Mo.の事件簿 A diary of Mo’s trips

事件簿などという大層なタイトルだが、実は単なる旅行記です。

23.そして三蔵法師は妖怪の棲み処へ……

2009-12-03 | チェコ・9月5日
夜ごはん。

言い忘れてましたが、チェコはビールで有名な国です。
日本ではビールと言えばドイツ、というイメージが一般的ですが、おそらくチェコ人は、
「ドイツビールなんか目じゃないぜ!」と言うでしょう。多分。

このホテルの名前、「マリー・ピヴォヴァル」Maly Pivovarのピヴォヴァルというのは、
チェコ語でビアホールという意味らしい。ビアホールとして創業したんでしょうね。
今でもホテル直営のビアホールがある。ここで食事をするのを楽しみにしていたのだが、
満席と言われ断られる。

えー、ほんとか~?はじっこのテーブルは空いてるじゃないか。
でも、とても忙しそうではあったから、きっと外国人がめんどくさかったんだろうな。
予定では早めにホテルに入って、混む前に来ようと思ってたんだけどねー。
何しろ色々あったので、一番混む時間になってしまった。残念。




ホテルは町の中心部に極近なので、ちょっと出ただけでこんな写真が撮れる。










The square of Premysl Otakar Ⅱ in Ceske Budejovice.


ここがこの町のメインであるプジェミスル・オタカル2世広場。
イロイロあって傷ついたココロが、この美しい夜景に多少なりとも癒される。




さて。そうすると、晩御飯どうしようかなー。
外国の小さな町にありがちなことだが、中心部に安直なコンビニなどは見当たらない。
さっきのショッピングモールには中華とチェコ料理のファストフードはあったけど、
この時間まであそこがやっているかどうか。
1キロ夜道を歩いて、閉まっていたら目も当てられない。
もう散々歩いたし、てきとーにちゃっちゃと食べて寝たいよ。

ふと横を見ると中華レストランの看板。(撮ったのは翌日。)






The sign of Chinese restaurant I had supper.

ここにしようかなー。ホテルからすぐだし。
だが、4階だということが気にかかる。4階だと、何かあった時に第三者に
助けを求めることも容易ではなかろうしなあ……
まあでも、様子を見てから決めますか。

だが、予想の範囲内ではあったけれど、エレベーターの扉が開いた所は既に店内。
うわー、しかもお客さんが誰もいなくない?土曜日のこの時間に客が皆無って……
ものすごく引き返したい。が、店の人と目が合ってしまった。
覚悟を決めて、というより祈るような思いでエレベーターから出る。
無事にこの店から出られますように。

そこに立っていたのは、いわゆる中国マダムというような化粧をしたおばさま。
チャイナドレス。アイシャドー濃い。
その迫力に負けそうになりながら、食事出来ますか?と訊こうとして、
近づいていきつつ、エクスキューズミー、と言いかけた途端、
「NO!」……裂帛の気合で叫ばれる。


……は???


NOって、何がNOなんだぁぁぁぁっ!
「鳩が豆鉄砲をくらったような」という表現があるが、その時のわたしはまさにその状態。
相手のあまりの気合に一瞬反応が出来ずに金縛り。マダムと見つめあう。
するとマダムが、はっ!と気づいた顔をし、「何か食べたいの?」と箸を使う仕草をする。
(「食べる」のジェスチャーは日本人と同じですなあ。)
ぶんぶんぶん。わたしは最大限に大きく頷く。マダムは表情をゆるめ、席に案内してくれたんだけど、
――一体何がNOだったのかは未だにわからない。


しかし不気味さは引き続いて残る。
何しろ他のお客さんがいない。いるのは、さきほどのマダムと、メニューを持ってきてくれた
20歳くらいの女の子だけ。この女の子は着飾ったマダムとは違い、
少々くたびれた感じのTシャツとジーンズなので、





Inside of the restaurant.


