イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

黒猫亭事件

2013年04月16日 03時07分01秒 | 小説

角川文庫『本陣殺人事件』に収録されている〈金田一耕助〉シリーズの短編推理小説「黒猫亭事件」で金田一が彼の伝記作家でもある作者「横溝正史の分身“S・Y”に宛てた手紙という形で執筆された事件。横溝正史曰く推理小説の3大トリック(「顔の無い屍体」「一人二役」「密室殺人」)の内、単なる“顔の無い屍体(死体損壊)”だけではつまらいので、それに“一人二役”をプラスした2つのトリックのコラボ。女性漫画家のJET女史(本名「門脇佳代」)により漫画化された横溝作品の1つ。

武蔵野の面影を残すも辺鄙なG町の“桃色(ピンク)迷路”とか“地獄横町”とも呼ばれる界隈の酒場「黒猫亭」のマダムのお繁(糸島繁子 / 本名「松田花子」)は、土建業「風間組」の親分である風間俊六(金田一の中学時代の友人)に囲われ一時的に充足した日々を得、恋に狂う。

思い詰めたお繁は風間の妻に成り上がろうと企み、嫁姑の争いの果てに姑の毒殺を図り間違って夫を殺した過去をネタに自身を食い物にする糸島大伍の殺害を計画した。まず、お繁は自身と日華ダンスホールのダンサー“桑野鮎子”という一人二役で周囲を欺くという遊びを糸島に持ちかけ、引き揚げ船で日本に戻る船上で糸島が引っ掛けた小野千代子を殺して彼女の遺体を身代わりに自身の死を偽装し、本命のターゲットである夫を殺害した。

いずれは共犯の日兆(日蓮宗系「蓮華院」の破戒僧)も始末するつもりだったが、彼女を我が物にしようとした日兆に土蔵に閉じ込められて逃走の機会を失い、風間に真相を知られたお繁は自身の心臓を撃ち抜いて自殺した。お繁を愛することのなかった風間だが、愛人の1人である大森の割烹旅館「松月」の女将のお節(松山節子)を愛しく想い、彼女を自身の居場所として大切にするようになる。


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