グローバル・スタンダードの最高峰資格CFAとCFPを持つ完全独立のFP・資産運用アドバイザー尾藤峰男の書評ブログ

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『シークレットアドバイス』フォーチュン編集部(幸福の科学出版)を読んで

2010-02-26 08:59:04 | 書評

この本は、世界トップの企業家が語った、「私の働き方」。エッセンスが凝縮されていて、いわば手っ取り早くつかめる。私なりに役に立ちそうな箇所をメモしたので、その内容を紹介したい。
 

・大切なのは、しなくていいことを決める能力-アンドリュー・グローブ、インテル創業者

・ポートフォリオマネージャーという仕事では、余分な情報をカットすることがとても重要だ。入手する情報は最小限に抑えなければならない-ビル・グロス、ピムコ最高投資責任者

・瞑想を日々の生活に取り入れるようにしている。-A.G.ラフリー、P&G CEO

・心の平成を保つ鍵は、押し寄せる情報を最小限にとどめることだ。-A.G.ラフリー

・私の求める人材は、遠慮なくものを言い、自分の頭で考えることのできる人間だ。-ジム・コリンズ、ビジョナリーカンパニー著者

・正しい人とは、最高の答えを求めて真剣に議論し、決断が下されてからは、自分の考えにこだわらずに協力して成功を目指せる人だ。-ジム・コリンズ

・決断を一つずつ積み重ね、それぞれを確実に実行していくことで、偉大な結果を生む。-ジム・コリンズ

・決断したリーダーたちは、四半期ではなく、四半世紀先まで考えていた。-ジム・コリンズ

・命令を出す人ではなく、鋭い質問をしてチームから正しい答えを引き出すような人が求められる。-リクルーター、トム・ネフ

・ホットレター(怒りや憎悪をぶちまけたメモ)を感情にまかせて書いてしまう。しかし書き終わったらいったん脇にどけて、感情が静まるのを待つ-エイブラハム・リンカーン

・交渉するときは何かちょっとしたものをテーブルに残す-ディック・パーソンズ、タイムワーナー会長

・相手の地位や役職に関係なく、ありのままの人間として信頼し、尊敬しなければならない-ハーブ・ケスレー、サウスウェスト航空創業者

・成功するリーダーの共通点-勇気があること。リーダーには、何か新しいことをはじめようという情熱や意欲が必要だ。-ケビン・シェアラー、アムジェンCEO

・リーダーは信頼されるのがいちばんだ。恐怖は率直さを殺してしまう。-ケビン・シェアラー

・リーダーは愛されるべきか恐れられるべきか-リーダーは尊敬されるべきだ。-スタンレー・オニール、メリルリンチ前CEO

・姿を見せることは、とてつもなく重要だ。メールで人を導くのは不可能だ。-ビル・ゾラーズ、イエロー・ロードウェイCEO


『シークレットアドバイス』フォーチュン編集部(幸福の科学出版)


『わかる! 使える! 広報活動のすべて』山見 博康著(PHPビジネス文庫)を読んで

2010-02-25 09:22:41 | 書評
この本は、広報コンサルティングのエキスパートが書いた本だが、大変古典に造詣が深いようで、章の頭には、かならず偉人の薫陶が書かれていて、奥行きがある。

一方で、本の内容がすべて図解されているのも、大きな特徴だ。小生の読み方は、こういう場合、図のほうをよく見て本文は要点をつかむ程度にしている。そのため非常に早く読める。一時間程度でOKだ。

内容について、小生は特に広報活動を突っ込んで学ぼうとは考えていなかったが、ここでいわんとしていることは、特にテクニックなど小手先のもので広報はできないということだ。

「広報は、崇高にして典雅なるもの、人間を作る。」「広報は、自分のあり方と人との付き合い方の原点を学ぶこと」いわば、人の生き方が広報にも深く入り込んでいるという。そういう意味で、この本はあらゆる人に、広報という活動を材料に、人の生き方を学ばせる本といえるのではないか。

