イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

天(そら)は赤い河のほとり(1) 悲劇の皇太后ナキア

2007年04月25日 12時35分39秒 | 漫画

 ヒッタイト帝国の台頭により下僕のように顔色を窺わねばならぬ身に貶められた祖国バビロニアの衰退により妾妃としてヒッタイトに娶られるという形15歳の時ナキア皇太后は売り飛ばされました。祖国の為に嫁いだのにバビロニア後見して貰えずに孤独な闘いにより現皇帝カイル・ムルシリⅡ世の実母である先々帝シュッピルリウマⅠ世の第2正妃である皇妃ヒンティを毒殺し、第3正妃たる皇妃となり現在は皇太后の地位にあるナキアヒッタイト帝国への復讐とその皇統の支配を成し遂げようとカイル呪殺する為の生け贄として未来の異国である日本から召喚しながらも、祖国バビロニアに売り飛ばされヒッタイトでも踏み躙られ続けたナキア死を賭してまで尽くし続け、無償の愛を捧げたのは、北方の或る王国の王族の最後の1人として生を受けながら侵略されて国を滅ぼされ、その王に凌辱され王家の血を断絶するために去勢されて宦官となり、ヒッタイトに買われた最愛の側近ウルヒ・シャルマだけでした。

 ヒッタイト帝国では、最後まで誰にも理解されず 最終的には息子のジュダ・ハスパスルピにさえ貞操を疑われ、自分はウルヒとの不義密通の子だろうと濡れ衣を着せられ裏切られたのです。ナキアにあるのは自分を見捨てた祖国バビロニアと祖国にそんな仕打ちをさせた元凶のヒッタイトに対する怨念ウルヒへの生涯ただ一つの愛だけです!側室としてバビロニアの王女として尊重され守られたのであれば、ヒッタイトの為に尽くそうと思ったかもしれません。しかし、現実には踏み躙られ続けたのですから、己の血で元凶であるヒッタイト帝国の皇統の支配を願って何が悪いのよ

 その元凶であり、日本人でありながらカイルの正妃となってタワナアンナの称号を得た主人公ユーリ・イシュタル(本名:鈴木夕梨)&夫帝カイルは自分たちの死後のヒッタイトの行く末を考えない甘ちゃん夫婦ゆえに一代限りの栄華で終わり、衰退してゆき突如としてヒッタイトは滅亡の原因さえ不明のままで、後世に残されず終焉を迎えた それはナキアを踏み躙り彼女に対する贖罪を欠片も考えなかったユーリたちの罪に対する天罰に違いない ユーリは、ナキア皇太后ネフェルティティ王太后(ミタンニ名タトゥーキア)のような、苦しみや哀しみを知らない青臭い子供だけれど彼女たちには出来なかった事を成し遂げてみせよう、カイルの理想の治世を共に創り上げるタワナアンナになろう、と自分が立派な事を言っているかのように心の中で誓っています。

 しかし、ナキア皇太后たちのような哀しみも苦しみも、男たちに凌辱されない方がおかしい状況を作者のご都合主義で免れただけで、苦しんだつもりの甘ちゃんに何が出来る 笑わせないで欲しい 哀しみや苦しみは人生の糧であり、その人間の歴史なのです 祖国から引き離された哀しみはわかっても、祖国に見捨てられる事もなかったユーリに彼女たちの何がわかると言うのか 河惣益巳先生の『火輪』の主人公リーアンのように常に愛され護られて苦労の欠片も味わう事なく生きているユーリに、彼女たち野晒しにされても文句の言えない罪を重ねたとしてもナキア皇太后に尽くしたウルヒ を非難する資格はないのです ネフェルティティ王太后ナキア皇太后のように祖国に売られ、その売られた先のエジプトでも旧ミタンニ王国の王女として尊重されず側室として丁重に扱われなかったどころか“貢ぎ物”に過ぎなかったのです そんなネフェルティティに向かって暴言を吐いたユーリなど地獄に堕ちたに決まっている

 ところで、はずっと『天は赤い河のほとり』の「天」「てん」と読むのだとばかり思っていたけれど、ユーリの台詞のルビにも「そら」となっているように、コミックスの中扉絵+おもな登場人物&あらすじにある「天」をよくよく見てみたら、細かい文字「そら」となっていたし、文庫版の方も中扉絵はそうなっていました。あまりにも細かすぎて見えませんでした 「てん」とした方が良いと、今でもそう思います


