イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

カイエンとサヒャン -01

2013年05月15日 08時57分09秒 | 小説

集英社コバルト文庫
金蓮花

『水の都の物語 前編』
「2 出逢い」

カイエンは地面に滅びた過去の王国の文字をゆっくりと指で書いた。

――――――厦維燕

サヒャンは意味などわからぬ文字の、その並びの美しさに我知らず目を奪われていた。それに目を細めカイエンは音楽的な声で言葉を続ける。「《厦》は家を表します。《維》はつなぐという意味で、《燕》は必ず帰ってくる鳥の名前でもあり、くつろぐという意味もあります。これが私という存在の本質です。今日から、あなたが私の《真珠》です。どうぞ、疎ましくお思いにならず、なにかあれば私を思いだしてください。必ずあなたのために私は尽力いたします」カイエンの百点満点の騎士ぶりに、生まれて初めて《真珠》となった乙女は……、落第点の答えを返すことしかできなかった。




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