グローバル・スタンダードの最高峰資格CFAとCFPを持つ完全独立のFP・資産運用アドバイザー尾藤峰男の書評ブログ

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『ジム・ロジャーズ 中国の時代』ジム・ロジャーズ著(日経新聞出版社)を読んで

2009-02-27 07:41:12 | 書評
よくここまで1人の人間で書けると感心してしまうほど、データを豊富に使いさまざまな面から分析を進めている。どうしてここまで調査できるのか不思議なくらいだ。

ジム・ロジャーズはクォンタム・ファンドで一生困らないほどの財を成し、その配当だけでニューヨーク・マンハッタンで暮らしていたのだが、根っからの冒険好きからオートバイと黄色いベンツ(こちらは奥さんと2人で)で世界一周を2回成し遂げている。両方とも本になっている。

とにかく、130カ国以上の世界中の国々を見ている著者であるから、その見方は鋭いし現実味を持って、われわれにかかってくる。中国もくまなく回りその途中で中国株にも投資しているのがいかにも彼らしい。彼に言わせれば、中国株に投資した外国人は自分が初めてだろうといっている。そのときの店頭売買の光景をみると、これぞ本当の店頭というようなものらしく、それもうなずけるというものだ。

彼の中国への入れ込みようは、その娘へ中国語を習わせ、北京語ができるメイドを雇い、シンガポールに移住した(中国でないのが面白いが)ということでもわかる。とにかく21世紀は中国の時代というのである。しかも長期の視点にたっての見方であり大きな流れを捉えた見解には、かなり説得力がある。

『ジム・ロジャーズ 中国の時代』ジム・ロジャーズ著(日本経済新聞出版社)

今回の世界株安は、百年に1回ではなく4000年に1回!!

2009-02-26 07:44:36 | 投資
今回の経済危機は、百年に一度の危機とほぼ定着していわれるようになってきたが、どうもその程度のものとして捉えない方がいいようだ。

標準偏差(σ-シグマ)という概念を使ってこの1年の変動幅を見てみると、どうも常識の範囲をはるかに超え、3.5標準偏差あたりまで行っている事態なのである。これを数字で表せば、0.025%の確率で起きたということになる。もっとわかりやすくいえば、1万年に2.5回、4000年に1回の確率で起きたというレベルなのだ。

毎日この下げ幅を見ていると、なにやら溶け込んでいるような感じでそれほど異常な事態という感覚を持たないのがまたおかしいが、このような見識で見ているとまた違った景色に見えてくる。現在の状況を如何に見るかで今後の行動がずいぶん違ってくるが、百年に1回の危機をチャンスというのであれば、4000年に1回のチャンスと見れば、ずいぶん違ってくるというものだ。

日経新聞“私の履歴書”-ドトールコーヒー鳥羽氏の人生

2009-02-25 10:16:15 | 投資
もうすぐこの連載は終わるが、大変参考になった。ものすごく正直な人生を歩まれた方だ。利益を考えているのではない。人間、お金のことばかり考えて商売やっていたら碌なことはないということがよくわかる。

要は、人のために役に立つ。社員を大事に、得意先を大事に、フランチャイズオーナーを大事に、世の中の役に立つにはどうしたらいいかを真剣に考えれば、無限の可能性があるということだ。

人は、本当によいと思えば、動かされる。最初は無理難題の様でもそれが本当の信念に基づいていっているものであり、世の中のため役に立つものであれば人は必ず動くものであるということがよくわかる。労働組合の結成を外部から働きかけられ、その幹部に必死の思いで経営哲学を説明し社員に対する気持ちを切々と説いた。そしてわかってもらったという。そういう中の1人に銀座の一等地に土地を持つ三愛のオーナーもいたそうだ。そしてその方は、逆に鳥羽氏に惹かれ、その銀座の一等地にはドトールがある。

そのうち本にもなるだろうが、これはぜひ読んでおくことをお勧めする。

ノーベル経済学賞受賞のクルーグマン博士の最新コメント

2009-02-24 07:51:07 | 投資
本日のアメリカのバロンズ・オンラインに、クルーグマン博士の現在の金融危機の現状と今後の見通しについてのコメントが掲載されていた。少しそれをここに上げてみる。

・ 今回の危機で聞いたもっとも賢いことは、日本のエコノミスト、リチャード・クーのコメントだ。かれは、今回の危機は、住宅危機ではなく、バランスシート危機だといち早くコメントしていた。

