Harbard Business Review
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あなたは職場に有害な「考えすぎな人」ではないか
サマリー:かつてないほど多くの情報にアクセスでき、これまでになく高い要求を突きつけられるようになったいま、多くの人が「考えすぎてしまう」状況に陥っている。この傾向は、すべてを過剰に分析し自己批判する「センシティブ・ストライバー」と呼ぶ人々に顕著で、不安やバーンアウトを引き起こし、組織の成長を阻害する。本稿では、考えすぎの3つのタイプ、すなわち「反芻」「フューチャートリップ」「過剰分析」を理解し、それに対処する方法を紹介する
「考えすぎ」は個人とチームにとって大きな問題
現代における仕事の世界は、考えすぎてしまう状況に満ちあふれている。新しい市場トレンドの影響や重要顧客へのメールの口調、さらにはフィードバックに対する従業員の反応など、リーダーが頭を悩ませることは無限にある。
かつてないほど多くの情報にアクセスできる一方で、これまでになく高い要求を突きつけられるようになったいま、米国の成人の50~75%が「考えすぎてしまう」と答えるのも不思議ではない。
筆者は10年以上にわたり、世界のトップ企業でプロフェッショナルのコーチングを行ってきた。その結果、ある共通のパターンを見つけた。成功しているように見える人でも、あらゆることを複雑に考えすぎたり、自分の決断を不要に複雑にしたり、必要以上に長時間にわたり考え込んだりする人がいるのだ。この傾向は、筆者が「センシティブ・ストライバー」と呼ぶグループに、特にはっきり見られる。身の回りの世界をやたらと深く分析し、しばしば自分自身の最も厳しい批判者となる人たちだ。
考えすぎは疲れるだけでなく、放っておくと、不安や燃え尽き症候群(バーンアウト)をもたらし、組織にも幅広い影響を与える。個人(あるいはチーム全体)に考えすぎる癖があると、ボトルネックが生まれる。意思決定が遅くなり、目の前のチャンスを逃し、リスク回避の文化が定着して、ビジネスの成長を妨げる。
職場における「考えすぎ」に、これまで以上に効果的な解決策が必要とされているのは明らかだ。しかし、この問題に真に取り組むためには、まず考えすぎには3つのタイプがあることを知り、理解することが重要となる。3つのタイプとは、反芻(同じことをぐるぐると考えること)、フューチャートリップ(未来に思いを馳せること)、そして過剰分析だ。この知識を身につければ、ターゲットを絞った戦略を立てられ、従業員にとっても企業にとっても、有意義で持続的な変化をもたらすことができる。
本稿では、3つのタイプの考えすぎを見抜き、対処する方法を紹介しよう。
反芻
反芻とは、過去の出来事(特に嫌な出来事や苦痛を伴う出来事)を、いつまでも思い悩むことだ。反芻する人は、後悔や罪悪感、そして「ああすればよかった、こうすべきだった、こうできた」といった考えにはまり込むことが多い。何がいけなかったかを考えて、自分を責めることも多い。反芻の特徴的な側面は、思考が過去に向いていて、そこから抜け出せないことだ。
注目すべき兆候
・好意的でないフィードバックが頭を離れない。
・誰かとの会話で、過去の失敗や挫折、不手際を話題にすることが多い。
・ミスを避けたいがために、自分の仕事を二重、三重にチェックして過剰に用心する。
対処方法
意外だと思うかもしれないが、いっそのこと「心配する時間」をスケジュールに組み込むとよい。反芻で1日を終わらせないようにするために、管理可能な時間(通常は15~30分以下)に制限するのだ。自分にとって都合のよい時間帯を選び(ただし寝る前は避けること)、くよくよする場所を決める。特定のイスや部屋、公園の一角でもよいだろう。そして自分の心配事を、自分がコントロールできるものと、そうでないものに分けよう。自分でコントロールできる心配事については、アクションや解決策を考えてみよう。たとえば、仕事の期限を守れるかどうかが心配なら、その間は新しい仕事を断るといったアクションが考えられる。自分にはコントロールできない心配事の場合は、視覚化を試みてみよう。その心配事を風船に入れて、空に放つイメージを思い描こう。
