グローバル・スタンダードの最高峰資格CFAとCFPを持つ完全独立のFP・資産運用アドバイザー尾藤峰男の書評ブログ

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『賢明なる投資家』ベンジャミン・グレアム著(Pan Rolling)を読んで

2010-01-13 10:17:33 | 書評
ベンジャミン・グレアムは、バリュー(割安株)投資の開祖といわれています。ウォーレン・バフェットは19歳のときこの書を読み、グレアムの講義を取ったあと無給でいいからその職場で働かせてほしいと頼み込み、バリュー株投資の精髄を学びました。以来これまでその教えを忠実に守り、世界最高の投資家といわれるまでになったのです。

バフェットはこの書の序文にグレアムがなくなったときの追悼文を紹介しています。その最後にこういってグレアムを賞賛しています。―「ウォルター・リップマンはみんなが木陰で休むために木を植えた人たちについて話した。ベン・グレアムはそういう人間なのである。」(本文引用)

この書の補遺には再びバフェットが登場し、1984年に書いたエッセー「グレアム・ドッド村のスーパー投資家たち」の中で、グレアムのバリュー投資法を実践することによっていかにして彼の門下生が株式市場で目を見張る成功を収めてきたかを示しています。そして最後にこう述懐しています。「今後も市場では、価格と価値が一致しないケースが途切れることなく生まれ、グレアムとドッドの著書を読んだものは成功を収め続ける。」(本文引用)

そしてその成否はバフェット率いるバークシャー・ハサウェイの株価を見れば明らかです。

グレアムのバリュー株投資は、本来の価値から割安になっている株式に投資する手法です。それは、「安全域」(Margin of Safety)を十分に確保して投資するといやり方です。株式の投資利回りとその社債利回りの差を安全域として、その開きが大きいほど安全域が大きく割安であり、価格下落リスクに耐えられるという考え方です。いずれその割安な状態は見直され、本来の価値に株価は戻ってきて利益を取れるというわけです。

その他にも、株式投資をする場合に大変示唆に富むことをたくさんいっています。たとえば:
・ テクニカル・アプローチは・・・ある株や市場が上がれば買って、下がれば売る、というものである。・・・ウォール街で成功するわけがない。
・ 投資家にとって最大の問題―そして最大の敵―は大抵、自分自身である。
・ 証券会社の出す株式市場予測は、単なるコイン投げの確率以下でしかない。
・ 投資家は手元資金の全部を一つの籠に突っ込んではいけない。
・ 市場が低迷しているときに勇気を持つことがいかに賢明か。
・ 一般の投資家は株価動向を予測して儲けることは不可能である。
・ 真の投資家が持ち株を売らざるを得ない状況などめったになく、そういった状況以外の時には株価を無視してもかまわない。

グレアムは、1934年に証券分析のバイブルといわれ、今も読み継がれる「証券分析」(Security Analysis)を発表しています。本書「賢明なる投資家」は、「証券分析」とともにグレアムの2大著作とされ、彼自身、1949年に初版を出版して以来、版を重ねて1972年の4版まで執筆を続けました。本書は、その第4版です。株式投資の基本にあらためて立ち帰りたい時やこれから株式投資を学びたい時に、ぜひ読んでおきたい書です。


『賢明なる投資家』ベンジャミン・グレアム著(パンローリング)



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