第7巻『螺旋運命』は《GENE[ゲーン]》シリーズに入らない、シリーズの流れを殺す最大の欠陥です。ロクデナシのバルトは自分のために、自分の中でひっかっている義務や後悔を癒すために行動していただけだから、あっさりとイリを裏切り捨てることが平気で出来たのです。イリはバルトなんぞを愛していなかった、バルトだってそうです OAV『銀河英雄伝説』の「第61話 歌劇(オペラ)への招待」で“自分は国の為に私情を殺して筋を通した。自分はなんと可哀想で、しかも立派な男なんだ、という訳ですな。”と、ジョアン・レベロ(CV=家弓家正)に対して、ヤン救出に立ち上がったワルター・フォン・シェーンコップ中将(CV=羽佐間道夫)の台詞を、バルト&彼という自分の分身を“世界にとって掛け替えのない存在”として描いた五百香ノエルに叩きつけたい
人身売買組織のボスが連邦総長だなんて笑わせないでよ。
そして、ヤンアーチェの頼みでディトリスとのことをバルトに訊ねようとするよりもずっと前に既にバルトはイリを裏切っていたのです用済みのゴミのように棄てていた
恥知らずにもほどがあるわ
「4 青春の終わり」で“色褪せたようにしか見えないブルー・ブラックの長く豊かな髪の毛を、出会ったころと変わらずに後頭部の高い位置で束ね、両の鬢(びん)のところにサイドの毛を一房ずつ垂らしたイリは、こちらに来てから縫製したロッサ風のスーツに身を包んでいる。そのスタイルがもっとも彼らしく、たとえ芸術的な美からは遠い位置にある凡庸な容姿をしているのだとしても、やはりだれよりも印象的な人物に見えた。向かって左側に銀髪のサーシャ、右側にはわずかながら足を引きずる金髪のミハイル。どちらも静粛な面持ちで、初めて会ったころから年輪を重ねて美しく際立っている。彼らの姿を見るのは、バルトにとってただ目の保養になるだけではなかった。なつかしさ、憂い、翳り、喜びや楽しみ、それらはすべて青春を喚起させる郷愁なのである。”とあるように、イリ+ミハイル&サーシャを“青春を喚起させる郷愁”だと認識した事自体が、バルトの青春はとっくの昔に終わっていたことを示し、今頃になってそれに気づいた間抜けぶりを晒した
そして、イリを過去の存在に葬り去った罪を開き直って恥じない腐った根性が許せない。
それにしても、このシリーズのメイン・テーマは“ただイリの総受けのエロを描く”だけの、ヤンアーチェ以外の男にイリが凌辱されるシーンを書きたいだけだった第7巻は《GENE[ゲーン]》シリーズが失敗作であることを証明してしまいました 「3 恋の行方」で“イリがバルトの兄二人に呼び出されたのは、暗殺事件によって多忙をきわめるヤンアーチェが、後宮へ渡る時間も持てない慌ただしい日程の中だった。秘密裏な会見で実際に会ってみたイリは、二人の個性的な男たちから強い圧迫感を与えられ、バルトとは違う剣呑な空気を嗅ぎ取った。男たちとの面会の旨は無論、ヤンアーチェに知らされていない。知ればヤンアーチェは決して許さなかっただろう。実際危険な雰囲気を隠さない男たちを前にして、イリは来るべきではなかったという気持ちになっている。”とあるけれど、そもそも呼び出しを受けたからって、護身の術はなくとも警戒心はあるイリが応じるわけもないし、のこのこ出掛ける筈もない
当然、ヤンアーチェか或いは、クズのフィアルドが生前から次の盟主に指名していたバルトに“お前の兄貴たちに呼ばれたんだが、どうしようか?”とか尋ねるでしょうから、体を好き勝手にされても心は動かないからってヤンアーチェを裏切るに等しい行為をイリが死んでもする筈がないのです。
積悪の報いで地獄に堕ちた父親を失った腹いせにイリ妾妃殿下を凌辱したとは言っても、説得力のない不要な凌辱シーンです。五百香ノエルが如何に“作家として世に出るには早すぎた”かを証明しています。“高貴なお血筋の生き残りが、どこのだれに売られて、どんな恥知らずな真似をして生き延びたか、俺とローランはみんな知ってる”&“屈辱を感じるのか?たった数年王の妾妃などとまつりあげられて、本来奴隷として生き延びた性根を忘れたわけではないだろう?”とほざいて、長兄ダビデ・デナルドン・バティは次兄ローランと結託して嘗て自分たちの父フィアルドが人身売買という下劣な犯罪行為で売り飛ばした奴隷ごときと侮蔑して、ロクデナシの末弟バルトが差し出したイリを凌辱した
そう、イリを裏切って捨てた罪から目を逸らすためにロクデナシのバルトがスケープゴート[scapegoat]にして兄貴どもにイリを売り渡したに決まっている
ケダモノ兄貴どもを含めた人身売買組織〈自由同盟〉のボスのくせにバルトが知らない筈がありません。
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