岐阜出身のマラソンランナー、高橋尚子が、引退会見をしていました。
シドニーオリンピックの時の地元の熱狂ぶりが、懐かしく思い出されます。
どこの番組でも、県岐の先生や、岐阜の街並みが放映され、いい気持ちになります。
高橋尚子の好きなところは、なんといっても、謙虚なところだと思うんです。
師を大切にするというか、きちんと逆らわない姿が、今の自分にはないものだなと。
最近は、マスコミに出るたびに、弱っていく彼女を見て、
もう引退なのかな、潮時なんじゃないかな、と思いつつも、
まだまだ現役でいてほしいという思いもありました。
岐阜をこんなに明るくしてくれた、彼女の引退には、こみ上げるものがありますね。
そんなニュースの陰に隠れて、報道もされない「サヨナラ」が、
まだもうひとつあるんです。
それが、コンビニ、タイムリーの消滅です。
岐阜県のコンビニ、タイムリーが、来月デイリーヤマザキに経営譲渡されます。
タイムリーのブランドは、消滅します。
タイムリーが西可児駅前に出店した頃のことを、覚えています。
それが潰れてフランス料理屋になったことも、
それが潰れてお好み焼屋になったことも、
それが潰れてキャバクラになったことも、
西可児の人なら、きっと、知っているんだろうな。
実家に帰るとき、19号線を走り続けていると、
木曽のあたりでタイムリーが現れます。
この店を見るたびに、あぁ、帰ってきた、もう少しで実家に帰れるんだ、
そう励まされたものでした。
大手チェーンにはいいところがたくさんあります。
しかし、地元の人の心に根付いていた何かが、あるはずなんです。
安心、安全、そして安定の名のもとに、風に揺れるものが消されていく。
公園のシーソーも、
郊外の広葉樹の森も、
危ないからって消されていく。
もう、風に揺れるだけのゆとりも残されていない、そんな街並みに、
思い出の場所を見つけようとしても、
どんなにさがしたところで、あの秘密基地は見つかりそうもないし、
近づけば立ち入り禁止の柵が何重にも張られているし、
人間は、思い出の場所に近づくことさえも許されなくなったのか。
かすり傷ひとつも許されず、役所は批判されるばかりで、
この柵のねじがひとつでも外れていようものなら、マスコミがいつか騒ぎ立てる。
おおらかな空気が、岐阜には確かにあったはずなんだけど、
いまはどうなっているのかな。
名鉄電車が岐阜県を離れる直前、トンネルに入る。
その手前に、栗畑がある。
カーブに差し掛かる電車は、速度を一気に落とす。
電車の展望席からこのトンネルを眺めるのが好きだった。
もっとも、展望席さえも、無くなろうとしているけれど。
高橋尚子みたいな、笑顔が素敵な人が、岐阜にはたくさんいます。
そんなことが、岐阜の誇りであります。