グローバル・スタンダードの最高峰資格CFAとCFPを持つ完全独立のFP・資産運用アドバイザー尾藤峰男の書評ブログ

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『ガンジー』マイケル・ニコルソン著(偕成社)を読んで

2009-11-30 08:41:39 | 書評
実はこの本は、ひらがな付の子供向け書籍だ。あの「全国学校図書館協議会選定」だ。本の表紙にも小学上級から大人までとかいてある。伝記を読むにはむしろこういう本が適当だ。なまじ大人向けに書いてあるよりも、わかりやすい。手っ取り早くその人を知るコツでもある。

ガンジーは、信念の人だ。だれの考えに影響されているわけではない。自分がこれだと思ったらそれを貫く人である。そしてそれが純粋に人々を救おうという気持ちから出ているため、誰もみな、ついていく。自分の命というものを顧みない。ただ正義と平等を勝ち取るまでひたすら非暴力・無抵抗の抵抗運動を続ける。アインシュタインは、ガンジーはキリスト・釈迦と同じように後世に長く語り継がれるであろうといっている。

ガンジーは、英国の大学を卒業した列記とした弁護士である。何も生活に困らない。それが突然行者のような格好をして全国を行脚し、糸をつむぐ。このコントラスト。さぞ妻も当惑したことだろう。運動が壁にぶつかると、断食の繰り返し。最後は、両肩を抱えないと歩けないほど衰弱したそうだ。大英帝国もこの抵抗運動には、さぞ閉口しただろう。しかしこのような運動であったからこそ、あのように平和裏に独立に移行できた。ガンジーは暗殺されるまで、公式の肩書きは何もなかったが、その葬儀には世界の半数以上の国の元首が列席した。


・ガンジーは、常に結果と同じくらいに、そこにいたる方法を重視しました。

・ガンジーが目指した重大な原則は、アパリグラーハと呼ばれ、物を所有しないことです。精神的な豊かさは、貧しい暮らしの中でこそ到達できるという考え方です。―ガンジーが暗殺されたときの持ち物は、全部で4ドルほどの身の回り品だけでした。


『ガンジー』マイケル・ニコルソン著(偕成社)

『新幹線をつくった男 島秀雄物語』高橋団吉著(小学館)を読んで

2009-11-27 08:54:09 | 書評
島秀雄は、戦前から戦後にかけて圧倒的な人気を誇り1000両もつくられたD51蒸気機関車、そして夢の新幹線「ひかり」をつくった男だ。これまで新幹線が無事故という驚異的な事実を達成しているのも、彼の全体設計にある。常に全体像を捉え、先を見て、それでいて細部まで目が行き届くエンジニア中のエンジニアだ。この男の功績は多大である。彼とともに新幹線実現に力を注いだのが、当時の国鉄総裁十河信二。8年2期総裁を務める間は、まさに新幹線プロジェクト進行と重なる。この二人の二人三脚がなければ新幹線は実現しなかったといってもよいだろう。様々な反対、足の引っ張りがあったのだ。

この本は、かなり微にいる取材を重ねた実録的なところがある。いわば一生を日本の鉄道つくりにかけた男の物語だ。

・ ここの部品の「遊び」が、うまく全体を調和させる「やわらかい機械」なのだ。そして、その「遊び」こそが、蒸気機関車の個性を作る。
・ 1から考えるより10から学んだほうが実り豊かである。
・ 台車は、理論化されることにより、シンプルに進化した。単純な形に進化したからこそ、その挙動を正確に計算することができるようになり、したがって安全な高速化が可能になった。
・ 踏み板式だった客車の便所を、あれやこれやの試行錯誤により、埋め込み式、階段式の便器を考え出す。これなら簡単に水洗い可能で、しかも省スペースで男女両用。多少揺れても、的が外れにくい。
・ それまで電気機関車に牽引されて、東京―沼津間は3時間かかった。それを湘南電車は、2時間半で結ぶ。

