ポーランドからの報告

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統一地方選挙

2006年11月14日 | 政治・経済

一昨日の12日に、市長選、市議選、など計4つ余りの選挙を同時に行う、4年に一度の全国統一地方選挙が開かれました。

12日はあいにく全国的に雨模様のお天気となり、投票率がやや心配されました。(我が家の夫も...天候を理由に投票へはいきませんでした) 今回の選挙では、昨年の上下院選挙で上位争いをした、与党「法と正義(PiS)」、野党の「市民プラットフォーム(PO)」が、それぞれどこまで票を伸ばせるかが、注目の的となっていました。また、今後増えるEUからの補助金の用途をめぐって、各政党候補がさまざまな知恵を出してきており、各方面から大いに注目された選挙でした。

   

さてさて、気になる選挙結果ですが..やはり全国各地で「法と正義(PiS)」と「市民プラットフォーム(PO)」の激突となりました。注目すべきは、都市部では、野党の「市民プラットフォーム(PO)」の票が多かったのに対し、地方部、農村部では、現政権「法と正義(PiS)」の得票が多くなったことです。都市部ほど先進的、地方に行くほど保守的、傾向が今回の選挙結果でも、改めて証明された形となりました。

また注目のワルシャワ市長選は、現職のカジミエジュ・マルチンキエヴィチ氏(PiS)と、野党「市民プラットフォーム(PO)」擁立の候補、ハンナ・グルンキエヴィチ・ヴァルツ氏の得票が僅差となり、後日の決戦投票に持ち込まれることになりました。


ところで今回の選挙選、まったく本筋とは別のところで、一躍話題をさらった人物がいます。北東部ポドラスキエ県・ビヤウィストク市の市長選に立候補した、クシシュトフ・コノノヴィチ(Krzysztof Kononowicz )氏 がその人で、まったく無名ながら、奇想天外な選挙公約と、派手なセーターで、一躍時の人となった人物です。 氏の選挙公報フィルムや、それを見て爆笑するニュースキャスターの動画 などが、Youtubeなどの動画サイトで出回ったり、氏のセーターと同柄のセーターが、ネット・オークションで高額で取引されたりと、今ポーランドでは、ちょっとした「祭り」状態になっているんです^^... Youtubeといえば日本でも先日「スプーの絵描き歌」騒動がありましたが、今回の騒動は、いわば、ポーランド版「スプー騒動」といった感じです^^ 

結局、12日の選挙選では、コノノヴィチ氏は3.3%の票を獲得して選挙選に敗れました。しかしすでに騒動はとどまるところを知らず、氏のファンサイト までできる始末、さらには、氏を、今回の選挙の「ヒーロー」に選んだメディアまで現れました。

人を笑いものにするのは、もちろん決してほめられたことではありませんが、それでもこういったハプニングを通して、若い人たちの間で政治に関する関心が高まるのは、多分よいことなんでしょう。


ポーランドからの報告



ポーランドの 「移民問題」 

2006年10月10日 | 政治・経済

ポーランドは非常に移民の少ない国です。首都ワルシャワでさえ、道を歩いている人の95%以上がポーランド人で、残りがその他の白人とアジア人、黒人です。私の住むクラクフも、外国人が目につくほうですが、ほとんどが観光客で、3・4日滞在して帰る人たちです。

そんな移民の少ないポーランドでの生活に適応していただけに、先日旅行でイタリアに行ったときは、そのあまりの移民の多さにびっくりしました。西欧は移民が多いとは聞いていたものの、ミラノはお城裏手の公園が中華共和国でしたし、フィレンツェ・ヴェネチィアも中国系・東欧系・アラブ系・アフリカ系など、世界の全人種が集う、コスモポリタン・シティでした。(写真:フィレンツェ)

改めていかにポーランドに移民が少ないかを知る機会となったとともに、ここだけの話、ちょっとほっとしたのを覚えています。なにせ周囲の人からジロジロ見られることなく道を歩けるのは、やはりとても気が楽ですから。ポーランドでは、アジア人はどうしても目立ってしまうため、何をしていても周囲からの視線を感じ、自分でも気づかないうちに、ストレスが溜まっていたのだと思います。

   


