Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

100円玉指数と電子決済

2004-07-11 | ◆ビジネス
今日の日経1面に、100円玉の流通量が増えたという話と、M&Aが世界的に増加傾向であるという記事が並んだ。どちらも景況感を表すものとして取り上げられているが、特に100円玉の方は意外で面白かった。

景気の動向に応じて、消費者が買い物などで使う100円玉の量が変わってくるので流通量が上下するという。記事は「100円玉の動きから目が離せない」とまで言う。

しかし、FelicaやSuicaなどの電子マネーがより広く使われるようになると果たして100円玉の流通量は景気の指数として機能するだろうか? 消費者は徐々に小銭を使わなくなるので、必ずしも景気動向を表すものではなくなるであろう。むしろ、景気が上向いて買物の回数が増える分、電子マネーの普及が促進され、100円玉指数はどんどん景況感から乖離する可能性すらある。

政策側から見た一つの問題点として、電子マネーの普及が市中における通貨供給量のコントロールを難しくするということがある。電子マネーは銀行の外側でぐるぐる回り始めるので、銀行からの報告だけでは資金の動きが把握しきれなくなるのである。

しかし、この新しい小口決済の仕組みが銀行中心には回っていないところが面白い。電子マネーは10年くらい前から実証実験があちらこちらで行われていたが、なかなか成功に結びつかなかった。日本の大手銀行なども今はカード会社の傘下に入ったモンデックスなどと組んだりしていたような気がする。しかし結局その頃の実験はどれも花開いてはいない。

うまくいかない最大の原因は、ネットワーク効果と呼ばれるものをうまく活かせなかったことにあったのではなかろうか。ネットワーク効果とは、使う人が増えれば増えるほど利便性が高まるというものである。小規模な実証実験では、使う人が大していないし、使える場所も大してない。結果、小銭とカードと両方持ち歩かないとならないので不便この上ない。これがひとたび流れに乗れば、使う人が増えるので、使える場所もどんどん増えるという相乗効果を生み出していく。

今はまさにそんな相乗効果のなかにFelicaもSuicaもあるように見える。こうした電子マネーの成功は、銀行ではなく、SONYやJRからやってきた。消費者マーケットでのネットワーク効果を熟知したSONY、あるいは小銭なくしては回らないJRといった企業のビジネス形態の方が、お金を扱う専門である銀行よりも、電子マネーには近かったということか。

最新の画像もっと見る