・ 今後3年間の2.9兆ドルの生産高不足と8000億ドルの経済刺激策のギャップは大きな問題だ。その理由は、経済がデフレの落とし穴に陥る危険があるからだ。そして、バランスシート問題は拡大する。

・ 日本の失われた十年は、こちらでも同じことが起きる可能性は充分あり、さらにそれが悪くなることもありうる。

・ 経済と政治の罠:デフレ懸念、沈滞する経済による低い投資と高い貯蓄率により、政府の施策が借り入れ増大と刺激はしたがうまくいかないのではという懸念をもたらし、この罠がおきうる。

・ アメリカは、貯蓄の国になりつつある。1980年代は9%貯蓄率があった。

・ 住宅価格は、まだ平均以上の水準にある。まだ反転しないだろう。

・ 株式価格水準は、歴史的には平均水準にあり、大きな反転があるかははっきりしない。

・ 最近読んだ本では、この危機とは関係ないが、ダン・コッペルの“バナナ:世界を変えた果物”がお勧めだ。グローバリゼーションがわかりやすく書いてある。

『世界トップクラス営業マンの1年の目標を20分で達成する仕事術』林正孝著(大和書房)を読んで

2009-02-23 07:58:55 | 書評
この本は、一言でいうとすごい。私が知る限りでは、営業のやり方として独創的でこれまであまり聞いたことがない。発想がユニークそのものだ。しかしそれでいて奇を衒ったような小手先を使った営業手法ではない。営業とは何たるかと問えば、おそらく著者は、お客様に役に立つ付加価値のある情報を伝えるものと答えるのではないか。1時間程度で気楽に読める本ではあるが、そこから得られるものは余りあるものだ。小生もぜひ実行に移したい。

