?」と箸を使う仕草をする。
(「食べる」のジェスチャーは日本人と同じですなあ。)
ぶんぶんぶん。わたしは最大限に大きく頷く。マダムは表情をゆるめ、席に案内してくれたんだけど、
――一体何がNOだったのかは未だにわからない。
しかし不気味さは引き続いて残る。
何しろ他のお客さんがいない。いるのは、さきほどのマダムと、メニューを持ってきてくれた
20歳くらいの女の子だけ。この女の子は着飾ったマダムとは違い、
少々くたびれた感じのTシャツとジーンズなので、
Inside of the restaurant.
こういう店の雰囲気にはそぐわない。厨房の人だろうか。
うーむむむ。……アヤシイ雰囲気と言えないこともない。
この店は、広場に面した(一応)一等地にある。
……ヤバイ店だとしても、せいぜいがとこぼったくられる程度か。
それに、そういう店だったらこんな風に写真をパチパチ撮らせてはいないだろうなあ。
あ、でもカメラは取り上げられる可能性もあるのか。
さりげなくマダムを窺ってみる。彼女はわたしからは離れたところにいて、
全くこちらは気にせずに何やらレジで会計処理をしているらしい。
が、それはそれで「あえて見てませんよ」というポーズにも思えてしまい……
どっちにしろマダムは入り口付近にいるので、ニゲラレマセン。
あ、しかもさっきはいなかった男の人が増えている。――固め始めたか。
これってあれだなあ、中国志怪小説の……ひらったく言えば「西遊記」で、
三蔵法師が村人の家に招かれ泊まったはいいが、実はそれは妖怪の棲み処でした、
というところだなあ。助けて、孫悟空。
そんなことを考えているうち、頼んだ料理が出てくる。アヒルの焼きそば。
Duck Fried noodle.
持ってきてくれたのはさっきの女の子だったのだが、……彼女の疲れた様子が気になる。
きっと人間の村から幼少期にさらわれて来て、それからずっとこの洞窟で
毎日使役されているに違いない。はかなげな微笑を浮かべて去っていく。
うーん、この長の年月、妖怪たちの悪行に苦しめられて来たんだろうなあ。
ちなみにアヒル焼きそばの味は普通でした。まあ馴染みのない食材なだけに、
風味に少々癖があると感じるかな。やっぱり大盛りなの(^_^;)。
そんなにはお腹も空いていないし、全部は食べられない。
それにだいたい妖怪の洞窟でそんな落ち着いて食事が出来るか。
――さて。帰るぞ。
覚悟を決めて会計を頼む。ううむ、メニュー表とは違う、法外な請求をされるのでは……。
と、マダムが皿の残りを見て「持って帰るか?」と訊く。半分以上残していた気がするので、
なんとなく申し訳なく、つい「うん」と言ってしまう。そして、持って帰っても箸がないな、
と思った瞬間、相手もそれに気づいたらしく、箸もいるか?と訊いて来る。
その度に請求書にちょこちょこ金額が加算される。そして運命の会計。
129コルナ。≒680円。アヒル焼きそばと緑茶とテイクアウトのケース代と箸代込。
……店構えからすれば、もう少し高いと思っていたのに。
プラハで似たようなメニューを頼んだ時の方が高かった。
ほっとする。……あんまりほっとしたので、チップをあげるのを忘れた。
帰りには、入口近くにいた男の人が「バイバ~イ」と軽いノリで手を振ってくれた。
そして三蔵法師は無事に地上へと帰って来ることが出来たのでした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後はすぐホテルに帰り、就寝。
あ、でも持ち帰りした焼きそばは、何とかがんばって半分くらいは食べました。
めでたしめでたし。
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言い忘れてましたが、チェコはビールで有名な国です。
日本ではビールと言えばドイツ、というイメージが一般的ですが、おそらくチェコ人は、
「ドイツビールなんか目じゃないぜ!」と言うでしょう。多分。
このホテルの名前、「マリー・ピヴォヴァル」Maly Pivovarのピヴォヴァルというのは、
チェコ語でビアホールという意味らしい。ビアホールとして創業したんでしょうね。
今でもホテル直営のビアホールがある。ここで食事をするのを楽しみにしていたのだが、
満席と言われ断られる。
えー、ほんとか~?はじっこのテーブルは空いてるじゃないか。
でも、とても忙しそうではあったから、きっと外国人がめんどくさかったんだろうな。
予定では早めにホテルに入って、混む前に来ようと思ってたんだけどねー。
何しろ色々あったので、一番混む時間になってしまった。残念。
ホテルは町の中心部に極近なので、ちょっと出ただけでこんな写真が撮れる。
The square of Premysl Otakar Ⅱ in Ceske Budejovice.
ここがこの町のメインであるプジェミスル・オタカル2世広場。
イロイロあって傷ついたココロが、この美しい夜景に多少なりとも癒される。
さて。そうすると、晩御飯どうしようかなー。
外国の小さな町にありがちなことだが、中心部に安直なコンビニなどは見当たらない。
さっきのショッピングモールには中華とチェコ料理のファストフードはあったけど、
この時間まであそこがやっているかどうか。
1キロ夜道を歩いて、閉まっていたら目も当てられない。
もう散々歩いたし、てきとーにちゃっちゃと食べて寝たいよ。
ふと横を見ると中華レストランの看板。(撮ったのは翌日。)
The sign of Chinese restaurant I had supper.