こういう店の雰囲気にはそぐわない。厨房の人だろうか。
うーむむむ。……アヤシイ雰囲気と言えないこともない。



この店は、広場に面した(一応)一等地にある。






……ヤバイ店だとしても、せいぜいがとこぼったくられる程度か。
それに、そういう店だったらこんな風に写真をパチパチ撮らせてはいないだろうなあ。
あ、でもカメラは取り上げられる可能性もあるのか。

さりげなくマダムを窺ってみる。彼女はわたしからは離れたところにいて、
全くこちらは気にせずに何やらレジで会計処理をしているらしい。
が、それはそれで「あえて見てませんよ」というポーズにも思えてしまい……
どっちにしろマダムは入り口付近にいるので、ニゲラレマセン。
あ、しかもさっきはいなかった男の人が増えている。――固め始めたか。

これってあれだなあ、中国志怪小説の……ひらったく言えば「西遊記」で、
三蔵法師が村人の家に招かれ泊まったはいいが、実はそれは妖怪の棲み処でした、
というところだなあ。助けて、孫悟空。

そんなことを考えているうち、頼んだ料理が出てくる。アヒルの焼きそば。





Duck Fried noodle.

持ってきてくれたのはさっきの女の子だったのだが、……彼女の疲れた様子が気になる。
きっと人間の村から幼少期にさらわれて来て、それからずっとこの洞窟で
毎日使役されているに違いない。はかなげな微笑を浮かべて去っていく。
うーん、この長の年月、妖怪たちの悪行に苦しめられて来たんだろうなあ。


ちなみにアヒル焼きそばの味は普通でした。まあ馴染みのない食材なだけに、
風味に少々癖があると感じるかな。やっぱり大盛りなの(^_^;)。
そんなにはお腹も空いていないし、全部は食べられない。
それにだいたい妖怪の洞窟でそんな落ち着いて食事が出来るか。


――さて。帰るぞ。
覚悟を決めて会計を頼む。ううむ、メニュー表とは違う、法外な請求をされるのでは……。
と、マダムが皿の残りを見て「持って帰るか?」と訊く。半分以上残していた気がするので、
なんとなく申し訳なく、つい「うん」と言ってしまう。そして、持って帰っても箸がないな、
と思った瞬間、相手もそれに気づいたらしく、箸もいるか?と訊いて来る。
その度に請求書にちょこちょこ金額が加算される。そして運命の会計。







129コルナ。≒680円。アヒル焼きそばと緑茶とテイクアウトのケース代と箸代込。

……店構えからすれば、もう少し高いと思っていたのに。
プラハで似たようなメニューを頼んだ時の方が高かった。
ほっとする。……あんまりほっとしたので、チップをあげるのを忘れた。

帰りには、入口近くにいた男の人が「バイバ~イ」と軽いノリで手を振ってくれた。



そして三蔵法師は無事に地上へと帰って来ることが出来たのでした。



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その後はすぐホテルに帰り、就寝。
あ、でも持ち帰りした焼きそばは、何とかがんばって半分くらいは食べました。

めでたしめでたし。



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22.ええええっ!?

2009-11-28 | チェコ・9月5日
苦難その1。

フルボカー城を出て17時。さっきのバス停に戻る。
降りた時は誰もいなくて心細かったけど、今度はこっち側に小学生の集団が、
向こう側のバス停にはおばあちゃん2人がバス待ちをしている。
小学生に訊いたところによると、わたしは向こう側のバス停で待っていればいいらしい。
念のためにおばあちゃんの方へも訊いたが、やはりこちら側でいいとのこと。
バスの時刻表がわかりにくくて時間がはっきりしないけれど、
多分次のバスは17:40だろう。

……だがしかし、いくら待ってもバスは来ない。
陽が落ちると辺りはとても寒くなって、座っているベンチから冷気が伝わってくる。
18時。一体バスはいつ来るのだ?