さて、ポーランドに少数ながらいる移民は、だいたい以下に分けられます。

  ・ウクライナ国籍やベラルーシ国籍のポーランド系住民(労働移民)
  ・アメリカやイスラエルから帰国したポーランド系ユダヤ人
  ・ベトナム人(ワルシャワを中心に数万人。マフィアを組織しており、問題となっています)
  ・中国人(飲食店経営など)
  ・チェチェン難民や、その他カフカス系難民(人口比では極少数)
  ・諸外国から国費留学生として来て、そのまま定住した人(極少数)
  ・留学生・外国企業駐在員(ほとんどが数年で帰国)
  ・その他外国人(極少数、ポーランド人の配偶者含む)

そして、ポーランドになぜ移民が少ないかといえば、、

  ・ポーランド経済が魅力的でない(給料が低い)
  ・ポーランド語ができないと就職が厳しい(ポーランド人の失業率も高いので競争になる)
  ・3K(キツイ・汚い・危険)の仕事も、ポーランドではポーランド人がやっている
  ・ポーランドに行くぐらいなら、皆ドイツに行く...

というような理由が思いつきます。
要するに、移住する国としての魅力にかける、この一言に尽きます。

西欧諸国に多いイスラム系移民は、ポーランドではほとんど見かけません(留学生やチェチェン難民を除く)。ポーランドという国自体が、保守カトリックの色が濃いのに加え、クラクフ郊外のアウシュビッツ収容所や、ワルシャワのゲットー跡・戦没者記念碑などに代表されるように、ユダヤ・イスラエルとの結びつきも大変強く、それゆえイスラム教徒からは敬遠されるようです。
(イスラム教徒は観光客すら皆無です)。

また同様にアフリカ系黒人もほとんどいません。西欧各国に比べ、有色人種に対する偏見が根強く残っていることが理由にあるかもしれません。難解なポーランド語を必死で覚えても、仕事もない、居心地も悪い、ではペイしませんから。それでも最近は多少増えてきているようですが。


そんなポーランドで「移民」に関する問題といったら、目下深刻なのは、国内への「流入移民」ではなく、ポーランド国外に流出している「ポーランド人移民」の問題です。

というのもポーランドでは、20代・30代の働きざかりの若者、とりわけ、学歴が高くアンビションのある若者が、次から次へと他国へ移住しており、国内の空洞化が深刻な問題となっているからです。実際2004年5月のEU加盟以来、すでに人口が100万人減り、国民の平均年齢が一気に高齢化したことが確認されています。

追記:
「ポーランド人移民」の問題については、こちらの記事 もご覧ください。また こちらのブログ では、「ポーランド人移民」に関する問題を、イギリスからの視点でレポートしており、大変参考になります。


ポーランドからの報告


お月さまを盗んだ二人

2006年10月09日 | 政治・経済

ポーランドでは、大統領と首相が一卵性双生児の兄弟なんです。

レフ・カチンスキ大統領が双子の弟、ヤロスワフ・カチンスキ首相が双子の兄。

大統領と首相が双子なんて全世界どこを見渡しても前代未聞の話ですが、実際この双子兄弟がポストに就任してからというものの、ポーランドの政治は歴史上かつてないほど暴走し始め、ヨーロッパ他国からは、「ポーランドにファシズム政権誕生」と厳しく非難されています。


実はこのカチンスキ兄弟、かつて子役として映画に出演したことがあります。

O dwóch takich co ukradli Księżyc~お月さまを盗んだ二人 という映画で、今から44年前、1962年の作品です。下のパッケージ写真は、左が現在のレフ大統領、右がヤロスワフ首相。まだあどけない顔で、とてもかわいらしいですね。ちなみにこの二人、去年の大統領選挙のころは、「親友でも見分けがつかない程そっくりな顔」 と報道されていましたが、半年間こう毎日もテレビで顔を見させられると(特にヤロスワフ首相の方)、いやがおうでも見分けが付くようになってきます。

   

このカチンスキ兄弟が大統領と首相に就任してからというもの、この映画 『お月さまを盗んだ二人』 が、にわかに注目され始めています。

映画自体は、双子のヤツェックとプラツェックが、大人になったら何をしようか、などと他愛のないことをしゃべる映画なのですが、よくみて見ていると、突っ込みどころ満載なんです。

