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Mo.の事件簿 A diary of Mo’s trips

事件簿などという大層なタイトルだが、実は単なる旅行記です。

18.「スラヴ叙事詩」は。

2009-11-15 | チェコ・9月4日
バスターミナルは意外に広く(そして古く)て、どこから乗ったらいいかわからない。

チケット売り場のおばさんが、乗り場の番号をメモしてくれた。
うんうん。34番乗り場で待てばいいのね。
昼食用に売店でクロワッサンと水を買い、乗り場へ行ってのんびり食べながらバスを待つ。
……が、なんだか様子がおかしい。誰もいないし。
メモをじーっと見直すと、「……もしかしてこれは4じゃなくて7なのか?」
慌てて37番に移動。ここには人が大勢いて、ちゃんとモラフスキー・クルムロフと書いてある。
アブナイ。こんなところに落とし穴があるとは思わなかった。

モラフスキー・クルムロフまでのバス代は39コルナ≒210円。
雨が降っている。雨の風景を眺めながらバスに揺られているのもなかなか乙なもんだ。



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しかし、無事にモラフスキー・クルムロフのバスプールで降りたはいいが。
そこからミュシャ美術館の場所がわからない。
人に訊こうとしても、英語がネックなのか、みんなに逃げられてしまう。

しょーがないので、両替がてら銀行に入って訊きました。
銀行の人も英語は話せないようだったんだけど、筆記用具があればこっちのもの(?)。
ZAMEK、MUCHAと書けば、わたしがどこへ行きたいかは相手に伝わる。
ちなみにZAMEKはチェコ語で「城」。昔のお城を美術館として使っているんです。

ちなみに行き方は、
バスプールで降りたらその広場のはじっこにあるホテル「EPOPEJ」へ向かって行き、
そこを通りこして200メートルくらい歩くとZAMEKであるミュシャ美術館。
ちなみにEPOPEJはチェコ語で「叙事詩」の意(多分)。
そう言えば、バスの運転手さんも銀行の人もミュシャを「ムカ」と発音していた気がしたな。
ガイドブックには「ムハ」だと書いてあるのだが。この辺りの方言だろうか。






Mucha museum in Moravsky Krumlov.

ミュシャ美術館。

うーん、建物が古い。
いや、古いのは昔のお城なんだから当然。
古びている。つまり、なんか荒れた感じ。
手入れが――修復が行き届いていないな。うっすらと廃墟の侘しさのにおいがする。



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「スラヴ叙事詩」は。
城の中の大広間に置いてありました。
置いてある。と言いたくなるのは、「展示してある」というには、少々無理な配置だったので。
最大限に努力はしているんだろう、多分。しかしそれでも、これは絵として見るのは辛いよ。

何しろ「スラブ叙事詩」は20枚の連作なのだ。
そしてサイズは810×610が7枚、最小でも440×405という常識外れの巨大さ。
畳で言えば大きい方は30畳、最小でも10畳程度ある。

30畳の大きさの絵をちゃんと見ようとしたら、どのくらいの空間が必要か。
それが7枚。生半可な空間では飾れない。一部屋としてはここの大広間だって
もちろん通常よりはずっと広いけれども、それでも絵は足元から見上げるしかない。
しかし見上げることを想定した構図ではないので、非常に偏った見方を強いられることになる。
見るべき場所ではない位置で見ている苦痛。


これはなかなかに苛々しました。
ミュシャさんよ、そもそもなぜこの大きさで描いた?
この絵は注文によって描かれたものではないという。
画家本人が「祖国の誇りのために」、ライフワークとして取り組んだもの。
つまり何をどう描くかはミュシャの自由だった。
それでなんで、こんな傍迷惑な大きさにしなければならなかったのか!