『新幹線をつくった男 島秀雄物語』高橋団吉著(小学館)

『チャップリン自伝-若き日々』中野好夫訳(新潮文庫)を読んで

2009-11-26 10:04:21 | 書評
自らが語る若き日のチャップリン。喜劇王がどのように誕生したかは、非常に興味深いものがある。あの独特の格好をした姿―これは、あっという間の間に合わせで誕生した。しかしながら、それができるには、チャップリンの15歳くらいまでのこれ以上ないくらいの極貧の日々がある。父は女をつくり家族から逃げ、アル中で若死に。チャップリンの母は、二人の子供を育てる極貧のなか、栄養失調で精神に異常をきたす。チャップリンも貧民院生活が長い。いわば町のこども浮浪者のような格好をしていた。こういう生活を送っていたことが、あのようなすばらしい映画の数々を世に出すことになったのだ。この本を読んで「モダンタイムズ」をみたが、あのチャップリンのすばらしい笑顔は、どこから来るのかといえば、こういう生活を味わったからこそである。「人間は、生きることへの希望を決して失うな。」とチャップリンは言っているのである。

・ 果たして私は、チャールズ・ディッケンズつくる人物像にすっかり魅せられてしまい、それらに扮するブランビー・ウィリアムズを、私も何とか真似てみたいと思うようになった。このようにして私の内に芽生え始めた才能は、到底長く隠しておけるものではなかった。ある日、「骨董店の祖父」を真似てみせて、その場でジャクソンさんから、君は天才だといわれた。―チャップリン7~8歳頃の話だ。
・ 実際驚くのだが、人間というものは、上流生活には実に造作なく適応できるし、また飲食物の好みなどでも、贅沢にはすぐ慣れてしまう。一週間と立たぬうちに、すべてが当然のことのように思われてくるのだ。
・ 人間の不幸をつかさどる神々は、ときおりその遊びにも飽きて、慈悲をたれることがある。母の場合がそれだった。死ぬ前の7年間、花と太陽の光に包まれながら、楽しく暮らし、その二人の息子たちは、かつて彼女が想像もしなかったほどの名声と財産に恵まれるのを、見届けてから死んだのである。
・ わたしは、身体があいて、なんにもやることがないので、普通の外出着のまま、セネットの目につきそうなところにじっと立っていた。セネット(映画監督)は葉巻を口にくわえたまま、メイベルと並んで立ち、ホテルのロビーになったセットを見入っている。「なんかここでギャグのほしいところだな」と彼はいった。そして、私のほうをふり向くと、「おい、なんでもいいから、なにか喜劇の扮装をしてこい」
といって、とっさにそんな扮装など思いつくわけもなかった。レアマンの作品で出た新聞記者のつくりもいやだった。しかし、衣装部屋へ行く途中、私はふとだぶだぶのズボン、大きなドタ靴、それにステッキと山高帽という組み合わせを思いついた。だぶだぶのズボンにきつすぎるほどの上着、小さな帽子に大きすぎる靴という、とにかくすべてにちぐはぐな対照というのが狙いだった。年恰好のほうは若くつくるか年寄りにするか、そこまではまだよくわからなかったが、これもとっさに、セネットがいつか、私の若いのに驚いたといったのを思い出し、とりあえず小さな口ひげをつけることにした。こうすれば無理に表情を隠す世話もなく、老けて見えるに違いない、と考えたからである。
性格のことまでは考えていなかった。だが、衣装をつけ、メーキャップをやってみると、とたんに私は人物になりきっていた。それがどんな人間だか、次第にわかりかけていたばかりか、いよいよステージに立ったときには、すでにはっきり一人の人間が生まれていた。セネットさんの前に出ると、早速わたしはその人物になりすまし、ステッキをふりながら彼の前を歩いて見せた。私の頭の中には、ギャグと喜劇のアイディアとでいっぱいだった。
・ わたしのやったその人間というのは、アメリカ人にとっては、全く知らない始めての性格像、いや、私自身にとってさえ思いもかけない人物だったのだ。だが、ちゃんと衣装を着けてみると、立派に実在の生きた人間に思えてきた。そして事実そうした浮浪者の衣装をつけ、顔を作るまでは、私自身全く想像もしなかったような奇想が、次々とまるで泉のように湧いてくるのだった。
・ わたしは決して自信を失わなかった。もしどこからも誘いがなければ、独立するまでだ。どうしてできないわけがあろう。わたしは自信に満ち、独立心に燃えていた。はじめてそうした気持ちが生まれた瞬間のことを、わたしは今でもはっきり覚えている。