付け加えると、インターネットサイト関連図も掲載されていて、最も新しい状況がつかめるのも便利だ。全体的に大変丁寧に書かれた本だ。

『わかる! 使える! 広報活動のすべて』山見 博康著(PHPビジネス文庫)


『ジュリアス・シーザー』シェイクスピア著(光文社文庫)を読んで

2010-02-24 08:33:08 | 書評

「おまえもか、ブルータス。」と叫び、絶命するシーザー。有名な場面だ。

権力を握ろうとするシーザーを秘かに嫉妬するブルータス、盟友と思っていたものから裏切られたときのシーザーの最後の叫び。目に浮かぶような光景だ。

だが、ここが劇の最後ではない。これからが本番だ。シーザーを深く慕っていたアントニーは、これから権力を握ろうとするブルータス一味から抹殺されることを巧みに避け、その一員として装いながら一人秘かにブルータス一味への復讐を決意する。ローマ市民の前で演説し支持を募るブルータスのあとに立ったアントニーは、最初はブルータスへの支持を装いながら、巧みな演説で、終いにはローマ市民にシーザーを殺したアントニー一味への反攻へと動かす。

そこまで持っていく弁舌のすばらしさは、何度読んでも圧巻だ。またそれに次第に動かされていく大衆の心理は、その変化を見ていると今の世にも通じる面白さだ。

シェイクスピアの名作、ジュリアス・シーザー。そのなまえはだれもが知っているが、ここでもう一度親しくこの名作でその人物に触れてみるのもいいだろう。


『ジュリアス・シーザー』シェイクスピア著(光文社文庫)

『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン著(翔泳社)を読んで

2010-02-23 09:59:18 | 書評

このタイトルは、以前から気になっていた。なにかゲーム理論的な言葉で、それに関するものかと思っていたが、かなり違った。企業の発展にかかわる根本的な問題を解決する、新発見的な理論だ。これは、特に大企業の新たな発展への機会を明確に与えるものだ。

というのは、業界のトップ企業が、あらたな破壊的イノベーションを行うことはその構造上非常に難しいものがあり、それを意識して注意深く経営に当らないとあっという間に下からの新規参入の圧力に、後退を余儀なくされるという図式が認められるというのだ。

既存のバリューネットワークであらたなイノベーション的プロジェクトを検討すると、その価値判断が既存製品やプロジェクトのコスト・収益構造で判断されるため、適切な判断が難しいという。また、多くは顧客サーベイなどを判断材料とするため、いわば海のものとも山のものともわからないものに顧客の判断を入れることにより、そのプロジェクトを却下するというように判断を誤る。また、既存のバリューネットワークでイノベーション的プロジェクト検討を行うため、きちんと確立されすぎたプランができて、思わぬ高コストになって、途中で中止を余儀なくされる。

それらに対してどう対処するかが、ここで突っ込んで研究され論じられている。ハードディスク製品のイノベーションと企業の盛衰、掘削機業界でのケーブルから油圧技術の破壊的イノベーション、今後起こるであろうガソリンから電気への自動車エンジンの移行などについて、具体的事例で述べている。

要は、破壊的イノベーションのプロジェクトは、既存のバリューネットワークでなく、破壊的バリューチェーンすなわち機動性あり柔軟性ありコストを抑えて、別組織・別会社組織で行い、需要はオンゴーイングで創出、発見していくというスタイルが望ましいということだ。実はこれはかなり目からうろこなのだ。大企業は、往々にしてこの落とし穴にはまる。

この書は、企業がすさまじい技術の発展に如何に勝ち抜いていくか、イノベーションを如何に効率的に取り込んで新陳代謝を高めていくかの大きなヒントを与えているといってよいだろう。



『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン著(翔泳社)