だいたいこの大きさを必要とした構図とは思えませんよ!
……絵が全く描けないわたしが言っても信憑性はありませんが。
ちょうどいい位置から見ることが出来ない、というハンデを差し引いても、
ここまで大きく描くべき絵ではなかったと思う。
せいぜい半分、あるいは4分の1。その程度でも十分だったと思うのだが、どうか。


全部の画像は見つけられなかった。


テレビ東京「美の巨人たち」ミュシャの回


英語だが、「スラヴ叙事詩」の画像あり。
右側にある「next fotos」の部分を開くとわりあいに様子がわかる写真が見られる。


いま一つどういうサイトかわからないけど、サルヴァスタイル美術館さんのミュシャのページ。
一番下に、スラヴ叙事詩の20枚のうち7枚の画像あり。



この7枚、このサイト上くらいの縮尺で見ると、別に悪くはないんです。
でも実際見るととても間延びしている。時々あります、テレビとか画集で見た方が
ずっときれいに見える絵が。ミュシャの「スラヴ叙事詩」もその類。

ミュシャはなぁ、ポスターの構図はあざといほどカッチリ決めてくる画家なのに。
あんまり決めすぎてマンネリになるほど。
やっぱり身の丈にあった大きさってある。だいたい、この大きさを扱える人ってそうはいないと思う。
しかも連作ですからね。作品として、1枚目から順番に描いたのかどうかは知らないけれど、
1~7枚目が巨大で、その後小さくなっていくことを考えると、多分彼自身も、
何枚か描いた後で「しまった……」と思ったのではないですか。
30畳にふさわしい主題と構図を20枚。それは不可能だったのだろう。
ミュシャの勇み足だなー。「祖国のために!」という情熱の熱さで大きさを決めたはいいが、
それに内容が追い付かなかったという意味で。


あと……色自体が汚れていました。
これはそろそろクリーニングを行った方がいい。
ミュシャの色彩が損なわれていては、魅力は半減なんだから。
だがお城の状態から察するに、……多分この町にはオカネがない。
モラフスキー・クルムロフの町の人には失礼ながら、
やはり国が手元に引き取って何とかするべきではないですかねえ。
まあ国立美術館の状態を考えると、国もオカネがなさそうだけども。



というわけで、わざわざ行ったわりにはどうも感心できずに帰って来た。
でもまあ、実際に見なければそういう感想も抱けなかったので、
行ったこと自体は後悔はしないですけどね。

絵として良かった部分と言えば、1枚目「原故郷のスラヴ民族」の人物の表情と星でしょうか。
星は美しかった。



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帰りのバスを雨の中1時間弱待ち、18時頃ブルノのバスターミナルに到着。
夕食はそばのショッピングモールで仕込む。中華のファストフードをテイクアウトで。





Shopping centre in Brno.





Supper.



ホテルまで傾いたまま持って来たので、ひっくり返って美味しくなさそうですが、
3種類の肉の炒め物?で、味は普通に美味しいです。
中華のファストフードは「ホントにこれ、全種類作れるの?」と訊きたいような、
30種類か40種類くらいのメニューがあった気がする。
これで93コルナ≒500円。日本にもこういう店があるといいのになー。

19時ホテル帰着。明日は早起きをしようと思う。



雨降りだったし、メインのミュシャ美術館が撮影禁止だったこともあって、
この日撮った写真は13枚でした。
旅行中の1日の撮影枚数としては、記録的な少なさ。



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17.ブルノへ移動。

2009-11-12 | チェコ・9月4日
今日はプラハを離れてブルノへ移動の日。
まず7:30にホテルを出て、フローレンツバスターミナルへ。

ホテル前がバス通りなのは知っていたけど、今までバスは使っていなかった。
やはり路線が決まっているトラムの方が使い勝手がいいので。
でもトラム停留所への道はきつい坂道なので、
「スーツケースであの急な坂道を登るのはけっこう辛いなあ……」と思っていた。
石畳の道は、雨の日はかなり滑るし。ある程度遠回りでも、坂がゆるやかな道を通ろうか?
でもそうすると15分くらいかかりそうだしな。