――言葉が通じないおばあさんが腕時計の文字盤を使って教えてくれた。
バスが来るのは18時半らしい……。
おばあさんたちはついに“散歩”を始めた。バス停から100メートルの間を行ったり来たり。
どうやら体を温めるためらしい。どうもわたしも一緒に、と誘ってくれているようなんだけど、
仲間入りする勇気はなかった。
すみません、わたしは貼るカイロで対応します……。
貼るカイロ、昨日もバス待ちの時に使ったが、
まさか9月の旅行でこんなに活躍するとは思わなかった。

バスはたしかに18時半に来た。はー、やれやれ。寒かったぜ。


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苦難その2。

バスは30分ほど走って先ほどのバスターミナルの前に着く。
さて、これからホテルへ行って、少し町を歩いてみようか。
まずは預けたスーツケースを回収しなければ。

ショッピングモールの3階まで再び上がり、案内所の前に来たところで。


えええええええっ!?


絶叫。棒立ち。呆然自失。
案内所、閉まってますがな!なぜ!どうして!――どうすんねん!!

いやいや、落ち着け。冷静に状況を把握しろ。今まで何かハプニングがあった時でも、
それなりに対応してきたじゃないか。
しかし把握も何も、案内所が閉まっていて、わたしの預けたスーツケースが回収出来ない。
事実は単にそれだけ。あまりにもシンプルな凡ミスのせいか、むしろ事実が受け入れがたい。
ガラスの1メートル向こうに自分のスーツケースがあるのに、取り戻せない悲哀……。

そうです。荷物を預けた後、すぐバスに飛び乗ってしまった。これが敗因。
案内所の営業時間なんて、全く考えなかった。
一応バスが最終21時近くまで発着しているのは目の端で確認したのだが、
むしろそれがいけなかったらしい。21時までバスが来ているのなら、案内所もその頃まで
開いているものだと、無意識のうちに考えてしまっていたようだ。
でも、交通機関が動いていても窓口がとっとと閉まってしまうのは、
地元の地下鉄やバスの案内所のことを考えてみても、普通にあることではないですか。


その後、けっこうあがきました。
バス待ちのお客さんに相談する。英語が話せる20才くらいの女の子がいて、
「1階にもたしか案内所があるよ」と教えてくれる。
これで問題解決か!と喜んだのもつかの間、1階に行ってみるとそこも閉まっている。

ショッピングモール自体の案内所を探しても見つからなかったので、
警備のおにーさんたちに訊いたり(ここの警備員は軒並みガタイが良くて、顔もまあまあ。
黒いスーツがかっこいい。「メン・イン・ブラック」みたい。……が、英語が話せない(T_T))、
やる気のなさそーな化粧品売り場のおにーちゃん(これもわりとイケメン。
……イケメンを狙って訊いているわけではありません。)に訊いたり、
ぐるぐる回ったんだけれども、最終的に。


……わかりました。あきらめます。


まあ、実際はそれほど致命的ではないのだ。
非常に幸いなことに、今夜は元々この町で泊まり。
泊まるのに必要なクーポンなどは持ち歩いているカバンに入っているし。
明日の移動はすぐそばのチェスキー・クルムロフなので、時間的にはある程度融通がきく。
これが飛行機に乗る直前とか、そうでなくても別な街に泊まる予定の日だったりしたら
がっかりするだけじゃ済まないぞ。

……とはいえ、相当がっかりはしましたけど。凹む。


悲しき身軽な姿でバスターミナルを後にし、ホテルへ向かう。







Bus Terminal Information.
I put my luggage here,and it was closed when I returned.
I couldn't get back my luggage this day.......