『ルポ貧困大国アメリカ』堤未果著(岩波新書)を読んで

2010-02-22 08:37:20 | 書評

この本は、在住日本人が足を使い、アメリカの貧困がどうして進んだか、そしてその現状について徹底的に調べ上げた本だ。この本を読むと、日本も格差が広がっているが、アメリカはさらにそれが進んでいるのがよくわかる。


・レーガン政権以降、国内の所得格差を拡大させている市場原理主義は、中間層を消滅させ、下層に転落した人々が社会の底辺からはいあがれない仕組みを作り出したという。

・アメリカは肥満大国といわれているが、その原因は貧困だ。家が貧しいと、スーパーで食料品を買ってくるより、毎日の食事が安くて調理の簡単なジャンクフードやファーストフード、揚げ物が中心になってくるため、どうしてもカロリーが多くなり、肥満につながる。

・アメリカ政府は、自己責任という言葉の元に医療費の国民負担率を拡大させ、自由診療という保険外診療を増やした。そのため、医療費は世界一高くなり、一度の病気で中間層の人たちが貧困層に転落してしまう。出産費用が高いので、日帰り出産が年々増えているという。入院出産すると15000ドルが相場という。

・貧困層をターゲットとする軍の徴兵の仕組みは、社会的に非常にシステム化している。教育ローンの肩代わり、若い人たちへの学費免除、入隊すれば医療保険というような釣る仕組み。必然的に所得の低い層が、軍への入隊に応じ、イラクやアフガニスタンに派兵されるようになる。

・戦争まで民営化され、ワーキングプアがどんどんイラクなど戦地でのトラック運転手などに派遣される。ハリバートンなど民間の戦争請負会社が、貧困層をターゲットにして低賃金で派遣し、潤う構図だ。

これらは、『暴走する資本主義』でも主張している、行き過ぎた市場原理主義に対する警鐘あるいはゆり戻しの考え方が大いに必要な時期に来ていることを体現しているといってもいいだろう。

行き過ぎた市場原理主義といえば、まさにリーマンショックでそれが現実化した。



『ルポ貧困大国アメリカ』堤未果著(岩波新書)



『ゲーテ格言集』ゲーテ著(新潮文庫)を読んで

2010-02-19 09:44:51 | 書評

小生は、ゲーテについて正直に言って、あまり知らないというしかありません。たまたま目に留まったこの本をさっと見て、これなら簡単にゲーテのエッセンスがつかめるなと考え、文庫本でもあり、手軽に購入しました。

読んでもまだあまりゲーテの思想がわかったとはいえませんが、そのいっている言葉の中には、至言、生き方を示す意味深いものが沢山あります。ここで、その中からさらに抽出して、紹介します。これでも選び抜いたのですが、まだ長いですね。


なお今日は、本文の終わりに、マネー月刊誌・日経マネーのアンケート募集の案内を載せています。回答すると集計後の全データが見られるそうです。プレゼントも用意されているとのことですので、よろしければどうぞ!!



・ 一人の人を愛する心は、どんな人をも憎むことはできません。

・ 節度を保ち、不自由を忍ばねば、手に入れることのできぬものもあります。

徳はそれだと申します。

徳とは縁続きの愛も同様です。

・ すべての階級を通じて、一段と気高い人はだれか。
  どんな長所を持っていても、常にこころの均衡を失わぬ人。

・ 君の胸から出たものでなければ、
人の胸を胸に引き付けることは決してできない。

・ 「よく見ると、およそ哲学というものは、常識をわかりにくいことばで表したものに過ぎない。」

・ 仕事の圧迫は心にとってきわめてありがたいものだ。その重荷から解放されると、心は一段と自由に遊び、生活を楽しむ。仕事をせずにのんびりしている人間ほど惨めな物はない。そんな人はどんなに美しい天分もいとわしく感じる。