例えば このシーン。ポーランド語ですが、ぜひ動画でご覧ください。

  「僕ら、大人になって金持ちになったら..」
  「金持ちになったら、何もしなくていいんだぜ!」
  「今だって僕ら、何もしていないじゃないか。」
  「何言ってるんだ。金持ちになったら、もっと全然何もしなくていいんだよ!」


このせりふが、演技とはいえ、あまりにも現状を言い当ててるだけに。。。

実際、まるで「何もやらないこと」が政策であるかのように、カチンスキ双子兄弟政権は、何一つ建設的なことを行っていません。医療制度改革、公務員の給料の改善、税制制度改革、失業率の改善、こういった山積みの国内問題にはちっとも目をむけず、やっていることといえば、過去の政治家の汚職の追及、政敵の追放、カトリック教会への頭下げ、アメリカやイスラエルへのゴマすり。

昔も今も役者です(=エージェントに言われた通りにしか動けません) なんでことじゃ、困ります!


映画のその他のシーンは こちら でみることができます。


ポーランドからの報告


明日ワルシャワで反政府デモが開かれます

2006年10月06日 | 政治・経済

明日7日の土曜日、ワルシャワで大規模なデモ集会が行われます。 「市民プラットフォーム(PO)」 主催の反政府デモが旧市街・王宮前広場付近にて行われるほか、 「法と正義(PiS)」 ポーランド家族連盟(LPR)の演説会も同時開催される予定とのことです。

これまでも今年の春から夏場にかけて、こういったデモが、首都ワルシャワを始め、クラクフ、カトヴィツェ、ヴロツワフなど各都市で開催されきました。ただ先日ハンガリーで同様のデモがあったため、その影響をうけて、今回のデモはかつてない規模になる可能性もあります。当日は警官も多数配属されますので、そう治安が悪くなることはないと思いますが、それでも当日ワルシャワにおられる旅行者の方は、身の安全には十分ご注意ください。


ポーランドからの報告


「ラジオ・マリア」 のスキャンダル I

2006年10月04日 | 政治・経済

ポーランドですごいのは、政治家の汚職問題もさることながら、カトリック教会がらみのスキャンダルです。

ポーランドでは、カトリック神父が、時として政治家以上の発言力を持っています。なぜなら敬虔なカトリック教徒であるポーランド人は、政治家の演説は右耳から左耳へスルーしても、毎週日曜日のミサで聞く神父の説教は、ありがたいものとして心に留めるからです。

当の政治家らもそういった事態は百も承知で、むしろ教会勢力への積極的な歩み寄りを見せています。とりわけ去年の上下院選挙・大統領選挙から今年前半にかけての各政党とカトリック教会の蜜月ぶりは異常でした。

特筆すべきは、極右カトリックで知られるトルンのカトリック系ラジオ局「ラジオ・マリア」(写真)とその責任者タデウシュ・リズィク神父の存在。「ラジオ・マリア」は去年の上下院選挙、大統領選挙を通して「法と正義(Prawo i Sprawiedliwość)」党の支持を連日ラジオで呼びかけ、その結果、両選挙とも同党が勝って、カチンスキ双子政権が誕生しました。
  
そしてタデウシュ・リズィク神父は、カトリック保守派を中心にラジオのリスナーの支持を集め、一時は亡きヨハネ・パウロ二世に次ぐ人気と影響力をもつまでになった人物です。 当然リズィク神父のラジオでの発言が、世論にも影響することから、各政党の閣僚が参勤交代よろしくトルンまで足を運び、リズィク神父にお伺いを立てるという異様な事態となっていました。

  

そんな中、今年の4月に一大スキャンダルが発覚しました。「ラジオ・マリア」のヤン・クルル神父が、募金キャンペーンで集めた信者からの寄付金を、株式投資に流用し400万ズローチ(約1500万円)の損失を出したという話です。

つづく


ポーランドからの報告


「ラジオ・マリア」 のスキャンダル II

2006年10月04日 | 政治・経済

ことの始まりは、ラジオ・マリアが呼びかけた「グダニスク造船所を救済しよう」という募金キャンペーンでした。

グダニスク造船所、かつてのレーニン造船所とは、レフ=ヴァウェンサ(ワレサ) が働いていた造船所で、1980年に労働者組織 「連帯(Solidarność)」 が結成され、反政府労働者集会が起こされた場所です。その結果ポーランドを始め東欧が民主化し、ヴァウェンサはポーランド大統領になりました。ポーランドの、そして東欧全体の民主化の原点となった場所です。

