縁結び

2007年02月16日 00時43分16秒 | 旅するふっき~

全国を駆け巡った春の旅もいよいよ佳境、というべきか、終焉のときが見え始めました。
全国的に天候が大荒れであるにもかかわらず、
自分が行く先々はおどろくほどの好天に恵まれた2週間。
生まれて初めて見た、夕日の沈む瞬間。
太陽が、ほんとうに海にのまれていく瞬間をこの両目でしっかりと見とどけました。
日本海では沈んだ太陽も、ブラジルでは朝を告げる光となる。
切ないような、当たり前なような、時間の連鎖。
一般論をかき混ぜても文句を言われないとすれば、僕はこう言いたい。

非日常の中の日常の瞬間

旅先で見たもの、触れたもの、聞いたもの。
それらすべては、一般論的に言えば、日常の中に見つけたはずの非日常。
でも自分はそうは思わなかった。
毎日何が起こるかわからない、非日常の、万物流転の中で、
静かな入江、のどかな耕地、広がる海原、噴煙吐く山容、眩しいほどの野花、そして夕日。
こんなにも不変な…洒落を掛けるなら普遍な…そんなものがそこらじゅうにある、
そんなことに気づかされる。
旅の中でなければ、たぶん気づかない。
知っているのに、気づかない、気づいていない。
それに気づいたときの感動は、
ミスタードーナツがモップやお掃除のメーカーのダスキンだったことを知った驚き、
長野と松本は片道なら高速バスが安く、往復なら電車が安いことを知ったときの喜び、
そんなものとは比にならないほどの感動だと思う。

そしてもうひとつ気づいたこと。

マイナスとマイナスをかければプラスになるけど、足してもマイナスのままだということ。
マイナスな気持ちなんて、かけ合わせることは所詮不可能だ。
マイナスなことは積み重なって増えるものだから、等式を作るなら左辺は必ず足し算。
右辺の絶対値は大きくなるのに、グラフにすると右肩下がり。
でもこの旅で、僕は左辺にすべての項で絶対値が最大になる自然数を加えてやった。
そしたら、中学生じゃとても描けないような、複雑なグラフができた。
右辺のハイフンがなくなった。
まるで雪見風呂の温度計の赤い玉を、湯船の中に突っ込んだかのように。

なるほどね。
こんな簡単な公式なら、文系の僕にももっと簡単に解けたかもしれない。
その解法を、塾の生徒に教えるよりも先に自分が見つけられたと思う。

その公式、来週の授業で教えてあげようかな。入試には出ないけど。

公立高校前期試験の合格発表があった。
ひとり、またひとり、合格の通知が、本部からメールで届く。
たぶん、おれの力なんて関係なかったと思う。
君たちが勝ち取ったその高校への切符は、おれのこの旅よりも長い長い行程だよ。
下車印は増やせ。
無効印は3年後でいいだろう。

ぜったい、ぜったい失くすなよ。
ぜったい、ぜったい、ぜったい、途中で回収されるなよ。

その言葉、自分自身に言い聞かせているような気がした。