イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

永劫の孤独を癒すモノは愛 - サラディナーサ

2012年09月29日 22時11分34秒 | 白泉社

ソラヤ:…64代およそ千年に及ぶフロンテーラの歴史の中で、愛してもいない相手と結婚した惣領は一人もいないわ!いいこと!?ただの一人もよ!!
マシュー:く…黒姫…?(何が言いたい!?)
ソラヤ:フロンテーラではね、一族の者は惣領の選んだ相手に異議を唱えることはできないのよ。相思相愛の相手ならば、どこの国のどんな身分の人間でもいい!一族の者は何も言わず、受け入れる。
マシュー:(な…んだって…。)
ソラヤ:これは、どうしてだかわかる?リカルド。なぜなら、冠する者は常に孤独だから。その孤独を癒し、うめることができるのは愛しかないから。一族の皆(みな)に愛し尊敬されながらも、だが決して馴れ合ってはならない!侮られてはならない!一族中の命運を一人負って常に孤高を守らなければならない!それが頂点に立つ者の宿命よ!!私達一族(フロンテーラ)の様に戦場…生死の境を生きる場とする者達を率いる者には特にね。最強の武人であり、聡明な司令官であり、敵に怯まず、味方に醜態を晒さず。この重責には屈強の男だって堪えられないことがある!!それがまして女の身で背負わなければならないとしたら!?
マシュー:(黒姫…!!)
ソラヤ:彼女を支える相手、つまり「惣領の夫」は並の男じゃ務まらない!並の愛情じゃ包めない!そういう相手が必要なのよ。フロンテーラの女惣領はサラディナーサをのぞいて今までに5人、内3人は一族の者を選んでいる。この3人はいいわ、だれもが一族中認める文句の付け様のない相手だった。問題だったのは外部(そと)の人間を選んだ残りの2人、これが面白いことに全く対称的な選択をしてね。一人は旅の吟遊詩人、優雅な姿と天賦の楽才を持つ外(ほか)は海のことも艦(ふね)のことも何も知らない、何もできない男だったけれど、戦闘から帰って来る妻の疲れを癒すためだけにリュートを奏で竪琴を爪弾いた。

〈金髪の女惣領の夫:もう誰にも唄わない、あなたのためにしか奏でない。
金髪の女惣領:…唄ってよ。その声さえあればいい、その音さえあればいい、そうすれば私は明日も戦場へ出て行ける。ねェ弾いてよ、愛しているわ、愛してる。〉

ソラヤ:もう一人は船乗り、しかも当時、私達と対峙していた国の海軍の人間でね。この恋が実るためにはどちらかが自分の立場を捨てなければならない!!こればかりは一族中反対しない訳にはいかなかった。

〈黒髪の女惣領:私は死ぬまでフロンテーラの長よ!!でもおまえを愛してる!愛してる!!心がちぎれそうだわ!!
黒髪の女惣領の夫:ならば代りに俺が捨てよう。故国(くに)と地位と名誉と栄光と未来と、そして男の矜持とを。己の持ち得る全てを投げ出して影となり、おまえに尽そう。この手に残るものはおまえだけでいい!!〉


最新の画像もっと見る