・ 仕事は仲間を作る。

・ 利己的でない好意的な行いが、もっとも高い最も美しい利子をもたらす。

・ 誠実に君の時間を利用せよ!
  何かを理解しようと思ったら、遠くを探すな。

・ 人間は現在を貴び生かすことを知らないから、よりよい未来にあこがれたり、過去に媚を売ったりする。

・ しっかり立って、身のまわりを見よ。
有能なものに対して、この世界はだまっていない。
何で永遠のなかにさまよい出る必要があろう!
自分の認識することは、手につかむことができる。

・ 勇気を失ったのは―すべてを失ったことだ!
生まれなかったほうがいいだろう。

・ どんな地位であっても、実行、あるいは忍耐によって貴くし得ないような地位はない。

・ 人が君の議論を認めない場合も、忍耐を失うな。(コーランから)

・ 人間だけが不可能なことをなし得る。

・ 喜んで事をなし、なされたことを喜ぶ人は、幸福である。

・ 苦しみが残していったものを味わえ!
苦難も過ぎてしまえば、甘い。

・ 孤独はよいものです。自分自身と平和のうちに生き、何かなすべきしっかりしたことがあれば。

・ 何人も他のものと等しくあるな。だが、みな最高のものに等しくあれ。
どうしたら、それができるか。みなめいめい自己の内部で完成されてあれ。

・ 「真に神を愛するものは、神からも愛されることを願ってはならない」-スピノザ

・ ひとつのことを正しく知り且つ実行することは、百通りのことを半ばにやるより、高い教養を与えるものである。

・ 人が実際の値打ち以上に思い上がること、実際の値打ち以下に評価すること、ともに、大きな誤りである。

・ だれでも、人々が自分を救世主として待望しているなどとは思わないでくれ!

・ 自分を他の人の立場におけば、我々がしばしば他の人に対して感じる嫉妬や憎悪はなくなるだろう。また他の人を自分の立場においたら、高慢や独りよがりは大いに減ずるだろう。

・ 始終自分を他の人と同列に置こうとばかりしなかったら、人々はお互いにもっとよく知り合うだろう。

・ 豊かさは節度の中だけにある。

・ 有能な人は、常に学ぶ人である。

・ 人は何を取りあげ、操作するにせよ、個々の人間としては充分ではない。有為な人間はすべて相互に関係しあわなければならない。

・ 財布の紐をがっちり引き締めている人に対しては、愛想の示しようもない。
得ようと思ったら、先ず与えよ!

・ 支配することは容易に学び得られる。治めることは学び難い。

・ 最善をなそうと思ったら
  自分自身に安住しないで、
  名人の心に従え、
  名人とともに迷うのは得るところがある。

・ 真の弟子は、知られたものから知られざるものを発展させることを学び、かくして師に近づく。

・ 絶えず努めて倦まざる者を
われらは、救うことができる。


・ 結局われわれはどう立ちまわって見ても、みな集合体なのだ。・・・われわれはみな先人からも同時代人からも受け入れ且つ学ばねばならない。最大の天才でさえも、自分の心だけに頼ろうとしたら、大したことはできないだろう。・・・要は、大きな意欲を持ち、それを成就するだけの技能と根気を持つことだ。

・ 暑さ寒さに苦しんだものでなければ、
人間の価値などわかりようがない。

・ 大衆がためらいつつうろうろする時、
敢然と行うことを忘れるな。
心得てすばやくつかむ気高いものは
どんなことでもなしとげることができる。


・ ブリテン人よ、諸君は理解した、
活動的な心、制御された行為、急がぬ不断の努力を

・ 種をまくことは、取入れほど困難ではない。

・ はるかな世界と、広い生活を、
  長い年々の誠実な努力で、
絶えず究め、絶えず探り、
完了することはないが、しばしばまとめ、
最も古いものを忠実に保持し、
快く新しいものをとらえ、
心は朗らかに、目的は清く
それで、一段と進歩する。