GENE[ゲーン](12) 日出処(ひいづるところ)の女神

2007年04月24日 10時31分52秒 | 小説
 狂った悪夢にとり憑かれ穢れた血族の姿に絶望し、二千年前に袂を分かって 徹底した鎖国を敷いた“古代天空帝国の良心”ラーチョオ王朝の天空帝国〈嵐の海〉に浮かぶ小さな島国でした すぐ傍らには、同じ天人を祖とするラーチョオ王朝皇室&市井の民草のすべてを皆殺しにして滅ぼした真・天空帝国を名乗るチーイン王朝の支配する〈太(タ)大陸〉があります。それを逆さまにして見れば、天空帝国のあった小さな島日本(旧名:大日本帝国)侵略戦争を始めたチーイン王朝が支配する〈太大陸〉中国ですね。

 科学者であるイリの両親を含めたラーチョオ王朝の皇室生を受けた者はすべて金髪碧眼だけれど、鎖国政策を敷いて二千年が過ぎる中鎖国以前よりもなおラーチョオ王朝の皇族から市井の民草に至るまで同族としか婚姻を結ばずに“血族婚”を繰り返したがゆえに、である天人の末期の“先祖がえり(隔世遺伝)”により、その容姿&生殖能力が皆無二形(両性具有)として生を受けた主人公イリ・イン・チャンシャン(旧姓★ラーチョオ)の容姿の描写を考えれば余計に、金髪碧眼で白い肌(劣性遺伝)の白色人種の血に呑み込まれた黒髪黒瞳で黄味を帯びた白い肌(優性遺伝)の黄色人種である日本民族の末裔”だと思われるので、イリ“先祖がえり”日本人の容姿が顕現したのでしょう。ですから、光の加減で青銀の輝きを帯びるブルー・ブラックの髪銀の漣のように銀灰の煌めきを宿す黒真珠の瞳、そして肌は…“象牙色”の肌、だと思います

 篠原千絵先生の『天(そら)は赤い河のほとり』(コミックス第16巻&文庫版第9巻)“伝説は――――――語る。暁の光の中 若き皇帝ムルシリ2世の元に女神が降臨(くだり)たまう 黒き髪 黒き瞳 そしてすべらかな象牙色の肌をした小柄な女神は泉より現れいでて ヒッタイトに華のごとき栄光をもたらした――――と”21世紀の日本から呪詛の形代にしようとナキア皇太后に召喚された、日本人の主人公ユーリ・イシュタル(本名:鈴木夕梨)が、イル・バーニ進言され泉から現われる演出を実行したシーンについて、篠原先生が描いているように、イリの肌の色を表現する言葉には“象牙色”ピッタリ です

 画像は、Wikipediaにあった「象牙の彫刻」です。

GENE[ゲーン](11) 俺はチャンシャンの王だ!

2007年04月24日 10時31分35秒 | 小説

 第7巻『螺旋運命』の「5 新しい明日へ」“俺はチャンシャンの王だ。世界とはチャンシャンの事だ。チャンシャンの崩壊を望む者は、誰も許さないと誇らかに堂々と宣言したヤンアーチェを、私は立派だと思いました ところが、人身売買組織〈自由同名〉のボスのくせに英雄気取りで“世界は俺が救うと宣言したロクデナシのバルト“王様の世界は小さいな”と侮蔑し嘲笑ったのですヤンアーチェだけを愛するイリは、嘗ては広大な空を自由に生きるバルトを羨んだこともありましたが、大地に根を張り生きる事の素晴らしさを…あまりにも広大すぎる空を気儘に行き来するがゆえにこそ、バルトの価値観が“広く浅く”と、どんなに小さい国よりも閉塞された狭いモノだと悟った今では、ヤンアーチェとは異なる“掛け替えの無い親友”だとして“根無し草”の憐れな生涯を生きるロクデナシのバルトに対する“憐れみ”を“友情=友人に対する愛情”錯覚してしまった事こそが、イリの唯一の罪です 