件の案内所。
この時にこの写真を撮る根性があれば、自分で自分を褒めたいところだが、
さすがにそんな精神的な余裕はなかった。これは別な日に撮った写真。
ちなみに、案内所は18時に締まるのでした。


しかし、バス待ちの乗客で、相談に乗ってくれた英語を話す女の子。
あの人がいたことで、どれだけ心慰められたかわからない。
真剣に話を聞き、真剣に手助けをしてくれようとしていた。
もう届かないけれども、心からの感謝を送ります。



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苦難その3。

スーツケース事件で動揺していたのか、……ホテルへの道で迷う。
未だに不思議だ。迷いようがない道だとは言わんが、1キロくらいのシンプルな道順。
なんでここで迷うかね?
タヌキにでも化かされたんじゃないか、という気が今でもしている。

ほんとに小さな町なのに。完全に自分がどこにいるのかわからなくなってしまった。
ここまでになるのは我ながら珍しい気がする。
しかも時刻は20時過ぎ、光が落ちて暗闇になって来る頃。
建物は続いているのに、人っ子一人歩いていない。いくら小さな町だといったって、
この時間、なぜ誰も通らない?
だんだん怖くなる。キリコの絵みたいな不気味さだ。


数少ない通行人を捕まえ捕まえ、それぞれに道を訊く。
1人目は言葉では説明出来ず――わたしはだいぶ目的地から離れた所にいたらしい――
方向だけを教えてくれる。
2人目はちゃんと説明してくれたのだが、その通りに行っても辿りつかない。
だが別なホテルの前には出たので、もしかしてホテルの名前が通じていなかったのかもしれない。
3人目でようやく英語を話すお姉さんに出会う。しかもラッキーなことに、
「私もそっちへ行くから、連れて行ってあげる」と言われる。
――地獄で天使に会ったようでした。きれいなお姉さん、ありがとう。



20:15、ホテル・マリー・ピヴォヴァル到着。ああ、何と苦労したことよ。



救いはホテルがいいホテルだったことかな。
ここは今回の旅行で一番高い、8500円くらいのホテル。
いや、いいホテルだったからこそ、ゆったりした気分で泊まりたかったものだが。




Hotel Maly Pivovar.

部屋がとても広い。20畳ではきかないか?







ソファとテーブルがある狭い部屋がついている。


色々あったけど。まあでも。何とかなるでしょ。さ、ゴハン食べに行こ、ゴハン。



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21.チェスキー・ブディヨヴィツェへ。

2009-11-25 | チェコ・9月5日
電車に揺られて4時間半。ブルノからチェスキー・ブディヨヴィツェへ。
しかし直線距離で150キロそこそこ、線路を辿ってもせいぜい200キロ程度のはずの
この2都市間で、なぜ4時間半もかかるかね?

文句を言うくらいなら長距離バスの方が時間的にも早いし、値段も安いのだが、
……ワタクシほんのちょっとだけ鉄子(=鉄道マニアの女性形)の気がありますので、
一ヶ所くらい電車に乗りたかったんだい。
4時間半電車に乗っていること自体は全く苦にならない。昔、仙台―京都間を
青春18きっぷで移動したこともありますし。
まあさすがに今はやる気にはなりませんが。


ブルノからの電車は少々古い。コンパートメント(一部屋が6席?)なのだが、
座席シートが相当くたびれている。それはそれで味があるけど。
あまり混んでいなかったらしく、目的地に着くまでコンパートメントを独占出来た。


車外はこんな風景。





Landscape from train.



日本の田園風景も和みますが、外国の牧草地風景もなかなかだと思います。
のーんびり。


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13:50、チェスケー・ブディヨヴィツェ着。

ホテルに行かずに、すぐバスに乗ってフルボカー城へ向かおうと思っていた。
この日も移動+移動のせわしい一日。こういう計画を立ててはイケマセン。





Bus terminal.