『チャップリン自伝-若き日々』中野好夫訳(新潮文庫)


『ホーキング、宇宙を語る』スティーブン・W・ホーキング著(ハヤカワ文庫)を読んで

2009-11-25 05:50:33 | 書評
この本は、筋萎縮性側索硬化症という難病にかかり車椅子から離れられない学者が、際限のない宇宙を語る。またこの学者は、宇宙研究の大家だ。すばらしいではないか。若いときの発病時は、2,3年の命といわれていたのが、60代に入り健在で活躍している。世界にとっても貴重な宝だ。この本は、知人のアドバイスで計算式を入れるなといわれ、アインシュタインの数式E=mc²だけしか計算式が入っていない。あとは、絵だけだ。ところが小生にとっては、これがむずかしいのだ。何しろ語ることが壮大であり、専門的なところがあり、かつページにスペースがなくびっしり字が書いてある。260ページの文庫を読んでいるのだが、まるで500ページの大著を読んでいるような気になってくる。それでも書き残した以下の点は、目からうろこであった。

・ リンゴが頭の上に落ちてきたことからニュートンは霊感を得たという物語があるが、作り話にほぼ間違いない。ニュートン自身は、重力の着想を得たのは坐って“黙想にふけって”いたときで、“リンゴの落ちるのがきっかけになった”としか述べていない。
・ 1929年にハッブルは、遠方の銀河はわれわれから急速に遠ざかっているという画期的な観測を行った。いいかえれば、宇宙は膨張しているのだ。これは、初期には天体がびっしり集まっていたことを意味する。これをビッグバンという。事実、100億ないし200億年前にはすべての天体が全く同じ場所に集まり、したがって宇宙の密度が無限大だった時期があったように見えるのである。
・ ハッブルの観測は、宇宙が無限に小さく、無限に濃密だったビッグバンと呼ばれる時点があったことを示唆した。
・ なにものも、光速より速く動くことはできない。
・ アインシュタインの一般相対性理論には、宇宙にははじまりがあったはずだということ、そして終わりもありうることが暗黙裡に包含されている。
・ わが銀河は、現代の望遠鏡で見ることのできる何千億という銀河のひとつにすぎないし、それぞれの銀河は何千億という星を含んでいる。
・ 太陽の周りを回る地球の運動も重力波を生み出す。このエネルギー損失のために、地球の軌道は変化してしだいに太陽に近づき、最後には太陽にぶつかって定常状態に落ち着く。
・ 宇宙は完全に自己完結しており、その外部のなにものにも影響されない。宇宙は創造されず、破壊もされない。宇宙はひたすら存在する。
・ ブラックホールと呼ばれている天体は、十分な重さがあり物質が硬く詰まった星であり、光が脱出できないほど強い重力場を持つ。そのような星の表面から放出された光は、あまり遠くまで行かないうちに星の重力によって引き戻されてしまうために、そこから光がやってこないために見えない。このような天体がブラックホールと呼ばれる天体だ。

『ホーキング、宇宙を語る』スティーブン・W・ホーキング著(ハヤカワ文庫)