 ラカに媚び諂う手先のフィアルド暗躍〈旧・三国同盟〉チャンシャン王国とセルゲ・ロッサ共和国に結ばせ、罪の欠片もない天空帝国を滅ぼしたがゆえに、真・天空帝国と闘う為の政治的背景&軍事力を齎すバックがなく役に立つ道具になり得ないイリを捨て、ラカに唆され華麗なる文化文明の誉れ高きロッサ共和国を攻め滅ぼし〈海下(カイカ)大陸〉独裁を真・天空帝国との二分割統治で実現させた卑劣なセルゲ公国という腐った背景でありながら道具になり得るディトリスと打算で結婚し、生涯、愛の無い人生を…打算でしか何も出来ない男に相応しい腐った人生を選びましたが、イリとは肉体関係の無くなった友人に変化しても、ヤンアーチェ ロクデナシのバルトの敵対関係は変わりません

 世界の一部である一人の人間を犠牲にする事は自分が守ると宣言した筈の世界を踏み躙り犠牲にする事だと分からないバルト世界のためなんぞ、と言う資格はありません。自分のために役に立つ道具にならないからと裏切り、自分が裏切り捨て去ったイリを愛するヤンアーチェならば“たかが一人の人間ごときで我が身を危険に晒すべきではない”二重にイリを捨てました しかし、捨てたりもせず裏切らずに愛し守るべきイリを救ったヤンアーチェは、愛するイリを救った事で世界をも…そして、ラーチョオ王朝の教ヤンアーチェを愛するがゆえに狂えるラカの穢れた所業を否定する事イリもまた世界を救ったのです。世界を救うという名目の元にイリを裏切ったロクデナシのバルトは、何もしていない のに連合総長の座についてふんぞり返っています。

 画像は、アングルの《Odalisque with a Slave》です。


GENE[ゲーン](10) 濁った水は腐るだけ

2007年04月24日 10時31分20秒 | 小説
 マイナスの要因でデコレーションされて嬉しくもないであろう、《GENE[ゲーン]》《キリング・ビータ、それぞれの主人公たちを傷つけ苦しめた者たちの謝罪&贖罪が皆無疑問の過半数をほったらかしにしまたままで完結を繰り返し、あとがきで“未熟を晒し、尻窄(しりつぼ)みになってしまったと、反省バネに成長してくれるのを信じて待てば“いつの日か”と報われるのでしょうか いいえ、世界が滅んでもそれはあり得ません

 第2巻『望郷天使』の「4 兄王子」にもあるように、とことん腐りきった根性のホークァン・エイリーが最初からイリ用済みになれば踏み躙る捨て駒の道具に利用していたことは明白です。“口頭ではあるが、ラジャ・シンとの協定で、この先友好関係を築く上でタオホンを傀儡とすることは確認済みだった。次男のヤンアーチェはまだ子供であるし、なにより傀儡としては、いささか以上に扱いにくさがすでに目立つ。ユンヤミンにはほかに子はない。傀儡とすべき血筋は、タオホンをのぞいてはあまりにも遠かった。タオホンは亡くなった王妃の正統であり、血筋としては一等である。ヤンアーチェの母は彼を生んだことによって位を授かりはしたが、正后ではない。タオホンが次の王位に即(つ)いたときこそ、ホークァンらの野望が一歩近づくときなのである。今更迷うわけにはいかなかった。たとえイリに、悪夢のカードが廻ってきたのだとしても、それも運命なのである。動乱のロッサからチャンシャンへ逃げた。それが成功しても、たまたま逃げた先でも激動が待っていた、それだけのことである。恨むならば、この地を逃亡先に指定したレイダー公爵と、彼に協力したバルトを恨むべきなのだ。もっともイリに恨まれたとしても、ホークァンは痛くもかゆくもない。膿(う)んだ血脈を絶やし、王国を強国に導くためには、犠牲はなくてはならないのだ。すでに自分も犠牲者の一人なのである。イリの恨みも、この暗澹(あんたん)たる運命に飲まれるしかない。”(P.158~159)とあるように、ホークァンはとことん腐っています 犠牲になど1度もなったことがないくせに犠牲者を気取るコイツ絶対許してはならない そして、ヤンアーチェコイツを必要としない立派な政治家に成長したには、ホークァン八つ裂きの上で死体を野晒しの極刑にすべきです 