駅のすぐ前にあるショッピングモールの屋上がバスプールになっている。
そういうスタイルのバスプールには遭遇したことがなかったので、
最初はどこから入るのかわからなかった。
ショッピングモールの中に入って、エスカレーターを使って行くそうです。

3階?に着くと、たしかにガラスの向こうにはいくつもバス停が並んでいる。
案内所があり、ここで荷物を預けられるらしい。荷物を預け、係のおねーさんに
「フルボカー城へ行きたいんだけど……」と訊いてみる。
すると「今バスが出るところだよ!」と言われ、慌てて教えられた番号のバス停に走る。
バス停に停まっていたバスに飛び乗り、――しかし目的地の確認を忘れてはいけない。
フルボカー城行き?と訊いてみる。頷く運転手さんからチケットを買い、
フルボカー城に着いたら教えてくれるよう頼んで一安心。

すごい。チェスケー・ブディヨヴィツェの駅へ着いてからバスに乗るまで、
10分しか経っていない。驚異的な乗り換えの速さ。なんと運がいいのだ。

――しかしこの“運の良さ”が裏目に出るとは、この時のわたしは知らなかった……


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


フルボカー城。




Hliboka Castle.

作り物っぽい雰囲気が漂うのは、19世紀の改装時に、当時の持ち主である
シュヴァルツェンベルグさん(さん付けで呼んでみたが、貴族。公爵らしい)が、
自分のお気に入りのイギリス・ウィンザー城のデザインを真似っこしたかららしい。
参考にしたウィンザー城のデザインがいつのものなのか、正確な所はわからないが
ガイドブックにチューダー・ゴシック様式と書いてあるので、
おそらく15世紀のデザインを19世紀に再現することになったのだと思う。
そのせいで、やっぱり違和感があるんですね。
まあちょっと真白すぎるのか。


このフルボカー城&ウィンザー城に関しては、ちょっと楽しいことがあった。

この日の夜、イギリスの友達にメールをした。
「フルボカー城に行きました。ここってウィンザー城に影響されたデザインらしいんだけど、
そう見えますか?」とフルボカー城の写メ付きで。
そしたらしばらくして返ってきた返事に、
「さあ、どうでしょう。あなたはどう思います?」とあり、
それに貼付されていたのが、まさにウィンザー城の画像。
よくまあそんなぴったりな画像があったことよ。タイミングの良さにしばしウケました。





Winsor Castle, John send me this photo.

どうでしょう?似てますか?




内部を見学するためには、有料のガイドツアーに参加しなければならない。
しかも事前情報とは違い、英語ツアーもオーディオツアーも行ってないとのこと。
自分のペースで歩けた方が基本的には楽しいんだけどなー。
でも自由見学不可なのでしょうがない。チェコ語のツアーに申し込む。

ツアーまでの時間が30分あったので、すかさずブルノの朝市で買ったリンゴを取り出す。
この時点で15時過ぎ。これが昼食です。
旅行の時はどうしてもスケジュールが優先なので、タイトな日程だと食事時間が
不規則になっていかんね。

あとはお城の写真を撮ったり絵はがきを買ったり。





Courtyard.

右の壁にちょこちょこ並んでいるのは、鹿のハンティング・トロフィーをモチーフにした装飾。
フルボカーは「深い森」という意味だそうなので、元々は狩猟の館として建てられたのかと思ったが、
そういうことは特にパンフレットには書いてなかった。
鹿の首が並んでいる壁というのは少々無気味ですな。







Doorknob.Curious.

ナニコレ?な感じですが、おそらくドアノブ。
当時の城主がトルコ人との戦争に行き、その戦功を記念してデザインしたものらしい。
この見事につるつるの人はトルコ人で、鳥に頭をつっつかれているんですね。
しかし微妙に不可思議なデザインだ……
一瞬、鳥に毛づくろいでもされているような状態を想像する。
苦悩の表情というよりは、マッサージでも受けているような穏やかさではないですか。




そうそう、お城の前の庭で結婚式をしていました。






Wedding ceremony in the garden.


