アヒルのミューズ~LOHASの森~

アヒルのミューズが棲む
“LOHASの森”から発信するブログ

師走の葬儀と「千の風になって」

2007-12-20 | Weblog
街中は、クリスマスイルミネーションで美しく飾られた師走。
綾乃さんのもとに、1本の電話がかかってきた。
ご縁ある方の訃報だった。

お通夜と告別式の両方に出席した綾乃さんから、
こんな話をは聞いた・・・。

告別式のその日、
昼下がりの式場は、
ご遺族と親戚関係の方のみがお寺の建物のなかで、
弔問客は特設のテントに暖をとる形式で用意されたとのこと。
あらかじめ、お香典や献花はすべてご辞退との連絡があったものの、
祭壇は、たくさんの白い花で飾られていたそうだ。

読経が終わり、
いよいよ最後のお別れのとき。
菊の花を棺に綾乃さんも入れさせていただいたそうだ。
棺の中のその方は、生前の記憶に残る大柄なイメージはなく、
一回りも、二回りも、
小さく感じたそうだ・・・。

棺の蓋を閉めるときが、
今生の別れとなることが、何かとても強調されるようで、
心の中に、遺族でなくても涙があふれるものだとも思う。

出棺前、ご遺族代表の挨拶が行われ、
喪主の方がされると思っていたのを裏切るように、
故人のご長男が、マイクの前に進み出たとのこと。

その彼は、決してまだ人生の経験をたくさん重ねた歳ではなかったけれど、
小春日和のような師走の温かな午後の日差しを浴びて、
“満面の笑顔”で、マイクの前に佇んでいたそうだ。
そして、凛と、胸を張り、
瞳の奥にじっと悲しみをこらえながら、
しかし最後まで笑顔で、弔問客に感謝の言葉を立派に述べ終えた。

途中、言葉に詰まり、大丈夫かと心配する周囲をよそに、
彼は、大きく深呼吸をして、
「話そうとして考えてきた言葉が、
真っ白になって、まったく浮かびません。
すみません。・・・・」と
自分の気持ちを正直に語ったそうだ。
その姿は、多くの言葉にあらずとも、
たくさんのものが弔問客に伝わったはずだと、
綾乃さんは話してくれたんだ・・・。

“風”は、その時、吹いてはいなかった・・・。
けれど、亡き父そっくりの口もとのその青年の後ろには、
「それでいい・・・」と、囁く笑顔の“父”の姿を感じたような
そんな爽やかで、心に残るいい葬儀だったそうだ・・・。


コメント
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