・ 内的な生活は外的生活によってのみ刺激されます。生活の髄を干からびさせるような冷ややかな思索によってではありません。

・ 真剣さなくしては、この世の中で何事もしとげることができない。教養のある人と呼ばれる人たちの間に、真剣さはほとんど見出されない実情である。

・ 人を知らねばこそ、人を恐れる。
  人を避けるものはやがて人を見そこなう。

・ 目標に近づくほど、困難は増大する。

・ どんな賢明なことでも既に考えられている。それをもう一度考えてみる必要があるだけだ。

・ 我々には理解できないことが少なくない。
生き続けて行け。きっとわかって来るだろう。

・ 朗らかな心で私は理解したいと願う、
目と耳の提供するものを。

・ 人がわたしたちのところに来るのでは、その人を知ることはできない。人がどういうふうであるかを知るためには、私たちはその人のところに行かなくてはならない。

・ 理解していないものは所有しているとはいえない。

・ 世の中では、人間を知るというのではなく、現在目の前にいる人より利口であるということのほうが関心事である。年の市や露天商がそれを証拠立てている。

・ 我々に恩を受けている誰かに会うと、我々はすぐにそれに思いつく。我々が恩を受けている誰かに会って、そのことに考え及ばぬことが、どんなにたびたびあることだろう。

・ 忘恩は常に一種の弱点である。有能な人で忘恩だったというのを、私はまだ見たことがない。

・ 人々は人間を実際以上に危険だと思いがちである。

・ 何かを非難するには、私は年をとり過ぎている。
だが、何かをなすだけの若さは、いつでも持っている。

・ 正直であることを私は約束できる。しかし不偏不党であることは約束できない。

・ ランプの燃えるところには、油のしみがあり、ろうそくの燃えるところには、燃えさしがある。ひとり天の光は清く輝いて汚点をとどめない。

・ 優れたものを認めないことこそ、すなわち野蛮だ。

・ 時を短くするは何ぞ?
活動!
時を絶えがたく長くするは何ぞ?
怠惰!
負債に陥れるは何ぞ?
手をこまねいて待つこと!
利益をえしむるは何ぞ?
長く思案せぬこと!
名誉に導くは何ぞ?
おのれを守ること!

・ 批評に対して自分を防衛することはできない。これを物ともせずに行動すべきである。そうすれば、次第に批評も気にならなくなる。

・ 人はだれとでも一緒に暮らすことを望まない。従ってだれのためにでも尽くすというわけには行かない。そのことをよく弁えるものは、自分の友を尊重することを知るであろうし、自分の敵を憎んだり迫害したりしないであろう。むしろ自分の敵の長所を認めることができるなら、それより大きな利益は容易に得られない。これによって、敵に対し決定的な優位が与えられる。

・ すべてをすぐにさぐろうとするものがあろうか!
雪が溶ければ、ひとりでに見つかるだろう。


・ 気持ちよい生活を送ろうと思ったら、
  済んだことをくよくよせぬこと、
  めったなことに腹を立てぬこと、
  いつも現在を楽しむこと、
とりわけ、人を憎まぬこと、
未来を神にまかせること。

・ あせることは何の役にも立たない。
後悔はなおさら役に立たない。
前者はあやまちを増し、
後者は新しい後悔を作る。

・ 敵の功績を認めることより
大きな利益を私は名づけ得ないだろう。

・ 耳あるものは聞くべし。
金ある者は使うべし。



『ゲーテ格言集』ゲーテ著(新潮文庫)



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『学問のすヽめ』福沢諭吉著(岩波文庫)を読んで

2010-02-18 08:28:57 | 書評

明治五年二月に出版された「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」で始まるこの書は、全17編で構成され、各編として明治九年十一月まで、発刊された。

初編は20万部を発行し、その後の16編をあわせて340万部が国中に流布したとされる。本書あとがきで小泉信三は、この書は「古来稀有」のものであったことは争いがたく、その如何に当時の人身を動かしたかは、察するに余りあるものがあると、述べている。

出版されると、大変な反響を呼びながらも、新奇で満語放言だとして攻撃罵詈の頂上を極めたという。

この書を読んで感じるのに、開国後の間もないとき、明治維新後立国のただ中で人心や体制が不安定な中、非常に重要なタイミングで思想的バックボーンが社会に出てきたということだ。