写真は、このくらいの遠景なら許されるかなー?
ロケーションはロマンチックで最高だろうけど、この天候でこの時間だと、
花嫁さんはかなり寒いのではないかと思います。
他2組が結婚式(か、あるいは写真撮影か)を行っていた。人気スポットなんですね。



そのうち城内見学のガイドツアーが始まる。
チェコ語なんだけど、希望者には各国語の説明カードが貸し出され、それを見ながら進む。
しかしわたしが英語を1ページ読み終わるのと、チェコ語の説明では
基本的にチェコ語の説明の方が短いので、全部は読めない。
見学が終わって出てくる所の売店で日本語のガイドブックを見つけた。
それを買って読みながら回った方が良かったかもしれないなあ。

内部は主に木製素材の、こってりとした内装。
ずーっと改築・改装が継続されていたようなので、いつの時代のものかはわからないが、
わたしの印象では中世風。見ごたえがあるので、フルボカー城へ行くのならば
ガイドツアーには参加した方がいいと思う。

ちなみに内部は写真撮影不可のため写真はナシ。




……ここまでは良かったんです。ここまでは。
この日、この後は苦難(?)の連続。



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20.聖ペテロ聖パウロ大聖堂。

2009-11-21 | チェコ・9月5日
その後、聖ペテロ聖パウロ大聖堂へ。

着いたのは8時だった。
その時はミサ中で、観光客が立ち入れるのは8:15からと書いてある。
しばらく外観の写真を撮りながら待っていると、ミサが終わったらしく、
中からシスターたちがぞろぞろと出てきた。けっこうな人数に驚いたが、
ここはブルノの中では一、二を争う格式の教会とのこと。なるほど。







St.Peter and St.Paul cathedral.


入口のドアの外からガラス越しに中を覗きこむと、正面のステンドグラスに丁度光が当たっている。
ああ、きれいだなあ……。
一瞬我を忘れる。口をぼーっと開けてアホっぽい人だったに違いない。
ドアの向こうから赤いカーディガンを着た、係員らしき女性が近付いて来るのに気づいて
慌てて表情を引き締める。

「どうぞ!」(と、おそらく言っているのであろう)声とともに、その人がドアを開けてくれる。
あれ?もう開場時間になったのかな?でも着いてからまだ15分は経ってないよね。
8:15と書いてある板を指して首を傾げたら、いいわよ、と笑って中に入れてくれた。
まだ掃除中。男の人が1人2人、大きな掃除機をかけている。彼女も片付けに戻った。



さっきはガラス越しに見たステンドグラスを、正面に行ってじっと見る。
光を受けているステンドグラスは本当にきれいだ。
光が当たらなければ単なる色つきガラスでしかないのに。
なんというか、短い言葉にしようとすると難しいが、
――光は神だ。



やっぱりぼーっとしていると、さっきの赤いカーディガンの人が、今度は
「私は英語が話せないから、これを読んでね」と言って、英語の説明カードを持ってきてくれる。
せっかくなので、最初はあまりじっくり見るつもりはなかったのだが、
お墓とか説教壇の由来をちゃんと読んでみる。……あんまり内容は覚えてないけど。
一通り見終わって、あたりを見回す。この教会は撮影禁止だったので、
代わりに絵はがきが欲しかったんです。

売店らしきものがなかったので、赤いカーディガンの人に訊いてみたところ、
片隅の小さいテーブルのところに絵はがきが数種類。小さなパンフレットも。
(わたしと同じくらい)片言の英語での熱心な説明。
「これ……スタンプ。はがき、押す?記念に」
ここの教会のスタンプがあるらしい。わたしがこれから買うはがきに、記念に押したらどう?と
薦めてくれている。絵はがきはお土産にもするつもりだったので、一旦断ったのだが、
考えてみればいい記念になりそうなので、お薦めに従って全部にスタンプを押してもらった。
一枚一枚丁寧に押してくれているのを待ちながら、なんだか幸せな気分になっていた。