そう思っていたら、前の晩、ホテル前の道を「フローレンツバスターミナル行き」のバスが
走っているのを見かけた。まさに翌朝わたしが行きたい所。
つまり明日の朝はそのバスに乗れば、坂道を通らず、乗り換えなしで直接行けるのではないか。
旅行のカミサマ、気づかせてくれてありがとう。



――しかしバスターミナル行きのバスでも、バスターミナルに着くとは限らない。

一瞬「は?」と思う命題だが、例えば、県庁市役所行きのバスに乗っても、
県庁がどこかを知らなければ行きつけないでしょ。
市役所は、まあバス停の真ん前だし、いかにも市役所っぽい建物だから大丈夫かもしれないけど。
バスターミナルの所で降りたはいいが、見える範囲にそれらしき施設はない。
うう、どこだよ、バスターミナル。

そういう時は人に訊くのだ。

最初は通勤途上らしきおばさんに訊いてみた。
しかし「英語が話せないから……。若い人なら英語わかるんじゃない?」と
3、4人固まった高校生くらいの集団を指さされる。
(いつも思うが、こういう時っておばさんは何語を喋っているのだろう?
記憶の中ではこういうことを言ったはず、という気はするのだが、
英語で言ったはずないしなあ。チェコ語はわたしがわからないし。以心伝心というやつだろうか。)

高校生集団の反応も芳しからず。
「英語だってーっ!」と、さらに何人かを呼び集めてくれるんだけど、
何かを言いかけては、結局みんな遠慮勝ちに黙ってしまう。
が、やはり人間対人間の有難いところで、――ジェスチャーが使えるんです。
1人が、もどかしげにある方向を指さし、手を何かをくぐるように動かす。
ということは、つまりあっちの方向に行って、地下道か何かを探せばいいってことじゃないですか。
必要にして十分な情報。お礼を言って別れる。

たしかに。少し進むと地下道があった。ちゃんとバスターミナルの案内板も出ている。
地下道の出口が分かれている所で、どっちへ行けばいいかまた迷ったので、
ちょうど通りかかったスーツ男子に訊いてみる。
にっこり笑って「あっちだよ」と指をさす。
……今から思うと、ちょっとかっこいいおにーさんだったな。

ホテルから単に第一目経由地にしか過ぎないターミナルまでの道のりもなかなか難儀なもんです。



着いたはいいが、乗ろうと思っていたブルノ行き8時のバスはもう満席だって。
バスの時刻表では8時のバスが3本あるように書いてあったから、
乗れないことはないだろうと思いこんでいたのだが、3本のうち1社は満席、
1社は「そんなバスは存在していない」、もう1社はカウンター自体が見当たらない。
結局最初のバス会社の9時のチケットを買い、ターミナルで1時間待つことにする。





Florenc bus terminal.


移動のために1時間待つこと自体は、別になんてことないんです。
ただ、正しい場所で待っているのかどうか、確信が持てないことが落ち着かないだけで。
時間があるので、家に電話をする。携帯はくっきりクリアに聞こえ、
とても間に地球3分の1周分の距離があるとは思えない。

バスは9時出発。あ、バス料金は200コルナ≒1060円でした。
2時間半ほどの道程にも関わらずガイドさんが乗っていて、お茶のサービスもある。
甘いミルクティが、乾燥しきったバスの車内で美味い。



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11:45、ブルノ着。
バスがホテルの目の前に着くので迷いようがない。





Grand Hotel in Brno.(again)


ここが予約の有無を確認した例のホテル。そう思えばそこはかとなく親近感が湧く。
すぐチェックイン出来たのはラッキーだった。














部屋自体は狭いけど、シングルとしては十分。
バスルームが妙に広くて、もしかして部屋より広いんじゃない?