インドや中国が列強の植民地になりさがり、日本は着々と先進国の仲間入りに向かったその差は、このようなしっかりとした思想的バックボーンによるところが非常に大きいのではないかとあらためて思う次第だ。



原文のまま、印象に残った箇所を引用する。


・ 天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず(初編)

・ 学問をするには分限を知ること肝要なり。その分限とは、天の道理に基づき人の上に従い、他人の妨げをなさずして我一身の自由を達するなり。自由と我儘との界は、他人の妨げをなすとなさずるとの間にあり。(初編)

・ 人民もし暴政を避けんと欲せば、速やかに学問に志し自ら才徳を高くして、政府と相対し同位同等の地位に登らざるべからず。これすなわち余輩の勧むる学問の趣意なり。(二篇)

・ 正理を守って身を棄つるとは、天の道理を信じて疑わず、如何なる暴政の下に居て如何なる過酷な法に苦しめらるるも、その苦痛を忍びて我志を挫くことなく、一寸の兵器を携えず片手の力を用いず、ただ正道を唱えて政府に迫ることなり。(七編)

・ 開闢の初には人智未だ開けず。・・・人智愈々開くれば交際愈々広く、交際愈々広ければ人情愈々和らぎ、万国公法の説に権を得て、戦争を起こすこと軽率ならず、経済の議論盛んにして政治商売の風を一変し、学校の制度、著書の体裁、政府の商議、議員の政談、愈々改むれば愈々高く、その至るところの極を期すべからず。(九編)

・ 学問をするにはその志を高遠にせざるべからず。・・・およそ世の事物これを得るに易きものは貴からず。物の貴き所以はこれを得るの手段難ければなり。(九編)

・ 粗衣粗食、寒暑を憚らず、米も搗くべし、薪も割るべし。学問は米を搗きながらもできるものなり。人間の食物は西洋料理に限らず、麦飯を喰い味噌汁を啜り、もって文明の事を学ぶべきなり。(十編)

・ 学問の要は活用にあるのみ。活用なき学問は無学に等し。(十二編)

・ 人望は固より力量に由って得べきものに非ず、また身代の富豪なるのみに由って得べきものに非ず、ただその人の活発なる才智の働きと正直なる本心の徳義とをもって次第に積んで得べきものなり。(十七編)

・ 顔色容貌の活発愉快なるは人の徳義の一箇条にして、人間交際においてもっとも大切なものなり。人の顔色は、なお家の門戸の如し、広く人に交わりて客来を自由にせんには、先ず門戸を開けて入り口を洒掃し、兎に角に寄付きを好くすることこそ緊要なれ。(十七編)

・ 凡そ人心の働き、これを進めて進まざるものあることなし。その趣は人身の手足を役してその筋を強くするに異ならず。されば言語容貌も人の心身の働きなれば、これを放却して上達するの理あるべからず。(十七編)

・ 栄養は食物の本色なり。過食はその弊害なり。人間交際の要も和して真率なるに在るのみ、その虚飾に流るるものは決して交際の本色に非ず。(十七編)

・ 人に交わらんとするにはただに旧友を忘れざるのみならず、兼ねてまた新友を求めざるべからず。・・・試みに思え、世間の士君子、一旦の偶然に人に遭うて生涯の親友たるものあるに非ずや。十人に遭うて一人の偶然に当たらば、二十人に接して二人の偶然を得べし。(十七編)

・ 人類多しといえども鬼にも非ず蛇にも非ず、殊更に我を害せんとする悪敵はなきものなり。恐れ憚ることなく、心事を丸出しにして颯爽と応接すべし。故に交わりを広くするの要はこの心事を成る丈沢山にして、多芸多能一色に偏せず、様々の方向に由って人に接するに在り。・・・人にして人を毛嫌いすることなかれ。(十七編)



