ポーランドからの報告

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「ラジオ・マリア」 のスキャンダル II

2006年10月04日 | 政治・経済

ことの始まりは、ラジオ・マリアが呼びかけた「グダニスク造船所を救済しよう」という募金キャンペーンでした。

グダニスク造船所、かつてのレーニン造船所とは、レフ=ヴァウェンサ(ワレサ) が働いていた造船所で、1980年に労働者組織 「連帯(Solidarność)」 が結成され、反政府労働者集会が起こされた場所です。その結果ポーランドを始め東欧が民主化し、ヴァウェンサはポーランド大統領になりました。ポーランドの、そして東欧全体の民主化の原点となった場所です。

実はこのグダニスク造船所は、体制変換後、多額の負債を抱え、1996年8月にグダニスク地方裁判所から、破産を宣告されていました。経営のノウハウがなく、安価での受注を繰り返したために、1億2千万米ドル(約150億円)もの負債額を抱えてしまっていたのです。破産宣告をうけて、造船所は閉鎖され、数千人いた労働者は、「連帯」を担った英雄から、一気に失業者となってしました。

「グダニスク造船所はポーランド民主化の原点なのだ、このままでは外国資本に買い取られてしまう、なんとか我々ポーランド人で資金を集めて造船所を再び立て直そう」 1997年にラジオ・マリアがこの募金キャンペーンを呼びかけると、多数の人がそれに賛同したのです。

もともとポーランド人はカトリック回帰と東欧民主化を同一視する傾向があります。「連帯」結成に先立つこと数ヶ月前、ポーランド出身の法王ヨハネ・ パウロ2世が第一回目のポーランド凱旋を行い、ワルシャワのピウスツキ広場に集まった聴衆に向かって Nie lękajcie się (恐れてはいけない) と呼びかけました。この呼びかけでポーランド人は目を覚まし、「連帯」運動がおこったのです。

  

またチェンストホーヴァのヤスナ・グーラ僧院の敷地内に「連帯」記念館があったりと、ポーランド人にとって、グダニスク造船所、レフ=ヴァウェンサ、「連帯」、ヨハネ・ パウロ2世、カトリック教会というのはすべて繋がっているものであり、「ラジオ・マリア」が「グダニスク造船所救済募金」を呼びかけると、自然な流れで賛同者が増えていきました。

しかも18・19世紀にアメリカや南米に移民したポーランド系移民の中には、事業で成功し裕福になった人も少なくなく、こういった海外ポーランド人コミュニティの賛同もあって、1998年までに最終的に数千万ズローチ、日本円で億単位の募金が集りました。
(ラジオ・マリアはアメリカでも聞けるんです。)

つづく


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