遠いところから来た観光客。言葉もあまり通じない、宗教を同じくするわけではない、
おそらくは二度と会わない人間にも、こんなに誠実に対してくれる。

嬉しくなってきたので、ごく些少な金額――10コルナ2枚――を献金箱に入れて欲しい、と
手渡そうとする。すると彼女は一旦受け取った後、2枚のうち1枚を返して寄こした。
にっこり笑って1枚だけを献金箱に入れる。
なんで?と思ったが、彼女曰く、
「この10コルナ硬貨の図柄がこの大聖堂なの」
返された10コルナ硬貨をよく見てみる。たしかに大聖堂が(わりと大雑把に)描かれており、
小さくBRNOと書いてある。
ほんとだねえ!と思わず日本語で叫ぶ。

まさにその場所で渡したコインが10コルナ。
他のコインだったらこんな話は聞けなかったかもしれない。(親切なその人ならば、
別な硬貨を出した時にも10コルナの図柄について教えてくれたかもしれないが)
また幸せを感じる。奇跡というにはささやかすぎるが、良い偶然に出会わせてもらった。


幸せな思いのまま、赤いカーディガンの人と握手をして別れる。
――が、教会を出たところで考える。
さっきの朝市では撮りたかった写真を撮れなかった。同じアヤマチを繰り返していいものか?

……教会に再度入って行って、どうしたの?という顔をする彼女に、
あなたの写真を撮っていい?と訊いてみる。よくわからないようだったので、
カバンからカメラを取り出す。
「ああ、写真はダメよ、こっそり撮らせてあげたいけど、ほら、あそこに他の人もいるし」
(……と、おそらくそういったことを、チェコ語で言っている)
「いやいや、違う。あ・な・た・の」
「私!?」
教会自体は撮影禁止でも、“人”を撮るのはその限りではないはずだ。
誤解を招かないよう、さしさわりのなさそうな壁を背景にパチリ。
その人はとてもいい笑顔で写ってくれました。
……その写真をアップしたいのは山々なれども、やっぱり肖像権が気になるので
涙を呑んで諦めます。


だが。そんなことをしている間にだいぶ時が経っていたのだった。
もう8:30過ぎているではないですか。9:20発の電車に乗るつもりなのにどうしよう。
これからホテルに帰って(荷造りは済んでいるが)チェックアウトして、
駅へ行って(ホテルから駅は徒歩3分くらいだが)電車の切符を買わなきゃいけないのに。

しかし幸い、聖ペテロ聖パウロ大聖堂とホテルの距離は、思っていたよりもずっと近く、
徒歩5分で帰れたので電車には間に合った。まあ、もちろん気ぜわしかったですけどね。





Station of Brno.


駅のプラットホーム。






I took St.Peter and St.Paul cathedral with love.
I met very kind person like you,Pat,in this cathedral.


駅から聖ペテロ聖パウロ教会が見えたので、愛をこめて撮った写真。




9:20、ブルノを離れる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



余談だが、返してもらった10コルナは特別なので、財布に別にして入れました。
旅行中そうやって持ち歩いたのは当然ながら、日常生活に復帰してもそのままなので、
……わたしの財布にはそういう“特別”が他にもいくつか入っており、
経済的好転とは全く関係なく、財布は重くなるばかりです。



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19.ブルノの朝散歩。

2009-11-18 | チェコ・9月5日
6時起床。なんでこんなに早起きかというと、お散歩をしようと思ったからです。

前日とこの日は、今回の旅行中、移動+移動でとても忙しい日。
ブルノ発9:20の電車に乗る予定なので、普通に起きていてはブルノを全く見ないで
出発してしまうことになる。それはイカンでしょう、ブルノに対して義理が悪い。
せっかく行ったんだから(そして二度と来ることがないかもしれないんだから)、
少しは歩いてみましょうよ。


でもその前に、朝ごはん♪




John's favourite.