『学問のすヽめ』福沢諭吉著(岩波文庫)を読んで


『カーネギー自伝』アンドリュー・カーネギー著(中公文庫)を読んで-No.2

2010-02-17 08:40:02 | 書評

昨日のNo.1に続き、カーネギーの名言・至言をご紹介する。


・ 事業の上で成功する根本の原則は価格ではなくもっと重大な仕事の質にある。

・ 自分の作業をもっとも厳重に検査し、安全なものを作るか、そうでなければ手をつけないという方針を厳守した。

・ 契約を獲得したいなら、それが結ばれる時、その場にいなさい。

・ 西部に一人老人がいたが、この人は不幸な一生を送り、背負われるあらゆる疾病を一身に集めたといってよいほどだった。隣近所の人たちが彼に同情すると、彼は「そうです。おっしゃるとおりなんですよ。私の一生は本当に苦難の道でした。しかし、不思議なことがひとつあるんです。そのうち十中の九は、ほんとうはなかったんですよ。」と答えた。

・ 私の所信によると、何事によらず目覚しい成功に至る真の道は、自分でその道を完全に習得することである。

・ 大事業というものは、厳しい誠実さの上にだけ築き上げられるもので、それ以外の何も要求しないのである。

・ 「神の国は汝のうちにあり」というキリストの言葉。天国は過去にでもなく、また将来にでもなく、現在、ここに私たちのうちにある。私たちのなすべきすべての務めは、この世にまた現在にあるのであって、未来にあるのを望んでそれを捉えようとあくせくするのは無駄だ。

・ 自分の自然のままに話しなさい。自分の思っていることをそのとおり言う。演説の要諦である。

・ 受けるよりも与える方がもっと幸せなのである。

・ 「『なんですか。そんなにかんかんになって、小さな人間よ。』と星が言っている-エマソン」と自分にいって聞かせているが、それだけで十分効果がある。



『カーネギー自伝』アンドリュー・カーネギー著(中公文庫)


『カーネギー自伝』アンドリュー・カーネギー著(中公文庫)を読んで-No.1

2010-02-16 08:51:28 | 書評

カーネギーといえば、その名前は誰でも知っているアメリカの立志伝中の人物だ。現在の富豪の慈善的行為の発祥ともいえる活動を行った。19世紀前半にスコットランドに生まれ、生活苦から、一家とともにアメリカに移住し、10代半ばに木綿工場の糸巻き工として働き始め、鉄鋼王にのしあがった典型的なアメリカンヒーローだ。

その彼の自伝には、驚くほどの至言、名言が書き込まれている。いわば、人生を生き抜く上での支えともなりうるものだ。これらを、これから2回にわたり書き連ねていこう。


・ 明るい性格は、財産より尊い。

・ 私の成功は、私が物事を知っていたからとか、私自身でやったとかに帰すべきものではなく、むしろ、私よりも物事をよく知っている相手を見つけそのような人たちを選ぶ才能に帰すべきなのだ。

・ 機会をその場で捉えないのは間違いである。

・ 公開の場で話をするについての2つの掟
1. 聴衆の前で固くならずに、くつろいで、お説教をするのではなく話しかけること
2. 誰か自分以外の人物になろうとせず、自然に、また美句麗句を使わないこと。

・ 少年はみな、自分の仕事の領域を越えて、何か大きなことをめざすべきである。何か上司の目に留まるようなことをやるべきである。

・ 私は危機に直面したときに、必ず誰かが救いの手を伸ばしてくれることを信じて疑わない。世間には、たくさん親切な、すばらしい人たちがいる。援助に値する人を探し求めているのである。

・ 貧しい人、困った人にしてあげた仔細なこと、親切な言葉などが、思いもよらなかったような大きな報酬をもたらすのだった。

・ 私はいつも自分の好きなときに眠ることができた。

・ 私は必ず何か新しいことを学ぶように心がけた。この学ぶ喜びに私は毎日新しい生きがいを感じていた。

・ 私は声の調子をやさしく、どんな場合にも礼儀正しく、丁重な態度を保持するのがよいということを学んだ。

・ 私たちが本当に働く人のことを思い、心を配っているなら、彼らは十分応えてくれるのである。類は友を呼ぶのである。



『カーネギー自伝』アンドリュー・カーネギー著(中公文庫)