『東大教師が新入生にすすめる本2』文芸春秋編(文春新書)を読んで

2009-11-24 08:47:00 | 書評
この本は、タイトルのNo.2だ。期間は2004年から2008年。東大出版会雑誌「UP」に掲載されるアンケート特集を編集したものだ。東大教師だからいいというわけではないが、全学部あらゆる知の集積といってよいので、そこから興味のある本を抽出していけば、自分にあった意味のある読書ができる。その意味では大変効率がよい。またなによりいいのは、新刊ばかり読むのではなく、本当の良書を過去から引っ張ってくることができることだ。ただ注意しなければならないのは、本を選ぶ際には、選びすぎるということ、また学者が選ぶのでかなり専門的かつ難解な本もあるということだ。その意味では、選別する際の判断は重要だ。

そして選んだ本が以下のとおり。また本が増える。
・ グロテスク
・ 東京セブンローズ
・ デイヴィッド・コパフィールド
・ ボードレール批評
・ 自分の中に毒を持て―あなたは常識人間を捨てられるか
・ カオス―新しい科学をつくる
・ 大聖堂
・ 無限の果てに何があるか-現代数学への招待
・ 日本人の美意識
・ マオ-誰も知らなかった毛沢東
・ 怒りの葡萄
・ 現代アメリカのキーワード
・ 冬の鷹
・ 蒼穹の昴
・ 大江戸見聞録
・ 月と六ペンス
・ 江戸名所図会
・ 種の起源

『東大教師が新入生にすすめる本2』文芸春秋編(文春新書)

『臆病者のための株入門』橘玲著(文春新書)を読んで

2009-11-20 08:50:16 | 書評
この本は、小説「マネーロンダリング」や「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」などを書いた著者の株式入門書である。ほかの著作を読んでいないのでこの本との比較はできないが、この世界で仕事をするものからすると、真っ当な投資理論の基本をいわば教科書どおり書いた本である。この著者の場合、筆致が独特のものがあり、いわば筆者特有のにおいを感じる。装丁やタイトル、ニヒルに感じる文章のトーンなどに、かなり筆者自身のイメージ戦略があるのだろう。独特のたとえ話も多い。

この著者は覆面作家で、本名は明かしていない。想定していないのだろうが、本の内容に対して万が一訴えられたりした場合、どう対応するのだろう。

興味を引いた記述:

・リテラシーとは読み書き能力のことで、具体的には、
(1)議論の前提となる知識が欠けている。
(2)知識が欠けていることに無自覚である。
ことをいう。こういう特徴を持つ人種が頻繁に観察されるのが投資の世界で、彼らは一般に「金融リテラシーのない人たち」と呼ばれる。これをわかりやすく翻訳すると、「ネギを背負ったカモ」になる。下品な表現で申し訳ないが、金融商品の多くは彼ら「カモ」からぼったくることを目的に作られている。

このあたりは、同意である。

この本は、株の入門者というよりも、むしろいま株式投資をやっている人でも、もう一度振り返って見直してみるのにも役立つ本だ。

『臆病者のための株入門』橘玲著(文春新書)

『東大教師が新入生にすすめる本』文芸春秋編(文芸春秋)を読んで

2009-11-19 08:31:28 | 書評
この本は、東大教師が新入生のためのブックガイドとして、毎年4月に雑誌『UP』に掲載されたアンケートを再構成したものだ。厳しい受験戦争を乗り越えてきた新入生に、本来の『知恵を学ぶ喜び』を味わってもらいたいと願いながら、東大教師陣が個々人それなりに選んだ、本の集積だ。1994寝んから2003年まで1500余冊に及ぶ。

このガイドは、彼ら新入生だけにとどめておく理由はなく、われわれが見ても非常に参考になる。

私はこれを読んで、以下の本を早速購入した。

・ 人生について(小林秀雄)
・ 21世紀 知の挑戦(立花隆)
・ 国家(プラトン)
・ 忘れられた日本人
・ 人間を幸福にしない日本というシステム
・ 存在と時間(ハイデッカー)
・ チャップリン自伝
・ キュリー夫人
・ 生きがいについて
・ 新幹線を作った男-島秀雄物語
・ 二重ラセン
など