天気が雨のせいか、すぐ動く気にならず部屋で30分ほどうだうだ。
普段自分が泊まるのと違って高級ホテルなので、居心地がいい。
ここはねー、予約サイトによっては1泊12000円~13000円の場合もあるのだが、
今回わたしが利用した(そしてつぶれた(^_^;))ホテルザウルスのサイトだと、
1泊6300円。すごいお得。……そのせいでつぶれたのか?いや、それはないでしょうが。

しかしチェックアウトの時判明するのだが、部屋のミニバーから取った缶紅茶には
約500円の値段がついていました。……さすが高級ホテル。



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今日の目的地は――というより、わたしがブルノに来た最大にして唯一の目的は、
モラフスキー・クルムロフへ行くこと。ブルノからバスで1時間ほど離れた小さな町。
そこに何があるのかというと、ミュシャの大作「スラヴ叙事詩」。

数年前に「新日曜美術館」かなんかでミュシャの特集をやった時に、
ミュシャと言った時に思い浮かぶ画風とは全く違う絵が映った。
真面目な――通常の作風が不真面目というわけではないが――油絵。漫然と見ていた目が止まる。

彼はこんな絵も描いていたのか。
絵の中からこちらを凝視する骸骨のような人物。一種異様な迫力がある。
しかし色調は暗く、彼の売りであるところの優美さも華やかさも欠片もない。
なぜミュシャがこんな人物像を?それまでのスタイルを捨ててまで。

これは見てみたいな。と思った。
実際に見て伝わってくるものがあるかどうかを確かめてみたい。



――といいつつ、旅行の行先をチェコに決めた時にはすっかり忘れていたんだけど。
チェコ関連本を読み漁るうち、そう言えば、と思い出す。
いや、せっかく行くんだから見ましょうか。
その絵のためだけに再度行くほどの執着はないので、今回見なければもしかして一生見られない。

どれどれ。どこにあるんだい?「スラブ叙事詩」。プラハじゃないのかい?
へー、プラハじゃないんだ。モラフスキー・クルムロフにあるんだって。
それならちょうどいいね。モラフスキー・クルムロフは世界遺産で、可愛い街並で有名なところ。
元々行こうと思っていた町だし、そこで見られれば有難い。
……って、あれ?モラフスキー・クルムロフ?チェスキー・クルムロフじゃなくて?

どこだよ、モラフスキー・クルムロフって!
ぶつぶつ言いつつ、“チェスキー”じゃない、“モラフスキー”の方のクルムロフを探す。
なんでもチェスキー・クルムロフは「チェコ地方のクルムロフ(=川の湾曲部の湿地帯)」で、
モラフスキー・クルムロフは「モラヴィア地方の(以下同文)」という意味らしい。
聞いたことないぞ!ガイドブックにも載ってないし!何かの間違いじゃないのか。



これがまた、情報が少ないんですわ。「スラヴ叙事詩」を見に行こうとすると。
ガイドブックには全く無視され、ネットで調べても公的な観光案内からはほぼ見放されている。
なんで?日本人のミュシャ好きを割り引いても、一応天下のミュシャだろう。
彼のライフワークなら、もっと扱いが良くてしかるべきではないのか。

釈然としない思いを抱きつつ、地道に情報を集めました。
こういう時に有難いのは先達の存在です。多分みんな行くのに苦労したんだろうなー。
行った人は行ったなりの情報を残してくれている。

代表して一番情報が充実しているshinesuniさんのブログを再掲。

その他、わたしが参考にしたサイトはこちらへ。



しかしモラフスキー・クルムロフって、けっこう遠い……
たとえていえば、東京から秋保みたいな位置関係。首都から2時間半かけて地方都市へ行き、
そこから1時間かけてバスに乗り目的地到着、というような。
多分バスの本数的にもいいセンだと思う。1時間か2時間に1本とかね。
わざわざそんなところまで行くのも物好きだとは思うが。


あ、いかん。こんなことをだらだら書いていないで、早く行かないと時間がなくなってしまう。
12:25にホテルを出て、モラフスキー・クルムロフ行きのバスに乗るため、
バスターミナルへ向かいます。



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