実はこのグダニスク造船所は、体制変換後、多額の負債を抱え、1996年8月にグダニスク地方裁判所から、破産を宣告されていました。経営のノウハウがなく、安価での受注を繰り返したために、1億2千万米ドル(約150億円)もの負債額を抱えてしまっていたのです。破産宣告をうけて、造船所は閉鎖され、数千人いた労働者は、「連帯」を担った英雄から、一気に失業者となってしました。

「グダニスク造船所はポーランド民主化の原点なのだ、このままでは外国資本に買い取られてしまう、なんとか我々ポーランド人で資金を集めて造船所を再び立て直そう」 1997年にラジオ・マリアがこの募金キャンペーンを呼びかけると、多数の人がそれに賛同したのです。

もともとポーランド人はカトリック回帰と東欧民主化を同一視する傾向があります。「連帯」結成に先立つこと数ヶ月前、ポーランド出身の法王ヨハネ・ パウロ2世が第一回目のポーランド凱旋を行い、ワルシャワのピウスツキ広場に集まった聴衆に向かって Nie lękajcie się (恐れてはいけない) と呼びかけました。この呼びかけでポーランド人は目を覚まし、「連帯」運動がおこったのです。

  

またチェンストホーヴァのヤスナ・グーラ僧院の敷地内に「連帯」記念館があったりと、ポーランド人にとって、グダニスク造船所、レフ=ヴァウェンサ、「連帯」、ヨハネ・ パウロ2世、カトリック教会というのはすべて繋がっているものであり、「ラジオ・マリア」が「グダニスク造船所救済募金」を呼びかけると、自然な流れで賛同者が増えていきました。

しかも18・19世紀にアメリカや南米に移民したポーランド系移民の中には、事業で成功し裕福になった人も少なくなく、こういった海外ポーランド人コミュニティの賛同もあって、1998年までに最終的に数千万ズローチ、日本円で億単位の募金が集りました。
(ラジオ・マリアはアメリカでも聞けるんです。)

つづく


ポーランドからの報告



「ラジオ・マリア」 のスキャンダル III

2006年10月04日 | 政治・経済

ところが何年経っても、一向にその後の話が伝わってきません。今年4月ついに検事局が捜査に乗り出したところ、クルル神父が、募金の一部を株式投資に流用し、しかも400万ズローチ(約1500万円)の損失を出していたというスキャンダルが公の元になったのです。

もちろんこの一件は新聞やテレビなどで連日大きく報道され、世論を大きくにぎわしました。当然のことながら、人々は「ラジオ・マリア」とクルル神父のあまりの失態に、失意、失望しました。しかし結局デモなど表立った抗議はおきませんでした。ポーランドでは、表立ってカトリックの批判をするのは「教養がない」「育ちが知れる」と見る向きがあるためです。寄付者が年配者中心だったのもあると思います。(年配者ほど信心深い)

校則の厳しいカトリック系私立校に通っていた私としては、カトリック神父が株をやるということ自体、カルチャーショックなのですが、寄付者一人一人の東欧民主化への思い、敬虔なカトリックへの信心をないがしろにし、このように寄付金を株式投資し、しかもすってしまうとは、聖職者とは、慈善活動とは、一体なんなのでしょうか?

そして、海外ポーランド系住民からの莫大な額の寄付もさることならが、一方で多数のポーランド人が、少ない所得の中から寄付したことも忘れてはいけません。ポーランドでは、貧しい人ほど信心深く、食べるものに困っていても、なけなしのお金を教会に寄付することを美徳とする、そういう国民性なのです。

結局この一件は、当事者のクルル神父を免職し、寄付者には全額を返金して(損失の埋め合わせは一体どこから!?)、それっきり話はうやむやのまま終わりです。

もちろん造船所には一切お金は渡っていません。下手に株式投資したら赤字になってしまったので黒字になるまで待ってたのか?なぜ株に手を出したのか?差額を懐に入れるためか?そもそも負債額1億2千万米ドル(約150億円)に対し、数億円で何がしたかったのか?