反芻思考に対処する時間を設定しておくと、「考えるのをやめよう」と葛藤することからも解放される。自分の都合のよい時間に先送りするだけだ。決められた時間以外に反芻が起こったら、「いまではなく、後で時間をつくる」と、そっと自分に言い聞かせると、自分の思考パターンに気づき、コントロールする助けになる。
フューチャートリップ
フューチャートリップ(未来に思いを馳せる)型の人は、過去をくよくよ振り返るのではなく、将来どうなるかを心配している。将来を予期することは、ある程度ならば有益だが、エスカレートすると自分の足かせとなる。何が起こるかわからない不透明性や、失敗する可能性、そして未知への恐怖が、難しいタイプの考えすぎをもたらす。
注目すべき兆候
・あらゆる不測の事態に備えることに過剰にエネルギーを費やす。
・いつも次のことを考えているため、目の前の成功を祝うことが難しい。
・やることが山積みだという思いに囚われて、落ち着かないか、動揺を感じることが多い。
対処方法
過去ではなく未来を考える能力を活かそう。具体的には、心配の対象となっている時点を超えた未来に思いを馳せよう。
たとえば、マーケティングマネジャーのケーリンは、新製品の発売の準備に追われている。期限は厳しく、期待は大きく、彼のチームは大きなプレッシャーにさらされている。ケーリンはキャンペーン戦略や、チームの仕事量、そして顧客の反応が気になって仕方がない。
そこでケーリンは、昼休みになると静かな会議室を見つけて、目を閉じ、5年後の自分を思い描く。いまよりも上のポジションに就いていて、これまでのキャリアパスを振り返っている。この未来の視点に立つと、今回の新製品の発売は、ケーリンが担当した多くのプロジェクトの一つにすぎないことに気がつく。別の視点から把握することができるようになるのだ。重要なキャンペーンだが、彼のキャリアを決定づける瞬間ではない。準備作業の一部が計画通りに進まなかった、彼のチームがしっかりと対処して、その経験から教訓を得た。
このように、心配事から一時的に距離を置くと、その切迫性や強さを軽くし、より穏やかでバランスの取れた心持ちで「いま」に集中しやすくなる。
不要なストレス要因にさらされる機会を減らして、「選択的無知」を実践してもよいだろう。自分が消費する情報、とりわけニュースソースやSNSから得る情報を意図的に選ぼう。フューチャートリップをエスカレートさせるきっかけは何だろう。市場の変動に関する最新情報や業界の予測かもしれないし、KPI(主要業績評価指標)ダッシュボードや銀行口座を常時チェックすることかもしれない。日常業務や意思決定に影響を与えない最新情報やデータは、チェックする必要がないのかもしれない。アクションにつながる情報を優先しよう。
過剰分析
反芻が過去、フューチャートリップが未来を向いているのに対して、過剰分析は深さに思考が向いている。あるトピックや考え、状況に、過剰なまでに深くはまりこんでしまうのだ。それは深遠なインサイトをもたらすこともあるが、さほど重要ではない細部に囚われてしまうことも多い。
注目すべき兆候
・物事を深堀りするために、アクションを先延ばしにしたり、遅らせたりする。
・自分の分析に自信が持てないため、他人の承認や確認を何度も求める。
・優先順位の高いタスクと低いタスクを区別できず、決断しなければならないことが溜まっていく。
対処方法
完璧な選択を求めるのではなく、「十分な」選択を目指そう。これは「満足のいくアプローチ」と呼ばれるものだ。ある決断が自分の設定した基準を満たし、満足できるものであるなら、たとえ潜在的によりよい選択肢が存在する可能性があっても、その決断を下して先に進むべきだ。このことを、あらゆる選択肢を検討し、よりよい代替案や合意や結果を探し続け、最大限の利益を追い求める(その結果大きな不利益を被る)人と比べてみてほしい。2つのタイプの意思決定のうち、最大限を求める人は過剰分析に陥る傾向があり、自分の決断の結果に満足感を得にくく、自分と他人を比べてネガティブになりがちだ。