ここにしようかなー。ホテルからすぐだし。
だが、4階だということが気にかかる。4階だと、何かあった時に第三者に
助けを求めることも容易ではなかろうしなあ……
まあでも、様子を見てから決めますか。
だが、予想の範囲内ではあったけれど、エレベーターの扉が開いた所は既に店内。
うわー、しかもお客さんが誰もいなくない?土曜日のこの時間に客が皆無って……
ものすごく引き返したい。が、店の人と目が合ってしまった。
覚悟を決めて、というより祈るような思いでエレベーターから出る。
無事にこの店から出られますように。
そこに立っていたのは、いわゆる中国マダムというような化粧をしたおばさま。
チャイナドレス。アイシャドー濃い。
その迫力に負けそうになりながら、食事出来ますか?と訊こうとして、
近づいていきつつ、エクスキューズミー、と言いかけた途端、
「NO!」……裂帛の気合で叫ばれる。
……は???
NOって、何がNOなんだぁぁぁぁっ!
「鳩が豆鉄砲をくらったような」という表現があるが、その時のわたしはまさにその状態。
相手のあまりの気合に一瞬反応が出来ずに金縛り。マダムと見つめあう。
するとマダムが、はっ!と気づいた顔をし、「何か食べたいの?」と箸を使う仕草をする。
(「食べる」のジェスチャーは日本人と同じですなあ。)
ぶんぶんぶん。わたしは最大限に大きく頷く。マダムは表情をゆるめ、席に案内してくれたんだけど、
――一体何がNOだったのかは未だにわからない。
しかし不気味さは引き続いて残る。
何しろ他のお客さんがいない。いるのは、さきほどのマダムと、メニューを持ってきてくれた
20歳くらいの女の子だけ。この女の子は着飾ったマダムとは違い、
少々くたびれた感じのTシャツとジーンズなので、
Inside of the restaurant.
こういう店の雰囲気にはそぐわない。厨房の人だろうか。
うーむむむ。……アヤシイ雰囲気と言えないこともない。
この店は、広場に面した(一応)一等地にある。
……ヤバイ店だとしても、せいぜいがとこぼったくられる程度か。
それに、そういう店だったらこんな風に写真をパチパチ撮らせてはいないだろうなあ。
あ、でもカメラは取り上げられる可能性もあるのか。
さりげなくマダムを窺ってみる。彼女はわたしからは離れたところにいて、
全くこちらは気にせずに何やらレジで会計処理をしているらしい。
が、それはそれで「あえて見てませんよ」というポーズにも思えてしまい……
どっちにしろマダムは入り口付近にいるので、ニゲラレマセン。
あ、しかもさっきはいなかった男の人が増えている。――固め始めたか。
これってあれだなあ、中国志怪小説の……ひらったく言えば「西遊記」で、
三蔵法師が村人の家に招かれ泊まったはいいが、実はそれは妖怪の棲み処でした、
というところだなあ。助けて、孫悟空。
そんなことを考えているうち、頼んだ料理が出てくる。アヒルの焼きそば。
Duck Fried noodle.
持ってきてくれたのはさっきの女の子だったのだが、……彼女の疲れた様子が気になる。
きっと人間の村から幼少期にさらわれて来て、それからずっとこの洞窟で
毎日使役されているに違いない。はかなげな微笑を浮かべて去っていく。
うーん、この長の年月、妖怪たちの悪行に苦しめられて来たんだろうなあ。
ちなみにアヒル焼きそばの味は普通でした。まあ馴染みのない食材なだけに、
風味に少々癖があると感じるかな。やっぱり大盛りなの(^_^;)。
そんなにはお腹も空いていないし、全部は食べられない。
それにだいたい妖怪の洞窟でそんな落ち着いて食事が出来るか。
――さて。帰るぞ。
覚悟を決めて会計を頼む。ううむ、メニュー表とは違う、法外な請求をされるのでは……。
と、マダムが皿の残りを見て「持って帰るか?」と訊く。半分以上残していた気がするので、
なんとなく申し訳なく、つい「うん」と言ってしまう。そして、持って帰っても箸がないな、
と思った瞬間、相手もそれに気づいたらしく、箸もいるか?と訊いて来る。
その度に請求書にちょこちょこ金額が加算される。そして運命の会計。
129コルナ。≒680円。アヒル焼きそばと緑茶とテイクアウトのケース代と箸代込。
……店構えからすれば、もう少し高いと思っていたのに。
プラハで似たようなメニューを頼んだ時の方が高かった。
ほっとする。……あんまりほっとしたので、チップをあげるのを忘れた。
帰りには、入口近くにいた男の人が「バイバ~イ」と軽いノリで手を振ってくれた。
そして三蔵法師は無事に地上へと帰って来ることが出来たのでした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後はすぐホテルに帰り、就寝。
あ、でも持ち帰りした焼きそばは、何とかがんばって半分くらいは食べました。
めでたしめでたし。
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