・ お客様は、私が話す保険の話より、保険を商売とする人間の体験談に興味がある。
・ 「私を信じていただけますか」が契約の基準
・ 「任せるのだったらすべて任せてください。私に任せるかどうかを決めてください。」
・ 契約が決まるパターンは、「任せていただけますか?」という私の問いに「じゃあ、林さんに任せるよ」と言ってくれるとき。
・ あるときは海外での経験を話し、あるときは映画から学んだことを話し、そしてある日、契約が結ばれる。「私に任せていただけますか」「うん、すべて任せよう」
・ 自分が体験してきたことを「お客様に喜ばれる情報」として語れる人は、世の中それほど多くない。
・ 私の場合は、すべての体験を自分の付加価値にしている。付加価値にするため体験しているといってよい。「ベトナム視察、ニュージーランド不動産購入、アフリカ、アラスカ視察、バンジージャンプ、ミグ21体験など」
・ 経営者にとって、インターネットの情報は全く意味がない。だから私は、実際に現地へ行って体験している。ここが私と他の営業マンの決定的な違いだ。お客様の役に立つ人間だから、「林の話を聞きたい」と思ってもらえる。
・ まずは、自分のお客様(となってくれそうな人)がどんな情報を求めているか察知すること。察知したら、行動に移すこと。そして体験したことを自分のことばで語れるようになると、お客様は自然に集まってくる。
・ 私は、“営業は人間力”だと昔から考えている。目に見えない商品は、売る人によって売上に大きく差が出る。
・ お客様がファンになってくれるような人間とは、①自分に有益な情報(生きた情報)をもたらしてくれる人間 ②経営の話ができ、耳の痛いことも正直に言ってくれる人間
・ 性悪説をベースに経営理念を構築している社長とは韓非子を知らないと意志の疎通はできないし、性善説がベースの社長とは孔子を知らないと会話は弾まない。
・ ブランドイメージを壊す契約は「断る」勇気をもつ
・ そのときは「せっかく取ってきたのに」と思ったが、今となっては“断る営業”はすごく生かされている。
・ お客様が私と会うことで、最も付加価値を感じられるのはなんだろうかと真剣に考えてしっくりきたのが、「人がやったことがないことをやっている人間」「人が持っていない知識を持っている人間」これがファン作りのために出した結論だ。
・ コミットメントが成功サイクルをつくる。逃げ道を断って自分を高める。コミットメントをすると「その数字を達成するにはどうしたらいいか」しか考えなくなる。
・ 「決めたことはできる」という体験を積むと、成功のサイクルができてくる。
・ 宣言しないと目標を達成することはできない。
・ 「買ってもらおう」と思わなければ強気になれる。
・ 手ぶらの旅を通してあらためて思うのは、コミットメントしている人間、腹を決めている人間がいかに強いかということだった。
・ 特にマニュアルや義務感で働いている人間は、コミットメントした人間には絶対に勝てない。
・ それは、常にクロージングを決め、それを実現することにだけ集中して動いているからだ。
・ 「自分の枠を取り払え」と話しながら、人間とは弱いもので、私も時間がたつと、いつの間にか自分のフィルターにかけている。成功者に学ぶのであれば、いいとこ取りではなく「全部取り」をまずしてみる。うまくいっていない自分が判断するなんて、ロジック的にもおかしな話だ。
・ 時間を無理やり作ってでも、研修は受けた方がいい。自分だけ、仲間だけ、社内だけでは限界がある。
・ 次のステップに移るには「違和感が必要だ」居心地が良いところにいると、そこから成長することはない。だから、つねに居心地の悪い場所、違和感を覚える場所に身を置く。
・ 自分の枠組みだけで考えるようになると、いつも間にか、安全領域内だけで働く人間になってしまう。自分を違和感ある場所に置くことは、こうした意味でも有効である。
・ アウトプットすると、またインプットできる量が増える。さらに多くのことを吸収できる準備ができる。また、アウトプットすることによって、自分の感じ方も違ってくる。心が動いたことは記憶せず、すぐ人に話す。
・ 体験したことは必ず、ビジネスに落とし込む。
・ 視点が違えば感じ方が異なる。これが「事実」と「現実」の違いだ。
・ 自分のモチベーションがものすごく高いときに話すのと、すごく腰が引けて早く帰りたいと思っているときに話すのとでは、同じことを言ったとしてもお客様への伝わり方は全く違ってくる。
・ 要するに、コミットメントした瞬間に行かないと、物事は何も進まない。決断した瞬間に動かないと一生始まらない。
・ すべての体験は、ビジネスに結びつく。何をするにも視点を持ってやる。
・ どんなときでも一番考えるのは、「お客様や相手が何を欲しているか」
・ 相手によって話し方は変える。社長の場合、従業員の場合では欲していることは違う。
・ 10年越しでなかなか契約に至らない先に、アラスカの話をして、話の最後にひとこと、「ところで、そろそろ決算じゃありませんか?」これで決まった。
・ お客様の話にはとことん突っ込んだ。その代わり喧嘩をすることもあった。真剣に話をすればするほど、いい合いになったりすることもあった。
・ プロはごまかすわけでもなく、だますわけでもなく、いとも簡単にお客様を誘導できる。同じような営業トークでも、ほんの一言変えたり、視点を少し変えてあげるだけで誘導できてしまう。
・ 営業の仕事にも基本はある。相手に対してどう対応したら早く打ち解けられるか、タイプによって共感される接し方があるとか。それを数多く経験して、学ぶ必要がある。
・ 人の話は最後まで聞かないと、本質は全く見えてこない。相手がしゃべり終わるまでは、絶対に自分からしゃべらない。
・ うまくいかないのは、伝わっていないからだ。
・ インターネットでものが買える時代に、わざわざ人を介してものを買うわけだから、そこには大きな付加価値が求められる。

『世界トップクラス営業マンの1年の目標を20分で達成する仕事術』林正孝著(大和書房)

『モリー先生との火曜日』ミッチ・アルボム著(NHK出版)を読んで

2009-02-20 07:50:25 | 書評
この本は大学時代の教え子と老教授の人生最後の授業を、教え子が綴ったものだ。教授は難病ALSに侵され死の床にいながら教え子に人生の意味について教える。少しずつ足から病気は上の方に進み、肺の機能が途絶えたらお陀仏という残酷な病気だ。教授はそれをまっすぐに受け止め、毎週火曜日に授業に来る教え子に語りかける。悲しいながらもほほえましい光景だ。

・ 多くの人が無意味な人生を抱えて歩き回っている。自分では大事なことのように思ってあれこれ忙しげに立ち働いているけれども、実は半分寝ているようなものだ。間違ったものを追いかけているからそうなる。人生に意味を与える道は、人を愛すること、自分の周囲の社会のために尽くすこと、自分に目的と意味を与えてくれるものを創り出すこと