 ホークァンイリを道具として利用しつくし葬り去ると知っていて売り渡したロクデナシのバルトとはそういう腐り果てた部分の類友コンビですから 私は篠原千絵先生の『天(そら)は赤い河のほとり』息子のジュダを帝位にと陰謀を巡らし数多くの命を犠牲にしたのは何故か…史実においては侵略行為を繰り返したヒッタイト帝国により祖国バビロニア侵略され、その侵略した敵援助を請うために側室という形父王に売られ後見さえして貰えずに見捨てられヒッタイトでも冷遇されたという過去が描かれているのに、それを見逃したのか ナキア皇太后“とことん悪だ”と言い放ち同情する人間はいない、と断言している人が目立つけれど、真の主人公と信じるナキア皇太后&側近の立場であり続けたナキア皇太后の“最愛の人”ウルヒ・シャルマ大好きなので、苦難を経てウルヒのように暗殺&陰謀を巡らせてイリを守る最愛の騎士に、ミハイルには成長して欲しいのですから。しかし、自分の傍らで見守ってくれるだけで、イリにとっては愛しい騎士ではあるのですが。

 画像は、レイトン《囚われのアンドロマケ》です。

GENE[ゲーン](9) 誰かが君を想ってる

2007年04月24日 10時30分58秒 | 小説

 桑原水菜先生“ラストに死ぬ主人公”として創造され、次第にその設定にそぐわぬキャラに変貌しても最初に決めた設定に固執した桑原先生軌道修正すること無く、結局、殺され愛する直江と死別させられた《炎の蜃気楼(ミラージュ)~Mirage of Blaze~》シリーズの主人公・仰木高耶(原名★上杉三郎景虎)のように、《GENE[ゲーン]》シリーズの二形(両性具有)の主人公イリ・イン・チャンシャン(旧姓★ラーチョオ)もまた五百香ノエルによって“広げすぎた風呂敷を畳みそこねたシワ寄せ”を被り、“すべてを背負い受け入れすぎるキャラ”という可哀想な設定をされ、貶められてしまいました。

 本来ならば諸悪の根源のチーイン王朝最後の皇太子ラカ・チーイン・チーインの罪新政府である民主共和国〈ロナン連邦〉初代大統領ジャコー・セリオン最初の仕事として世界中に…そして、誰よりも自分たちの繁栄の犠牲にして皆殺しにしたラーチョオ王朝皇室の最後の1人であるイリ・イン・ラーチョオ殿下”に謝罪すべきだったのですところが、そのチーイン王朝&真・天空帝国と全世界の被害者として謝罪&贖罪を受ける側のイリが謝罪するという、最後まで不幸な役回りをさせられながらも、チャンシャン王国の現国王ヤンアーチェ・チャンシャンの正妃となった“イリ王后陛下”ピッタリと、唐突にそう思った『Angel Heart エンジェル・ハート』の第2話~第12話+第14話~第19話+第24話+最終話(第50話)のED「誰かが君を想ってる♪Skoop On Somebody(作詞/SOS 作曲/SOS+土肥真生 編曲/土肥真生)を…。

 実際に、ドラマCD『GENE[ゲーン] 天使は裂かれる』を聴くまでは、二形の主人公イリ無償の愛を捧げる黄金の騎士ミハイル・リンゲルバウアーの声には『トリニティ・ブラッド』で主人公アベル・ナイトロード役:『ツバサ・クロニクル』で星史郎役の東地宏樹さんをと思っていたのですが、ドラマCDを聞いて、その中でミハイルを演じた子安武人さんに転びました。そして、亡きエルネスト・ヤーゴ・レイダー公爵のイメージ・モデルは、レイダー公の声をこの人にと思う中田譲治さんが演じたアニメ版『岩窟王』の主人公アルベール・ド・モルセール子爵(CV=福山潤)を苦しめたモンテ・クリスト伯爵としてのエドモン・ダンテスです。

 ところで、このアニメ版『岩窟王』原作とは異なり、主人公自分だけが不幸な被害者だと思い込んだエドモン・ダンテスではなくて本人は罪が無いのに父の罪や母の軽率な心変わりで“裏切りの果実”と侮蔑され復讐のターゲットにされたアルベールこそが主人公ですが、エンディング・クレジットのキャストで最初に出るのがモンテ・クリスト伯爵だから、伯爵が主人公だと勘違いする人が大勢いたでしょうね。