しかもクルル神父とリズィク神父は一切起訴されていません。カチンスキ大統領が、「この件はもうお終いでいいでしょう」といったからです。

なぜか?選挙の時に助けてもらっているからです。


一昨日のジョークに一行付け加えておきます。

ポーランド人神父 「たんまりと懐に入れて、株ですりました」



ポーランドからの報告



ポーランドの政治汚職問題

2006年10月02日 | 政治・経済

ポーランドは汚職とワイロがはびこる国です。ミレル前首相の弟の公的資金横領問題、クファシニエフスキ前大統領と石油会社PKOオルレンとの癒着問題など、歴代政治家のほとんどに汚職疑惑があります。

まあ政治家の汚職問題なんていうのは、ポーランドに限らず世界中どこにも頭の痛い問題だと思います。2年前にはリトアニア大統領が、スキャンダル発覚でポーランドに逃げてきました。2日間いて帰りましたが。ちなみにポーランドの政治家は、汚職がばれるとイスラエルへ逃げたりします。

Transparency International というNPO団体が、毎年 汚職認知指数(CPI) なるものを発表しており、汚職の度合いを10点満点で評価しています。点数の高いほど汚職のない綺麗な政府ということになるのですが、気になるポーランドの順位は、2005年度は3.4点で70位、ブルキナ・ファソ、クロアチア、エジプト、サウジアラビア、レソト、シリアと同じレベルでした。
(ちなみに1位はアイスランドで9.7点、2位はフィンランド、ニュージーランドで9.6点、4位がデンマーク9.5点、5位はシンガポール9.4点。日本は7.3点で21位でした。)


こんなジョークもあります。

日本人・アメリカ人・ブラジル人の政治家が酒の席で話をしていました。

  日本   「あそこに橋が見えるでしょう?」
  アメリカ 「立派な橋ですね」
  日本   「実はここだけの話、建設費の10%を懐に入れましてね」

一同、ニヤニヤ

  アメリカ 「あそこにビルが見えるでしょう?」
  ブラジル 「高いビルですね」
  アメリカ 「私は30%を懐に入れましたよ」

一同、爆笑

  ブラジル 「あそこにダムが見えるでしょう?」
  日・米  「いいえ?」
  ブラジル 「100%懐に入れました」


さてその場にポーランド人の政治家がいたら、何と答えたでしょうか?
(ブラジルは2005年度のCPI は3.7点で62位、ポーランドより"優秀"な国とされています。)

ちなみに今日のニュースでやっていたのは、小中学校のパソコン購入費としてポーランド政府に支払われたEUからの補助金が、なぜか分配の途中にどこかへ消えてしまい、実際に各地の学校へは補助金が配布されていない、というニュース。

ポーランドに住んで3年も経つと、もはや驚きません。


ポーランドの政治については、ポーランド国暗夜行路 というブログでも詳しく紹介されています。


ポーランドからの報告


広がる所得格差

2006年09月10日 | 政治・経済

社会主義の崩壊から15年たって、ポーランドでは今、所得格差の拡大が深刻な問題となっています。お城のような豪邸に住んで高級車を乗り回し、洋服はシャネルやヴィトン、夏は地中海やエーゲ海にバカンスに行く金持ちがいるかと思えば、生活費にも事欠き、道端で物乞いをしなければ暮らしていけない人も増えてきています。

私の住むクラクフ・クリニ地区は、旧市街から約20km離れた住宅地で、社会主義だった70年代から開発が進み、90年代には豪邸が立ち並ぶ高級住宅地になりました。都心へ近すぎず遠すぎず、公園に囲まれ緑が豊富にあり、幹線道路から近いのにうるさくなく、と「知る人とぞ知る」理想の住宅地でした。(有名なSF作家、故スタニスワフ・レム氏のおうちもあります。)

ところが去年から今年にかけて、同じ地区に自治体の社会保障団地が建設されました。この社会保障団地とは、住宅ローンや光熱費、管理費などを払えずに住んでいた家を追い出された人が、自治体から与えられる住居で、新築とはいえ見るからに質素な造りになっています。

