この本は、エマソンの著作で新たに訳出されたものだ。原題は、「Representative Men」偉人として、ナポレオン、ゲーテ、シェークスピア、スウェーデンボルグ、プラトンを上げている。ナポレオン、ゲーテとは、エマソンは同時代を生きている。この二人を代表的な偉人としてシェークスピア、プラトンらとともに上げているところは興味深い。また、19世紀の偉大な思想家エマソンがこれらの偉人について述べる内容は、強く引かれるものがある。
ナポレオン
・ 窮地から脱する唯一の手立ては勇気と創意。
・ ナポレオンの生き方から学べる最大の教訓は「勇気」の一言に尽きる。
・ ナポレオンは、自分の肌身で感じたことだけを信頼し、「ああでもない、こうでもない」という他人の思惑に左右されることがなかった。
・ ナポレオンは、誹謗中傷などものともせずに、あくまでも己の信念を貫き通した。
・ 「次になすべきことを知っていれば、あわてずに落ち着いて行動できる。」
ゲーテ
・ 私にだって、憶測の類ならば腐るほどある。だが、いやしくも本を書こうというのなら、自分が本当に身をもって体験して知っていることだけを書くべきなのだ。
・ 彼は誰よりも率直に、飾らずに書きました。どんな事柄を説明する場合でも、過不足のないぴったりとした言葉で表現することができました。
・ 心から伝えたければ、ふさわしい表現方法が生まれる。
・ 何かの思想信条を表明する場合でも、それは生まれ持った一貫した個性と深く結びついていなくてはなりません。ものの見方や表現の仕方も、決して取って付けたようなものではなく、「その表現しかありえない」という、嘘のない信念に裏打ちされていなければならない。
・ 文章の力は、その背後に人間らしさが息づいているか否かで、雲泥の差がついてしまいます。
・ 本当に優れた本であれば、一行一行から決然とした書き手の信念が伝わってきます。どの一語にも迫力と威厳がみなぎり、句読点にいたるまでみずみずしい神経に行き届き、文章そのものがダイナミックに躍動して、地域を越え時代を超えて多くの人たちの魂を捕らえるのです。
・ 「人間が生きていく目的は、その自己修養・完成のためであって、外面的な偉業をなすよりも、自らの内面を充実させるほうが大事である」
・ 起こった事実そのものよりも、「起こった事実からどのような影響を受け、どのような糧を得るか」ということのほうが、はるかに大切である。
・ ゲーテの尽きることのない情熱とエネルギーの秘訣は、ときおり、仕事の種類を変えることで上手に気分転換を図り、いつでも新鮮な感動を保ち続けたことにあるのではないかと思います。
シェークスピア
・ まことの英雄は、普通の人々の中に立ち交じって様々な人生経験を重ねることで、衆人が求めるところを察知し、彼らの願いをわが願いとし、その願いを実現するために、高い見識と力量を持って全力を尽くす。
・ 偉人とは、もっと同時代の人たちの考え方やニーズに寄り添い、その時代の息吹を全身で呼吸しながら、徐々に傑出した仕事をなしていくものなのです。
・ シェークスピアの処女作「ヘンリー6世」全体の6043行のうち、1771行が、そっくりそのまま先輩作家からの引用であり、2373行が、過去の作家の文章を下書きにして彼が手を加えた文章であり、全くシェークスピア自身が位置からすべて創作した文章は、わずか1899行に過ぎない。
スウェーデンボルグ
・ スウェーデンボルグの持論は、一つひとつの自然法則が、全宇宙を貫く普遍的なものだということであり、宇宙にあるすべてのものが生々流転の法則の元にあり、全要素が照応しあっているという説です。
・ スウェーデンボルグは生来、具体性を極端に尊ぶ資質がありましたので、何を考察する場合でも、単なる抽象論で終わることなく、常に具体的なビジョンの形で探究したり、身近な会話体を用いたり、実際の事例から題材を取ったりしました。したがって、抽象的な法則を説く場合でも、一般の人の理解になじみやすいように、必ずわかりやすいたとえ話を用いて説明するように心がけました。
・ 貪欲の塊のような人は、狭い穴蔵に閉じこもり、そこに金銀をため込んでいるのですが、そこにはネズミが棲みついて、彼らの大切な宝を食い尽くしてしまいます。
プラトン
・ 真の独創家は、誰よりも模倣の大切さを知っているのです。すべての良書は引用に満ちています。プラトンは、その時代の学問・知識を精力的に吸収しました。学べるだけのものを学びつくしたのです。
・ 本物の勇気とは、真実を知る勇気にほかならず、人間に恵まれうる最高の幸せとは、自らの内なる神霊に導かれて、本当に自分だといえるもの、己自身の真実の姿をつかみきることです。
偉人と接すれば、自分の考えも偉大になる-エマソン
・ 先行き知れぬ人生行路の中にあって、何よりも心強い支えとなるのは、人と人との結びつきではないでしょうか。互いに相手をいたわりあう気持ちこそ、何物にも変えがたい心の財産ではないでしょうか。
・ 他人の力を借りてこそ、一人ではできない大事業もなしえるのです。よき聞き手があれば、自分ひとりではとても思いつかない妙案が浮かんでくることもあるでしょう。また、他者というレンズを通して自分自身の心が見えてくることもあります。
・ 偉人の感化は、人生の難問を解く鍵にもなる。
・ 人間というのは、教育によって自ら内なる力を開発していくことができる、もっと自律的な存在なのです。
・ 自らのうちに秘めた天分を発見して力強く生きていくことに比べれば、神や他者の恩恵にすがって生きる生き方は、まだまだ他律的で、人間本来の面目を体現しているとはいえません。一方的に人から教わるだけでなく、自ら主体的に学んだことには、なんともいえない達成感が伴うものですし、そのようにして体得したことは、一生の財産になるでしょう。
・ 人間一個の本当の生き方とは、本来、自律的、内発的なものであり、自らの魂のうちから外へと流れ出してやまないものなのです。「与えられるだけ」の生き方は、宇宙の理法に反しています。「お世話になった人々に対してお返しをしていこう」という感謝と奉仕のこころを持った人だけが、自らの足で立って生きていけるのです。
・ 人は独立独歩で生きていくべきです。結局、どんな人でも、他人の生き方に関しては間接的な影響を与えるのが関の山です。ただ、とりわけ偉人は、私たちの模範にして代表的人物であり、その偉大な精神力によって私たちを感化し、限りなく豊かにしてくれるでしょう。
・ 私たちは、まったくのところ、私たち人類の代表者たる偉人の恩恵によって、一身にして千の人生を生きることができるのです。
・ 精神の競技場において繰り広げられる数々の妙技の中でも、想像力の織りなす力は圧巻です。その想像力が目覚めると、人はそのもてる力を十倍、百倍、いや千倍にも増大することができるでしょう。精神が想像力の翼に乗って羽ばたけば、めくるめく新天地が開かれ、いつでも稀有壮大な境地に遊ぶことができるでしょう。
・ 天はすべての生き物に、無限に発展する可能性を分けへだてなく与えました。誰しも、その秘めたる輝きを鮮やかに解き放ち、才能を最高レベルで開花させるまでは、安んずることなく黙々と修行の日々を重ねていく必要があるのです。
・ 人類史を飾る天才たちの伝記こそが、私たちの宇宙の秘史・年代記のまことの主題なのです。
『エマソンの「偉人論」』R.W.エマソン著(幸福の科学出版)