 《GENE[ゲーン]》シリーズ絵を見ると哀しくなります。何故なら絵を担当している金ひかる先生普通の美形は描けても“絵にも描けない美しさ”…超絶美形は描けないらしく、更に何が何でも耳を出したいらしいのです。耳が出ていると不自然だと誰もが思っても耳を出したキャラを描き続け、耳が隠れるのはほんの少しで、超絶美形のミハイルサーシャ不細工に描かれる事が殆どであり、たま~に普通の美形に描かれ、頭が痛く なります。表紙の絵本文中に挿入される挿絵は、作品の魅力アップするか…或いはダウンさせるか、という作品の運命を左右する重要な要因なのに しかし、それでも金ひかる先生の絵を小説にピッタリだと思い、気に入ったのは五百香ノエル自身 なのだから、“類友コンビ”と思い諦めるしかありませんね。

 ところで、ドラマCD『GENE[ゲーン] 天使は裂かれる』の「4 憎むべき少年」積年の罪の報いにやがてラカに殺される運命が待ち受ける人身売買組織〈自由同盟〉の頭フィアルド“これはこれは…王様、王子様方。緑深きチャンシャン大陸より、ようこそ、おいでになられました。ご機嫌麗しゅう”ヤンアーチェ殿下、陛下があちらへと”揉み手しつつ擦り寄った時の台詞から、真・天空帝国の専横を許し、協力して対抗しうる存在になったに違いない“天空帝国の良心”ラーチョオ王朝の虐殺という許されざる大罪に加担した“無能な愚王でしかないダメ親父”という実態ヤンアーチェ13年後に悟る事になるユンヤミン(34歳)も、そしてラカの狂気に心を蝕まれ王太子でありながら売国奴に転落してしまったタオホン(14歳)も一緒だったらしいですね、チャンシャン一行ノコノコと現われたフィアルド“王子様方”複数形で呼びかけていますから。

 画像は、アニメ版『岩窟王』の主人公アルベール・ド・モルセール子爵とモンテ・クリスト伯爵(エドモン・ダンテス)です。


GENE[ゲーン](8) 陽は沈み陽は昇る

2007年04月24日 10時26分42秒 | 小説

 何故BL(ボーイズラブ)ドラマ化する時は、攻めも受けも男性の声なのでしょう キャラによっては気色悪くて女性に演じて欲しい、と言うか違和感  を感じたりするので、不満が募ります。

 受け男性だと違和感を感じる場合あり、女性の声の方が良いと思うキャラもいます。それが五百香ノエル《GENE[ゲーン]》シリーズの二形(両性具有)の主人公イリ・イン・チャンシャン(旧姓★ラーチョオ)です。血族婚を繰り返し300人以上もいたラーチョオ王朝皇室の末席として科学者の両親の許にイリ生殖能力の無い二形として生を受け、後にチャンシャン王国の国王ヤンアーチェ・チャンシャン正妃となり、夫王である彼の息子を…つまり王太子を産んで“母”となるので女性が演じた方が良い、と思います『パタリロ!』&『ぼくパタリロ!』ジャック・バルバロッサ・バンコラン少佐(CV=故・曽我部和恭の正妻にあたる愛人マライヒ・ユスチヌフ藤田淑子さんが、そして、それぞれのお話でのメインの美少年をやはり女性が演じたように  です。

 二形の主人公イリの声に、『神魂合体ゴーダンナー!!』&『神魂合体ゴーダンナー!! SECOND SEASON』“私を誰だと思ってるの!?”が口癖の藤村静流役:『ダイバージェンス・イヴ』&『みさきクロニクル~ダイバージェンス・イヴ~』で主人公・紅葉(くれは)みさき役のかかずゆみさんがピッタリ だと思います。13歳のイリから見てもお子様な7歳の時の最悪な邂逅が祟り、合計13年のすれ違いを経て漸く心も結ばれた“イリの運命の人”チャンシャン王国の国王ヤンアーチェの声は関智一さん、文化文明の誉れ高き…そして滅びゆくロッサ共和国そのものであったイリの養父&調教師《黄金の鷹》エルネスト・ヤーゴ・レイダー公爵の声はアニメ版『岩窟王』モンテ・クリスト伯爵(エドモン・ダンテス)役:『スターオーシャンEX』魔鳥ジーネ役の中田譲治さん、存在自体が己の至福であるイリに無償の愛を捧げる黄金の騎士ミハイル・リンゲルバウアーの声ドラマCD『GENE[ゲーン] 天使は裂かれる』そのままにミハイル役の子安武人さん、イリを捨てた人身売買組織〈自由同盟〉の頭のバルト・デナルトン・バティドラマCDそのままに一条和矢さん、…と、一応私の心の中で固定しています。