その結果、通りを一本隔てて、豪邸と最貧困住宅が隣り合わせする、というおかしな構図になってしまいました。治安の良さ悪さは、住民の所得におおよそ比例するのでしょうが、この社会保障団地ができて新たな住民が入居してくるや否や、地区の雰囲気がガラリと変わってしまいました。豪邸の壁にはペンキで下品な落書きが描かれ、乳母車を引いたお母さんが散歩する静かな公園だった場所では、夜な夜なフーリガンがドンちゃん騒ぎをする顛末に。車の盗難や住居への不法侵入の件数も増えました。

新しい住民の品の悪さに眉をひそめる高級住宅地の住民と、豪邸をみて格差を目の当たりにし、不満を爆発させる社会保障団地の住民。わずか15年でここまで所得の差が開いてしまったのは驚きです。実は社会主義時代も決して皆均等であったわけではなく、実際には共産党員とその他一般という二つの階層がありましたが、一般の人にとって共産党員というのは何か別個の存在で、普通の人は皆似たり寄ったりの生活をしていました。ところが体制が変わり、自由競争ができるようになった結果、このように勝ち組と負け組みにはっきり別れてしまいました。


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ポーランド人はどこにでもいる

2006年08月19日 | 政治・経済

日本ではよく、「日本人は海外のどこにでもいる」といいますが、奇遇なことに、ポーランドにも、「ポーランド人はどこにでもいる~ポラツィ・フシェンジェ・ソン(Polacy wszędzie są)」 という言い廻しがあります。

いやはや本当でした。去夏訪れたリトアニア同様、今回のイタリア旅行でも、フィレンツェ・ヴェネチアなどあちこちで、ポーランド人団体旅行客を沢山見かけました。外見では何人か見分けがつきにくくても、ポーランド語をしゃべっているのですぐポーランド人とわかります。団体旅行客のほかに、カップルや家族単位の個人旅行者もけっこういました。

ポーランドの人口は約3700万人と日本人の約1/4ほどなのですが、渡航先の国が大体決まっているため、確かにいる所にはすごくいる、という感じです。況やイタリアおや、カトリック・ルネサンス文化の発祥の地であり、しかもバチカン市国のあるローマは、敬虔なカトリック教徒のポーランド人なら、一度は訪れたい憧れの場所。そしてポーランドから北イタリアまでは、1000km強と、バスでも一日程でこられる距離であるだけに、ポーランド人観光客が多いのも納得です。昨年のヨハネ・パウロ二世逝去の際にも、約50万人もの弔問客が訪れています。

最近はスカイ・ヨーロッパ社などの格安航空券を使えば、バス並みの格安料金で来られるようになりましたので、今後もポーランド人観光客はますます増える一方だと思います。


一方で観光客だけでなく、ポーランドからの出稼ぎ労働者も多数見かけました。実際2004年5月のEU加盟以来、若い人やインテリ層を中心に100万人単位の人が国外に流失しており、国の空洞化が深刻な問題となっいる状況なのです。イギリス、アイルランド、スウェーデンなどが多く、特にイギリスではすでに約100万人と、英国歴史上かつてない規模のマイノリティ集団を形成しています。

しかしイタリアでもイギリスでもどこでも、ポーランド人労働者の地位は決して高くありません。実は私が旅行に出かける少し前に、イタリアのポーランド人労働者についてのスキャンダラスな事件がテレビで大々的に報道されました。イタリア南部プーリア州の町バーリ(Bari)で、数十名のポーランド人出稼ぎ労働者が、イタリアマフィアの経営者に軟禁・拘束された上、少しの食料しか与えられず、1時間1ユーロという考えられない低賃金で働かされていたことが判明したのです。先日ついに警察当局が調査に入って、イタリア人経営者とポーランド人のブローカーが逮捕されましたが、労働者の大部分が病院に収容され、さらにその後の調べで自殺者もでていたことが明らかになりました。EU加盟以来、「ヨーロッパは一つ」の理念を基に桃源郷をもとめて国を出ようとするポーランド人に、冷たい現実が顕になったのです。

このニュースが報道されて、だからといってイタリア行きの旅行者が減ったわけではありません。バカンスにいくなら、イタリアはやはり最高の国です。ただどの国も、旅行で一時的に訪れるのと、実際に生活をしてみるとでは、まったく違った一面が見えてくるものなのでしょう。


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