期待を一身に集める選手のプレッシャー

中国陸上男子１１０メートル障害の劉翔の棄権は、衝撃だった。控え室で壁を右足でものすごい音を立てて蹴る。右足アキレス腱に故障が見つかったという。まるでドラマになりそう、というより、実際はドラマより衝撃的だった。中国の期待を一心に集めるプレッシャーは相当なものがあろうが、他選手がフライングしたあと、棄権して会場を去る姿は、本人も残念だが、１０万人の観客はたまらなかっただろう。また１０億人を超える国民にとっても。

オリンピックにはさまざまなドラマがあるとつくづく思う。これがオリンピックということだ。

一方では、北島選手やマイケル・フェルプスのように、期待通りの活躍で目標を達成する選手もいる。その差は本当に大きいものがある。これがオリンピックだから、その時点で同時的に比較でき、はっきりわかってしまい、ドラマティックな劇を次々と見ているような感がある。

本当はいけないのだろうが、期待する側は、ある意味でその時点でしか選手を見ていないが、選手人生という意味では、まだこれからも復活することは当然出来るわけだ。優れた選手とは、これを踏み台にして次に期するために、あらたなトレーニングに入るのだろう。

オリンピックを見ていると、人の生き方を学べるという意味でも、貴重な機会を与えてくれる。