 ドラマCD化に際しては、『天使は裂かれる』だけだと11年後からの回想による24歳のイリの心情18歳のヤンアーチェとのお初(但し、レイダー公“初夜”のご奉仕で処女を捧げて以降、イリ“受け歴”11年です)が分かりにくいので、『天使は裂かれる』の「序章」にあるイリの回想第5巻『この世の果て』の「5 天使と夢の中で」少し削って加えてあります。聴く人によっては“余計に分かりにくいわい  ”混乱して、憤慨した人もいるかもしれませんが。それにしても、イリ“バック・ヴァージン”を奪ったのがロクデナシのバルトだなんて酷い レイダー公に貰って欲しかった

 イリ(13歳)が初めてヤンアーチェ(7歳)と出逢ったシーンでは原作だと、他に台詞の有無から一緒にいたと判明しているのは先の国王ユンヤミンヤンアーチェ付きの侍従ですが、ドラマCDサリア・ビキだけに変更されています。あの、ヤンアーチェの伴侶としてイリは相応しくない下賤”侮蔑し、嘗てチャンシャンチーイン王朝に尻尾をふり滅ぼしたラーチョオ王朝の唯一の生き残りと知ればホークァンと結託して闇に葬ったに違いないのに“疑惑”がそのままのバカ女にですが、実は台詞は皆無でしたが原作でも“いたのか()”と言いたくなるタオホンもいたらしいのです… 影が薄いですね、“王子様方”で一括りですから

 画像は、ドラマCD『GENE[ゲーン] 天使は裂かれる』(発売2004年4月27日)ブックレットの表紙です。これだけを見ると、主人公イリを巡るヤンアーチェ  レイダー公かと思ってしまいますね


GENE[ゲーン](7) バティの末弟よ!一方的な信用の要求は言語道断だ!!

2007年04月05日 06時12分30秒 | 小説

 《GENE[ゲーン]》シリーズの第7巻『螺旋運命』が如何に五百香ノエルのミスを示すものかこれ以上はないくらいに、それを証明していると言えるでしょう。それこそが、この「4 青春の終わり」で“バルトは口もとを押さえ、爆笑の衝動をこらえて声をひそめる。「イリ、俺は国王の質問に答えるつもりはいっさいないんだ。どうしてかというと、俺はヤンアーチェ国王とはなんの取引もしていない。親友だったホークァンの役職が奪われても、あの親父殿が喜ぶとは思えない。責任の取り方はさまざまだが、俺は信用のできる人間以外との取引はしないことにしている。なにより一番大切なのは、俺が相手を気に入るかどうかだ。俺が国王の人となりを知る術があるか?これまではホークァンがその橋渡しだった。ホークァンがいなくなったら、今度はお前が出てくるのか?だがお前と俺との関係は、国や組織とは無縁のはずだ。だからお前の口から、お前自身でなく、他人の聞きたがっている質問が出てくることが納得いかない」「…………」口調こそ穏やかだったが、バルトの言い分には、罵倒にも似た響きが込められていた。イリは苦痛を感じて唇を噛み、目を上げてじっと相手を見つめる。”(P.171~172)イリを傷つけ罵倒し、ヤンアーチェの人となり知ろうとしなかったくせに知る術がなかったと言い張り、彼を信用できないし取引するつもりはない、とイリの愛するヤンアーチェを侮辱することでイリをも侮辱し切り捨てた、恥知らずな最低のロクデナシなのに、バティの末弟が…バルト・デナルトン・バティ“こんなに勇敢で立派な男だぞ五百香ノエルは書いたつもりでいるのですから呆れるしかありませんね

 呆れた事にバルトイリに不義密通の濡れ衣を着せようとした のです。「5 新しい明日へ」でイリヤンアーチェの視線を感じて戸惑う。「お前から王様に説明してくれ」「いったいなんの話をしている」ヤンアーチェはムッとしてイリとバルトを交互に睨んだ。「俺の知らないところでお前たちが通じているのを、わざわざ教えようと言うのなら、よけいなお世話だ」”(P.203と、それがイリを見守り続けてきた男の言う事 おまけに、“「信じるために結んだ同盟じゃない」厳しい声音で、ヤンアーチェは告げた。「信じていないから結んだ同盟だ」「王様、だったら俺を信じてくれ」真摯な面持ちになったバルトは、身を乗り出して訴える。「親父殿が亡くなったために、帝国と同盟のパイプは途切れた。これがどういうことか、王様にもわかるだろう?帝国は世界と断絶したんだ。自分で世界との繋がりを切ったんだよ」「…………」ヤンアーチェは積み上げたクッションに半身を預け、うろんな眼差しになった。バルトの言っていることはよくわかる。だがそれは、本来こうした席でヤンアーチェが軽々しく応答できる問題ではない。(P.204~205)”とあるように、自分はヤンアーチェを欠片も信じていないくせに、ヤンアーチェには自分を信用しろ なんて、最低です。信頼関係の鉄則とは相手に信じて欲しければ、まず自分が信じなければいけない”という事です。それを、ロクデナシゆえにバルトは知らない 人身売買組織の頭だけに最低です