高級ホテルなので朝食にも実は期待していた。
朝食ビュッフェ、期待に違わぬメニューの多さにテンションが上がる。
……が、全部を賞味するほど時間に余裕がない(T_T)。
ああ、この朝食をじっくり食い倒したい!
いやまあ、写真で見る通り、それでもかなりイロイロ食べてはいるんですけどね。

でも左上のオードブルっぽいものの中で、クリームを使ったものは美味しくなかった。
というか、クリーム自体がなんだか美味しくないんですわ。
後に食べるパンケーキのクリームも美味しくなかった。
なんだかバタークリームみたいな、シツコイ味なんです。




I was alone in the breakfast room.

朝早いので、わたしが一番最初で、ほぼ唯一のお客さんだった。
ちょっと緊張しますな。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



7時過ぎからお散歩開始。

ガイドブックに載っているような有名どころをなんとなく廻ってみようと思っていたので、
とりあえず聖ヤコブ教会へ向かう。短時間だし、500メートル四方ほどの狭い範囲。
もっともブルノはチェコ第二の都市とはいえ、人口は37万人弱で、街の規模としては
それほど大きくはない。









St.Jacob's church.


中では早朝ミサ?が行われていた。片隅に座ってしばらく聴きいる。
教会建築の内部空間の音響はさすが。声が荘厳に響く。
しかしミサを主導するべき聖職者の姿があったかどうか定かではないので、
単に早起きの3人のおばあさんが、祈りを大声で読み上げていただけかもしれない。









City centre of Brno.



時間的には通勤の人々をもっと見かけてもいい気がしたが、わりあいに人は少ない。
犬の散歩をしている人とはちょこちょこすれ違う。
肉屋さんがこの時間から店を開けている。スーパーマーケットとコンビニで成り立っている
平均的日本人の生活からは“お肉屋さん”は遠い存在だが、ここではこんな早朝から
買い物をしている人がいる。



狭い範囲に、大小様々な教会。










Churchs.



ガイドブックの地図に載っているだけでも、500メートル四方の範囲に8つもある。
チェコは社会主義時代を経たこともあって、宗教生活はあまり盛んではないと読んだが。



うろうろしていると、朝市に出会った。
規模は小さいけれど、思いがけなかったので得した気分。








Morning Market.


朝市は大好き。
いかにも地元の人という顔ぶれが集まるし、地元で採れた野菜や果物がピカピカしてるし、
みんなが元気よく楽しそうに見える。テンションが上がるぞ。
これぞ朝市!という写真が撮れていないのが無念である。





He(She?) was stubborn.


この犬がね。可笑しいの。
どうもね、他の犬と遊びたかったようなんだよね。
でも飼い主の人が「ほら、行くよ!」という感じで引っ張ろうとする。
それでヘソを曲げたらしく、朝市の中央部でがっつり伏せちゃって、動かないの。
その時の表情が……「ぼく絶対やだからね!動かないからね!」というふくれっ面。
ああ、あのふくれっ面を撮りたかった。シャッターチャンスを逃した。
飼い主の人が伏せた犬を無理やり抱き上げて移動しようとしたところで声をかけて、撮影。
飼い主さんも写っているけど、肖像権的にどうだろうと思うのでトリミングしてみた。


それから、リンゴの屋台の前にいた女の子。
3、4才くらい。お父さんと来てたんだけど、リンゴ売りのおばさんがめんこがって
(“めんこい”という方言。もっとふさわしい方言があった気がするが……)
色々話しかけている。でも話しかけられて恥ずかしいらしく、その恥ずかしがり方が可愛かったー。
撮りたかった。撮りたかったものを逃すと、けっこう引きずる。
(大学時代に初めて行った海外で、取り損ねた香港の市場がいまだに気になっている……)

わたしは女の子とお父さんが帰った後、そのリンゴ売りのおばさんからリンゴを買った。
今から思えばそのおばさんも笑顔が素敵な人でした。
あの人も撮らせてもらえば良かったな。
このリンゴは後に大事な食糧になります。


この辺ですっかり嬉しくなっていた。
天気もいいし。朝の空気はさわやか。旅をしている、という実感が湧くのはこんな時。




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