『東大教師が新入生にすすめる本』文芸春秋編(文芸春秋)

『裸でも生きる』山口絵理子著(講談社)を読んで

2009-11-18 10:40:51 | 書評

この本は、まだ25歳の女性起業家が書いた、破天荒なビジネス戦記だ。自分が信じる道を進むというのは簡単だが、実際にそう行動することはまた別の話だ。それをこの著者は、どんな困難な道があろうと、まだ誰もやったことがないことでも、まずは走る。走っていて困難なことがあると、それに果敢にチャレンジして、乗り越えてしまう。そのエネルギーたるや、見習いたいものがある。

まだ、これからも様々な壁や困難が待ち構えているだろうが、それをどう克服していくのか、注目したい。おそらくこの著者は、克服していくだろう。

・ アジアの最貧国、バングラデッシュ。洪水、汚職、希望の光を見つけられないでいるこの国。少し前まで、自分にはできることなんて何にもない・・・と、あきらめて日本に帰ろうとしていた私だけれど、一歩踏み出してダメでも、踏み出すことが何よりも大事なんじゃないか、その先にたとえ失敗があっても、それは勇気を振り絞って歩いた証拠なんだ。たった一人の自分だけど、たった一人しかいない自分ができることをしよう。それが私の出した結論だった。

『裸でも生きる』山口絵理子著(講談社)

『エマソンの「偉人論」』R.W.エマソン著(幸福の科学出版)を読んで

2009-11-17 10:07:56 | 書評
この本は、エマソンの著作で新たに訳出されたものだ。原題は、「Representative Men」偉人として、ナポレオン、ゲーテ、シェークスピア、スウェーデンボルグ、プラトンを上げている。ナポレオン、ゲーテとは、エマソンは同時代を生きている。この二人を代表的な偉人としてシェークスピア、プラトンらとともに上げているところは興味深い。また、19世紀の偉大な思想家エマソンがこれらの偉人について述べる内容は、強く引かれるものがある。

ナポレオン
・ 窮地から脱する唯一の手立ては勇気と創意。
・ ナポレオンの生き方から学べる最大の教訓は「勇気」の一言に尽きる。
・ ナポレオンは、自分の肌身で感じたことだけを信頼し、「ああでもない、こうでもない」という他人の思惑に左右されることがなかった。
・ ナポレオンは、誹謗中傷などものともせずに、あくまでも己の信念を貫き通した。
・ 「次になすべきことを知っていれば、あわてずに落ち着いて行動できる。」

ゲーテ
・ 私にだって、憶測の類ならば腐るほどある。だが、いやしくも本を書こうというのなら、自分が本当に身をもって体験して知っていることだけを書くべきなのだ。
・ 彼は誰よりも率直に、飾らずに書きました。どんな事柄を説明する場合でも、過不足のないぴったりとした言葉で表現することができました。
・ 心から伝えたければ、ふさわしい表現方法が生まれる。
・ 何かの思想信条を表明する場合でも、それは生まれ持った一貫した個性と深く結びついていなくてはなりません。ものの見方や表現の仕方も、決して取って付けたようなものではなく、「その表現しかありえない」という、嘘のない信念に裏打ちされていなければならない。
・ 文章の力は、その背後に人間らしさが息づいているか否かで、雲泥の差がついてしまいます。
・ 本当に優れた本であれば、一行一行から決然とした書き手の信念が伝わってきます。どの一語にも迫力と威厳がみなぎり、句読点にいたるまでみずみずしい神経に行き届き、文章そのものがダイナミックに躍動して、地域を越え時代を超えて多くの人たちの魂を捕らえるのです。
・ 「人間が生きていく目的は、その自己修養・完成のためであって、外面的な偉業をなすよりも、自らの内面を充実させるほうが大事である」
・ 起こった事実そのものよりも、「起こった事実からどのような影響を受け、どのような糧を得るか」ということのほうが、はるかに大切である。
・ ゲーテの尽きることのない情熱とエネルギーの秘訣は、ときおり、仕事の種類を変えることで上手に気分転換を図り、いつでも新鮮な感動を保ち続けたことにあるのではないかと思います。