・ 人生で一番大事なことは、愛をどうやって外に出すか、どうやって中に受け入れるか、その方法を学ぶことだよ。

・ 愛は唯一理性的な行為である。

・ お互いに愛せよ。さもなくば滅びるのみ。

・ いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べる。われわれはこの世界のことを心底から十分に経験していない。半分眠っているから。やらなければいけないと思っていることを無反省にやっているだけだから。死に直面すれば、余計なものを剥ぎ取って、肝心なものに集中するようになる。いずれ死ぬことを認識すれば、あらゆることについて見方ががらっと変わるよ。

・ いいかい、これだけは知っていてほしい。若い人はみな知っていてほしい。年を取るまいといつも闘ってばかりいると、いつまでも幸せにはなれないよ。しょせん年は取らざるを得ないんだから。

・ 自分のいまの人生のよいところ、ほんとうのところ、美しいところを見つけなければいけない。今の君の年代をうらやましがってなんていられないよ-前に自分がそうだったんだから。

・ どこにいたって、われわれ人間の持っている最大の欠点は、目先にとらわれること。先行き自分がどうなるかまで目が届かないんだ。潜在的可能性に目を注がなければいけない。自分にはどういう可能性があるか、そのすべてに向かって努力しなければいけない。しかし『今、自分はこれを自分のものにしたい』といっている人の中にばかりいると、とどのつまり、一握りの人間が何もかも持っていて、貧乏人が立ち上がってそれを盗んだりしないように、軍隊まで備えることになってしまう。

・ 死ぬ前に自分を許せ。それから人を許せ。いつまでも意地を張っていたり、恨んでいてもろくなことはないよ。

『モリー先生との火曜日』ミッチ・アルボム著(NHK出版)

整体マッサージをトライ!!

2009-02-19 06:59:31 | 時事
小生これまでマッサージというものは受けたことがなかった。50ももうすぐ半ばだが、肩こりも腰痛もなく、その必要を感じないためだ。ジムでウェート・トレーニングやジョッギングをやり、日常的にストレッチをやるため、問題は全くないと思っていた。

昨日は、整体マッサージのお試しコースを受けてみたのだが、これが初めての体験ということもあり、大変いい経験だった。いろいろ押されて気持ちいいのは確かだが、それよりも、姿勢がいつも左に偏っていることがはっきりわかった。どうしてそうなるかわからないが、長年の癖でそうなっているのだろう。自分ではわからないから不自然とは思わない。

人間の姿勢は、完全に整った形で直立しているということはないのだろう。どこかしら癖があり、偏っているのだろう。それをある程度意識して姿勢をただすのが大事だと思った次第だ。このマッサージは、姿勢矯正、骨盤矯正なども伴い、1時間程度じっくりしてくれるので終わってみればすっきりした感じですがすがしい。

いい経験をした。しかし人間の無意識、長年の習慣というものは怖いもので、通りに出て歩くともう忘れているのだ。おもわず苦笑いだ。

『マネーと常識』ジョン・ボーグル著(日経BP社)を読んで

2009-02-18 06:06:10 | 書評
ジョン・ボーグルは、インデックス・ファンドを1970年代につくった創始者だ。上場投資信託とかETF、日経平均連動とかのことばが広く知られているが、この考え方は、すべてこのジョン・ボーグルが発信者となっている。彼自身は、その考え方を示唆してくれたポール・サミュエルソンを心の師と巻頭で述べている。

さて、この本は、いわば市場平均どおりに運用することが最もいい結果をもたらすという主張を一貫して述べているものだ。いい株を見つけていい成績を上げようとするやり方の積極型運用は、ほぼうまくいかないとしているため、積極型運用をする人や運用機関にとっては、ボーグルはうるさい人なのだ。

日本の巨額の年金は、すっかりこのインデックス運用に徹しているようで、存在感は全く見えなくなってしまった。この面では、インデックス運用の弊害というものも感じるところだが、一方では大きなメリットもある。いわば、投資が簡単なのだ。それでいて何千銘柄がたった一回で買えるのだ。それにコストも普通の投資信託に比べれば驚くほど安い。また一回買えば持ちきりでいいので、手間がかからない。そして、長く持てば持つほどコストが安いため、パフォーマンスはコストの高い積極型より良くなる。これが個人で簡単に実現できるのだから、いうことない。

この本はまじめな本で、半分アカデミックなところもあり、やや難しい面もあるかもしれないが、ETFやインデックス・ファンドがどうしていいのかがよくわかるので、一度ぜひ手に取られたらいいと思う。