意思決定の主な基準(原則、指針、要件)は、ある決定を下すうえで、重要な変数に優先順位をつける時も役に立つ。決定の基準は仕事上のものかもしれないし、個人的なものかもしれない。たとえば、製品やサービスに新機能をつけるかどうか検討する時、過剰分析に陥って思考がマヒしている状態を想像してみよう。その決定の基準には、コストや収益性、労力、リスク、インパクトなどが含まれるだろう。
では、転職のために引っ越すべきかどうかという、個人的な決断を下す状況を思い浮かべてみよう。すると、新しいポジションは自分の長所に合っているか、給料やそのポジションは将来の希望に合っているか、といった基準を検討するかもしれない。いずれの場合も、検討する基準は3つ以下に抑えよう。また3つのうち一つは、ほかよりも上に位置づけよう。グループでの決定を下す時は、全員でブレインストーミングをしてもらい、全員で基準を決めるとよい。
* * *
目指すべきは、深い思考をすべて排除することではなく、それが非生産的な思考に陥るのを防ぐことだと覚えておこう。あなたやあなたのチームがどのタイプの考えすぎに陥っているか知ることは、そこから抜け出す第一歩になり、思慮深い決定を迅速に下すことがこれまで以上に求められている現代において極めて重要になる。
"3 Types of Overthinking - and How to Overcome Them," HBR.org, February 07, 2024.
メロディ・ワイルディング
エグゼクティブコーチ、ライセンスト・マスター・ソーシャルワーカー(LMSW)。著書にTrust Yourself, Chronicle Prism, 2021.(邦訳『満たされない気持ちの解決法 : ストレス・不安・自己疑念と決別しよう』パンローリング、2022年)がある。
感想;
これはビジネスだけでなく、生き方にも通じるように思いました。
お釈迦様が「過去も未来もない。あるのは今だけだ」
ところが多くの人が過去に起きたことを悔いることに、まだ起きていないことを心配することに、今の大切な時間を使っています。
過去は今に生かすためのもの、未来は今の結果なので、今を大切にすることなのですが。
この論文は、今の時間の扱いについても言及されています。
①周りの目を気にしすぎている
②それを選択して良いかずーっと迷っている
③その結果何も決められないし行動もしない
周りは私のことを面倒見てくれません。
革新的なことには批判的な意見が多いです。
やってみないとどうなるかわかりません。
やってみて成果がでて初めて気付く人も多いです。
なにより何も行動しないと変わりません。
何をして良いか、優先順位が分からないときは、私は簡単にできることをします。
それと締切が迫っていることをやります。
締切が曖昧なものはつい「翌檜」状態になりますが。涙
今は毎月やることをメモにして、それをやると赤で消していきます。
仕事はエクセルにもスケジュールを載せているので、そこでも管理するようにしています。
それでもうっかりすることがありますが。
何でもよいので、自分がやりたいことをやってみることなのでしょう。
そのやりたいことが人に危害など与えなければ問題ないと思います。
そして起きたときにまた考えたら良いのではないでしょうか。
もちろんやる場合にはある程度の確認や、場合によっては信頼できる人の意見をもらうなども必要かもしれません。
山上の垂訓「門を叩け! さらば開かれん」
扉の向こうにどんなことが待っているか。
まさにそれが人生なのかもしれません。
とわかっていても、なかなか出来ないです。涙
自分に何度も言い聞かせることなのでしょうね。
せっかくの大切な時間をムダにしていますよ。
その時間を今に使えばもっといろいろなことが出来、思い出を増やしたら、楽しい時間を創ったり、幸せなひとときを増やせる可能性もあると信じてですね。
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