 「序章」には己の重責を負う力と意思とがバルトにはあるけれど、ヤンアーチェにはない”と断言し、ヤンアーチェを侮辱する言葉の数々が鏤められ、はらわたが煮えくり返る想いです。“私は彼を誇りに思う。彼が私のものでなく、そして二度とその手で愛されることがなくても、私は彼を愛するだろう。愛が私の中にあることを、若きチャンシャン国王は教えてくれた。だが私の中の愛をつねに探しつづけ、いつも行く先の炎をたやさずに灯しつづけてくれたのは、ほかのだれでもない、バルトであった。それは忘れがたい、私の青春の光。永遠に巡る螺旋の運命の中で出会った、ただ一人の存在だった。”とあるけれど、これではヤンアーチェは単なるチャンシャン王国の国王というだけの存在であり、イリが愛しているのはバルトだと言っているようなものです。この第7巻だけを読んだ人がいれば、きっとイリは愛するバルトに捨てられてしまったと誤解することでしょう。

 これもまた呆れるしかない  のですが「終章」で、“だが、その苦く哀しい季節の中で、バルト・デナルトン・バティという存在は確かに輝く宝石だった。大切な、愛しい宝石。私は彼を失った時、青春の終わりを感じた。だが彼かヤンアーチェか、選ばなければならない瞬間があったとするなら、それはもう、出逢いの瞬間に他ならなかったのだろうから、修正は出来ない。私が選んだのはヤンアーチェだった。そして青春は失われたのだ。”とあるけれど、ロクデナシのバルトとの最初から平行線の道を歩いてきた無意味な関係が終わってメデタシメデタシであり、イリの青春がいつ終わるのかはわからない、しかし、バルトとの関係がめでたく終わったこととは無縁です 綺麗さっぱり腐れ縁永遠断ち切って欲しいけれど、イリは愚かにもコイツ甘やかしてしまったイリの生涯で唯一の罪と呼べるものがあるなら、人身売買組織〈自由同盟〉の頭の息子であり跡を継いで新たな頭となったバルトを許したことです。

 天空帝国を滅ぼした真・天空帝国に…ラカ人体実験のモルモットとして島に残った生き残りの民草を差し出し、それ以前にラーチョオ王朝皇室と市井の民草をも含めた全国民を皆殺しにしたのは…イリのバックボーンとなり得るモノを13年前に失わせたのは〈旧・三国同盟〉を結ばせた自由同盟の先の盟主であり、ラカの手先であったバルトの父フィアルドでした。しかし、そのフィアルド以上の大罪を犯したのはバルトです。第1巻『天使は裂かれる』の「5 ロッサの崩壊」“お前と俺の道が交わることはないだろう。あの日、三年前に俺がお前を救い出せなかったとき、俺の役目はすでに終わってしまった。俺は当たりクジを目の前にしながら、指をくわえて見送るしかなかっただらしない男だ。そんな男でもお前が欲しいと言うならくれてやってもいいが、閨(ねや)で腰を振るくらいしか能のない男でもいいか?”と言いながら、チャンシャン獅子身中の虫でありバルトと同類のロクデナシでしかないホークァンが、王政改革の名の元イリを捨て駒として悪用するだけだと知りながら、比喩ではなく本当に売り渡したのです。

 それなのに、真・天空帝国闘うのに必要な力になり得ないと自分打算で切り捨てたバルトの罪を知りながら、このロクデナシ甘やかして許した事こそがイリの唯一の罪であり、それはヤンアーチェだけを愛しているイリバルトを愛していると言わせ、バルト都合よく利用され捨てられるキャラに貶めた五百香ノエルの罪でもあるのです