シェークスピア
・ まことの英雄は、普通の人々の中に立ち交じって様々な人生経験を重ねることで、衆人が求めるところを察知し、彼らの願いをわが願いとし、その願いを実現するために、高い見識と力量を持って全力を尽くす。
・ 偉人とは、もっと同時代の人たちの考え方やニーズに寄り添い、その時代の息吹を全身で呼吸しながら、徐々に傑出した仕事をなしていくものなのです。
・ シェークスピアの処女作「ヘンリー6世」全体の6043行のうち、1771行が、そっくりそのまま先輩作家からの引用であり、2373行が、過去の作家の文章を下書きにして彼が手を加えた文章であり、全くシェークスピア自身が位置からすべて創作した文章は、わずか1899行に過ぎない。

スウェーデンボルグ
・ スウェーデンボルグの持論は、一つひとつの自然法則が、全宇宙を貫く普遍的なものだということであり、宇宙にあるすべてのものが生々流転の法則の元にあり、全要素が照応しあっているという説です。
・ スウェーデンボルグは生来、具体性を極端に尊ぶ資質がありましたので、何を考察する場合でも、単なる抽象論で終わることなく、常に具体的なビジョンの形で探究したり、身近な会話体を用いたり、実際の事例から題材を取ったりしました。したがって、抽象的な法則を説く場合でも、一般の人の理解になじみやすいように、必ずわかりやすいたとえ話を用いて説明するように心がけました。
・ 貪欲の塊のような人は、狭い穴蔵に閉じこもり、そこに金銀をため込んでいるのですが、そこにはネズミが棲みついて、彼らの大切な宝を食い尽くしてしまいます。

プラトン
・ 真の独創家は、誰よりも模倣の大切さを知っているのです。すべての良書は引用に満ちています。プラトンは、その時代の学問・知識を精力的に吸収しました。学べるだけのものを学びつくしたのです。
・ 本物の勇気とは、真実を知る勇気にほかならず、人間に恵まれうる最高の幸せとは、自らの内なる神霊に導かれて、本当に自分だといえるもの、己自身の真実の姿をつかみきることです。

偉人と接すれば、自分の考えも偉大になる-エマソン
・ 先行き知れぬ人生行路の中にあって、何よりも心強い支えとなるのは、人と人との結びつきではないでしょうか。互いに相手をいたわりあう気持ちこそ、何物にも変えがたい心の財産ではないでしょうか。
・ 他人の力を借りてこそ、一人ではできない大事業もなしえるのです。よき聞き手があれば、自分ひとりではとても思いつかない妙案が浮かんでくることもあるでしょう。また、他者というレンズを通して自分自身の心が見えてくることもあります。
・ 偉人の感化は、人生の難問を解く鍵にもなる。
・ 人間というのは、教育によって自ら内なる力を開発していくことができる、もっと自律的な存在なのです。
・ 自らのうちに秘めた天分を発見して力強く生きていくことに比べれば、神や他者の恩恵にすがって生きる生き方は、まだまだ他律的で、人間本来の面目を体現しているとはいえません。一方的に人から教わるだけでなく、自ら主体的に学んだことには、なんともいえない達成感が伴うものですし、そのようにして体得したことは、一生の財産になるでしょう。
・ 人間一個の本当の生き方とは、本来、自律的、内発的なものであり、自らの魂のうちから外へと流れ出してやまないものなのです。「与えられるだけ」の生き方は、宇宙の理法に反しています。「お世話になった人々に対してお返しをしていこう」という感謝と奉仕のこころを持った人だけが、自らの足で立って生きていけるのです。
・ 人は独立独歩で生きていくべきです。結局、どんな人でも、他人の生き方に関しては間接的な影響を与えるのが関の山です。ただ、とりわけ偉人は、私たちの模範にして代表的人物であり、その偉大な精神力によって私たちを感化し、限りなく豊かにしてくれるでしょう。
・ 私たちは、まったくのところ、私たち人類の代表者たる偉人の恩恵によって、一身にして千の人生を生きることができるのです。
・ 精神の競技場において繰り広げられる数々の妙技の中でも、想像力の織りなす力は圧巻です。その想像力が目覚めると、人はそのもてる力を十倍、百倍、いや千倍にも増大することができるでしょう。精神が想像力の翼に乗って羽ばたけば、めくるめく新天地が開かれ、いつでも稀有壮大な境地に遊ぶことができるでしょう。
・ 天はすべての生き物に、無限に発展する可能性を分けへだてなく与えました。誰しも、その秘めたる輝きを鮮やかに解き放ち、才能を最高レベルで開花させるまでは、安んずることなく黙々と修行の日々を重ねていく必要があるのです。
・ 人類史を飾る天才たちの伝記こそが、私たちの宇宙の秘史・年代記のまことの主題なのです。