『「豊かさ」の誕生-成長と発展の文明史』ウィリアム・バーンスタイン著(日本経済新聞出版社)を読んで

2010-02-15 08:18:57 | 書評

この著は、秀逸だ。著者バーンスタインが3年かけて著した書だが、それだけかかるのが十分わかる内容だ。バーンスタインは米国の投資アドバイザーで、個人投資家がもっとも信頼する投資情報ウェッブサイト efficientfrontier.comを運営している。ウォールストリートジャーナルなど著名な投資メディアや理論誌にも、たびたび登場してくる。

この書が秀逸なのは、その歴史スペクタクルと人間が豊かになった過程への洞察力だ。またそれを論じるうえでの歴史的事実や統計的数値(2000年をさかのぼり、これを得るのはかなりむずかしいだろう)が深みを一段と与え、読む人に吸収することへの新鮮さと喜びを感じさせるのだ。

この書が解き明かそうとしているのは、ただひとつ-なぜ、1820年頃に世界経済の成長と、その前提となる技術革新が、爆発的に起こったのか?-ということだ。そして、国家の経済が成長し、国民の富が全体で増えていく条件を明かす。なぜ、国家が衰退し、あるいは何百年にもわたってある地域(たとえばラテンアメリカなどスペイン圏)はぱっとしないのかということまで、見通そうとしている。その過程では、古代ギリシャ、ローマ、オスマントルコからイスラム圏、日本、オランダなどあらゆる地域が、その歴史の中で登場してくる。

著者が主張するところでは、国民経済が継続して成長するには、以下の4条件が必要だという。

・私有財産権
・科学的合理主義
・近代的資本市場
・迅速な通信手段と輸送手段

この4条件が1820年頃にイギリスで充足され、ダムが決壊するように産業革命が起こり、それ以降の人類史上例のない急速な成長を遂げるに至っているとしている。

それまで紀元ゼロ年からの1800年間は、世界経済はほとんどゼロ成長だったという。その後1820年から2000年まで2%成長を続けているとのことだ。これを我々は当たり前のように思っているが、実は、人類史上なかったまさに爆発的な成長なのだ。この間の経済データがおもしろい。紀元ゼロ年からの世界全体の一人当たりGDPやその成長率が出ていたり、1200年からのヨーロッパの金利推移、1500年当時の世界各国の人口密度など、そうだったのかと思わせる興味深いものが盛りだくさんだ。

ニュートンやガリレオが出てきたり、プトレマイオスの天動説モデル、マルティン・ルターも出てくる。ワットの蒸気機関の説明図、イギリス産業革命の発端の起源ともいえる「ミュール紡績機」の発明などなど、科学と文明の大スペクタクルだ。

中身の説明は、ここでは長くなるので少しだけ・・・。

1.農業は、経済を発展することにはならない。農業人口の余剰労働力が、他産業にまわり経済を成長させる。
2.宗教が、1800年にもわたり経済成長を抑えていた。
3.スペイン圏にあった南米地域がいまだに経済成長が遅いのは、植民地時代にスペインが収奪型統治を行っていて、財産権の保全が行き届かなかったこと(これがDNAとして残った)が大きい。
4.豊かさが幸せをつくるのであり、幸せが豊かさをつくるのではない。

知識や教養を深めるための書としては、最高の情報を提供してくれる。データ集めやそこからの踏み込みに専門外のところもあったと推測するが、ほとんど取り付かれたようにこの書に取り組んだであろうことは、容易に想像できる。



『「豊かさ」の誕生』成長と発展の文明史』ウィリアム・バーンスタイン(日本経済新聞出版社)