『マネーと常識』ジョン・ボーグル著(日経BP社)

何だ?ありゃ!! 中川財務相・金融担当大臣の体たらく。

2009-02-17 08:00:17 | 時事
すごい映像が全世界に配信された!!完全に泥酔状態だ、あれは。風邪薬の飲みすぎというのは嘘だろう。あの記者会見の前に、内輪で会合をした際、相当飲んだのだ。いずれはっきりするだろう。

「ろれつが回らない」、「しどろもどろ」とはこういうことなのかと思った。まさにそれがぴったり当てはまる状態だった。ロシアの財務相との会談の模様が放映されていたが、ロシア財務相はすでに引き気味でしかめっ面の表情だった。G7の会議の中でも、相当ひどい状態だったのではと想像できる。世界に日本の恥をさらしたようなものだ。世界主要国の首脳が未曾有の金融危機打開に真剣に議論しているとき、日本のプレゼンスは台無し、信頼関係もぶち壊しだ。あれをみている子どもの教育にも悪い。

前から中川氏は酒癖が悪いのは有名だったが、あれはアル中といってもいいのではないか。いまのような時期であるからこそ即刻辞任だ。話は飛ぶが、これでいよいよ麻生政権もどうしようもなくなってきた。

『人生の短さについて』セネカ著(岩波文庫)を読んで

2009-02-16 07:49:38 | 書評
セネカ(前4頃~後65)は、ローマ帝政初期に生きた弁論家であり、政治家だった。哲学者と思いがちだが、哲学者から学んだ思想が色濃く反映されている。その思想はストア哲学だ。最後は、教え子である皇帝ネロから、謀反に加担したと疑われ自殺を命ぜられる。この時代多くの哲学者が、このような形で命を終えているのは、残念なことだ。

面白いのは、セネカはお金に対する執着を非難しているが、彼自身は莫大な財産を有していたという事実。彼自身の主張は、財産はないよりもあるに越したことはないが、お金がある自分が幸せとは信じない、幸福は別のところにあるというわけだ。

この本には、セネカ道徳論集のなかから、表題の『人生の短さについて』のほか、『心の平静について』『幸福な人生について』が収録されている。

『人生の短さについて』
・ われわれは短い時間を持っているのではなく、実はその多くを浪費しているのである。人生は十分に長く、その全体が有効に費やされるのであれば、もっとも偉大なことをも完成できるほど豊富に与えられている。
・ われわれは短い人生を受けているのではなく、われわれがそれを短くしているのである。
・ 諸君は永久に生きられるかのように生きている。すでにどれほどの時間が過ぎ去っているかに諸君は注意しない。満ち溢れる湯水でもあるように諸君は時間を浪費している。
・ 君はどこを見ているのか。どこに向かって進もうとしているのか。将来のことはすべて不確定のうちに存する。いま直ちに生きなければならぬ。
・ 或るものたちの暇は多忙である。・・・彼らの生活は暇というべきではなく、怠惰な多忙というべきである。
・ 英知によって永遠化されたものは、時を経ても害されることはない。

『心の平静について』
・ 人間の最大の活動は世間を脱したところにある。
・ 友を選ぶときには相手の性格に十分に注意を払って、できるだけ不潔でないものをわが友としよう。
・ あらゆる労力は一定の目的に向けられねばならず、一定の目的を顧慮しなければならぬ。
・ 嘆くものは、なんともよくしようのないことを嘆く。・・・笑いを抑えられないものの方が、涙を抑えられないものより大きい心の持ち主である。
・ 心には休養が与えられねばならぬ。心は休養によって、前よりいっそうよき鋭さを増すだろう。・・・心が休みなく働くことから生じるものは、ある種の無気力と倦怠感である。
・ 何か崇高な、他をしのぐようなことばを発するには、心の感動がない限り不可能である。
・ 弱い心を保護するに十分強力であるためには、真剣な絶え間のない気遣いを持って動揺する心を包んでやらねばならぬ。

『幸福な人生について』
・ われわれは自然を指導者として用いねばならない。
・ 理性は自然を尊重し、自然から助言を求める。
・ 幸福に生きるということは、とりもなおさず自然に従って生きるということである。
・ 最高の善は、心の調和である。
・ 宇宙の定めから耐えねばならないことは、大きな心を持ってこれを甘受しなければならない。


『人生の短さについて』セネカ著(岩波文庫)