『エマソンの「偉人論」』R.W.エマソン著(幸福の科学出版)

『すきやばし次郎鮨を語る』宇佐美伸著(文春新書)を読んで

2009-11-16 09:52:36 | 書評
数寄屋橋交差点近くのビルの地下にこじんまりと店を構える「すきやばし次郎」。外から見ればどこにでもある寿司屋だが、この店は何を隠そう、ミシュラン3つ星を初のレーティングで獲得、今年も獲得し二年続けての快挙を達成した。店主は、今年84歳の小野二郎さん。まだバリバリの現役である。というより、「いまが生涯で一番、鮨を握っている数が多い」そうだ。鮨を握る職人としては、頂点にいる人物といってよいだろう。

小生も20年ほど前に一度いったことがあるが、テーブルで仲間と談笑しながら鮨を前にしていると、突然御大が来て、「早く食べてくださいよ!」と怒鳴られた経験がある。それは、どうもしょっちゅうのようだが、それだけ鮨に対する思い入れが強いのだろう。

・ 仕事ってのは合う合わないじゃなくて、こっちから努力してあわせていくものだ。
・ 例の地球温暖化の影響なのか、乱獲なのか、漁師のなり手がいないのか。旬の時期だって昔と比べたら激変といいたくなるくらい滅茶苦茶です。だからね、この日本で飢饉とか飢餓なんて考えられないと思うほうが大間違いで、私はいつそういう危険が来たって不思議じゃないと感じている。そのときにね、果たして若い連中が耐え抜けるのかっていうことなんです、言いたいのは。
・ 何かしらああでもないこうでもないと考えている限り、昨日より今日、今日より明日の握りに必ず進歩があるはずだって思えるのね、まだまだ。
・ 同じことを同じ手順で積み重ねる根気が職人仕事の第1歩とは思います。でも、単調に見えて何かしら工夫の余地があるのも、職人仕事の一面なんです。その工夫をあれこれ考える気力があるうちは、まだやれるってことだよね。
・ 人には何かしら腹をくくらなきゃならない時期が必ずあります。タイミングは絶対にはずしちゃいけない。
・ ロブションさんの料理は味の濃淡や色彩の変調も含め、コース全体に心地よいハーモニーとリズム感があるんです。
・ うちらの世界は厳しいのは確かだと思う。朝は早いし夜は遅い。下働きから始めて少しずつ仕込みのいろはを学び、修行の最後に玉子焼きを覚えるまで、どう考えたって最低十年は必要です。
・ どんな分野だって一人前のプロとしてやっていくには、基本を叩きこまなきゃならない。そこに5年や10年かかるのは当たり前のことです。

『すきやばし次郎鮨を語る』宇佐美伸著(文春新書)